育児休業中の収入として頼りになる「育休給付金」。しかし、「給付率67%ってどういう意味?」「財源はどこから来るの?」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、育休給付金の給付率の決まり方から、国庫補助・事業主拠出金・雇用保険料という3つの財源の仕組みまで、法的根拠を交えながら丁寧に解説します。手続きや計算式の実例も掲載していますので、これから育休取得を検討している方も、企業の人事担当者の方も、ぜひ最後までご覧ください。
育休給付金の給付率はどう決まる?基本の仕組みをわかりやすく解説
育休給付金の正式名称は「育児休業給付金」で、雇用保険法第61条〜第65条を法的根拠とする給付制度です。育児休業中に仕事を休むことで生じる収入減を補填することを目的としており、雇用保険の被保険者であれば、正社員・契約社員・パートタイマーを問わず受給できます。
給付率は大きく2段階に分かれています。
| 期間 | 給付率 | 手取り換算の目安 |
|---|---|---|
| 育休開始〜通算180日目 | 67% | 手取りの約80%相当 |
| 通算181日目〜子が満2歳(原則) | 50% | 手取りの約60%相当 |
「手取り換算で約80%」というのは、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)の支払いが免除されるため、実質的な手取り減少が67%という数字より小さくなるためです。これは特に育休取得を迷っている方にとって重要なポイントです。
給付率67%・50%の計算式と具体的な受給額の目安
育休給付金の受給額は、以下の計算式で算出されます。
【育休開始〜180日目(給付率67%)】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
【育休181日目以降(給付率50%)】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
「休業開始時賃金日額」とは、育児休業を開始した日の直前6ヶ月間の賃金総額を180で割った金額です。残業代や通勤手当なども含まれますが、賞与(ボーナス)は含まれません。
また、給付額には上限額・下限額が設定されています(2025年度の目安)。
| 区分 | 67%の場合 | 50%の場合 |
|---|---|---|
| 上限額(月額) | 約313,000円 | 約233,800円 |
| 下限額(月額) | 約53,600円 | 約40,000円 |
※上限・下限額は毎年8月に見直しが行われます。最新額はハローワークまたは厚生労働省の告示をご確認ください。
【月収別シミュレーション】
以下は月30日・月収30万円・40万円・50万円を例にした目安額です。
| 月収(額面) | 賃金日額の目安 | 育休開始〜180日(67%) | 181日目以降(50%) |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 10,000円 | 約201,000円/月 | 約150,000円/月 |
| 40万円 | 13,333円 | 約268,000円/月 | 約200,000円/月 |
| 50万円 | 16,667円 | 上限適用(約313,000円) | 上限適用(約233,800円) |
※月収50万円の場合、上限額が適用されるため計算上の67%より低くなります。
給付率が変動するタイミング(育休開始から180日の区切り)
「通算180日」というカウントには注意が必要です。これは暦日数(土日・祝日も含むすべての日数)で計算されます。つまり、育休を取り始めた日から数えて180日目を過ぎると、翌日から給付率が50%に切り替わります。
日数カウントの注意点:
- 途中で育休を一時中断して職場復帰した期間は日数に算入されません
- 産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した日数は、その後の育児休業の180日カウントに含まれます
- 分割取得した場合も、取得した日数の合計で180日を計算します
たとえば、出産翌日から育休を取得した場合、180日目はおよそ産後6ヶ月のタイミングです。「いつから給付率が下がるか」を事前に把握し、家計の見通しを立てておきましょう。
育休給付金の財源は3つで成り立つ――国庫補助・事業主拠出・雇用保険料の全体像
育休給付金は「雇用保険から出ているお金」というイメージを持たれがちですが、実際には以下の3つの財源が組み合わさって給付を支えています。
| 財源区分 | 主な拠出者 | 法的根拠 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険料 | 労働者・事業主 | 雇用保険法第104条 | 制度の主財源 |
| 事業主拠出金 | 事業主のみ | 子ども・子育て支援法第71条 | 育児支援に特化した負担 |
| 国庫補助 | 国(一般会計) | 雇用保険法第129条 | 公的意義に基づく補完 |
「なぜ税金が使われるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。育児は社会全体の少子化対策・労働力確保に直結するテーマであるため、保険料だけでなく公費(税金)も投入することで、制度の持続性を高める設計になっているのです。
雇用保険料(被保険者・事業主双方の拠出)が基盤
育休給付金の主財源は、毎月給与から天引きされている雇用保険料です。雇用保険法第104条に基づき、労働者(被保険者)と事業主が一定の割合で保険料を負担し、雇用保険の「雇用保険二事業勘定」や「育児休業給付勘定」に積み立てられます。
2025年度の雇用保険料率(一般の事業の場合):
| 負担者 | 保険料率 |
|---|---|
| 労働者(被保険者) | 6/1000(0.6%) |
| 事業主 | 9.5/1000(0.95%) |
| 合計 | 15.5/1000(1.55%) |
※農林水産業・清酒製造業・建設業は料率が異なります。
育児休業給付金はこのうち「育児休業給付」の勘定から支出されます。2020年度には育休給付金の財源を独立した勘定として整理する改正が行われ、財政管理が明確化されました。
事業主拠出金とは何か――企業が負担する理由と法的根拠
「事業主拠出金」は、雇用保険料とは別に事業主だけが負担する拠出金です。子ども・子育て支援法第71条(旧:児童手当法の特例)に基づき、企業が子育て支援のために拠出する仕組みです。
この拠出金は「子ども・子育て拠出金」とも呼ばれ、以下の目的に使われます。
- 育児休業給付金の財源への補填
- 企業主導型保育事業の支援
- 仕事・子育て両立支援事業への充当
2025年度の事業主拠出金率:
拠出金率:4.5/1000(0.45%)
対象:厚生年金被保険者の総標準報酬月額に乗率を適用
負担:事業主のみ(労働者の負担なし)
企業が独自にこの拠出金を負担するのは、「育児支援は企業にとっても優秀な人材確保・定着率向上というメリットをもたらす」という考えに基づきます。また、少子化が進むと将来の労働力不足が深刻化するため、企業にも社会的責任として負担を求める趣旨があります。
国庫補助の仕組みと雇用保険法129条の意義
国庫補助は、国(一般会計)から雇用保険の育児休業給付勘定に対して投入される補助金です。雇用保険法第129条がその根拠となっており、「育児休業給付に要する費用の一部を国庫が補助できる」と定めています。
国庫補助率の変遷と現状:
| 時期 | 国庫補助率 | 主な背景 |
|---|---|---|
| 従来 | 給付費の1/8(12.5%) | 基本的な補助水準 |
| 暫定措置期間(複数回延長) | 給付費の55/1000程度 | 財政調整・少子化対策 |
| 2022年度以降 | 段階的に見直し継続 | 育休取得促進の政策的意図 |
※国庫補助率は毎年度の予算措置によって変動します。正確な率は厚生労働省の予算概要でご確認ください。
国庫補助が存在する最大の理由は、育児休業支援が単なる個人の問題ではなく、社会全体の少子化対策・男女共同参画推進という政策目標と直結しているからです。雇用保険の枠組みだけでは財源が不足する局面でも、国費を投入することで給付の安定性を維持する設計になっています。
給付率引き上げの最新動向――2025年改正のポイント
2025年は育休制度にとって大きな転換点の年です。「育休給付金 2025年改正」に関する主なポイントを整理します。
給付率80%への段階的引き上げ(両親ともに育休取得の場合)
2025年4月施行の改正により、父母ともに育休を取得した場合に限り、一定期間の給付率が手取りベースで実質100%相当(給付率80%)に引き上げられる制度が導入されました。
「育児休業給付の給付率引き上げ」の概要:
【対象条件】
・子が1歳(※特例延長の場合も対象)に達するまでの期間
・父母がそれぞれ14日以上の育休を取得すること
・父母どちらも育休を同時または連続して取得すること
【給付率の変化】
従来:最大67%(180日まで)
改正後:最大80%(父母ともに取得した場合の一定期間)
社会保険料免除と合わせると手取りベースでほぼ100%に近い水準となり、「育休を取ると収入がゼロになる」という誤解を解消し、男性育休の取得促進につなげることが目的です。
第3子以降・保育所未入所時の給付延長
2025年4月の改正では、以下の延長措置も施行されました。
| 改正内容 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 第3子以降の給付期間 | 子が満2歳まで | 子が満3歳まで |
| 保育所等の利用開始日前 | 原則終了 | 入所予定日前日まで延長可能 |
これらの改正は、財源面でも国庫補助の拡充と事業主拠出金率の見直しによって支えられています。
育休給付金の受給要件と申請手続き
受給できる人の条件
育休給付金を受給するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
①雇用保険の被保険者であること
– 正社員・契約社員・派遣社員・パートタイマーなど雇用形態は問いません
– 自営業者・フリーランスは雇用保険の対象外のため受給できません
②育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
– 2022年の改正により、育休開始前1年間に就業した日数が80時間以上の月も算入できるようになりました
③実際に育児休業中であること
– 育休中の就労は「支給単位期間(1ヶ月)に10日以下または80時間以下」が条件です
– これを超えて就労すると、その期間は給付対象外になります
④給与が休業開始前の80%未満であること
– 育休中も一定の給与が支払われている場合、給与と給付金の合計が休業前賃金の80%を超えると減額・不支給になります
申請の流れと必要書類
育休給付金はハローワーク(公共職業安定所)を通じて申請します。通常は事業主(会社)経由で申請する形が一般的です。
【申請の流れ】
Step 1:育休開始前
└─ 会社に育児休業申出書を提出(育児・介護休業法)
Step 2:育休開始後、初回申請(2ヶ月後が目安)
└─ 事業主が「育児休業給付受給資格確認票・
初回支給申請書」をハローワークへ提出
Step 3:2回目以降(2ヶ月ごと)
└─ 「育児休業給付金支給申請書」を提出
(支給単位期間終了後4ヶ月以内が申請期限)
Step 4:ハローワークが審査・支給決定
└─ 指定口座へ振込(通常、申請から2〜3週間)
必要書類一覧:
| 書類名 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・初回支給申請書 | ハローワーク・会社 | 初回のみ |
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク・会社 | 2回目以降 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 事業主が作成 | 初回のみ |
| 賃金台帳・出勤簿 | 事業主が保管 | 賃金日額の確認用 |
| 母子健康手帳(出生届出済証明) | 市区町村 | 子の出生証明として |
| 育児休業取得確認書類(育休申出書等) | 会社が作成 | 休業の事実確認 |
ポイント: 多くの会社では人事・総務部門が申請手続きを代行します。ただし、申請期限の管理は自分でも行うことが重要です。支給単位期間終了後4ヶ月以内を過ぎると、原則として申請できなくなります。
申請後の受給スケジュール
育休給付金は2ヶ月に1回まとめて支給されるのが標準です(会社によっては毎月申請も可能)。
【受給スケジュールの例(4月1日育休開始の場合)】
4/1 育休開始
↓
5/31 第1支給単位期間終了(4/1〜5/31)
↓
6月上旬 事業主が申請書をハローワークへ提出
↓
6月下旬〜7月上旬 給付金が口座へ振込
↓
7/31 第2支給単位期間終了(6/1〜7/31)
↓(以降、2ヶ月ごとに繰り返し)
給付金を最大化するための実践ポイント
産後パパ育休(出生時育児休業)との組み合わせ
2022年10月から施行された産後パパ育休(出生時育児休業)を利用すると、子の出生後8週間以内に最大28日間(2回まで分割可)の育休を取得でき、この期間も育休給付金(出生時育児休業給付金)の対象になります。
父親がこの制度を活用して早期に育休を取得すると、2025年の改正で導入された「給付率80%」の条件を満たしやすくなります。
育休中の就労と給付金の関係
育休中でも月10日以内(または80時間以内)であれば就労が可能です。ただし、就労日数・就労時間によって給付額が減額される場合があります。
【就労収入が発生した場合の計算ルール】
給付金 + 就労収入 < 休業開始前賃金の80% → 給付金は全額支給
給付金 + 就労収入 ≥ 休業開始前賃金の80% → 給付金は超過分だけ減額
給付金 + 就労収入 ≥ 休業開始前賃金の100% → 給付金は不支給
育休中に在宅ワークや副業を検討している方は、この計算ルールを必ず確認してください。
延長申請のタイミングと注意点
保育所に入所できなかった場合などは、子が1歳6ヶ月まで、さらに延長して2歳まで育休給付金を受け続けることができます。
延長の際は1歳の誕生日の2週間前までに申請書類を準備しておく必要があります。ハローワークと会社の間で書類のやり取りに時間がかかることがあるため、1ヶ月前から準備を始めることを強く推奨します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休給付金は課税対象ですか?
育休給付金は非課税です(所得税・住民税ともにかかりません)。また、社会保険料(健康保険・厚生年金)も育休中は免除されるため、手取りベースでは給付率の数字以上の収入を維持できます。
Q2. 育休給付金を申請できる期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
原則として、支給単位期間終了後4ヶ月以内に申請が必要です。この期限を過ぎると支給されない場合があります。ただし、天災・疾病など「やむを得ない理由」がある場合はハローワークに相談してください。期限管理は事業主任せにせず、自分でもカレンダーに記録しておくことが大切です。
Q3. パートタイマーや派遣社員でも育休給付金は受け取れますか?
はい、雇用保険に加入していれば雇用形態を問わず受給できます。ただし「育休開始前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上」という要件を満たす必要があります。短時間勤務の方は、事前に雇用保険の被保険者期間を確認しておきましょう。
Q4. 双子の場合、育休給付金は2人分もらえますか?
いいえ、育休給付金は育休を取得している労働者1人に対して1つ支給されます。双子・多胎の場合でも給付金の金額が倍になるわけではありませんが、育休期間の上限については多胎の場合に特別な扱いが検討されています。最新情報はハローワークにご確認ください。
Q5. 育休給付金と出産手当金は同時に受け取れますか?
産後8週間(出産翌日から56日)の産後休業中は、健康保険から出産手当金が支給されます。出産手当金の支給期間は育休給付金と重複しないため、同時受給はできません。一般的には、産後休業終了後に育休に移行し、そこから育休給付金が始まります。
Q6. 会社が倒産した場合、育休給付金はどうなりますか?
育休給付金は雇用保険から支給されるため、会社が倒産しても直ちに支給が止まるわけではありません。ただし、雇用関係が消滅した場合は育休の根拠もなくなるため、状況に応じてハローワークに相談してください。
まとめ
育休給付金の給付率と財源の仕組みについて、整理すると以下のようになります。
【給付率のポイント】
– 育休開始〜通算180日:賃金の67%(手取りベースで約80%相当)
– 通算181日目以降:賃金の50%
– 父母ともに育休を取得した場合(2025年4月改正):一定期間最大80%に引き上げ
【財源の3本柱】
1. 雇用保険料(労使双方が負担):主財源
2. 事業主拠出金(企業のみ負担):育児支援に特化した補完財源
3. 国庫補助(一般会計):雇用保険法129条に基づく政策的補助
育休給付金は、単なる「失業保険の派生制度」ではなく、国・企業・個人が連携して少子化対策を支える社会インフラです。2025年の改正で給付率引き上げや延長措置が拡充されたこの機会に、制度を正しく理解して最大限に活用してください。
具体的な受給額の計算や申請手続きについては、最寄りのハローワークまたは社会保険労務士にご相談いただくと確実です。
参考法令・資料
– 雇用保険法(第61条〜第65条、第104条、第129条)
– 育児・介護休業法
– 子ども・子育て支援法(第71条)
– 厚生労働省「育児休業給付の支給に関する指針」
– ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)

