育休中に子どもが死亡した場合の給付金手続き【返納・終了の流れ】

育休中に子どもが死亡した場合の給付金手続き【返納・終了の流れ】 育児休業制度

育休中に大切なお子さんを亡くされた方へ、まず心よりお悔やみを申し上げます。

このような状況の中、「育児休業給付金はどうなるのか」「返さなければならないのか」と不安を抱えている方も少なくありません。結論から申し上げると、すでに受け取った給付金を返納する義務は原則としてありません。ただし、死亡後の未支給分については支給が終了し、ハローワークおよび会社への届出手続きが必要になります。

この記事では、育休中にお子さんが亡くなった場合の給付金の取り扱い・手続きの流れ・必要書類・法的根拠について、わかりやすく解説します。


育休中に子どもが死亡した場合、給付金はどうなるのか?

育児休業給付金は、雇用保険法に基づいて支給される給付です。育休の「対象となる児童」が死亡した場合、その時点で給付終了事由が発生し、以後の給付は受けられなくなります。

これは「受け取りすぎた分を返す」のではなく、「これ以降の支給が止まる」という性質の手続きです。多くの方が「返納義務がある」と誤解されますが、適法に受け取った過去の給付金は返納不要であることを最初にお伝えします。

「返納」と「支給終了」はどう違うのか

育児休業給付金をめぐる手続きには、「返納(返還)」と「支給終了」という2つの異なる概念があります。

区分 内容 発生するケース
返納(返還) 一度受け取った給付金を国に返す義務 不正受給・二重支給など
支給終了 以降の給付が行われなくなること 児童の死亡・復職・1歳到達など

お子さんが亡くなった場合は「支給終了」に該当します。死亡事実が発生した日以降の給付については支給されませんが、それ以前に適正に受け取った給付金を返す義務は生じません

ただし、一点注意が必要です。死亡事実の発生後に給付金が振り込まれた場合(支給スケジュールの関係で、届出前に入金されるケースがある)は、その過払い分については返還を求められる可能性があります。このため、速やかな届出が重要です。

給付終了が適用される条件(対象者チェックリスト)

以下の3つの条件をすべて満たしている方が、今回の手続きの対象です。

  • ✅ 雇用保険の被保険者であること
  • ✅ 育児休業給付金を受給中であること(または受給資格を有していること)
  • ✅ 育休取得中に対象となる児童が死亡したこと

「すでに復職していた」「育休は取得したが給付金の申請をしていなかった」などのケースは、この手続きの対象外となります。


手続きが必要な人・必要でない人の判断基準

「自分は手続きが必要なのか」を正確に判断することが、最初の重要なステップです。すべての人に手続きが発生するわけではないため、まず自身の状況を整理しましょう。

対象になる児童の範囲(嫡出子・養子・非嫡出子)

育児休業給付金の対象となる「児童」には、以下が含まれます。

対象となる児童
– 実子(嫡出子・非嫡出子を含む)
– 養子(養子縁組が成立した時点から対象)
– 特別養子縁組成立前の養子縁組を希望する者に監護されている児童(養育里親を含む特定の要件あり)

対象外となる児童
– 胎児(妊娠中の死亡、死産の場合)
– 出生直後に死亡した児童で雇用保険上の届出が未完了の場合
– 養子縁組が成立していない里子など

なお、死産(出生前の死亡)は育児休業制度上の「対象児童の死亡」には該当しません。この場合、産後休業の取り扱いは継続されますが、育児休業へ移行していた場合の手続きは別途確認が必要です。

手続きが必要なケース・不要なケースの整理

手続きが必要なケース

状況 必要な手続き
育休中・給付金受給中に対象児童が死亡 ハローワーク届出+会社への報告
育休中・給付金未申請で対象児童が死亡 会社への報告(給付金手続きは発生しない)
2人目以降の子の育休中に1人目が死亡 状況に応じて個別確認が必要

手続きが不要なケース

状況 理由
すでに復職していた 育休はすでに終了しているため
育休期間が終了していた 給付の支給対象期間外のため
胎児死亡(死産)の場合 育休開始前のため給付終了事由に該当しない

手続きの流れ:ステップごとに確認する

お子さんが亡くなった後に必要な手続きは、大きく「①会社への報告」「②ハローワークへの届出」「③給付金の調整確認」の3段階です。

会社(事業主)への報告

報告のタイミング: できる限り早期に。目安として3営業日以内の報告が推奨されます。

会社(事業主)は、労働者から報告を受けた後、ハローワークへの届出を代行する役割を担います。育児・介護休業法および雇用保険法の規定上、事業主は従業員の育休終了事由を把握し、適切に届け出る義務があります。

報告内容として伝えるべきこと
– 対象児童の死亡日
– 育児休業の終了予定日の変更
– 今後の復職予定(時期・方法)
– 関係書類(死亡診断書等)の提出意向

なお、この場面では無理に詳細を話す必要はありません。まずは「子どもが亡くなった」という事実と「育児休業の手続きについて相談したい」という意思を伝えるだけで十分です。手続きの詳細は、後日人事担当者と個別に確認できます。

ハローワークへの届出

育児休業給付金は事業主を経由してハローワークに申請されているため、給付終了の届出も事業主経由で行うのが原則です。

届出の流れ
1. 労働者(本人)が会社に死亡の事実を報告する
2. 事業主がハローワークへ「育児休業給付の終了届」を提出する
3. ハローワークが支給終了を確定する
4. 過払いがある場合は返還の通知が届く

個人でハローワークへ直接連絡することも可能ですが、雇用保険の手続きは基本的に事業主単位で管理されているため、まず会社(人事担当者)を通じて動くことが最も確実です。

給付金の調整確認

死亡事実の発生日以降に給付金が振り込まれた場合(2か月ごとの支給スケジュールの関係で発生することがあります)、その過払い分については返還請求を受ける可能性があります

ハローワークから返還通知が届いた場合は、指定された期限・方法に従って手続きを行います。なお、返還金は一括ではなく分割での対応が認められる場合もあるため、困難な場合は早めにハローワークへ相談してください。


必要書類の一覧

手続きに必要な書類は、状況によって異なりますが、一般的に以下のものが必要です。

基本的な必要書類

書類名 入手先 備考
死亡診断書(写し) 病院・医師 死亡事実の証明として最も重要
住民票(死亡記載のあるもの) 市区町村役場 死亡届提出後に取得可能
育児休業給付金支給決定通知書 手元に保管しているもの 支給状況の確認用
育児休業給付終了届(事業主が記載) ハローワーク所定様式 事業主が作成・提出

状況によって追加が必要な書類

状況 追加書類
養子縁組の場合 養子縁組成立に係る審判書・戸籍謄本
会社への正式報告用 死亡診断書の写しまたは住民票
過払い金の返還手続き ハローワークからの返還通知書・振込先口座情報

書類の取得については、死亡届を提出した市区町村役場が窓口となります。精神的・身体的に負担が大きい時期のため、家族や会社の人事担当者に代行してもらうことが可能な書類も多くあります。一人で抱え込まず、周囲に協力を求めてください。


申請期限と時効

育児休業給付金に関する手続きには、雇用保険法上の時効規定が適用されます。

給付終了届の提出期限

給付終了の届出については、法律上の厳格な「提出期限」は規定されていませんが、速やかに(なるべく死亡事実発生後2週間以内)の届出が求められます。遅延した場合、過払い金が発生するリスクが高まり、返還額が増える可能性があります。

過払い給付金の返還期限

ハローワークから返還通知が届いた場合、通知書に記載された納付期限(通常は通知後1か月以内)に従ってください。期限内に対応が難しい場合は、必ずハローワークに事前連絡し、分割納付や期限延長について相談することが重要です。

雇用保険上の時効

雇用保険法第74条に基づき、返還請求権の時効は2年間です。ただし、これは行政が返還を請求できる期間であり、早期に届け出て解決するほど、双方にとって負担が少なくなります。


育休終了後の復職手続き

お子さんが亡くなった後、育休をどうするかは非常に重要な問題です。育児・介護休業法上、対象児童が死亡した場合、育児休業は終了事由が生じたとみなされます

育休終了のタイミング

育児・介護休業法第9条の規定により、対象児童が死亡した場合、育児休業は死亡の事実が生じた日の翌日(または翌週など会社所定のルールによる)に終了します。

ただし、精神的な回復や次の行動を考えるための準備期間として、すぐに復職を強要されるものではありません。以下の制度や選択肢があります。

復職前に利用できる制度・休暇

制度・休暇名 内容 根拠
忌引休暇 子の死亡による有給特別休暇(会社規定による) 就業規則
年次有給休暇 残余の年休を使用した休暇 労働基準法第39条
傷病休暇・休職 精神的ダメージによる疾病がある場合 就業規則・医師の診断
育児休業の延長 対象外(終了事由が発生しているため) 育児・介護休業法

復職の時期について、会社側から性急に迫られたと感じた場合は、社内の相談窓口・労働基準監督署・都道府県労働局の相談窓口に状況を伝えることができます。


法的根拠の整理

この記事で解説している内容の根拠となる法律・条文を以下に整理します。

主な法的根拠一覧

法律・通知 条文・番号 内容
雇用保険法 第61条の4 育児休業給付金の支給要件
雇用保険法 第61条の7 育児休業給付金の支給終了事由
雇用保険法施行規則 第101条の11 育児休業給付の申請手続き
雇用保険法施行規則 第101条の19 育児休業給付の終了・変更届
育児・介護休業法 第2条第1号 育児休業の定義
育児・介護休業法 第9条 育児休業の終了事由
雇用保険法 第74条 返還請求権の時効(2年)

これらの法的根拠に基づき、対象児童の死亡時には給付終了事由として扱われ、適切な届出手続きが求められるわけです。

法改正の動向(令和4年・令和6年改正)

令和4年(2022年)の育児・介護休業法改正により、産後パパ育休(出生時育児休業)が創設されるなど、制度が大幅に拡充されました。また令和6年(2024年)改正では、育児休業給付金の給付率が一時的に引き上げられる特例措置も設けられています。

児童死亡時の手続きの基本的な枠組みは変わっていませんが、適用される法令の最新版をハローワークで確認することを強くお勧めします


相談窓口と支援リソース

手続きのことだけでなく、精神的なサポートも非常に大切です。一人で抱え込まず、以下の窓口に相談してください。

手続きに関する相談窓口

窓口 対応内容 問い合わせ方法
ハローワーク(公共職業安定所) 給付金手続き・届出の確認 最寄りのハローワークに来所または電話
都道府県労働局雇用環境・均等部 育休制度・労働権利に関する相談 各都道府県労働局
会社の人事担当部門 社内手続き・復職に関する相談 直属の人事担当者
社会保険労務士(社労士) 制度全般の専門的アドバイス 各都道府県社会保険労務士会

こころのサポートに関する窓口

窓口 対応内容 連絡先
よりそいホットライン 24時間・無料の電話相談 0120-279-338
こころの健康相談統一ダイヤル 精神的なサポート 0570-064-556
グリーフケア専門機関 死別に特化したカウンセリング 各地域の医療機関・NPO

手続きの全体フローのまとめ

お子さんを亡くされた後に必要な手続きを、時系列でまとめます。

【お子さんの死亡】
     ↓
【①市区町村役場に死亡届を提出】(7日以内)
     ↓
【②会社(人事担当)に報告】(できる限り早く)
     ↓
【③死亡診断書・住民票などの書類を準備】
     ↓
【④事業主がハローワークへ給付終了届を提出】
     ↓
【⑤ハローワークが支給終了を確定】
     ↓
【⑥過払い金がある場合は返還通知→返還手続き】
     ↓
【⑦復職または休暇取得について会社と調整】
     ↓
【完了】

本記事の情報が不正確である場合、またはご自身の状況が複雑である場合は、必ずハローワークまたは社会保険労務士に相談してください。正確で個別対応が必要な手続きは、専門家のサポートを受けることをお勧めします。


よくある質問

Q1. 死亡前にすでに受け取った給付金は返さなければなりませんか?

原則として返納の必要はありません。適法に受け取った給付金は返還義務の対象外です。返還が求められるのは、死亡事実の発生後に支給スケジュールの関係で振り込まれた「過払い分」のみです。

Q2. 届出が遅れた場合、ペナルティはありますか?

法律上の厳格なペナルティ規定はありませんが、届出が遅れるほど過払い金が増加し、返還額が大きくなるリスクがあります。また、不正受給と見なされる可能性もゼロではないため、できる限り速やかな届出が重要です。

Q3. 手続きはすべて自分でしなければなりませんか?

いいえ。ハローワークへの届出は事業主(会社)が代行して行います。本人は会社の人事担当者に状況を報告し、書類(死亡診断書・住民票等)を準備して提出するのが主な役割です。手続きが難しい場合は、社会保険労務士や家族に代理を依頼することもできます。

Q4. 死産(出産前の死亡)の場合も同じ手続きが必要ですか?

死産の場合は育児休業の対象外であるため、今回解説した「育児休業給付金の終了手続き」は発生しません。ただし、産前産後休業の取り扱い・出産手当金などの別の手続きが必要になる場合があります。お勤めの会社またはハローワーク・健康保険組合にご確認ください。

Q5. 育休中に双子の一人が亡くなった場合はどうなりますか?

双子など多胎の場合、一方の児童が死亡しても、もう一方の児童の育休が継続している限り、給付金の支給は継続されます。ただし、状況の変化を事業主経由でハローワークに報告し、正確な支給対象の確認を行うことが必要です。個別の状況に応じてハローワークに相談してください。

Q6. 会社が手続きをしてくれない場合はどうすればよいですか?

事業主による届出が行われない場合、本人が直接ハローワークに相談することができます。また、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談し、事業主への指導を求めることも可能です。制度上の権利を守るためにも、遠慮なく相談窓口を活用してください。


育休中にお子さんを亡くされた状況での手続きは、精神的に非常に辛い中で行わなければならないものです。しかし、手続き自体は会社・ハローワークのサポートのもとで進めることができます。一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら、一つひとつ確認して進めてください。

何より、あなた自身の心と体を大切にすることが最優先です。

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