育休給付金は賞与で減額される?報告義務と手続きを解説

育休給付金は賞与で減額される?報告義務と手続きを解説 育休給付金

育休中に会社からボーナスや賞与が振り込まれた——そのとき、あなたは何をすべきか正確に把握できていますか?

育児休業給付金(育休給付金)の受給中に賞与を受け取った場合、ハローワークへの報告義務が発生し、受け取った金額によっては給付金が減額または不支給になる可能性があります。「知らなかった」「後で気づいた」では通用しない法的義務であるため、受給中の方はもちろん、育休取得を検討している方も、この仕組みを事前に理解しておくことが重要です。

本記事では、賞与と育休給付金の関係性・報告義務の法的根拠・ハローワークへの具体的な申告手順・減額計算の方法まで、実務に直結する情報をわかりやすく解説します。


育休給付金の受給中に賞与が支給されると何が起きるか

育休給付金は、育児休業期間中に収入が途絶えた労働者の生活を支えるための給付です。しかし制度上、育休中であっても企業から賃金(給与・賞与を含む)を受け取った場合、その金額に応じて給付金が調整される「給付調整」という仕組みが機能します。

まず大前提として、育休給付金は「会社から賃金を受け取っていない(または一定額以下の)期間」に対して支給されるものです。賞与はまとまった金額が一時に支払われるため、受け取った月の給付金額に大きく影響します。育休中だからといって無条件に満額支給されるわけではない点を、最初に押さえておきましょう。

賞与が「賃金」に該当するとはどういう意味か

雇用保険法において、給付金の調整対象となる「賃金」は給与(月例賃金)だけに限りません。賞与・ボーナス・決算手当・臨時報酬など、労働の対償として企業から支払われる金銭はすべて「賃金」として扱われます

雇用保険法第4条第1項では、賃金を「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と広く定義しています。賞与が「特別な報酬だから関係ない」「育休中だから対象外のはず」という理解は誤りです。

支給の名目・支払いタイミング・金額の多寡にかかわらず、会社から受け取ったすべての金銭報酬が調整対象になり得ます。パート・アルバイト・正社員・管理職といった雇用形態や地位を問わず、育休給付金を受給しているすべての労働者が報告義務の対象となります。

給付調整の仕組みと減額・不支給になるケース

育休給付金の給付調整は、「育休前賃金日額 × 支給日数」で算出される基準額(休業開始時賃金日額)に対して、育休中に受け取った賃金がどの割合を占めるかによって決まります。

具体的には、以下の「賃金80%ルール」を基準に段階的に調整されます。

賃金80%ルールとは

育休中の賃金(賞与含む)の水準 給付金への影響
休業開始時賃金月額の13%以下 給付金は全額支給(変動なし)
休業開始時賃金月額の13%超〜80%未満 給付金が一部減額(賃金と給付金の合計が80%水準になるよう調整)
休業開始時賃金月額の80%以上 給付金は全額不支給(その月は給付ゼロ)

賞与は通常の月例賃金と異なり、一時に大きな金額が支払われます。そのため、賞与が支給された月は一時的に収入が「80%ライン」を超えてしまい、その支給月の育休給付金が全額不支給になるケースが少なくありません。

具体的な計算例

たとえば、育休開始時の賃金月額が30万円の方が、育休中に賞与として18万円を受け取った場合を考えます。

  • 休業開始時賃金月額:30万円
  • 受け取った賞与:18万円
  • 賃金の割合:18万円 ÷ 30万円 = 60%(13%超〜80%未満)

この場合、給付金の一部が減額されます。育休給付金の基本給付率は67%(育休開始から180日目まで)または50%(181日目以降)ですが、賃金との合計が80%を超えないよう、給付額が差し引かれて支給されます。

一方、賞与が30万円以上(賃金月額の100%超)であれば、その月の育休給付金は不支給となります。翌月の給付再開は自動で行われますが、報告を怠ると後に返還を求められる場合があります。


報告義務の法的根拠と対象者

「賞与をもらったことをわざわざ申告するの?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。しかしこれは任意の行為ではなく、法律で定められた義務です。

法的根拠

育休給付金の受給中における賞与の申告義務は、以下の法令・通達を根拠としています。

  • 雇用保険法 第15条(給付の制限):偽りの申告や不正受給に対する給付制限・返還命令の根拠規定
  • 雇用保険法 第16条(不正受給の返還命令):不正受給が判明した場合、受給額の最大3倍の返還を命じることができる
  • 育児休業給付の支給に関する細則:支給額調整の具体的な計算方法・報告義務の詳細を定める
  • 厚生労働省告示(1575号等):賃金との調整ルールを告示

特に注意したいのが、不正受給と判断された場合には受給額の最大3倍相当を返還する義務が発生する点です。「知らなかった」「申告を忘れた」では法的責任を免れません。意図的な不申告でなくても、遅延申告・漏れが生じた場合には是正手続きが必要になります。

育休給付金は国の雇用保険財源から支出されるものです。適正な給付のために、受給者には誠実な申告が求められています。

報告が必要になる具体的な条件チェックリスト

以下の項目を確認し、自分のケースに当てはまるかチェックしましょう。

育休給付金の基本受給要件(前提確認)

確認項目 条件
雇用保険の加入期間 育休開始前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間がある
就業実績 育休開始前12ヶ月に80日以上就業している
育休の対象 満1歳(延長の場合は最大2歳)未満の子を養育している
育休中の就業状況 月10日以下(または月80時間以下)の就業にとどまっている

賞与受領時に報告義務が生じる条件

確認項目 該当する場合
育休給付金を受給中である ✅ 報告義務あり
育休中に企業から賞与・ボーナスを受け取った ✅ 報告義務あり
受け取った金額が「賃金の対償」である ✅ 報告義務あり
受け取った金額が1円でも発生した ✅ 少額でも申告が必要

上記のいずれかに該当する場合、受け取った賞与の金額・支給日をハローワークに申告する義務があります。「少額だから大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。たとえ1万円の賞与であっても、申告漏れは不正受給のリスクにつながります。


賞与を受け取ったときのハローワークへの報告手順

実際に賞与を受け取ったとき、どのような手順でハローワークに申告すればよいのでしょうか。報告のルートは主に2パターンあります。

【賞与支給の流れと申告フロー】

① 企業から被保険者へ賞与が支給される
        ↓
② 被保険者が賞与の金額・支給日を確認する
        ↓
③ 申告ルートを選択(パターンA または パターンB)
        ↓
④ ハローワークへ賞与の支給実績を報告・申告する
        ↓
⑤ ハローワークが給付金を再計算・調整する
        ↓
⑥ 減額または不支給の決定通知が届く(場合によって)
        ↓
⑦ 翌月以降の給付は通常ベースに戻る

定期的な育休給付状況報告で申告する場合

育休給付金の受給中は、ハローワークへの定期的な状況報告が求められています。賞与を受け取った場合は、この定期報告のタイミングで申告するのが基本的なルートです。

提出書類

  • 「育児休業給付受給資格確認票・(変更)届」 または
  • 「育児休業給付金支給申請書」(支給単位期間ごとに提出)

支給申請書には賃金(賞与を含む)の支払い実績を記入する欄があります。賞与を受け取った月が含まれる支給単位期間(通常2ヶ月ごと)の申請時に、正確な金額を記入します。

提出先と提出期限

  • 提出先:居住地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)
  • 提出期限:支給単位期間終了後、指定された申請期限内(通常は期間終了後2ヶ月以内)

申請書に賞与支給額・支給日を記入することで、ハローワーク側が自動的に給付調整の計算を行います。申請者が自ら計算する必要はなく、正確な金額を漏れなく記入することが最重要です。

実務上のポイント

  • 賞与支給額は税引き前(総支給額)で記入する
  • 支給日(振込日)ではなく、賞与の「支給対象日」を確認して記入する
  • 給与明細や賞与明細を手元に保管しておく
  • 人事担当者から支給証明を受けておくとスムーズ

育休給付金支給申請時に遡及申告する場合

育休給付金の支給申請は通常、育休開始から一定期間ごとにまとめて申請します(初回申請はハローワークの指定日から)。賞与を受け取った時期がすでに過ぎており、次回の申請時にまとめて申告するパターンも実務上あります。

提出書類

  • 「育児休業給付金支給申請書」(対象期間分)
  • 賞与支給を証明する書類(賞与明細・給与明細のコピーなど)

提出先と提出期限

  • 提出先:居住地を管轄するハローワーク
  • 提出期限:育休給付の支給対象期間終了後2ヶ月以内

賞与が支給された期間を含む申請書に、正確な賞与額を記載します。申請書の「賃金支払い欄」に月例賃金とは別に賞与として明記することが重要です。

注意事項

遡及申告の場合、すでに給付金を受け取っている場合は差額の返還が発生する可能性があります。返還が必要な場合は、ハローワークから通知が届き、指定口座への返還または次回給付からの相殺によって精算されます。申告が遅れるほど返還額が大きくなるリスクがあるため、賞与を受け取ったら速やかに申告することを強くお勧めします


申告に必要な書類と準備のポイント

賞与の申告をスムーズに行うために、事前に準備しておくべき書類を整理します。

必要書類一覧

書類名 入手先 用途
育児休業給付金支給申請書 ハローワーク・会社の人事担当 申請の基本書類
賞与明細書(コピー) 勤務先 賞与額・支給日の証明
母子手帳(写し) 手元に保管 子の生年月日確認
育児休業取得証明書 勤務先 休業期間の証明
マイナンバーカードまたは通知カード 手元に保管 本人確認書類

申請書類勤務先の人事担当者を通じて提出するケース(事業主経由) と、本人がハローワークに直接持参するケースの2通りがあります。どちらのルートを取るかは勤務先のルールに従いましょう。

申請書の記入時の注意点

  1. 賞与の金額は税引き前(総支給額)で記入すること:社会保険料や所得税を引いた後の手取り額ではなく、明細書上の「総支給額」を使用します。
  2. 賞与と月例賃金は明確に区分して記入:同じ「賃金」の欄でも、月例賃金と賞与を混同しないよう分けて記載します。
  3. 支給期間の認定をハローワークに確認:賞与が複数月分にわたる場合(たとえば「過去6ヶ月分の業績ボーナス」など)、どの月の賃金として扱うかはハローワークに確認するのが確実です。

減額計算の具体的な方法

賞与を受け取った月の育休給付金がどのくらい減額されるか、自分で概算を確認したい場合には以下の計算式を参考にしてください。

計算の基準となる「休業開始時賃金日額」

育休給付金の計算の基準となるのは、「休業開始時賃金日額」です。これは育休開始前6ヶ月の賃金合計を180日で割った金額で、育休開始時にハローワークが算定します。

休業開始時賃金日額 = 育休前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180日

給付金の基本支給額

育休給付金(基本額) = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
  • 給付率:育休開始から180日目まで → 67%
  • 給付率:181日目以降 → 50%

賞与受領時の調整計算

賞与を受け取った月の支給額は以下の手順で計算されます。

【ステップ1】賃金月額を算出する
 賃金月額 = 賞与額(その月の受取額) ÷ 支給日数 × 30日

【ステップ2】休業開始時賃金月額に対する割合を確認する
 賃金割合 = 賃金月額 ÷ 休業開始時賃金月額 × 100

【ステップ3】割合に応じて給付金を調整する
 ・13%以下 → 満額支給
 ・13%超〜80%未満 → 80%との差額を給付
 ・80%以上 → 不支給(0円)

具体例で確認する

  • 休業開始時賃金月額:30万円(日額:10,000円)
  • 育休開始から100日目(給付率67%)
  • 受け取った賞与:20万円
賃金割合 = 20万円 ÷ 30万円 = 約66.7%(13%超〜80%未満)

本来の給付金 = 10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円
調整後の給付金 = (30万円 × 80%) - 20万円 = 240,000円 - 200,000円 = 40,000円

この例では、本来20万1,000円受け取れるはずの給付金が、賞与20万円の受領によって4万円まで減額されることになります。賞与が大きければ大きいほど、その月の育休給付金への影響は顕著です。


申告を怠った場合のリスクと対処法

申告漏れが発覚した場合

ハローワークは社会保険や企業の給与情報との照合・調査を定期的に実施しています。申告漏れや過少申告が発覚した場合、以下のペナルティが課されます。

リスク内容 詳細
過払い給付金の返還 本来支給されるべき額を超えて受け取った金額を全額返還
延滞金の発生 返還が遅れた場合、延滞金が加算される場合がある
不正受給認定 悪質と判断された場合、受給額の最大3倍相当の返還命令
今後の給付停止 不正受給が認定されると、その後の給付が停止される場合がある

申告漏れに気づいたときの対処法

もし過去に申告漏れがあったことに気づいた場合は、自発的にハローワークへ相談することが最善策です。自己申告によって是正した場合は、不正受給として厳しく取り扱われるリスクが低減されます。

  1. 管轄のハローワークに電話または来所で事情を説明する
  2. 未申告の賞与額・支給日・受取額を正直に伝える
  3. ハローワークの指示に従い、修正申告書類を提出する
  4. 返還が必要な場合は、指定された方法で精算する

育休給付金と賞与に関するよくある疑問

育休給付金と賞与の関係については、多くの方が疑問を抱えています。制度を正確に理解するうえで参考になるよう、代表的なQ&Aをまとめました。

Q1. 育休中でも賞与を受け取ること自体は問題ないですか?

育休中に賞与を受け取ること自体は法律上禁止されていません。賞与を支給するかどうかは企業が就業規則に基づいて決定することであり、育休取得を理由に賞与をゼロにすることは不利益取り扱いとして問題になる場合があります。ただし、受け取った賞与は育休給付金の調整対象となるため、ハローワークへの申告は必須です。

Q2. 賞与が少額(1〜2万円)でも申告が必要ですか?

はい、金額にかかわらず申告が必要です。少額であれば給付金への影響は小さいですが、申告義務は金額の多寡によって変わりません。未申告は申告漏れとみなされるリスクがあるため、必ず申告してください。

Q3. 賞与を受け取った月は翌月以降も給付金が減額され続けますか?

いいえ、減額の影響は賞与が支給された月(または支給対象の支給単位期間)のみです。賞与がない通常の月は、通常の給付額に戻ります。

Q4. 会社が勝手に申告してくれるのでは?

原則として、申告の義務は被保険者本人(労働者)にあります。勤務先の人事担当者が申請書類の提出を代行するケースはありますが、記入内容の正確性については本人に責任があります。自分の賞与額を正確に把握し、申請書への記入を確認するようにしましょう。

Q5. 社会保険料は育休中の賞与にもかかりますか?

育児休業期間中は、社会保険料(健康保険・厚生年金)の被保険者負担分・事業主負担分がともに免除されます(健康保険法第159条の3・厚生年金保険法第81条の2の2)。ただし、育休中に賞与を受け取った場合の雇用保険料は免除の対象外となり、原則として徴収されます。社会保険料の免除と雇用保険料の扱いは別制度であるため、混同しないよう注意が必要です。

Q6. 育休給付金受給中に賞与が支給されたことで、育休延長に影響はありますか?

育休の延長(子が1歳から最大2歳まで)の可否は、保育所の入所不承諾など育休延長の要件を満たすかどうかによって判断されます。賞与の受領それ自体が育休延長の可否に直接影響することはありません。ただし、育休中の就業日数(月10日超・月80時間超)の基準を超えた場合は給付金の不支給要件に該当するため、その点は別途注意が必要です。


まとめ:育休中の賞与は必ずハローワークに申告する

育休給付金の受給中に賞与を受け取った場合のポイントを整理します。

確認事項 内容
申告義務の有無 あり(金額・勤続年数・雇用形態に関係なく全員が対象)
法的根拠 雇用保険法第15条・第16条・育児休業給付の支給に関する細則
申告のタイミング 育休給付金支給申請時(支給単位期間ごと)
提出書類 育児休業給付金支給申請書・賞与明細書(コピー)等
未申告のリスク 過払い返還・延滞金・最大3倍の返還命令・給付停止
申告漏れへの対処 自発的にハローワークへ相談・修正申告

育休中の生活設計を安心して進めるためにも、受け取った賞与は速やかにハローワークへ報告することが最重要です。申告に不安がある場合は、管轄のハローワークに事前に相談することをお勧めします。制度の詳細や個別の計算については、厚生労働省の公式情報や社会保険労務士への相談も積極的に活用してください。


本記事の内容は執筆時点の法令・告示に基づいており、制度改正により内容が変更される場合があります。最新情報は厚生労働省またはハローワークにてご確認ください。

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