有期雇用の育休対象判定|更新見込み基準と対象外ケース【2026年版】

有期雇用の育休対象判定|更新見込み基準と対象外ケース【2026年版】 企業の育休対応

有期雇用労働者が育児休業を取得しようとしたとき、「あなたは対象外です」と言われてトラブルになるケースが後を絶ちません。2022年の育児・介護休業法改正で対象範囲が拡大されたにもかかわらず、「更新見込み」の判断基準が企業側にも労働者側にも正確に理解されていないことが原因です。

本記事では、HR担当者・契約社員・派遣社員の方が「自分(または対象者)が育休を取れるかどうか」を正確に判定できるよう、法的根拠・具体的な判定フロー・よくあるミスを体系的に解説します。


有期雇用労働者の育休対象判定が複雑な理由

正規雇用(無期雇用)の労働者は、申し出さえすれば原則として育児休業を取得できます。一方、有期雇用労働者は「一定の要件を満たす場合のみ」対象となるため、判定作業が必要です。

複雑さの主な原因は3点あります。

第一に、法改正の経緯です。2022年10月施行の育児・介護休業法改正以前は「同一事業主に1年以上継続して雇用されていること」に加え「子が1歳6か月に達する日までに契約が満了することが明らかでないこと」の両方が要件でした。現在は「子が2歳になるまで」に延長されており、古い情報のまま運用している企業が少なくありません。

第二に、「更新見込み」の定義が法律上明文化されていないことです。「更新見込みがある」とは何を根拠に判断するのか、書面がなければ認められないのか、過去の実績だけで足りるのか——これらの問いに対して、法律は直接的な答えを示していません。厚生労働省のガイドラインの解釈が必要になります。

第三に、派遣社員の場合に「誰が」判断主体となるかが分かりにくい点です。派遣元・派遣先それぞれの契約関係が絡むため、どちらの雇用期間を基準にするか混乱が生じます。

以下では、この複雑さを整理しながら、判定の全ステップを説明します。


有期雇用労働者の育休対象となる3つの必須要件

育児・介護休業法第5条第1項・第2項に基づき、有期雇用労働者が育休を取得するには以下3要件をすべて満たす必要があります。

要件 内容 根拠条文
要件① 同一事業主に継続雇用1年以上 育介法第5条第2項
要件② 子が2歳になるまでに労働契約が満了しないこと(更新見込み) 育介法第5条第2項
要件③ 常態として継続雇用されている実績があること 厚労省ガイドライン

1つでも欠けると育休申請は認められません。それぞれの判定方法を詳しく見ていきます。

要件1「同一事業主での継続雇用1年以上」の判定方法

「継続雇用1年以上」のカウント開始日は、同一事業主との最初の雇用契約日です。途中で契約の更新があっても、空白期間(ブランク)がなければ通算できます。

ただし、以下の点に注意が必要です。

空白期間の扱い:契約と契約の間に数日の空白がある場合、原則として継続雇用が一度リセットされます。ただし、厚労省の解釈では「実態として継続的な雇用関係が認められる場合」は通算可能とされており、1か月未満の空白については個別事情を踏まえた判断が求められます。

「同一事業主」の定義:法人格が同一であれば、部署や就業場所が変わっても同一事業主とみなされます。親会社から子会社への出向・転籍は原則として「別の事業主」扱いになります。

派遣社員の場合:育休の申請先は派遣元(雇用主)です。継続雇用期間も「派遣元との雇用契約期間」を基準に計算します。同じ派遣先に長く派遣されていても、派遣元が異なれば期間は通算されません。


要件2「子が2歳になるまで契約が継続」——更新見込みの具体的基準

最も重要かつ判定が難しいのがこの要件です。法律上の文言は「労働契約が更新されないことが明らかでない」であり、「更新される見込みがゼロではない」という消極的な表現になっています。つまり、「確実に更新される」ことの証明は不要であり、「確実に更新されない」という事情がない限り、原則として対象者とみなします。

更新見込みの判定に使う3段階アプローチ

厚生労働省ガイドラインおよび行政通達(令和2年雇均発0630第1号)では、次の三段階で更新見込みを判定します。

第1段階:書面による更新予定の確認

雇用契約書や更新通知書に「次回更新予定あり」「自動更新」などの記載があれば、これが最も明確な根拠になります。

  • ✅ 契約書に「更新の可能性あり」と明記 → 更新見込みあり
  • ✅ 自動更新条項がある → 更新見込みあり
  • ❌ 契約書に「更新なし」「本契約を以て終了」と明記 → 更新見込みなし

第2段階:更新実績(慣例)の確認

書面で明確でない場合は、過去の更新実績を確認します。同一または類似の業務で複数回更新されている実績があれば、「更新見込みがある」と判断できます。

  • ✅ 過去3回以上更新されている → 更新見込みあり(慣例として認められることが多い)
  • ⚠️ 1〜2回の更新 → 個別事情を踏まえた総合判断が必要
  • ❌ 初回契約で更新実績なし + 更新予定の書面もなし → 更新見込み判断が難しい

第3段階:業務の性質・事業計画との整合性確認

契約に基づく業務が継続する見込みがあるか(プロジェクト終了予定、店舗閉鎖予定など)、会社の事業計画上で雇用が必要かを確認します。事業主が客観的・合理的な理由なく「更新しない」と主張した場合、その判断は認められないことがあります。

「子が2歳になるまで」の計算例

子が2歳になる日とは、誕生日の前日です(年齢計算に関する法律による)。

出産日 子が2歳になる日(育休終了可能期限)
2025年6月15日 2027年6月14日
2025年12月1日 2027年11月30日
2026年3月31日 2028年3月30日

現在の契約満了日がこの日よりに到来する場合、更新見込みがあるかどうかが判定のポイントになります。


要件3「継続的な雇用実績」の客観的基準

3つ目の要件は、法律の条文上は明示されていませんが、厚労省ガイドラインで「常態として継続雇用されていること」と整理されています。これは要件①と重複するように見えますが、趣旨が異なります。

要件①は期間(1年以上)を問うのに対し、この要件は雇用の実態(継続性)を問います。具体的には、短期間の雇用を繰り返しているが、その都度主たる目的が「育休取得」にあるようなケース(育休目的の雇用)を排除するための基準です。

判定のポイントは次のとおりです。

  • ✅ 業務上の必要性から継続的に雇用されてきた実績がある
  • ✅ 育休申請前から長期間同一業務に従事している
  • ❌ 育休取得直前に雇用契約を結んだ(業務実態が薄い)
  • ❌ 雇用契約の内容が実態と大きく乖離している

なお、2022年の法改正により「同一事業主に引き続き雇用された期間が1年以上」という要件は労使協定による除外対象から外れました(旧法では労使協定で「1年未満の有期雇用者を対象外にできた」が廃止)。現在は1年以上の継続雇用があれば、この要件を満たすと理解して差し支えありません。


「更新見込み」の具体的な判定フロー

ここでは、実際の判定を行う際に使えるステップバイステップのフローを示します。HR担当者が育休申請を受けたときの確認手順として活用してください。

ステップ1:継続雇用期間の確認

チェック項目:育休開始予定日時点で、同一事業主への継続雇用が1年以上あるか?

  • YES → ステップ2へ
  • NO育休対象外(要件①不満足)

ステップ2:現在の契約満了日の確認

チェック項目:現在の労働契約の満了日は子が2歳になる日より後か?

  • 後である → 育休対象(要件②クリア) → ステップ3へ
  • 前である → ステップ3(更新見込み判定)へ

ステップ3:更新見込みの3段階判定

契約満了日が子の2歳到達日より前に来る場合、以下を順番に確認します。

3-①:書面確認
雇用契約書・更新通知書に更新予定・自動更新の記載はあるか?

  • あり → 更新見込みあり → 育休対象
  • なし → 3-②へ

3-②:更新実績確認
同一事業主との契約で、これまでに複数回の更新実績があるか?

  • あり(概ね3回以上または2年以上継続) → 更新見込みあり → 育休対象
  • 実績が少ない・初回契約 → 3-③へ

3-③:業務継続性の確認
担当業務・プロジェクトの継続予定、会社の事業計画上の雇用必要性を確認。

  • 業務継続が見込まれる合理的事情あり → 更新見込みあり → 育休対象
  • 客観的に契約終了が確定している事情あり → 育休対象外

判定結果一覧(具体例)

ケース 継続雇用 契約満了日 更新見込み 判定
ケースA:3年勤務・自動更新条項あり 1年以上✅ 2歳前 書面あり✅ 育休対象
ケースB:2年勤務・更新実績3回・書面なし 1年以上✅ 2歳前 実績あり✅ 育休対象
ケースC:8か月勤務・出産予定 1年未満❌ 育休対象外
ケースD:1.5年勤務・契約書に「更新なし」明記 1年以上✅ 2歳前 書面で否定❌ 育休対象外
ケースE:1年勤務・初回契約・プロジェクト継続中 1年以上✅ 2歳前 業務継続✅ 育休対象(個別判断)
ケースF:1年以上勤務・店舗閉鎖確定 1年以上✅ 2歳前 業務終了確定❌ 育休対象外

育休対象と判定されたあとの申請手続きと給付金

対象と判定された有期雇用労働者の申請手続きを確認しましょう。

申請の流れ

①育休開始の1か月前までに、雇用主(有期雇用の場合は通常「派遣元」または「直接の雇用主」)へ育児休業申出書を提出します。

②雇用主は申出を受けた後、育休開始日・終了予定日を書面で通知します。

③育児休業給付金の申請は、雇用主(事業主)を通じてハローワークへ行います。受給には次の条件も満たす必要があります。

  • 育休開始前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること
  • 育休中の就業日数が月10日以下(または80時間以下)であること

育児休業給付金の計算方法

期間 給付率 計算式
育休開始〜180日目まで 休業前賃金の67% 月額賃金 × 67%
181日目以降〜子が2歳まで 休業前賃金の50% 月額賃金 × 50%

計算例:育休前の月収が30万円の場合

  • 開始〜180日:30万円 × 67% = 20万1,000円/月
  • 181日〜終了:30万円 × 50% = 15万円/月

なお、2025年4月以降、一定要件を満たす「育休を取得した場合の給付率引き上げ」制度(両親ともに育休取得時に28日間最大80%給付)が段階的に整備されていますので、最新の給付率は厚生労働省またはハローワークで確認してください。

必要書類(有期雇用労働者の場合)

書類 提出先 備考
育児休業申出書 雇用主 法定様式あり(任意様式も可)
母子健康手帳(出生証明)のコピー 雇用主 子の出生日確認用
雇用契約書(現行・過去分) 雇用主経由でハローワーク 更新実績の確認に使用
雇用保険被保険者証 ハローワーク 事業主が手続き代行
育児休業給付受給資格確認票 ハローワーク 初回申請時

企業(HR担当者)が陥りやすい判断ミスと防止策

ミス①:「初回契約だから対象外」と即断する

初回契約であっても、業務の継続性・会社の雇用計画を確認せずに「更新見込みなし」と判断することは誤りです。客観的な事情に基づいた判定が必要です。

防止策:申請を受けたら、まず業務継続性・事業計画を書面で確認する手順を社内ルール化する。


ミス②:契約書に「更新の可能性あり」と書いてあるのに対象外とした

「可能性あり」は「更新見込みあり」と同等に扱われます。この表記のある契約書で対象外判定をすると、違法となる可能性があります。

防止策:契約書のひな型に更新の記載がある場合、その記載が育休対象判定に影響することをHR部門が把握しておく。


ミス③:雇止め予告を「更新見込みなし」の根拠とする

育休申請後に初めて「更新しない」旨を伝えることは、育介法第10条(不利益取扱いの禁止)に抵触する可能性があります。育休申請を理由とした雇止めは法律上禁止されています。

防止策:育休申請前から雇止めの意思があった場合は、その意思決定の時期・理由を客観的に記録・保管する。


ミス④:「派遣先の契約終了=育休対象外」と判断する

派遣先との契約が終了しても、派遣元(雇用主)との雇用契約が継続・更新見込みがあれば、派遣元に育休取得の義務があります。

防止策:派遣会社のHR担当者は、派遣先契約と派遣元雇用契約を切り分けて判定する。


労働者が自身の権利を守るために知っておくべきこと

有期雇用の労働者が育休申請を検討する際に、自身でできる事前確認事項をまとめます。

確認①:雇用契約書の更新条項を確認する
「更新あり」「更新の可能性あり」「自動更新」などの記載がないか確認しましょう。記載があれば、最も強い根拠になります。

確認②:過去の更新回数と期間を整理する
「いつから働いていて、何回更新されたか」を時系列で整理し、記録しておきましょう。

確認③:育休申請は書面で行う
口頭での申請だと証拠が残りません。育児休業申出書を必ず書面で提出し、受理された証拠(受領印・メールなど)を保管してください。

確認④:不当に対象外とされた場合の相談窓口
事業主から不当に育休を拒否された場合、以下に相談できます。

  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):育介法に関する相談・指導
  • 総合労働相談コーナー:労働局・労働基準監督署に設置(無料)
  • 社会保険労務士(SR)・弁護士:法的手続きが必要な場合

よくある質問

Q1. 産休(産前産後休業)も有期雇用は対象外になりますか?

産前産後休業(産休)はすべての女性労働者が対象であり、有期・無期を問いません(労働基準法第65条)。育休のような継続雇用要件はありません。「産休はOKだが育休は要件確認が必要」という整理を覚えておきましょう。

Q2. 育休中に契約満了を迎えた場合、育休はどうなりますか?

育休取得時点で更新見込みがあると判定されていれば、育休中に契約満了日が来ても更新されることで育休は継続可能です。ただし、実際に更新が行われなかった場合(雇止め)は育休が終了します。この場合、雇用保険の失業給付への切り替えが可能です。

Q3. 有期雇用で育休を取得した場合、給付金の申請はどこに行えばよいですか?

給付金(育児休業給付金)の申請は、雇用主(事業主)がハローワークに代行して行います。労働者が直接ハローワークに行く必要は原則ありません。ただし、事業主が手続きを行わない場合は、労働者本人がハローワークに直接申請することも可能です(雇用保険法施行規則第101条の13)。

Q4. パパ育休(産後パパ育休)も有期雇用は同じ要件で申請できますか?

はい。産後パパ育休(出生時育児休業)についても、有期雇用労働者には同一の継続雇用要件・更新見込み要件が適用されます。申請期限は出生後8週間以内の休業開始2週間前までに申出が必要です。

Q5. 更新見込みがあると判断されたのに、会社が育休を拒否しました。どうすればいいですか?

育児・介護休業法第10条により、育休申請を理由とした不利益取扱い(拒否・雇止め・降格など)は違法です。まず都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に申告・相談してください。必要に応じて行政指導・勧告が行われます。悪質な場合は公表の対象にもなります。


まとめ

有期雇用労働者の育休対象判定における「更新見込み」の基準を整理すると、次の3点が核心です。

  1. 「更新されないことが明らかでない」限り対象者——つまり、明確な終了事由がない限りは対象として扱う
  2. 判定は書面→更新実績→業務継続性の順で行い、一つの根拠だけで即断しない
  3. 育休申請後の雇止め・対象外判定は違法のリスクが高い——企業側は手続きを慎重に進める

HR担当者は本記事のフローチャートを社内の判定マニュアルとして活用し、労働者は自身の契約書・更新履歴を確認した上で申請準備を進めてください。判定が難しいケースは、都道府県労働局または専門家への事前相談を強くお勧めします。

不明な点や判定に迷われた際は、厚生労働省のコールセンター(0120-688-377)やハローワークの育休相談窓口で無料相談が可能です。労働者の皆様の育休取得を応援する制度が整備されている今だからこそ、正確な理解に基づいた申請をお願いいたします。


参考法令・ガイドライン

  • 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
  • 労働基準法第65条(産前産後休業)
  • 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和6年版)
  • 厚生労働省「有期雇用労働者の育児休業に関する判断基準」(令和2年雇均発0630第1号)
  • 雇用保険法施行規則第101条の13(育児休業給付金の申請)

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