障害児手当と育休給付金は両立できる?影響・申請手順を解説

障害児手当と育休給付金は両立できる?影響・申請手順を解説 育児休業制度

育休中にわが子が障害児手当の対象として認定された場合、「育児休業給付金が止まってしまうのでは?」と不安を感じる方は少なくありません。結論から先にお伝えすると、障害児手当の認定を受けても、育児休業給付金は原則として継続して受給できます。

本記事では、なぜ両制度が並行受給できるのか、給付金が停止・減額されるケースはどんな場合か、また障害児手当の申請手続き必要書類まで、実務的な観点からわかりやすく解説します。


育休中に子が障害認定された場合、給付金はどうなる?

制度名 管轄機関 給付内容 対象者 並行受給
育児休業給付金 ハローワーク(厚生労働省) 給付金(月額給与の50~67%) 育休中の対象労働者 〇 可能
特別児童扶養手当 市区町村役場(厚生労働省) 月額手当(1級・2級で異なる) 中程度以上の障害児の保護者 〇 可能
障害児福祉手当 市区町村役場(厚生労働省) 月額手当(一律) 重度障害児本人 〇 可能

育児休業給付金と障害児手当は管轄が異なる別制度

育児休業給付金と障害児手当は、根拠法も管轄省庁もまったく異なる独立した制度です。下表で両制度の性質を比較してみましょう。

項目 育児休業給付金 障害児福祉手当・特別児童扶養手当
根拠法 雇用保険法(第61条の4〜第61条の7) 特別児童扶養手当等の支給に関する法律
管轄省庁 厚生労働省(雇用保険部門) 厚生労働省(社会・援護局)
窓口 ハローワーク(公共職業安定所) 市区町村の福祉担当窓口
財源 雇用保険料(労使折半) 国・都道府県・市区町村の税財源
制度区分 労働系給付 福祉系給付
支給対象 育休取得中の労働者本人 障害児を養育する保護者・本人

このように、育児休業給付金は「休業中の労働者の所得を補償する」労働系の制度であり、障害児手当は「障害のある子どもの養育を社会的に支援する」福祉系の制度です。両制度は対象・財源・根拠がすべて異なるため、一方の受給がもう一方の資格に直接影響することはありません。

育児・介護休業法(第5条)に基づく育児休業の取得要件は、「子どもが障害を持っているかどうか」とは無関係に定められています。あくまでも労働者自身の雇用保険加入状況と就労実態が判断基準となります。

給付金継続に影響するのは「労働実態」のみ

障害認定の有無ではなく、育休中の労働実態が育児休業給付金の支給継続を左右します。ハローワークが審査する主な判断基準は以下の3つです。

条件 基準 超えた場合の影響
月の就労時間 80時間以下 超過すると支給停止
賃金の支給状況 休業前賃金の80%未満 80%以上支給された場合は停止
支給対象月の就労日数 10日以下(10日超の場合は就労時間80時間以下) 超過すると支給停止

たとえば、子どもが障害認定を受けたことをきっかけに会社への連絡や付き添い通院のために職場に出向いても、それ自体は「就労」に該当しない場合もありますが、会社の指示で業務を行えば就労時間にカウントされます。この点は会社の人事担当者にもあらかじめ確認しておきましょう。

重要なのは「子どもの状態が変わったこと」ではなく、「育休取得者本人が就労しているかどうか」という事実のみです。


育児休業給付金の受給要件と注意点

基本的な受給要件チェックリスト

育児休業給付金を受給するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。育休開始前に確認しておきましょう。

【雇用保険の加入要件】
– ☑ 雇用保険の被保険者であること
– ☑ 育児休業を開始した日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること(傷病等の特例あり)

【育休取得の要件】
– ☑ 育児・介護休業法に基づく育児休業を取得していること
– ☑ 有期雇用の場合、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が更新されることが見込まれること

【申請・就労要件】
– ☑ 育休開始から2か月ごとにハローワークへ支給申請を行っていること
– ☑ 支給単位期間(原則1か月)中の就労日数が10日以下、または就労時間が80時間以下であること
– ☑ 支給単位期間中に支払われた賃金が、休業開始前の賃金月額の80%未満であること

【育休延長の場合】

子どもが障害を持ち、医療的ケアや通院が必要な場合でも、育休延長の根拠となるのは「保育所等への入所ができない」「配偶者が死亡・重傷等の特別の事情がある」などの育児・介護休業法に定める事由です。障害認定そのものは育休延長事由に直接該当しませんが、障害の程度によって保育施設の利用が困難であると認められる場合、延長申請が通るケースもあります。詳細は会社の人事担当者やハローワークへ相談してください。

給付金が停止・減額される具体的なケース

育休中であっても、以下のケースに該当すると給付金が一部減額または停止されることがあります。

ケース①:就労時間が月80時間を超えた場合

育休中に会社から業務を依頼され、対応した時間の合計が1か月で80時間を超えると、その月の育児休業給付金は支給されません。子どもの介護や付き添いのために時間を要する状況でも、会社業務を行っていれば就労時間として計算されます。

ケース②:賃金が休業前の80%以上支給された場合

会社から育休中に賃金の80%以上が支払われた場合、その支給単位期間の育休給付金は支給停止になります。会社によっては「独自の育休手当」を支給する場合がありますが、その金額次第では給付金との調整が必要です。

ケース③:就労日数が10日を超え、かつ就労時間も80時間超の場合

就労日数が10日を超える場合でも、就労時間の合計が80時間以下であれば支給対象となります。ただし、両方の基準を超えた場合は支給されません。

ケース④:育休期間が終了した後も申請を継続している場合

育児休業給付金の支給期間は原則として子が1歳になるまでで、延長申請が認められた場合でも最長2歳までです。期間を超えた申請は受理されません。

注意点: 障害児手当(特別児童扶養手当・障害児福祉手当)の受給それ自体は、上記のいずれのケースにも該当しません。給付金の停止・減額は、あくまでも就労状況と賃金支給状況のみで判断されます。


障害児手当の種類と受給要件

育休中に子が障害認定された場合に関係する主な手当は、特別児童扶養手当障害児福祉手当の2種類です。それぞれの制度を整理します。

特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、精神または身体に障害を有する20歳未満の児童を家庭で監護・養育している父母等に支給される手当です。児童福祉法の枠組みの中で、重度の障害児の養育を経済的に支援することが目的です。

項目 内容
根拠法 特別児童扶養手当等の支給に関する法律
支給対象者 20歳未満の障害児を監護する父母または養育者
障害の程度 1級(重度)・2級(中度)
支給月額(2024年度) 1級:55,350円/2級:36,860円
支給月 4月・8月・11月(各前月分まで)
窓口 市区町村の福祉担当窓口

所得制限(年額・2024年度)

扶養親族等の数 受給者本人 配偶者・扶養義務者
0人 4,596,000円 6,287,000円
1人 4,976,000円 6,536,000円
2人 5,356,000円 6,749,000円

育休中は無収入または低収入の状態であることが多く、所得制限に引っかかるケースは比較的少ないと考えられますが、前年度の所得で審査されるため注意が必要です。

支給が停止される主な事由

  • 児童が障害を支給理由とする公的年金を受けられる場合
  • 児童が児童福祉法に規定する障害児入所施設等に入所している場合
  • 保護者が日本国内に住所を有しない場合

障害児福祉手当

障害児福祉手当は、重度の障害があり日常生活において常時介護を必要とする20歳未満の障害児に直接支給される手当です。最重度の障害児の生活を直接支援することが制度の目的です。

項目 内容
根拠法 特別児童扶養手当等の支給に関する法律
支給対象者 重度障害児本人(20歳未満)
支給月額(2024年度) 15,690円
支給月 2月・5月・8月・11月(各前月分まで)
窓口 市区町村の福祉担当窓口

受給対象となる障害の目安

  • 身体障害者手帳1級相当の障害
  • 重度の知的障害(療育手帳の最重度・重度相当)
  • 重症心身障害(肢体不自由と知的障害の重複)
  • 脳性麻痺または進行性筋萎縮症

所得制限(受給者本人・扶養義務者)

受給者本人の前年の所得が一定額(扶養親族0人の場合:3,604,000円)以上の場合、または本人の扶養義務者の前年の所得が一定額以上の場合は支給停止となります。乳幼児期の場合は本人の所得はほぼ問題になりませんが、保護者(扶養義務者)の所得が高い場合は確認が必要です。


申請手続きの流れと必要書類

障害児手当の申請手順

子どもが障害認定を受けた後、特別児童扶養手当・障害児福祉手当を申請する際の流れは以下のとおりです。

STEP 1:障害の診断・認定
  ↓
  医療機関で診断書を取得(手当申請用の様式あり)
  身体障害者手帳・療育手帳等の取得(必要な場合)

STEP 2:市区町村の福祉担当窓口へ相談
  ↓
  申請書類一式を窓口で受け取る
  必要書類の確認・準備

STEP 3:申請書類の提出
  ↓
  居住地の市区町村窓口へ提出

STEP 4:都道府県による認定審査
  ↓
  提出から約2〜3か月で認定通知

STEP 5:手当の支給開始
  ↓
  認定月の翌月分から支給開始

申請に必要な書類

特別児童扶養手当の申請書類

書類 備考
特別児童扶養手当認定請求書 市区町村窓口で入手
診断書(所定様式) 指定の医師に記載を依頼(障害の種類ごとに様式が異なる)
戸籍謄本(請求者・児童) 発行から1か月以内のもの
世帯全員の住民票 マイナンバー記載のものが必要な場合あり
所得状況届(前年分) 1月〜7月申請の場合は前々年分
請求者名義の銀行口座情報 通帳またはキャッシュカードのコピー
マイナンバーを確認できる書類 マイナンバーカード、通知カードなど

障害児福祉手当の申請書類

書類 備考
障害児福祉手当認定請求書 市区町村窓口で入手
診断書(所定様式) 重度障害の状態を証明するもの
戸籍謄本(児童・請求者) 発行から1か月以内のもの
世帯全員の住民票 マイナンバー記載のものが必要な場合あり
所得状況届 扶養義務者分も必要な場合あり
マイナンバーを確認できる書類 全員分が必要な場合あり

ポイント: 診断書の様式は市区町村によって異なる場合があります。必ず提出先の市区町村窓口で最新の様式を受け取ってから、医療機関に記載を依頼してください。

育児休業給付金の申請・継続手続き

子どもの障害認定後も育休を継続する場合、育児休業給付金の申請手続きは通常どおり進めます。

2か月ごとの支給申請の流れ

STEP 1:育休開始後、初回は育休開始日から4か月以内にハローワークへ申請
  ↓
STEP 2:以降は2か月ごとに「育児休業給付金支給申請書」を提出
  ↓
STEP 3:申請のたびに就労時間・賃金支払状況を報告
  ↓
STEP 4:審査後、指定口座へ入金

支給申請に必要な書類

書類 備考
育児休業給付金支給申請書 ハローワーク所定様式または電子申請
賃金台帳・出勤簿のコピー 対象期間分
育児休業取得確認通知書 初回申請時のみ(会社で作成)
母子健康手帳のコピー 子の生年月日確認のため(初回のみ)
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 初回申請時のみ(会社が作成)

給付金の計算方法と受給額の目安

育児休業給付金の支給額は、育休開始前の賃金月額をもとに計算されます。

支給率

育休開始からの期間 支給率
開始〜180日目まで 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
181日目以降 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

計算例

育休前の月給が30万円(賃金日額:約10,000円)の場合:

  • 育休開始〜180日:10,000円 × 30日 × 67% = 約201,000円/月
  • 育休181日〜:10,000円 × 30日 × 50% = 約150,000円/月

なお、2025年度から育休取得促進策の一環として、育休開始後28日間(夫婦ともに育休取得の場合)は支給率が80%に引き上げられる制度改正も実施されています。最新情報はハローワークまたは厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。

また、育児休業給付金の支給上限額・下限額は毎年度変更されます。2024年度の上限額は、育休開始〜180日目が305,319円、181日目以降が228,150円です。


障害認定後の生活設計と手続きのポイント

育休中に子どもの障害が判明した場合、経済的な不安は大きいものです。しかし、活用できる制度を正しく理解することで、二重・三重の支援を受けながら生活を安定させることができます。

活用できる制度の全体像

制度 支給額の目安 窓口
育児休業給付金 月額10〜30万円程度(賃金による) ハローワーク
特別児童扶養手当 1級:月額55,350円/2級:36,860円 市区町村
障害児福祉手当 月額15,690円 市区町村
乳幼児医療費助成 医療費の自己負担分(自治体による) 市区町村
小児慢性特定疾病医療費助成 対象疾病の医療費 都道府県・政令市

手続きを進める際の実務的な注意点

  1. 申請月に注意する: 障害児手当は申請した月の翌月分から支給開始となります。認定審査に時間がかかるため、診断後はできるだけ早く窓口へ相談に行きましょう。
  2. 所得制限の確認: 特別児童扶養手当の所得制限は「前年度所得」で審査されます。育休中であっても前年の収入が高かった場合は制限に引っかかる可能性があります。
  3. 年に一度の所得状況届: 認定後も毎年8月に「所得状況届」を市区町村へ提出する必要があります。提出を忘れると支給が停止されます。
  4. ハローワークへの障害認定の報告は不要: 子どもの障害認定を育児休業給付金の申請窓口(ハローワーク)に報告する義務はありません。通常どおりの支給申請を継続してください。

よくある質問

Q1. 育休中に子が障害児手当を受けると、ハローワークに報告する必要がありますか?

いいえ、報告義務はありません。育児休業給付金の審査基準は育休取得者本人の就労状況と賃金支給状況のみです。子どもの障害認定・手当受給の事実は審査に影響しないため、ハローワークへの申告は不要です。

Q2. 障害児手当と育児休業給付金を同時に受け取ると、税金や社会保険料に影響がありますか?

育児休業給付金は非課税であり、所得税の課税対象になりません。特別児童扶養手当・障害児福祉手当も同様に非課税です。ただし、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除される手続きが別途必要です。申請しないと徴収されるため、会社の人事担当部門を通じて年金事務所へ免除申請を行ってください。

Q3. 育休を延長したい場合、子どもの障害認定は延長理由として認められますか?

障害認定そのものは育児・介護休業法に定める育休延長の直接的な理由には該当しません。ただし、障害の程度や医療的ケアの必要性から保育所等の利用が困難と認められるケースでは、「保育所等への入所ができない場合」として延長が認められる可能性があります。詳細は会社の人事担当者およびハローワークにご相談ください。

Q4. 特別児童扶養手当の認定申請から支給開始まで、どれくらいかかりますか?

申請書類を市区町村へ提出後、都道府県による認定審査を経て通知が届くまで約2〜3か月かかるのが一般的です。支給は認定が下りた月ではなく、請求した月の翌月分からとなります。少しでも早く支給を受けるためには、診断書が揃い次第、速やかに申請することをおすすめします。

Q5. 夫婦ともに育休を取得している場合、両者がそれぞれ育休給付金を受給しながら特別児童扶養手当も受けられますか?

はい、可能です。育児休業給付金は父母それぞれの雇用保険から給付されるものであり、特別児童扶養手当は障害児を養育する保護者に支給されるものです。ただし、特別児童扶養手当はどちらか一方の養育者への支給となります(同一の子どもに対して父母両方から申請することはできません)。また、所得制限は請求者本人と扶養義務者の双方の所得が審査対象となります。


まとめ

本記事のポイントを整理します。

  • 育児休業給付金と障害児手当は管轄・根拠法が異なる別制度であり、原則として両立して受給できる
  • 育休給付金の支給継続に影響するのは「就労時間・賃金支給状況」のみであり、子どもの障害認定は関係しない
  • 障害児手当には「特別児童扶養手当」と「障害児福祉手当」があり、合わせて申請することで月あたり数万円の支援が受けられる
  • 申請はいずれも市区町村の福祉担当窓口が窓口となり、診断書の取得から2〜3か月程度かかる
  • 育休給付金は引き続きハローワークへ2か月ごとに通常申請を行えばよい

子どもの障害認定は保護者にとって大きな出来事ですが、利用できる制度を正確に把握することで、経済的な不安を軽減しながら子育てに集中できる環境を整えることができます。ハローワーク・市区町村の福祉窓口・医療ソーシャルワーカーなどの専門家にも積極的に相談しながら、手続きを一歩一歩進めていきましょう。


免責事項: 本記事の情報は2024年度時点の法令・制度に基づいています。支給額・所得制限額等は毎年度改定される場合があります。最新の情報は厚生労働省、お住まいの市区町村窓口、またはハローワークにてご確認ください。

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