育休給付金に配偶者所得制限はある?要件・減額なしの根拠を解説

育休給付金に配偶者所得制限はある?要件・減額なしの根拠を解説 育休給付金

育休の取得を検討しているとき、「配偶者の年収が高いと育休給付金が減額されるのでは?」「世帯収入が基準を超えたらもらえなくなる?」という不安を感じる方は少なくありません。

結論からお伝えします。育休給付金(育児休業給付金)の受給要件に、配偶者の所得に関する制限は一切ありません。 配偶者がどれだけ高収入であっても、世帯収入が高くても、給付金の金額が減ることも、受給資格を失うこともないのです。

この記事では、その法的根拠をわかりやすく解説したうえで、実際の受給要件・申請手続き・給付額の計算方法まで、2025年最新情報をもとに詳しくご説明します。


育休給付金に配偶者の所得制限はあるのか?【結論から先に解説】

制限の種類 配偶者所得制限 世帯収入制限
制限の有無 なし なし
給付金の減額 減額されない 減額されない
受給資格への影響 影響なし 影響なし
確認される項目
他制度との違い 児童手当は制限あり 社会保障制度によって異なる

冒頭でお伝えしたとおり、育休給付金に配偶者の所得制限はありません。 配偶者の収入・雇用状況・世帯所得は、受給資格の判定にも給付額の計算にも、まったく関係しない仕組みになっています。

なぜこのような誤解が広まるのでしょうか。以下で誤解の原因と、制限がない理由の法的根拠を整理します。

よくある誤解:「配偶者が高収入だと減額される?」

「配偶者が高収入だと育休給付金が減額される」という誤解は、主に次の2つの制度との混同から生まれています。

① 児童手当の所得制限との混同

児童手当には、受給者(生計の主体となる親)の所得に応じた制限があります(2024年10月の制度改正により所得制限は撤廃されましたが、以前は厳格な上限が設けられていました)。育休給付金と児童手当はまったく別の制度ですが、「子どもに関連する給付=所得制限がある」というイメージが混乱を招いているようです。

② 扶養控除・配偶者控除との混同

税制における配偶者控除・配偶者特別控除は、配偶者の年収が103万円・201万円といった基準を超えると控除額が変わる仕組みです。「収入に応じて受け取れる額が変わる」という構造への連想が、育休給付金にも同様のルールがあるという誤解につながっています。

しかし、育休給付金は雇用保険制度の一部であり、税制とはまったく別の根拠法に基づいています。この2つを混同しないことが、制度を正しく理解するための第一歩です。

配偶者の所得・雇用状況は一切問われない理由

育休給付金の根拠法は雇用保険法第61条(育児休業給付金)です。同条文には、受給要件として定められているのは以下の内容のみです。

  • 被保険者が育児休業を取得していること
  • 育児休業開始日前2年間に一定の被保険者期間があること
  • 育児休業中の就業・賃金支払いが一定の基準以下であること

条文のどこを読んでも、「配偶者の所得」「世帯収入」「配偶者の雇用状況」に関する要件は一切記載されていません。 同法の施行規則(第101条~第110条)においても、配偶者所得を考慮する規定は存在しません。

育休給付金は「雇用保険の被保険者個人」が育児休業を取得したことによって発生する権利であり、被保険者本人の労働条件だけが判断基準です。共働きであろうと専業主婦(夫)の配偶者がいようと、配偶者が高年収であろうと、受給資格・給付額に一切影響しないのはこの制度設計によるものです。


育休給付金の受給要件5つを徹底整理

配偶者所得は無関係であることがわかったところで、実際に育休給付金を受給するために満たすべき本来の要件を確認しましょう。要件は5つあります。

①雇用保険への加入状況

育休給付金は雇用保険の給付金です。そのため、育児休業の開始時点で雇用保険の被保険者であることが大前提となります。

正規雇用の会社員・公務員(国家公務員・地方公務員は共済制度が適用)はもちろん、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員であっても、以下の条件を満たしていれば雇用保険に加入しており、受給資格の対象になります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある

逆に、雇用保険に未加入の場合(個人事業主・フリーランス・週20時間未満のアルバイトなど)は、育休給付金を受け取ることができません。まず自身が雇用保険に加入しているかを確認しましょう。確認方法は、給与明細に「雇用保険料」の控除があるかを確認するか、勤務先の人事・総務担当者に問い合わせることで判断できます。

②被保険者期間(2年間で12ヶ月以上)

雇用保険に加入しているだけでなく、育児休業開始日前の2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが必要です(雇用保険法施行規則第101条の3)。

被保険者期間のカウント方法

被保険者期間の「1ヶ月」とは、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月のことを指します。たとえば、育休開始日が2025年4月1日の場合、2023年4月1日から2025年3月31日の2年間を遡り、その期間中に11日以上働いた月が12ヶ月あれば要件を満たします。

産前産後休業期間の扱い

産前42日・産後56日の産前産後休業(産休)中は、雇用保険の被保険者資格は継続していますが、賃金が支払われない日が多く、被保険者期間のカウントに算入されないケースがあります。この場合、産休前の期間まで遡ってカウントできる特例があります(雇用保険法第13条第2項)。産休を経て育休に入る方でも、産休前に十分な就労実績があれば要件を満たせる可能性が高いため、ハローワークや勤務先人事担当者に確認してみましょう。

転職・再就職の場合の注意点

転職直後に育児休業を取得する場合、前職の雇用保険被保険者期間と合算できる場合があります(前職の離職から1年以内が条件)。転職経験がある方は、前職と現職の被保険者期間を合算して12ヶ月を満たすかどうかを確認することが重要です。

③育児休業の対象となる子の年齢・条件

育休給付金の対象となるのは、1歳未満(誕生日の前日まで)の子を養育するための育児休業が原則です。

ただし、以下の条件に該当する場合は、1歳から最長2歳に達するまで育児休業を延長でき、その間も給付金を受け取ることができます。

延長が認められる条件

延長の種類 条件 延長期間
1歳から1歳6ヶ月への延長 保育所等への入所申し込みをしたが入所できない場合、または配偶者の死亡・疾病等のやむを得ない事情がある場合 最長1歳6ヶ月まで
1歳6ヶ月から2歳への延長 上記延長後も同様の理由が継続している場合 最長2歳まで

延長申請には、保育所等への不承諾通知書など、延長理由を証明する書類が必要です。申請期限を過ぎると給付金が受け取れなくなる場合があるため、延長を希望する場合は早めにハローワークへ確認しましょう。

④育休中の就業日数と賃金支払いの条件

育児休業中であっても、一定の条件下で就業(いわゆる「育休中の就業」)することは認められています。ただし、就業日数・賃金額が一定の上限を超えると給付金が減額または不支給になるため注意が必要です。

就業日数の条件

支給単位期間(各月)中の就業日数が10日以下(または就業時間が80時間以下)であれば、育休給付金を受給できます。11日以上(または80時間超)になると、原則としてその月の給付金は支給されません。

賃金支払いによる減額ルール

育休中に賃金が支払われた場合、給付金額は以下のように調整されます。

  • 就業によって支払われた賃金が、休業前の賃金月額の13%以下の場合:給付金は全額支給
  • 賃金が13%超〜80%未満の場合:「賃金月額の80%」と「支払われた賃金」の差額が支給
  • 賃金が賃金月額の80%以上の場合:給付金は不支給

これは「休業前賃金の80%を保障する」という考え方に基づいています。育休中にパートや短時間勤務をする場合は、賃金額に注意しながらシフトを調整しましょう。

⑤子の養育義務と同居要件

育休給付金を受給する者は、対象となる子の実の親または養親であり、かつ子と同居していることが要件です。祖父母による養育や別居での給付金受給は認められません。


配偶者所得で変わらない給付額の計算方法

育休給付金の額は配偶者の収入に関係なく、休業前の自分自身の賃金額のみを基に計算されます。

給付率と給付額の基本計算

育休給付金の給付率は以下のとおりです。

育休の期間 給付率 支給額の目安
育休開始から180日目まで 賃金月額の67% 上限額:305,721円/月(2025年現在)
181日目以降 賃金月額の50% 上限額:228,150円/月(2025年現在)

2025年4月からの制度改正:給付率引き上げ

2025年4月施行の改正雇用保険法により、子が生後28日(出生後休業支援給付の対象期間)の間は給付率が最大80%に引き上げられる「出生後休業支援給付金」が新設されました。これは父母ともに育休を取得した場合に適用される給付で、共働き世帯の育休取得を後押しする制度です。

賃金月額の計算方法

「賃金月額」とは、育休開始前の6ヶ月間に支払われた賃金の合計を180日で割り、30日分に換算した金額です。

計算例

  • 月給30万円(ボーナスを除く)の方が育休を取得した場合
  • 賃金月額:30万円
  • 育休開始〜180日目まで:30万円 × 67% = 月額約201,000円
  • 181日目以降:30万円 × 50% = 月額150,000円

なお、ボーナス(賞与)は賃金月額の計算には含まれません。また賃金月額には上限と下限が設けられており、上限は約45万6,300円(2025年現在)、下限は約8万円程度です。

配偶者所得が高くても給付額は変わらない具体例

誤解の払拭のため、具体的なケースで確認しましょう。

ケース 本人の月給 配偶者の年収 育休給付金(前半180日)
ケースA 25万円 300万円 約167,500円/月
ケースB 25万円 800万円 約167,500円/月
ケースC 25万円 1,500万円 約167,500円/月

どのケースでも本人の月給25万円を基準に計算するため、給付額はまったく同じです。配偶者がどれほど高収入であっても、育休給付金の計算式には一切登場しません。


申請手続きの流れと必要書類

育休給付金の申請は、主に勤務先(事業主)を経由してハローワークに行います。手続きの流れを確認しましょう。

申請手続きの全体フロー

ステップ1:育休開始前の準備

育児休業開始予定日の1ヶ月以上前を目安に、勤務先の人事・総務担当者に以下を伝えましょう。

  • 育児休業の取得予定日(開始日・終了予定日)
  • 育休給付金の申請手続きの依頼

ステップ2:育児休業開始・受給資格確認

育児休業開始後、事業主を通じてハローワークへ「育児休業給付受給資格確認票・初回支給申請書」を提出します。提出期限の目安は、育児休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日までです(初回申請)。

実際の手続きは勤務先が行うケースがほとんどですが、提出状況を自分でも確認しておくと安心です。

ステップ3:以降の定期申請(2ヶ月ごと)

育休給付金は、2ヶ月を1支給単位期間として申請します。ハローワークから事業主に支給申請書が送付され、事業主が記入・押印して提出する流れが一般的です。

申請から振込まで、通常1〜2週間程度かかります。

申請に必要な書類一覧

初回申請時に必要な主な書類は以下のとおりです(事業主経由での提出が基本)。

書類名 準備者 備考
育児休業給付受給資格確認票・初回支給申請書 事業主(ハローワーク所定様式) ハローワークまたは厚生労働省HPから取得
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 事業主 育休開始前6ヶ月の賃金記録が必要
育児休業申出書(写し)または育休取得証明書 労働者 勤務先規程に基づいて作成
母子健康手帳(写し)または出生証明書 労働者 子の生年月日を証明するため
振込先銀行口座の通帳(写し) 労働者 本人名義の口座

なお、配偶者の収入証明・源泉徴収票・確定申告書などの提出は一切不要です。これも「配偶者所得は申請要件に無関係」であることの明確な証拠といえます。

ハローワーク窓口への問い合わせ方法

手続きで不明な点がある場合は、勤務先を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に直接問い合わせることができます。「育児休業給付に関する相談」として窓口や電話で対応してもらえます。

ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)では、最寄りのハローワークの所在地・電話番号を検索することができます。


他制度との違いを整理:所得制限がある給付・ない給付

育休給付金に所得制限がないことを理解したうえで、関連する他の給付金・制度との違いも整理しておきましょう。

制度名 配偶者・世帯所得の影響 根拠法
育休給付金(育児休業給付金) なし(本人の雇用保険のみ) 雇用保険法第61条
出産育児一時金 なし(健康保険加入者が対象) 健康保険法第101条
出産手当金 なし(本人の標準報酬月額のみ) 健康保険法第102条
児童手当 あり(2024年10月以降は所得制限撤廃) 児童手当法
高等学校等就学支援金 あり(世帯年収約910万円が目安) 高校就学支援法
配偶者控除・配偶者特別控除 あり(配偶者の年収による) 所得税法
育児休業給付(公務員) なし(本人の給与のみ) 国家公務員共済組合法等

このように、育休給付金は数少ない「所得制限なし」の給付金の一つです。配偶者の年収を気にすることなく、ご自身の受給要件さえ満たしていれば必ず受け取れる権利です。


育休取得をためらっている方へ:給付金を最大限活用するために

「配偶者が働いているから育休給付金はもらえないかもしれない」という思い込みが、育休取得をためらう原因になっているケースがあります。しかし、その心配はまったく不要です。

育休給付金の受給に関して確認すべきことは、あくまで「自分自身が雇用保険の被保険者として条件を満たしているか」だけです。

以下のポイントを事前に確認しておくことで、スムーズに申請できます。

  1. 雇用保険の加入確認:給与明細の控除欄で「雇用保険料」が引かれているか確認する
  2. 被保険者期間の確認:育休開始前2年間で11日以上勤務した月が12ヶ月以上あるか確認する
  3. 申請スケジュールの確認:勤務先人事担当者と育休開始前に申請の段取りをすり合わせる
  4. 給付額のシミュレーション:ハローワークや厚生労働省のサイトで事前に確認する

育休中の収入の見通しが立てば、育児に専念できる環境を整えやすくなります。給付金の受給資格があるにもかかわらず取得しないことは、経済的にも精神的にも損失につながりかねません。制度を正しく理解して、積極的に活用してください。


💰 育休・産休中のお金の不安を無料で相談

資産形成・保険・給付金など、FPが無料でアドバイス

FPカフェ 無料FP相談

🚪 育休中・復職後のお悩みをプロに相談

育休ハラスメント・退職強要など、退職代行サービスが安心サポート

退職代行サービス

よくある質問(FAQ)

Q1. 共働きで夫婦ともに育休を取得する場合、どちらの給付金も受け取れますか?

A. はい、受け取れます。育休給付金は「個人の雇用保険」に基づく給付のため、夫婦それぞれが受給要件を満たしていれば、両方が給付金を受け取ることができます。配偶者が育休給付金を受給していても、もう一方の給付金が減額されることはありません。

Q2. 配偶者が専業主婦(夫)で無収入でも、私(働いている側)の育休給付金は受け取れますか?

A. はい、受け取れます。配偶者が専業主婦(夫)であることは受給要件に一切影響しません。ご自身が雇用保険の被保険者として要件を満たしていれば、問題なく受給できます。

Q3. 育休給付金の受給中に、配偶者の転職や収入変化があった場合、申告は必要ですか?

A. 不要です。配偶者の就職・転職・収入の増減は、育休給付金の申請や受給に影響しないため、申告・報告の義務もありません。

Q4. 育休給付金は課税対象ですか?

A. 育休給付金は非課税です(所得税法第9条第1項第15号)。確定申告の際に収入として申告する必要はなく、配偶者控除の計算においても収入として算入されません。

Q5. 育休給付金の申請が遅れた場合、給付金はさかのぼってもらえますか?

A. はい、申請期限(育休開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日)内であれば、さかのぼって受給できます。期限を過ぎてしまった場合でも、正当な理由があれば特例的に申請できる場合がありますので、早急にハローワークまたは勤務先の人事担当者に相談してください。

Q6. パート・派遣社員でも育休給付金を受け取れますか?

A. 受け取れる場合があります。雇用保険に加入しており(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)、被保険者期間の要件を満たしていれば、雇用形態に関わらず受給資格があります。派遣社員の場合は派遣元の雇用保険が適用されるため、派遣会社の担当者に確認しましょう。


まとめ:育休給付金の配偶者所得要件は「なし」

この記事の重要なポイントをまとめます。

  • 育休給付金(育児休業給付金)の受給に、配偶者の所得要件・制限は一切ない(雇用保険法第61条)
  • 児童手当・扶養控除との混同が誤解の原因であり、育休給付金は別制度
  • 受給要件は①雇用保険加入、②被保険者期間(2年間で12ヶ月以上)、③対象の子の年齢、④就業日数・賃金の条件、⑤子の養育義務と同居のみ
  • 給付額は休業前の自分の賃金月額のみで計算(前半180日:67%、後半:50%)
  • 申請は事業主経由でハローワークに行い、配偶者の収入証明書類の提出は不要
  • 2025年4月からの改正により、父母ともに育休取得の場合は給付率が最大80%に引き上げ

「配偶者が高収入だから」「共働きだから」という理由で育休給付金の受給をあきらめる必要はありません。ご自身の受給要件を正確に確認したうえで、申請の準備を進めてください。不明な点は、ハローワークまたは勤務先の人事担当者に積極的に相談することをおすすめします。


参考法令・資料
– 雇用保険法第61条〜第61条の4
– 雇用保険法施行規則第101条〜第110条
– 育児・介護休業法第2条
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き」(2025年版)
– ハローワークインターネットサービス https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

タイトルとURLをコピーしました