「日給制だから育休給付金の計算が複雑そう……」「基本給がないと給付額が下がってしまうの?」——そんな不安を抱えていませんか?
日給制・変動給で働く方の育休給付金は、月給制と比べて計算ステップが一段階多くなります。しかし、正しい手順を知れば自分でも給付額を見積もることができます。この記事では、賃金日額の求め方から賃金月額の算出、実際の給付シミュレーションまで、日給制特有のポイントをわかりやすく解説します。
日給制労働者が育休給付金を受け取れる条件とは?
育休給付金(育児休業給付金)は、雇用保険法第61条〜第67条に基づき、育児休業中に賃金が支払われない労働者に支給される給付です。日給制の労働者も、以下の4つの要件を満たせば受給対象になります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険の加入 | 雇用保険の被保険者であること |
| 被保険者期間12ヶ月以上 | 育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること |
| 就業日数10日以上 | 育休を開始した日の前日を起算日として、直近1ヶ月間に就業日数が10日以上あること(または就業時間が80時間以上) |
| 1ヶ月以上の育休取得 | 育児・介護休業法に基づく育児休業を1ヶ月以上取得すること |
ポイント: 「賃金支払基礎日数」とは、賃金の計算対象となった日数(出勤日・有給休暇取得日など)のことです。日給制の場合、実際に働いた日数がそのまま対応します。
月給制との違い——なぜ日給者の計算は複雑なのか
月給制の場合、毎月の給与額がほぼ固定されているため、直近の賃金をそのまま「賃金月額」として扱いやすいです。一方、日給制・変動給の場合は月によって就業日数が異なるため、賃金額も毎月変動します。
この違いにより、日給制では次のような追加ステップが必要になります。
月給制:賃金月額(固定)→ 給付基礎日額 → 給付額
日給制:賃金合計 ÷ 期間日数 → 賃金日額 → 賃金日額×30 → 賃金月額 → 給付額
ステップ数は増えますが、計算式自体はシンプルです。後述の具体例を確認しながら、順を追って理解していきましょう。
パート・アルバイト・派遣社員も対象になる?
「基本給がない=給付対象外」という誤解が多く見られますが、雇用形態は問いません。雇用保険に加入しており、被保険者期間の要件を満たしていれば、以下の雇用形態でも受給できます。
| 雇用形態 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 正社員(日給月給制) | ✅ 対象 | 日給×所定日数で月給を構成 |
| パートタイム(時給・日給) | ✅ 対象 | 週20時間以上の被保険者が条件 |
| アルバイト(日給) | ✅ 対象 | 雇用保険加入が前提 |
| 派遣社員(日給) | ✅ 対象 | 派遣元での被保険者期間で判定 |
| 個人事業主・フリーランス | ❌ 対象外 | 雇用保険の被保険者でないため |
| 会社役員 | ❌ 対象外 | 原則として雇用保険の被保険者でないため |
賃金日額の算出方法——計算の第一ステップ
日給制労働者の育休給付金計算は、まず「賃金日額」を求めることから始まります。根拠となる法令は雇用保険法施行規則第116条で、以下のように規定されています。
「賃金日額は、被保険者が育児休業を開始した日の直前の賃金支払期間(賃金締切期間)における賃金を、当該期間の日数で除した額とする」
つまり、
賃金日額 = 育休開始直前の賃金締切期間における賃金合計 ÷ その期間の日数
という計算式になります。
「育休開始直前の賃金締切期間」の正しい特定方法
「育休開始直前の賃金締切期間」とは、育休を開始した日より前に終了した、最後の賃金計算期間(締切〜締切の1サイクル)のことです。
企業によって賃金締切日は異なりますので、以下の例で確認してください。
例1:賃金締切日が毎月末日の場合
育休開始日:2025年4月15日
→ 直前の賃金締切期間:2025年3月1日〜3月31日(31日間)
例2:賃金締切日が毎月15日の場合
育休開始日:2025年4月15日
→ 直前の賃金締切期間:2025年3月16日〜4月14日(30日間)※4月14日が締切日の前日なので注意
⚠️ 注意点: 育休開始日当日が締切日と重なる場合は、当日を含む期間ではなく、その前の締切期間が対象になります。不明な場合は、給与明細の「勤務期間」欄を確認するか、会社の給与担当者に問い合わせましょう。
締切日パターン別まとめ
| 締切日 | 育休開始日 | 直前の締切期間 | 期間日数 |
|---|---|---|---|
| 月末 | 4月15日 | 3/1〜3/31 | 31日 |
| 15日 | 4月15日 | 3/16〜4/14 | 30日 |
| 20日 | 4月15日 | 2/21〜3/20 | 28日 |
【計算例】月20日勤務・日給12,000円のケース
それでは実際に計算してみましょう。
前提条件
– 日給:12,000円
– 賃金締切日:毎月末日
– 直前の締切期間(3月)の就業日数:20日
– 育休開始日:4月10日
ステップ1:賃金合計を求める
12,000円 × 20日 = 240,000円
ステップ2:賃金日額を求める
240,000円 ÷ 31日(3月の日数)= 7,741円(円未満切り捨て)
重要: 分母は「就業日数(20日)」ではなく、「締切期間の総日数(31日)」です。この点が月給制との大きな違いであり、日給者の賃金日額が実際の日給より低くなる理由でもあります。
賃金月額の算出——計算の第二ステップ
賃金日額が求まったら、次は賃金月額を算出します。これは給付金の「基準となる月収」に相当する数値です。
賃金月額の計算式と上限・下限
賃金月額 = 賃金日額 × 30
ただし、賃金月額には厚生労働省が定める上限額と下限額があります(2025年時点)。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 賃金月額の上限(50歳未満) | 466,200円 |
| 賃金月額の上限(50歳以上60歳未満) | 536,100円 |
| 賃金月額の下限 | 77,220円 |
上限・下限額は毎年8月1日に改定されます。最新額はハローワークまたは厚生労働省のWebサイトでご確認ください。
先ほどの計算例の続き
賃金日額(7,741円)× 30 = 232,230円
232,230円は上限(466,200円)・下限(77,220円)の範囲内なので、賃金月額 = 232,230円。
賃金月額が上限・下限に引っかかった場合
上限を超える場合: 上限額(466,200円)が賃金月額として採用されます。
下限を下回る場合: 下限額(77,220円)が賃金月額として採用されます。
給付額の計算——いくらもらえるのか?
賃金月額が確定したら、いよいよ給付額を計算できます。
給付率の仕組み
育休給付金の給付率は、育休期間と育休中の就業状況によって異なります。
| 育休期間 | 就業日数 | 給付率 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日目(パパ・ママ育休プラス含む) | 就業日数10日以下 | 賃金月額の67% |
| 181日目以降 | 就業日数10日以下 | 賃金月額の50% |
2025年の最新情報: 2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、一定条件下で給付率が引き上げられる「育児休業給付の強化」が段階的に実施されています。最新の給付率については、ハローワークまたは厚生労働省の告示を必ずご確認ください。
実際の給付額シミュレーション
先ほど計算した賃金月額232,230円をもとに、給付額を計算してみましょう。
育休開始〜180日目(支給単位期間が2ヶ月ごと)
232,230円 × 67% ≒ 155,594円(月あたり)
2ヶ月分の申請:155,594円 × 2 = 311,188円
181日目以降
232,230円 × 50% = 116,115円(月あたり)
2ヶ月分の申請:116,115円 × 2 = 232,230円
育休中に働いた場合の給付額の調整
育休中に就業した場合(職場復帰訓練・繁忙期の一時就労など)、就業日数と賃金額に応じて給付額が減額・不支給となる場合があります。
| 支給単位期間中の就業日数 | 取り扱い |
|---|---|
| 10日以下(かつ就業時間80時間以下) | 通常通り支給 |
| 11日以上(または就業時間80時間超) | 原則不支給 |
ただし、就業日数が10日以下でも就業中の賃金+給付金が賃金月額の80%を超える場合は、超過した分が減額されます。
申請書類と手続きの流れ
申請の全体フロー
育児休業開始
↓
【STEP 1】事業主がハローワークに「育児休業開始時賃金月額証明書」を提出
↓
【STEP 2】初回支給申請(育休開始日から4ヶ月以内)
↓
【STEP 3】2ヶ月ごとに支給申請書を提出
↓
【STEP 4】支給決定(申請から約2〜3週間後に振込)
↓
【STEP 5】育休終了月に最終申請
申請者は原則として事業主(会社)です。労働者本人がハローワークに直接申請することも可能ですが、多くの場合は会社が代行します。
初回申請に必要な書類
事業主が用意する書類
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク所定様式(初回のみ) |
| 育児休業開始時賃金月額証明書 | 賃金日額・賃金月額の根拠となる賃金情報を記載 |
| 賃金台帳(直近6ヶ月分) | 日給制の場合、就業日数・日給額が明記されたもの |
| 出勤簿またはタイムカード(直近6ヶ月分) | 就業実績の証明 |
| 母子健康手帳(出生証明ページのコピー) | 子の出生事実の確認 |
労働者本人が用意するもの(会社経由で提出)
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者証 | 被保険者番号の確認 |
| 振込先口座情報 | 本人名義の金融機関口座 |
2回目以降の申請書類
2回目以降は育児休業給付金支給申請書(継続用)のみが基本です。ただし、就業日数が変動した場合は実績報告書の添付が求められることがあります。
日給制特有の注意点とよくあるミス
ミス1:期間日数を就業日数で割ってしまう
最も多いミスです。賃金日額の計算式の分母は「賃金締切期間の総日数(暦日数)」であり、「就業日数」ではありません。就業日数で割ると賃金日額が高くなりすぎ、実際の給付額と乖離が生じます。
ミス2:複数の締切期間の賃金を合算する
計算に使うのは「育休開始直前の賃金締切期間1期間分」です。複数月にわたって合計・平均する必要はありません。ただし、その1期間の賃金が著しく低かった場合(産前休業が重なったなど)は、ハローワークへの相談が必要です。
ミス3:交通費(通勤手当)の扱いを間違える
雇用保険の「賃金」には通勤手当も含まれます(実費精算型でも原則含む)。日給に通勤手当を加算した額を賃金合計として計算してください。
ミス4:賃金月額の上限を考慮しない
日給が高い場合、計算上の賃金月額が上限(466,200円)を超えることがあります。その場合は上限額に差し替えて給付額を計算してください。給付基準は計算値ではなく、上限額基準になります。
賃金月額証明書の記載方法(日給制の場合)
日給制の場合、育児休業開始時賃金月額証明書の記載方法が月給制と異なります。担当者がよく迷う箇所を整理しておきます。
賃金額欄への記載
| 欄 | 日給制の場合の記載方法 |
|---|---|
| 賃金の種類 | 「日給」に☑ |
| 賃金支払対象期間 | 育休開始直前の締切期間(1期間)の開始日〜終了日 |
| 賃金支払基礎日数 | その期間の就業日数 |
| 賃金額(A) | 就業日数×日給(+通勤手当等) |
| 期間の日数(B) | 締切期間の暦日数 |
| 賃金日額(A÷B) | 計算値を記入(円未満切り捨て) |
ハローワークの窓口では、記載内容が不明な場合に証明書の書き方を教えてもらえます。事前に賃金台帳・タイムカードを持参して相談することをおすすめします。
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まとめ——日給制の育休給付金計算、3ステップで整理
日給制労働者の育休給付金計算は、以下の3ステップで完結します。
STEP 1|賃金日額 = 育休前最終締切期間の賃金合計 ÷ 締切期間の暦日数
STEP 2|賃金月額 = 賃金日額 × 30
※上限466,200円・下限77,220円の範囲内に収める
STEP 3|給付額(月)= 賃金月額 × 67%(180日目まで)または × 50%(181日目以降)
複雑に見えますが、正しい期間と正しい暦日数を使えば、計算自体は難しくありません。不明点があれば、最寄りのハローワーク(公共職業安定所)に書類を持参して相談することを強くおすすめします。
育休給付金の申請は、労働者の経済的安定を支える重要な制度です。日給制であっても月給制と同等の保障が受けられることを念頭に、適切な手続きを進めてください。
よくある質問
Q1. 日給制で育休直前の月に欠勤が多かった場合、給付額は大きく下がりますか?
賃金日額は「締切期間の賃金合計 ÷ 締切期間の暦日数」で計算されるため、欠勤が多い月(就業日数が少ない月)は賃金合計が減少し、賃金日額が低くなります。ただし、賃金月額の下限(77,220円)があるため、一定額以上は保障されます。また、産前休業中などで賃金額が著しく低くなった場合、ハローワークに実態を説明することで対応策を相談できます。
Q2. 日給制でも産前産後休業中の健康保険の免除は受けられますか?
育休給付金は雇用保険から支給されますが、健康保険料・厚生年金保険料の免除は社会保険(健康保険・厚生年金)の制度です。日給制であっても、社会保険の被保険者であれば産前産後休業・育児休業中の社会保険料免除の対象になります。手続きは事業主が年金事務所・健康保険組合に申請します。
Q3. 育休給付金は課税されますか?確定申告は必要ですか?
育休給付金は非課税所得です。所得税・住民税の課税対象にはならないため、給付金のみを受け取っている期間は確定申告は不要です。ただし、育休中に副業収入がある場合や、育休前の給与収入との兼ね合いで確定申告が必要になるケースがありますので、税務署または税理士にご相談ください。
Q4. 申請の締め切りを過ぎてしまった場合はどうなりますか?
育休給付金には2年の時効があります(雇用保険法第74条)。申請期限を過ぎてしまっても、育休終了日から2年以内であれば遡って申請できます。ただし、過去の支給申請書・就業実績の証明書類が必要になるため、なるべく早くハローワークに相談することをおすすめします。
Q5. 日給制の派遣社員ですが、申請はどこにすればよいですか?
派遣社員の育休給付金の申請は、派遣元(派遣会社)が雇用保険の事業主として手続きを行います。被保険者期間の判定も派遣元での雇用保険加入期間が対象です。まずは派遣会社の担当部署(人事・労務)に育休取得の意向を早めに伝え、手続きの確認を進めてください。
免責事項: 本記事は2025年時点の制度情報に基づいています。給付率・上限額・下限額は毎年改定されることがあります。実際の申請にあたっては、最寄りのハローワークまたは厚生労働省の公式情報をご確認の上、手続きを進めてください。

