年末調整で社会保険料控除を受ける育休後の手続き【2026年版申請書類と計算方法】

年末調整で社会保険料控除を受ける育休後の手続き【2026年版申請書類と計算方法】 育児休業制度

育休から職場復帰した後の年末調整は、「何を申告すればよいのかわからない」と感じる方が多い手続きのひとつです。育児休業中は保険料が免除されていたため、通常の年末調整と異なるポイントがいくつかあります。また、育児休業給付金を受け取っていた場合でも、税務上の扱いを正しく理解しておかなければ、控除の申告漏れや不要な確定申告を行ってしまうリスクがあります。

本記事では、育休終了後の年末調整で社会保険料控除を受けるための手続きを、申請書類・計算方法・法的根拠まで含めてわかりやすく解説します。育児・介護休業法に基づく保険料免除制度と所得税法第9条に基づく非課税規定の関係を理解することで、正確な控除申告ができるようになります。


育休終了後の年末調整で知るべき基本知識

育休中の年末調整が必要な理由

育児休業中は給与の支給がないケースが一般的ですが、だからといって年末調整が不要になるわけではありません。年末調整は「1年間に支払った所得税の過不足を精算する手続き」であり、育休前の給与に対して源泉徴収された税金がある場合には、各種控除を申告することで還付を受けられる可能性があります。

特に重要なのは次のポイントです。

  • 保険料免除期間の申告:育児休業中に免除されていた厚生年金保険料・健康保険料は、「支払ったもの」として社会保険料控除の対象になります
  • 配偶者控除・扶養控除との併用:育休中に年収が下がった場合、配偶者控除や扶養控除の適用要件を満たすケースがあります
  • 生命保険料控除・住宅ローン控除:育休中でも他の控除は通常どおり申告できます

育休前に給与があり、源泉徴収票がある場合は、会社からの案内に従って年末調整の書類を提出しましょう。職場復帰後に年末調整を行う会社がほとんどですが、年内に復帰できなかった場合は翌年の確定申告が必要となることもあります。


育児休業給付金は非課税所得——税務申告が不要な理由

育児休業給付金は、所得税法第9条第1項第16号により非課税所得に指定されています。これは「国または地方公共団体から受け取る給付金のうち、所得税を課さないと規定されているもの」に該当するためです。

この非課税規定により、育児休業給付金は以下の取り扱いとなります。

項目 取り扱い
所得税の課税 非課税(課税されない)
住民税の課税 非課税(課税されない)
年末調整への反映 不要(申告書に記載しない)
確定申告の必要性 給付金だけであれば原則不要
健康保険の被扶養者判定 対象外(収入としてカウントしない)

つまり、育休中に受け取った育児休業給付金は、年末調整の申告書に記載する必要はなく、確定申告の義務も生じません。ただし、副業収入や年途中での転職がある場合など、別の理由で確定申告が必要になるケースもあるため、自身の状況を確認することが重要です。


保険料免除と保険料控除の違いを正しく理解する

「免除」と「控除」は似て非なる概念です。それぞれの意味を整理しておきましょう。

保険料免除(育休中の特典)

育児休業期間中、従業員本人の厚生年金保険料・健康保険料の支払いが免除されます。事業主(会社)負担分も同様に免除されます。これは育児・介護休業法の規定に基づく制度であり、ハローワーク・年金事務所・健康保険組合への届出によって適用されます。

社会保険料控除(年末調整の節税効果)

所得税の計算において、1年間に支払った社会保険料の全額を所得から差し引ける制度です。免除されていた期間の保険料も「支払ったもの」として扱われるため、控除の計算対象に含まれます。

【イメージ図】

育休中の保険料免除
  └─ 支払いはゼロ(本人・会社ともに)
     └─ ただし「支払ったものとみなす」
        └─ 年末調整の社会保険料控除に算入可

控除額 = 育休前に実際に支払った保険料
          + 育休中に免除されていた保険料(みなし分)
          + 育休後に実際に支払った保険料

この仕組みを理解することで、「育休中は何も払っていないから控除できない」という誤解を防ぐことができます。


育休保険料免除の対象者と対象期間の判定

厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険の免除要件

育休中の保険料免除は、すべての社会保険が同じ条件で適用されるわけではありません。保険の種類ごとに要件が異なります。

保険の種類 免除の根拠 免除対象期間 要件
厚生年金保険料 厚生年金保険法第81条の2 育児休業開始月〜終了翌月の前月 厚生年金の被保険者であること
健康保険料 健康保険法第159条 同上 健康保険の被保険者であること
雇用保険料 雇用保険法施行規則 賃金が発生した月のみ徴収 賃金が発生した場合は徴収(育休中は通常発生しないため実質免除)

正社員だけでなく、契約社員・嘱託社員・パートタイム労働者であっても、社会保険に加入していれば同様に免除対象となります。

なお、2022年10月の法改正により、産後パパ育休(出生時育児休業)についても保険料免除が適用されるようになりました。育休の種類を問わず、育児・介護休業法に基づく育児休業であれば対象です。


免除期間の具体的な起算ルールと月またぎの注意点

保険料の免除期間は、「育児休業を開始した日の属する月」から「育児休業が終了した日の翌日が属する月の前月」までです。月をまたぐ場合の計算例を示します。

例1:月の途中から育休開始・途中で終了

ケース 開始日 終了日 免除対象月
ケースA 4月10日 9月20日 4月・5月・6月・7月・8月・9月(6か月)
ケースB 4月1日 9月30日 4月・5月・6月・7月・8月・9月(6か月)

2022年10月以降の追加ルール(短期育休の免除要件)

2022年10月の改正により、月をまたがない短期の育休については免除が適用されにくくなりました。具体的には、同一月内に取得した育休が14日未満の場合、その月の保険料は免除されません。ただし、月をまたぐ場合は引き続き免除されます。


年末調整で申告する免除期間の確認方法

年末調整で正確な控除額を申告するためには、「実際に免除された期間と保険料額」を確認する必要があります。確認方法は以下のとおりです。

確認書類の入手先

確認事項 入手先 書類名
厚生年金・健康保険の免除額 勤務先の人事・総務部門 社会保険料控除証明書、給与明細
免除期間の証明 年金事務所または健康保険組合 育児休業等取得者申出書(写し)
納付済み保険料の確認 日本年金機構 ねんきん定期便、年金記録

実務上は、会社が年末調整の際に免除期間の保険料を含めて計算してくれるケースがほとんどです。しかし、自分で確認したい場合や確定申告が必要な場合には、上記の書類を収集しておきましょう。


年末調整の申請書類と記載方法

提出が必要な申告書の種類と入手方法

育休後の年末調整で提出が必要な書類は、通常の年末調整と基本的に同じです。ただし、育休固有の項目を正確に記載する必要があります。

書類名 目的 入手方法
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 基礎控除・扶養控除の申告 勤務先から配布
給与所得者の保険料控除申告書 社会保険料・生命保険料等の控除申告 勤務先から配布
給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書 基礎控除・配偶者控除の申告 勤務先から配布
住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除(該当者のみ) 税務署から送付(2年目以降)

社会保険料控除申告書の具体的な記載方法

「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」欄には、以下の保険料を合算して記載します。

記載すべき保険料の内訳

  1. 育休前に実際に支払った保険料(給与明細の社会保険料欄を参照)
  2. 育休中に免除されていた保険料(会社が計算した金額を確認)
  3. 育休後に実際に支払った保険料(職場復帰後の給与明細を参照)
  4. 国民年金保険料(育休中に夫または妻の扶養を外れ、国民年金に切り替えた場合)

記載例

【社会保険料控除 記載例】

社会保険の種類:健康保険・厚生年金
保険料支払先の名称:〇〇健康保険組合・日本年金機構
支払った保険料の額:
  1月〜3月(育休前):  90,000円(実払い)
  4月〜9月(育休中): 180,000円(免除期間分)
  10月〜12月(育休後): 90,000円(実払い)
  合計:360,000円 ← この金額を申告書に記載

育休による年収減少と配偶者控除・扶養控除への影響

育休取得により年収が大幅に下がった場合、配偶者(特別)控除の適用範囲が変わる可能性があります。2026年現在の控除額の目安は以下のとおりです。

配偶者控除(本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合)

配偶者の合計所得金額 配偶者控除額
48万円以下(年収103万円以下) 38万円
48万円超〜133万円以下 配偶者特別控除として段階的に控除

育休中に給与がゼロで、育児休業給付金のみを受け取っていた場合、給付金は非課税所得であるため合計所得金額には算入されません。その年の給与収入が103万円以下であれば、配偶者控除の対象となる可能性があります。

配偶者側(夫または妻)の年末調整でも、この変化を反映させることを忘れないようにしましょう。


社会保険料控除額の計算方法と還付金の目安

控除額の計算ステップ

育休後の年末調整で受けられる社会保険料控除額を計算するには、以下のステップを踏みます。

Step 1. 各月の保険料額を確認する

育休前後の給与明細から、毎月の健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を確認します。標準報酬月額が変わる場合は、変動月の明細も確認しておきましょう。

Step 2. 免除期間の保険料額を会社に確認する

育休中の免除期間に「支払ったとみなされる保険料額」を、会社の人事・総務部門に確認します。通常は会社が年末調整書類に組み込んでくれますが、自己確認する場合は以下の方法で算出します。

免除期間の保険料額(月額) = 標準報酬月額 × 保険料率

【例:標準報酬月額30万円、協会けんぽ(東京)の場合の目安】
  健康保険料(本人負担分):約14,805円/月
  厚生年金保険料(本人負担分):約27,450円/月
  合計:約42,255円/月

  ※6か月間免除の場合:42,255円 × 6か月 = 約253,530円

保険料率は毎年4月に改正されるため、免除期間をまたぐ場合は月ごとに異なる料率が適用されることに注意してください。

Step 3. 年間合計額を算出して申告書に記載する

Step 1とStep 2の合計額が、申告書に記載する社会保険料控除額となります。


還付金の概算シミュレーション

育休取得によって年間の給与所得が大きく減少した場合、所得税・住民税の還付が見込まれます。

シミュレーション例

条件 金額
育休前の月額給与 30万円
育休期間 4月〜9月(6か月)
育休前後の給与収入合計 30万円 × 6か月 = 180万円
社会保険料控除額(合計) 約510,000円
基礎控除 480,000円
給与所得控除 540,000円(年収180万円の場合)
課税所得の概算 180万円 – 54万円 – 51万円 – 48万円 = 約27万円
所得税額(5%) 約13,500円

育休前の源泉徴収税額がこの所得税額を上回っていれば、その差額が還付されます。具体的な金額は個人の状況によって大きく異なりますので、会社の給与担当者または税理士に相談することをおすすめします。


確定申告が必要になるケースと注意点

年末調整だけでは処理できないケース

育休後の年末調整で対応できない場合、翌年3月15日までに確定申告が必要となることがあります。主なケースを確認しましょう。

ケース 理由 対応
年の途中で転職・退職した場合 前職の源泉徴収票を現職で処理できない可能性 前職の源泉徴収票を入手して確定申告
年内に職場復帰できなかった場合 年末調整を行う会社がない 翌年に確定申告
副業収入が20万円超の場合 給与以外の所得が発生 確定申告が必要
住宅ローン控除の初年度 年末調整では処理できない 確定申告が必要
医療費控除を申告したい場合 年末調整では申告不可 確定申告で申告

育休中に退職した場合の特別な手続き

育休中に退職した場合は、在職中に受け取った給与の源泉徴収票を会社から受け取り、翌年に自分で確定申告を行う必要があります。この場合、育児休業給付金は非課税のため申告不要ですが、退職後に国民健康保険・国民年金に切り替えた場合は、その保険料を社会保険料控除として申告することができます。

国民年金保険料の控除証明書は、毎年10〜11月頃に日本年金機構から郵送されます。確定申告の際は必ずこの証明書を添付してください。また、確定申告はe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用することで、自宅からオンラインで手続きが可能です。


職場復帰後に人事部門に確認すべきチェックリスト

育休から復帰した後、年末調整をスムーズに進めるために確認しておくべき事項をまとめます。

  • [ ] 育休中の保険料免除額を人事・総務に確認した
  • [ ] 育休前・育休後の給与明細をすべて保管している
  • [ ] 育児休業給付金の支給明細書を保管している(非課税の確認用)
  • [ ] 配偶者の収入変化に基づく扶養控除の変更を確認した
  • [ ] 生命保険料控除証明書を受け取った
  • [ ] 住宅ローン控除がある場合は残高証明書を準備した
  • [ ] 国民年金保険料を支払った期間があれば控除証明書を保管している
  • [ ] 年末調整の提出期限(会社が定める日)を確認した

よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に保険料が免除されていた場合、社会保険料控除額はゼロになりますか?

いいえ、ゼロにはなりません。育休中に免除された保険料も「支払ったもの」とみなされるため、年末調整の社会保険料控除の計算対象に含まれます。実際の控除額は、育休前・育休中(みなし分)・育休後の保険料の合計額となります。これにより、育休を取得した方でも適切な税額控除を受けることができます。

Q2. 育児休業給付金を受け取っていた場合、確定申告は必要ですか?

育児休業給付金は所得税法第9条第1項第16号により非課税所得に指定されているため、給付金のみであれば確定申告は不要です。ただし、同年中に副業収入や医療費控除の申告がある場合などは、別の理由で確定申告が必要になることがあります。給付金に関する書類は念のため保管しておきましょう。

Q3. 育休中に扶養に入った場合、年末調整にはどう影響しますか?

育休中に年収が一定額以下(給与収入103万円以下)になった場合、配偶者の扶養に入ることができ、配偶者控除が適用される可能性があります。配偶者側(夫または妻)の年末調整でも、申告書の内容を変更する必要があります。育児休業給付金は非課税所得のため、収入金額には含まれません。

Q4. 育休後の年末調整は、復帰した年と翌年どちらで処理しますか?

原則として、育休を取得した年の年末調整で処理します。例えば2025年4月に育休を開始し、2025年10月に職場復帰した場合は、2025年12月の年末調整で1年分を精算します。ただし年内に復帰できなかった場合は、翌年の確定申告が必要です。

Q5. 短期育休(2週間未満)でも保険料免除の対象になりますか?

2022年10月以降は、同一月内に取得した育休が14日未満の場合、その月の保険料は免除されません。ただし、月をまたぐ形で育休を取得した場合(例:月末から月初にかけて)は、引き続き免除対象となる場合があります。詳細は会社の担当者または年金事務所に確認してください。

Q6. 配偶者が育休を取得した場合、自分の年末調整に何か変更はありますか?

配偶者の年収が103万円以下(合計所得金額48万円以下)になる場合、配偶者控除の適用対象となる可能性があります。育児休業給付金は非課税所得のため、配偶者の収入計算には含めません。配偶者の給与収入のみで判定するため、会社の年末調整書類を更新する必要があります。


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まとめ

育休終了後の年末調整で社会保険料控除を受けるために、特に押さえておきたいポイントを整理します。

  1. 育休中の保険料免除分も控除対象:免除されていた期間の保険料も「支払ったもの」として申告できる
  2. 育児休業給付金は非課税:年末調整・確定申告での申告は不要
  3. 配偶者控除の見直し:育休による年収減少で配偶者控除が適用されるケースがある
  4. 会社への確認が最優先:免除期間の保険料額は会社が把握しているため、早めに人事部門に確認する
  5. 年内復帰できない場合は確定申告:翌年3月15日が申告期限

育休に関する税務手続きは、法改正によって変更されることがあります。最新情報は国税庁のウェブサイト(www.nta.go.jp)や日本年金機構(www.nenkin.go.jp)、ハローワーク(www.hellowork.mhlw.go.jp)で確認するとともに、不明な点は会社の担当者や税理士・社会保険労務士に相談することをおすすめします。


本記事は2026年版の制度に基づいて執筆しています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報は各官公庁の公式情報をご確認ください。

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