育休中は給与が減少または停止するため、社会保険料の負担は大きな課題です。しかし日本には、育休期間中に社会保険料(厚生年金保険・健康保険)が免除される制度があり、正しく申請すれば労働者・企業双方が経済的メリットを受けられます。
本記事では、育休中の社会保険料免除の仕組みから申請書類・手続き手順まで、2024年版の最新情報をもとに徹底解説します。男性育休やパート・契約社員の対象条件も含めて説明しますので、自分が制度を利用できるかどうかを確認できます。
育休中の社会保険料免除制度とは|基本を5分で理解
制度の目的と法的根拠
育休中の社会保険料免除制度は、育児休業取得者の経済的負担を軽減し、安心して育児に専念できる環境を整えることを目的としています。
法的根拠は以下の3つの法律に基づいています。
| 法律 | 主な条文 | 規定内容 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険法 | 第90条・第67条 | 育休期間中の保険料(事業主負担分)免除 |
| 健康保険法 | 第159条・第115条 | 育休期間中の保険料(事業主・被保険者負担分)免除 |
| 育児・介護休業法 | 第1条~第22条 | 育児休業の取得要件・期間の規定 |
この制度は育児・介護休業法が定める「育児休業」を取得した労働者に適用されます。法律に明記された権利であるため、要件を満たしていれば事業主が拒否することはできません。
育休中の社会保険料免除がもたらすメリット
育休中の社会保険料免除を活用することで、労働者・企業それぞれに以下のメリットが生まれます。
労働者側のメリット
– 育休中の手取り収入の実質的な目減りを抑制できる
– 健康保険の保険診療は引き続き利用可能
– 厚生年金は免除期間も「納付済み」として年金記録に反映される
企業(事業主)側のメリット
– 事業主負担分の社会保険料が全額免除となり、人件費を圧縮できる
– 従業員の育休取得促進につながり、採用・定着率の向上が期待できる
厚生年金保険法・健康保険法での規定内容
法律上の免除範囲は以下のとおりです。健康保険は労働者負担分も免除になる点が特に重要です。
【厚生年金保険】
├─ 事業主負担分:免除される
├─ 被保険者(労働者)負担分:免除されない
└─ ただし、免除期間は「保険料を納めた期間」として
年金受給額の計算に反映される
【健康保険】
├─ 事業主負担分:免除される
├─ 被保険者(労働者)負担分:免除される ← 重要!
├─ 被扶養者がいる場合:被保険者の免除と同時適用
└─ 医療機関受診などの保険給付は通常どおり利用可能
⚠️ 注意:雇用保険料は免除対象外です。 育休中も給与から控除され、復帰時の調整(納付特例)扱いとなります。
社会保険料免除の対象者|あなたが対象かチェック
育休取得の基本要件(雇用形態別)
社会保険料免除の対象となるためには、まず「育児休業が取得できる状態にあること」が前提です。以下の要件をすべて満たしているかを確認してください。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用形態 | 雇用期間の定めなし、または契約満了予定が2年以上先 |
| 継続雇用期間 | 同一事業主に1年以上継続して雇用されていること |
| 週労働時間 | 週20時間以上(2024年度基準) |
| 対象となる子ども | 実子・養子を問わず1歳(最長2歳)に達する日まで |
| 雇用形態の例外 | 日雇い労働者は対象外 |
対象者・非対象者の判定基準
✅ 社会保険料免除の対象となる方
– 要件を満たした正社員
– 要件を満たした契約社員・パート・アルバイト・派遣社員
– 男性労働者(育休取得の場合)
– 養子縁組をした労働者
❌ 社会保険料免除の対象外となる方
– 日雇い労働者
– 継続雇用1年未満の労働者(労使協定による例外あり)
– 育休中に通常の給与支払いを受けている労働者
– 国民健康保険・国民年金の加入者(制度の対象が厚生年金・健康保険のため)
契約社員・パート・派遣社員は対象になるか?
結論:要件を満たせば対象になります。
雇用形態は問われません。ただし以下の確認が必要です。
- 社会保険(厚生年金・健康保険)に加入していること
- 同一事業主に1年以上継続雇用されていること
- 育休終了後も雇用継続が見込まれること
パート・アルバイトの場合、週の所定労働時間や月収によっては社会保険に未加入のケースがあります。その場合は国民年金・国民健康保険の扱いとなり、本制度の対象外となります。まず自分が社会保険に加入しているかを確認することが重要です。
男性の育休取得と社会保険料免除
2022年10月の育児・介護休業法改正により、男性の育休取得(産後パパ育休含む)が促進されています。男性も育休を取得すれば同様に社会保険料免除の対象となります。
男性育休(産後パパ育休)の特徴は以下のとおりです。
- 子どもの出生後8週間以内に最大4週間取得可能
- 分割取得(2回まで)が可能
- 社会保険料免除の申請方法は通常の育休と同じ
対象者チェックリスト
以下をすべて満たしていれば、社会保険料免除の申請が可能です。チェックリストで確認してみましょう。
- [ ] 厚生年金保険・健康保険に加入している
- [ ] 同一事業主に1年以上継続雇用されている
- [ ] 育児・介護休業法に基づく育児休業を取得している(または取得予定)
- [ ] 週の労働時間が20時間以上ある
- [ ] 日雇い労働者ではない
- [ ] 育休中に通常の給与支払いを受けていない
免除される社会保険料の範囲と金額|具体例で確認
厚生年金保険|事業主負担分と被保険者負担分
厚生年金保険では事業主負担分のみ免除となります。被保険者(労働者)負担分は本来給与から控除されますが、育休中は給与の支払いがないため実質的な負担は生じません。
最も重要な点は、免除された期間も年金記録には「納付済み期間」として反映されることです。将来の老齢厚生年金受給額への影響はなく、年金受給額の計算上は保険料を納めたのと同じ扱いになります。
健康保険料|事業主負担分と被保険者負担分
健康保険では事業主負担分・被保険者負担分の両方が免除されます。これは厚生年金保険とは異なる重要な特徴です。免除期間中も、自分や被扶養者が医療機関を受診した際の保険給付は通常どおり受けられます。
免除額のシミュレーション例
月給30万円(標準報酬月額30万円)の場合の1か月あたりの免除額(2024年度概算)を以下に示します。
| 保険の種類 | 被保険者負担分 | 事業主負担分 | 合計(月額) |
|---|---|---|---|
| 厚生年金保険 | 約27,450円 | 約27,450円 | 約54,900円 |
| 健康保険(協会けんぽ/東京) | 約14,850円 | 約14,850円 | 約29,700円 |
| 合計 | 約42,300円 | 約42,300円 | 約84,600円 |
※ 保険料率は加入している保険組合・都道府県によって異なります。上記はあくまでも目安です。
育休が6か月続いた場合、労働者の負担だけで約25万3,800円以上の費用が免除されることになります。育休期間が長くなるほど、経済的なメリットは大きくなります。
社会保険料免除の申請手続き|ステップごとに解説
申請の流れ(全体像)
STEP 1:労働者が事業主へ育児休業取得を申し出る
↓
STEP 2:事業主が「育児休業等取得者申出書」を作成
↓
STEP 3:事業主が年金事務所(または健康保険組合)へ提出
↓
STEP 4:年金事務所が審査・免除処理を実施
↓
STEP 5:免除開始・事業主が給与から保険料を控除しない
申請の主体は労働者ではなく事業主(会社)です。労働者は育休取得を申し出た後、会社側が手続きを進めます。ただし手続き状況を確認する責任は労働者にもあります。
必要書類一覧
育休中の社会保険料免除申請に必要な書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 作成者 | 提出先 |
|---|---|---|
| 育児休業等取得者申出書(新規・延長) | 事業主 | 年金事務所・健康保険組合 |
| 育児休業取得の確認書類(育休開始日・終了予定日が分かるもの) | 事業主 | 同上 |
| (健康保険組合加入の場合)健康保険組合所定の申請書 | 事業主 | 加入の健康保険組合 |
📌 2022年10月以降の変更点: 月内14日以上または同月内に複数回取得する場合、月途中開始・終了の育休についても免除対象となるよう要件が拡充されました。短期間の育休を検討している方は必ず確認してください。
申請期限と遡及申請について
社会保険料免除の申請にあたり、以下の期限について理解することが重要です。
- 申請期限: 法令上の明確な期限はありませんが、育休開始後速やかに(翌月末日までを目安に) 申請するのが一般的です。早期の申請により、処理の確実性が高まります。
- 遡及申請: 申請が遅れた場合でも、育休期間内であれば遡って免除申請が可能です。ただし、長期間遡及すると事務処理が複雑になるため、早めの申請を強く推奨します。
- 免除期間の終了: 育休終了後は自動的に免除が終わります。事業主は育休終了時に「育児休業等終了届」を提出する必要があります。
免除される月の計算方法
免除対象となる月は以下のルールで計算します。正確な理解が納得のいく免除期間の確保につながります。
開始日の属する月 ~ 終了日の翌日の属する月の前月まで
【具体例①】4月1日~6月30日に育休取得
→ 4月・5月・6月の3か月分が免除
【具体例②】4月15日~7月14日に育休取得
→ 4月・5月・6月・7月の4か月分が免除
(開始月の4月も免除対象となる点に注意)
【具体例③】5月21日~8月20日に育休取得
→ 5月・6月・7月・8月の4か月分が免除
申請後の確認方法とよくあるトラブル
免除が適用されているかの確認方法
申請後、実際に免除が適用されているかを確認することは重要です。以下の3つの方法で確認できます。
- 給与明細を確認: 育休中に発行される給与明細(または支給額0円の明細)で、社会保険料の控除がないことを確認する
- ねんきんネット(日本年金機構): マイナンバーカードやID・パスワードでログインし、厚生年金の免除記録をオンラインで確認できます
- 会社の人事・総務担当者に確認: 申請状況・処理状況を直接問い合わせて、免除が開始されているか確認する
よくあるトラブルと対処法
育休中の社会保険料免除申請では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。以下のトラブルと対処法を参考にしてください。
| トラブル | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 育休中なのに保険料が控除されている | 事業主が申請を忘れている、または申請がまだ処理されていない | 人事担当者に申出書の提出状況を確認し、速やかな申請を依頼 |
| 遡及申請の手続きがわからない | 会社側の知識不足 | 最寄りの年金事務所に直接問い合わせ、指導を受ける |
| 健康保険組合独自の書類が必要 | 協会けんぽ以外の組合加入 | 加入組合のウェブサイトまたは窓口で必要書類を確認 |
| 育休期間の延長時に免除が切れた | 延長申請の手続き漏れ | 事業主が「延長」の申出書を改めて提出 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 国民健康保険・国民年金に加入していますが、社会保険料免除の対象になりますか?
A. なりません。本制度は厚生年金保険・健康保険(社会保険)に加入している方が対象です。国民健康保険・国民年金加入者は別制度(産前産後期間の国民年金保険料免除等)の対象になる場合があります。詳細は市町村役場の国民年金窓口にお問い合わせください。
Q2. 育休期間中に少しでも給与をもらったら免除されませんか?
A. 育休中に通常の給与支払いがある場合は対象外となりますが、賞与や一部の手当など給与の性質によって判断が異なります。詳細は年金事務所または会社の給与担当者に確認することを推奨します。
Q3. 育休を途中で切り上げて復職した場合、免除はどうなりますか?
A. 育休終了(復職)日の翌日が属する月の前月まで免除となります。事業主は速やかに終了届を提出する必要があります。復職日が決まった時点で、人事担当者に連絡してください。
Q4. パパ・ママ育休プラスで1歳2か月まで育休を取得しました。延長分も免除になりますか?
A. はい、最長2歳に達する日まで育児休業を取得している場合は、その期間も免除対象となります。延長時には改めて事業主が申出書を提出する必要があります。延長取得が決まったら、早めに会社の人事部門に申し出てください。
Q5. 申請を忘れていた場合、過去に遡って免除を受けることはできますか?
A. 可能です。育休期間内であれば遡及申請ができます。ただし、過去に納付した保険料の返金処理が必要となるため、早めに年金事務所・会社の担当部署に相談することをおすすめします。遡及期間が長いほど手続きが複雑になるため、気付いた時点での申請が重要です。
Q6. 産前産後休業中も社会保険料は免除されますか?
A. はい、産前産後休業(産前6週間・産後8週間)期間中も、同様に社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。育休とは別途申請が必要ですので、出産予定日が決まったら会社の総務部門に相談してください。
まとめ
育休中の社会保険料免除制度は、要件を満たしていれば正社員に限らず契約社員・パート・男性労働者も活用できる制度です。重要なポイントを以下に整理します。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 対象保険 | 厚生年金保険・健康保険(雇用保険は対象外) |
| 申請者 | 事業主(会社)が年金事務所等に申請 |
| 必要書類 | 育児休業等取得者申出書 + 確認書類 |
| 申請タイミング | 育休開始後、速やかに(翌月末目安) |
| 年金記録への影響 | 免除期間も納付済みとしてカウントされる |
| 遡及申請 | 育休期間内であれば可能 |
手続きは基本的に会社(事業主)が行うものですが、労働者側も制度を正しく理解し、申請漏れがないかを確認することが重要です。育休中の経済的負担を軽減し、安心して育児に専念するために、本制度を最大限に活用しましょう。
不明点があれば、最寄りの年金事務所(日本年金機構) または 加入する健康保険組合 に直接相談することをおすすめします。
参考リンク
– 日本年金機構|育児休業等を取得したとき
– 厚生労働省|育児・介護休業法について
– 全国健康保険協会(協会けんぽ)
よくある質問(FAQ)
Q. 育休中に社会保険料は本当に免除されるのですか?
A. はい。厚生年金保険と健康保険の保険料が免除されます。ただし雇用保険料は免除対象外です。免除期間も年金納付済み期間として扱われます。
Q. 契約社員やパートでも社会保険料免除の対象になりますか?
A. なります。雇用形態は問いませんが、厚生年金・健康保険加入、1年以上の継続雇用、週20時間以上の労働が要件です。
Q. 男性が育休を取得する場合、社会保険料は免除されますか?
A. はい、対象です。男性労働者も育児休業要件を満たせば、女性と同様に社会保険料が免除されます。
Q. 育休中に給与をもらっている場合は免除対象外ですか?
A. はい。通常の給与支払いを受けている場合は免除対象外です。育休手当など給付金との併給は問題ありません。
Q. 社会保険料免除の申請に必要な書類は何ですか?
A. 育児休業開始予定日が記載された書類、母子手帳や出生証明書など子どもの証明書が必要です。詳細は勤務先の人事部門にご確認ください。

