育児休業中に「家事代行やベビーシッターを使いたいけれど、育休給付金でカバーできるの?」「費用は控除できる?」と疑問を持つ方は多くいます。結論から言えば、育休給付金は家事代行・ベビーシッター費用への直接給付ではありません。しかし、受け取った給付金を生活費として活用しながら、これらのサービスを利用することは可能です。
本記事では、育休給付金の仕組みと家事代行・ベビーシッター費用の関係を法的根拠とともに整理し、2026年の新制度案・自治体補助も含めて完全解説します。
1. 育休給付金と家事代行・ベビーシッター利用費の関係を整理する
① 育休給付金は「生活保障」:家事代行費は別問題
育児休業給付金は、育児・介護休業法および雇用保険法に基づき、育休中に収入が減少した労働者の生活を支えることを目的とした所得補償制度です(雇用保険法第61条の7)。
給付金の使途は法律上、特定の支出項目に縛られていません。食費・住居費・光熱費のほか、家事代行やベビーシッターの利用料金に充てることも自由です。ただし、あくまで「生活全般を支える一括の給付」であり、「家事代行費のために支給される」制度ではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法的根拠 | 育児・介護休業法、雇用保険法第61条の7 |
| 給付主体 | ハローワーク(雇用保険) |
| 給付の性質 | 休業中の賃金低下を補う所得補償 |
| 使途制限 | なし(生活費全般に充当可) |
② 給付金と家事代行費用が独立している理由(法的根拠)
雇用保険法上、育児休業給付金の支給要件は以下の通りです(雇用保険法第61条の7第1項)。
- 育児・介護休業法に基づく育児休業を取得していること
- 雇用保険の被保険者であること
- 育休開始前2年間に被保険者期間が通算12か月以上(賃金支払基礎日数が11日以上ある月)あること
- 育休中の就業日数が支給単位期間(1か月)に10日(10日超の場合は就業時間80時間)以下であること
この要件のどこにも「家事代行・ベビーシッターの利用状況」は含まれていません。つまり、家事代行を使っても使わなくても、給付金の支給額・支給期間には一切影響しません。
③ 家事代行利用が給付金申請に影響しない理由
以下の表の通り、育休中のさまざまな支出や行動が給付金に影響しません。
| 項目 | 給付金への影響 |
|---|---|
| 家事代行の利用 | 影響なし |
| ベビーシッターの利用 | 影響なし |
| 商業施設・一時託児所の利用 | 影響なし |
| 保育園の一時預かり利用 | 影響なし |
| 親族への謝礼支払い | 影響なし |
唯一給付金に影響するのは、育休中の「就業日数・就業時間」です。支給単位期間中に就業日数が10日(80時間)を超えると、その期間の給付金は不支給となります(雇用保険法第61条の7第4項)。
2. 育児休業給付金の給付金額と計算方法【2026年最新】
① 育休給付金の月額計算式
育休給付金の基本計算式は以下の通りです。
月額給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
休業開始時賃金日額の求め方:
賃金日額 = 育休開始前6か月間の賃金合計 ÷ 180日
支給日数は、1支給単位期間(原則30日)が基準となります。
② 給付率50%と67%の違いと変更時期
給付率は育休取得期間によって異なります。
| 期間 | 給付率 |
|---|---|
| 育休開始から180日(約6か月)まで | 67% |
| 育休開始から181日目以降 | 50% |
2025年4月施行の育児・介護休業法改正により、男性が28日間の育休を取得した場合、最大28日間は給付率が実質10割相当(手取りベース)に引き上げられます。社会保険料も免除されるため、手取り収入がほぼ維持される仕組みです。
③ 給付期間と総支給額のシミュレーション例
【モデルケース】月額賃金30万円・育休12か月取得の場合
賃金日額 = 30万円 × 6か月 ÷ 180日 = 10,000円
【最初の6か月(180日間)】
10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円/月
6か月合計 = 約1,206,000円
【残り6か月(181日〜365日)】
10,000円 × 30日 × 50% = 150,000円/月
6か月合計 = 約900,000円
【総支給額合計(12か月)】
約2,106,000円
このうち仮にベビーシッター費用として月3万円(年36万円)を充当したとすると、残り約170万円を他の生活費に使える計算になります。
④ 給付金は課税対象か(税計算に含まれるか)
育児休業給付金は非課税所得です(所得税法第9条第1項第15号)。確定申告の対象にもなりません。また、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)も免除されます(健康保険法第159条)。
つまり、給付金を受け取っても税金は課されず、受け取った金額をそのまま家事代行やベビーシッター費用に充てることができます。
3. 家事代行・ベビーシッター費用は給付金の対象外:税務面での扱い
① 家事代行費用が控除対象にならない理由(家事費原則)
所得税法上、家事費(個人的な生活費全般)は所得控除や必要経費の対象になりません(所得税法第45条)。家事代行やベビーシッターの費用は、個人の私生活に関わる支出と見なされるため、現行制度では以下のいずれにも該当しません。
| 控除の種類 | 家事代行・ベビーシッター費用 |
|---|---|
| 医療費控除 | 対象外(治療目的でないため) |
| 雑損控除 | 対象外 |
| 特定支出控除(給与所得者) | 原則対象外(業務直結性がないため) |
| 必要経費(個人事業主) | 原則対象外(家事按分は困難) |
個人事業主が在宅で事業を営み、業務遂行のために保育サービスを利用した場合、一定の割合を必要経費として按分計上できる可能性がありますが、税務署の判断が伴うため、税理士への相談を推奨します。
② ベビーシッター費用の企業福利厚生による非課税措置
個人で支払う費用は控除対象外でも、勤務先がベビーシッター利用を福利厚生として補助する場合は、一定額が非課税となる特例があります。
国税庁の通達(平成29年度税制改正)により、事業者が従業員のために交付するベビーシッター費用の補助は、月額最大9,000円相当まで非課税とされています。育休復帰後に職場のベビーシッター補助制度が利用できる場合は、積極的に活用しましょう。
③ 2026年家事支援税制優遇の新制度案(予定)
2025年現在、政府・与党内で議論されているのが「家事支援サービス利用に係る税制優遇措置」です。少子化対策の一環として、子育て世帯が家事代行やベビーシッターを利用した際の費用を、一定額まで所得控除または税額控除の対象とする制度案が検討されています。
| 項目 | 概要(検討案) |
|---|---|
| 対象 | 子育て世帯(18歳未満の子がいる世帯など) |
| 控除の種類 | 税額控除方式(案) |
| 控除上限額 | 年間数万円程度(詳細未確定) |
| 施行時期 | 2026年度以降(検討中) |
⚠️ 注意:2025年5月時点では正式決定した制度ではありません。税制改正大綱や政府の公式発表を随時確認してください。
4. 自治体の家事代行・ベビーシッター補助制度を活用する
① 東京都「出産応援事業」
東京都では、妊娠・出産・育児期の家庭を支援するため、家事代行・育児サービスの費用補助を実施しています(事業名・内容は年度により変更があります)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 都内在住の妊娠中・育児中の世帯 |
| 補助内容 | 家事代行・ベビーシッター等の利用補助(クーポン等) |
| 給付金との関係 | 別枠で利用可能(育休給付金とは独立) |
| 申請先 | お住まいの区市町村窓口 |
② 主な自治体補助制度の例
以下はいくつかの自治体が提供する家事・育児支援の例です(2025年時点。制度は変更の場合があります)。
| 自治体 | 補助制度の概要 |
|---|---|
| 東京都各区(例:港区・世田谷区) | ベビーシッター派遣費用の一部助成(1時間あたり数百円〜数千円) |
| 大阪府(一部市区) | 産前産後ヘルパー派遣事業(低所得世帯向け) |
| 横浜市 | 子育て支援ヘルパー訪問サービス |
自治体補助は育休給付金と別枠の制度です。給付金を受給していても補助を受けられます。必ずお住まいの自治体窓口(子育て支援課など)に確認しましょう。
5. 育休給付金の申請手続き:家事代行利用者が押さえるポイント
① 申請フローと必要書類
【STEP 1】育休開始1か月前
└─ 勤務先に育休取得の申し出(育児・介護休業法第5条)
【STEP 2】育休開始後、最初の支給単位期間終了後
└─ 勤務先が「育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出
(原則として事業主経由で申請)
【STEP 3】ハローワークによる支給決定・振込
└─ 申請から約2週間で指定口座に振込
【STEP 4】2回目以降は2か月ごとに申請
└─ 申請期限:支給単位期間の末日翌日から2か月以内
必要書類(主なもの)
| 書類名 | 取得先 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク(事業主経由) |
| 育児休業申出書(写し) | 勤務先 |
| 出生届受理証明書または母子健康手帳(写し) | 市区町村・病院 |
| 賃金台帳・出勤簿 | 勤務先が準備 |
| 被保険者証 | 雇用保険被保険者証(勤務先が保管) |
② 申請時の注意点(就業制限と給付金の関係)
育休中に就業(アルバイト・副業含む)した場合、以下のルールが適用されます。
| 就業日数・時間 | 給付金への影響 |
|---|---|
| 月10日以下かつ80時間以下 | 給付金支給(ただし就業した分を減額) |
| 月10日超または80時間超 | その期間は給付金不支給 |
家事代行・ベビーシッターの利用はこの就業制限と無関係です。いくら利用しても就業時間にはカウントされません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中に家事代行を使うと、「育児をしていない」と判断されて給付金が減るの?
A. いいえ。給付金の支給要件に「家事代行・ベビーシッターの利用禁止」という条件はありません。育休の目的は「子の養育」ですが、外部サービスの利用を禁じる規定はなく、給付金額への影響もゼロです。
Q2. 育休給付金でベビーシッター費用を支払った領収書を保存する必要はある?
A. 育休給付金の申請において、ベビーシッター・家事代行の利用領収書は提出不要です。給付金の申請に必要な書類は休業の事実を証明するものが中心であり、支出の使途証明は求められません。ただし、自治体補助制度や企業福利厚生の補助申請には領収書が必要な場合があります。
Q3. 個人事業主(フリーランス)でも家事代行費用を経費にできる?
A. 原則として家事費は必要経費に算入できません(所得税法第45条)。ただし、在宅で業務を行い、保育利用が業務遂行に直結することを合理的に説明できる場合、按分計上を認められるケースがあります。判断が難しいため、必ず税理士に相談してください。
Q4. 2026年の家事支援税制優遇はいつ確定する?
A. 2025年5月時点では「検討段階」であり、正式決定ではありません。毎年12月に発表される「与党税制改正大綱」および翌年3〜4月の国会での税制改正法案の審議結果を確認してください。確定次第、本記事も更新します。
Q5. 育休給付金と自治体の家事代行補助を同時に受けられる?
A. はい、受けられます。育休給付金は雇用保険制度、自治体補助は各自治体の子育て支援予算から出るものであり、完全に別制度です。両方の条件を満たせば、重複して受給することが可能です。
まとめ
本記事で解説した内容を整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 育休給付金の性質 | 所得補償(使途自由)。家事代行費への直接給付ではない |
| 家事代行利用と給付金の関係 | 完全に独立。利用の有無・金額は給付金に影響しない |
| 家事代行費の税務 | 現行制度では控除不可(家事費原則) |
| 2026年新制度案 | 子育て世帯向け税額控除の検討中(未確定) |
| 自治体補助 | 育休給付金と別枠。お住まいの自治体に要確認 |
| 給付率 | 育休開始180日まで67%、以降50% |
育休中の家計管理において、育休給付金はまとまった金額の所得補償として非常に重要です。この給付金を軸に生活設計を立て、必要に応じて自治体補助や企業福利厚生のベビーシッター補助と組み合わせることで、家事代行・育児支援サービスを無理なく活用できます。
2026年の税制優遇新制度についても引き続き最新情報を追い、制度が確定した際にはぜひ申請を検討しましょう。
参考法令・参考資料
– 雇用保険法(第61条の7)
– 育児・介護休業法(第5条)
– 所得税法(第9条第1項第15号、第45条)
– 健康保険法(第159条)
– ハローワーク「育児休業給付の内容と支給申請手続き」
– 厚生労働省「育児休業給付の概要」(2025年版)
よくある質問(FAQ)
Q. 育休給付金は家事代行・ベビーシッター費用に充てられますか?
A. はい、充てられます。育休給付金は使途制限がなく、生活全般を支える所得補償制度のため、家事代行費に充当することは可能です。
Q. 家事代行を利用すると育休給付金の支給額は減りますか?
A. いいえ、減りません。家事代行の利用状況は給付金の支給要件に含まれず、支給額や期間に一切影響しません。
Q. 育休給付金が控除される支出はありますか?
A. 家事代行やベビーシッター費用は控除対象外です。給付金に影響するのは育休中の「就業日数・時間」のみです。
Q. 月額30万円の給付金で家事代行費をカバーできますか?
A. 給付金額は賃金に応じて決まります。最初6か月は賃金の67%、その後50%が支給されるため、事前に計算してシミュレーションしましょう。
Q. 2026年の新制度で家事代行費の補助はありますか?
A. 記事では2026年の新制度について言及していますが、家事代行費の直接補助は制度の主旨ではありません。自治体による別途補助の確認をお勧めします。

