育休給付金が無給でも受給できる?賃金0円の判定と申請方法

育休給付金が無給でも受給できる?賃金0円の判定と申請方法 育休給付金

育休中に給与が出ない場合、「そもそも給付金ももらえないのでは?」と不安に思う方は少なくありません。結論からいえば、育休給付金は賃金が0円の無給休業でも受給できます。ただし、まったく受け取れないケースも存在します。それが「計算不可」という状態です。

本記事では、賃金月額が0円になる場合の給付可否判定を中心に、申請手続き・必要書類・給付金計算の仕組みまでわかりやすく解説します。企業の人事担当者の方にも実務で役立つ内容を盛り込んでいますので、ぜひ最後までお読みください。


育休給付金とは?無給休業との関係を基本から理解する

育休給付金の法的根拠(雇用保険法第61条の4)

育児休業給付金(以下、育休給付金)は、雇用保険法第61条の4に基づいて支給される給付金です。育児休業期間中に被保険者の生活を安定させることを目的としており、雇用保険に加入している労働者が対象となります。

支給の条件として、同法は「育児休業をしている間において、その被保険者が当該育児休業をしている事業主に雇用されていること」を基本要件としています。つまり、育休中に在職している状態であれば、賃金の有無に関係なく給付の対象になり得るのです。

また、給付額の計算方法は雇用保険法施行規則第97条・第98条に詳しく規定されており、賃金月額をもとに給付率(原則67%、育休開始181日目以降は50%)を乗じて算出する仕組みになっています。

主な法的根拠まとめ
– 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付金の支給要件)
– 雇用保険法施行規則 第97条(賃金月額の算定方法)
– 雇用保険法施行規則 第98条(給付額の計算・減額基準)


「無給=給付なし」は誤解!制度設計の考え方

「無給なら給付も出ないのでは?」という誤解が広く見られますが、これは制度の目的を逆に理解してしまった誤解です。

育休給付金はもともと、「育休中に賃金が得られない期間をサポートする」ために設計されています。つまり、無給であることこそが、給付の前提となっているのです。

具体的には次のような設計になっています。

育休中の賃金状況 給付金の扱い
賃金なし(完全無給) 給付金を全額受給
賃金あり(給付金の30%未満) 給付金を全額受給
賃金あり(給付金の30〜80%) 給付金を一部減額して受給
賃金あり(給付金の80%超) 給付金は不支給

このように、無給であれば給付金を満額受け取れます。逆に賃金が多く出ている場合は減額・不支給になることもあります。

「無給だから給付がもらえない」ではなく、「無給だからこそ給付を全額受け取れる」というのが正しい理解です。


賃金月額が0円でも育休給付金を受け取れる3つのケース

育休給付金において「賃金月額が0円」になる状況はいくつかのパターンに分かれます。ここでは、給付を受けられる代表的な3つのケースを解説します。

ケース①:育休中に一切の賃金を受け取らない「完全無給休業」

最も多いのが、育休期間中に会社から一切の賃金が支払われないケースです。多くの民間企業では、育休中は賃金・給与の支払いが停止されます(ノーワーク・ノーペイの原則)。

このケースでは、育休開始日前2年間の賃金実績をもとに「賃金月額」を算出し、その賃金月額に給付率を掛けて給付金の額が決まります。育休中に新たな賃金がゼロであっても、育休前の賃金実績が存在すれば問題なく給付金が計算・支給されます。

計算例(完全無給のケース)

  • 育休開始前6ヶ月の賃金合計:1,800,000円
  • 賃金日額:1,800,000円 ÷ 180日 = 10,000円
  • 賃金月額:10,000円 × 30日 = 300,000円
  • 給付金(育休開始〜180日):300,000円 × 67% = 201,000円/月
  • 給付金(育休181日目以降):300,000円 × 50% = 150,000円/月

※賃金月額には上限・下限があります(2025年時点:上限約481,800円、下限約80,430円)


ケース②:育休月の賃金実績がゼロ円になる場合

月の途中から育休が始まった場合など、育休月における実際の賃金支払額がゼロ円になるケースがあります。たとえば、月給制の会社で月初1日から育休に入った場合、その月の給与支払いが0円となることがあります。

この場合も、給付額の計算は育休開始前の賃金実績をもとに行われるため、その月の賃金がゼロであること自体は給付可否に影響しません

ただし、賃金台帳上の記録が「0円」であっても、給付要件確認票の記載が適切に行われている必要があります。記載漏れや誤記があると審査に時間がかかるため、人事担当者は正確な記入を心がけましょう。


ケース③:賃金月額が給付金の支給額を下回る場合

育休中に一部の賃金が支払われていても、その金額が育休給付金の支給額を下回る場合は、給付金が支給されます。

具体的には、育休中に支払われた賃金と育休給付金の合計が、休業前賃金月額の80%を超えない範囲であれば、給付金が支給されます。

賃金と給付金の関係(施行規則第98条)

育休中の賃金割合(休業前月額比) 給付金の支給
30%以下 給付金を全額支給(減額なし)
30%超〜80%以下 給付金を減額して支給
80%超 給付金は不支給

たとえば、育休前の賃金月額が30万円の方が、育休中に手当として5万円(16.7%)を受け取っている場合、30%以下のため給付金は全額支給されます。


「計算不可」は要注意!給付できないケースと理由

無給でも受給できる一方で、「賃金月額が計算不可」と判定された場合は給付ができません。これは育休給付金の申請において特に重要なポイントです。

「計算不可」とはどのような状態か

「計算不可」とは、育休給付金の算定に必要な賃金データが揃わない状態を指します。給付金の額を計算するためには、原則として育休開始日前2年間のうち「賃金支払基礎日数が11日以上ある月」が12ヶ月以上必要です。

この12ヶ月分の実績が確認できない場合、賃金月額の算定自体が不可能となり、給付金の計算ができなくなります。

「計算不可」になりやすい主なケース

  • 入社してまもなく(雇用保険加入から12ヶ月未満で育休に入った)
  • 傷病・休職などで長期にわたり賃金支払基礎日数が11日を下回っていた月が多い
  • 育休開始前2年間の賃金台帳や出勤簿が保存されておらず、記録が確認できない
  • 育休開始日に遡ってみると、被保険者期間の要件(12ヶ月以上)を満たしていない

給付できないその他のケース

「計算不可」以外にも、給付を受けられないケースがあります。

育休中に就労・出勤している場合

育休中に就労した場合、就労日数が月10日超(または就労時間が80時間超)になると支給が停止されます。育休の定義に照らして「育休を取得している状態」でないと判断されるためです。

なお、10日以内の就労であっても、賃金が支払われていれば前述の減額・不支給のルールが適用されます。

被保険者資格がない・喪失している場合

育休中に雇用保険の被保険者資格が喪失した場合(会社都合・自己都合を問わず)、以後の給付は受けられません。


申請手続きの流れと必要書類を確認しよう

申請の流れ(企業・従業員の役割分担)

育休給付金の申請は、原則として事業主(企業)がハローワークに対して行います。従業員が直接ハローワークに申請することも可能ですが、実務上は企業の人事担当者が手続きを進めるのが一般的です。

【STEP 1】従業員が育休取得の意思表示・申請書を会社に提出
    ↓(育休開始前)
【STEP 2】会社が育休開始日・終了予定日を確認し書類を準備
    ↓(育休開始後、原則1〜2ヶ月以内)
【STEP 3】ハローワークへ「育児休業給付受給資格確認票・初回支給申請書」を提出
    ↓(審査:約2〜4週間)
【STEP 4】支給決定通知が届き、指定口座へ振込
    ↓(以後2ヶ月ごと)
【STEP 5】支給申請書を定期的に提出し、引き続き受給

最初の申請は、育休を開始した日から4ヶ月以内に行う必要があります(原則として育休開始から2ヶ月後の月末まで)。遅延すると給付が受けられなくなる場合もあるため、早めの対応が重要です。


必要書類一覧

申請に必要な書類は、企業側と従業員側に分かれます。

企業側が用意・作成する書類

書類名 目的 注意点
育児休業給付受給資格確認票・初回支給申請書 受給資格の確認と初回申請 賃金月額の正確な記入が必須
育児休業給付金支給申請書 2回目以降の定期申請 2ヶ月ごとに提出
賃金台帳(直近2年分) 賃金実績・賃金月額の確認 11日以上の月を確認する
出勤簿または労働日数確認書 労働日数の確認 育休中の就労がないか確認
雇用保険被保険者台帳 被保険者期間の確認 12ヶ月以上の要件を確認

従業員が用意する書類

書類名 目的
雇用保険被保険者証 被保険者番号の確認
母子健康手帳のコピー(出生日ページ) 子どもの生年月日・育休取得資格の確認
育休取得申出書(会社への届出) 育休の意思表示
振込先口座情報(通帳コピーなど) 給付金の振込先指定
マイナンバー関連書類(本人確認書類) 本人確認・マイナンバー提出

賃金月額0円・無給の場合の書類作成上の注意点

賃金が0円になる場合、賃金台帳の記載が「0円」または「空欄」になることがあります。このとき、次の点に注意してください。

  1. 「0円」と「計算不可」は別物として記載する
    育休月に賃金がゼロであっても、育休前の賃金実績がある月の賃金月額を用いて計算します。育休月の賃金が0円であることと、賃金月額の算定が「計算不可」であることを混同しないよう注意が必要です。

  2. 育児休業給付支給要件確認票の記入を丁寧に行う
    無給であること・育休中に就労がないことを確認票に明記します。記載が不明確だと審査が長引く原因になります。

  3. 賃金台帳・出勤簿は2年分保存しておく
    書類が揃わないと「計算不可」と判定されるリスクがあります。特に直近2年間の賃金台帳と出勤簿は必ず保存・準備しておきましょう。


給付金の計算方法と受給中の注意事項

給付金の基本計算式

育休給付金の支給額は以下の計算式で求められます。

■ 育休開始から180日目まで(給付率67%)

給付金 = 賃金月額 × 67%

■ 育休開始181日目以降(給付率50%)

給付金 = 賃金月額 × 50%

賃金月額の計算方法

賃金月額 =(育休開始前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180日)× 30日

※賃金月額には上限・下限が設けられています。

項目 金額(2025年度)
賃金月額の上限 約481,800円
賃金月額の下限 約80,430円
給付金の上限(180日まで) 約322,806円/月
給付金の上限(181日以降) 約240,900円/月

社会保険料免除との関係

育休中は給与が無給・低額であっても、健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。育休給付金に加えてこの社会保険料免除も受けられるため、実質的な手取りが大きく改善される場合があります。

  • 免除期間:育休開始月〜育休終了前月まで(月末時点で育休中の月が対象)
  • 手続き:事業主が「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出

給付率67%の育休給付金と社会保険料免除を合わせると、手取り換算で休業前の8割前後が確保されると試算されることが多く、育休中の生活設計の目安となります。


育休中の就労・副業に関する注意

育休中にわずかでも就労や副業をすると、給付金の支給に影響が出る場合があります。

  • 育休中の就労日数が月10日以内かつ就労時間が80時間以内であれば支給は継続
  • 就労があった場合は支給申請書に正確に申告する義務があります
  • 虚偽申告は不正受給となり、給付金の返還命令・罰則の対象となります

育休中の就労は可能ですが、事前に会社・ハローワークに相談したうえで適切に申告することが大切です。


企業の人事担当者が押さえておきたい実務ポイント

育休給付金の申請は企業が中心的な役割を担うため、人事担当者には正確な知識と迅速な対応が求められます。

申請遅延を防ぐためのチェックリスト

  • [ ] 従業員から育休取得申出書を受け取ったか
  • [ ] 育休開始日・終了予定日を書面で確認したか
  • [ ] 賃金台帳・出勤簿が直近2年分保存されているか
  • [ ] 賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上あるか確認したか
  • [ ] 初回申請の期限(育休開始後4ヶ月以内)を把握しているか
  • [ ] ハローワークへの提出書類に漏れがないか確認したか
  • [ ] 2ヶ月ごとの定期申請のスケジュールを管理しているか

「計算不可」を避けるための事前確認

採用から育休取得までの期間が短い従業員については、事前に被保険者期間の確認を行いましょう。12ヶ月未満であっても、前職での雇用保険加入期間が1年以内に通算できる場合があります(前の職場を辞めてから1年以内に離職していれば通算可能)。

また、産休前に傷病休暇や休職をしていた従業員については、賃金支払基礎日数が11日未満の月が多くなりやすく、「計算不可」になるリスクが高まります。事前にハローワークに相談することをおすすめします。


よくあるミスと対策

ミス①:賃金台帳の記載不備
無給月について「0円」と記載せず空欄にしてしまうケースが見られます。0円であれば「0」と明記し、育休月と育休前の月を明確に区別して記載しましょう。

ミス②:育休開始日の誤記
育休開始日は給付額の計算に直結します。産前・産後休業と育休の開始日を混同するケースがあるため、書類作成時に改めて確認してください。

ミス③:定期申請の失念
初回申請後、2ヶ月ごとの支給申請書の提出を忘れると給付が一時停止する場合があります。申請期限をカレンダーで管理する等の工夫をしてください。


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よくある質問

Q1. 育休前の会社と現在の会社が異なります。前職の雇用保険期間は通算できますか?

前の職場を離職してから1年以内に次の職場の雇用保険に加入している場合、前職の被保険者期間を通算することができます。ただし、前職での離職時に基本手当(失業給付)を受給していた場合、その受給以前の期間は通算できません。前職の雇用保険被保険者証と離職票を用意したうえで、ハローワークに確認することをおすすめします。

Q2. 育休中に賞与が支払われる場合、給付金は減額されますか?

育休中に支払われた賞与は、支払われた月において「賃金」として扱われます。支払われた月の賃金が休業開始前月額賃金の80%を超えた場合は給付金が不支給になります。ただし、育休前の勤務実績に対して育休開始前に支払われた賞与(支給日が育休前)は影響しません。

Q3. 産休から引き続き育休に入る場合、申請は産休中でも始められますか?

産前・産後休業(産休)と育休は別制度であり、育休給付金の申請は育休開始後から行います。産休中は育休給付金の対象外です(産休中は健康保険から出産手当金が支給されます)。育休開始日以降、速やかに会社の人事担当者と連携して申請手続きを進めましょう。

Q4. 育休中に転職・退職した場合、受給中の給付金はどうなりますか?

育休中に雇用保険の被保険者資格が喪失した場合(退職した場合)、育休給付金の支給は終了します。在職中の育休期間に対してのみ支給されるため、育休中の退職は受給権の喪失につながります。育休終了後に退職・転職を検討している場合は、育休期間が終了してから手続きを行うことが給付上有利です。

Q5. ハローワークに直接申請できますか?会社を通さなくてもよいですか?

原則として事業主(会社)を通じた申請が基本ですが、事業主が手続きを行わない場合や、行うことができない場合には、被保険者本人がハローワークに直接申請することが認められています(雇用保険法施行規則第101条の15)。その場合は会社から必要書類(賃金台帳・出勤簿等)を受け取り、本人が管轄のハローワークへ持参または郵送することになります。


まとめ

育休給付金は「無給だからもらえない」ではなく、「無給だからこそ全額もらえる」制度です。本記事のポイントを整理します。

確認項目 内容
無給でも受給できる? ✅ 受給できる(完全無給が原則の対象)
「計算不可」の場合は? ❌ 給付不可(被保険者期間12ヶ月以上の要件確認が必須)
給付率 育休開始〜180日:67%、181日以降:50%
申請主体 原則として事業主(会社)がハローワークへ申請
初回申請期限 育休開始から4ヶ月以内
主な必要書類 支給要件確認票・賃金台帳・出勤簿・母子手帳コピーなど

給付可否の判断や書類準備に不安がある場合は、管轄のハローワークまたは社会保険労務士に相談することをおすすめします。特に「計算不可」になる可能性がある場合は、育休開始前の早い段階で確認を取っておくと安心です。

育休給付金制度を正しく理解・活用することで、育休中の生活をより安定させることができます。本記事が皆さんの育休取得・申請手続きの一助となれば幸いです。

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