育休を一度取得した後、もう一度取得したい。そう考えているものの「2回目も給付金は出るの?」「条件はどうなるの?」と疑問を持つ方は多いでしょう。
本記事では、複数回の育児休業取得に関する条件・給付金の計算方法・必要書類・申請手順を、最新の法令に基づいて体系的に解説します。育休の再取得を検討している労働者の方はもちろん、社内制度を整備したい人事担当者の方にも役立つ内容です。
2022年10月の育児・介護休業法改正により、同一の子について原則2回まで育休の分割取得が可能になりました。一方、給付金は1回目と2回目を通算してカウントされるため、正確な計算が必須です。本ガイドを参考に、自社・自身の状況に照らし合わせて確認してください。
複数回育休とは?制度の基本と法的根拠
複数回育休とは、同一の子に対して育児休業を1回取得した後、一定の条件を満たすことで再度取得できる制度です。2021年・2022年の育児・介護休業法の改正により、複数回取得のルールが大幅に整備されました。
根拠法令の整理
| 制度名 | 根拠法令 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 育児休業制度(取得権利) | 育児・介護休業法 第5条〜第9条の3 | 取得回数・期間・対象者 |
| 育児休業給付金(お金) | 雇用保険法 第61条の7 | 給付条件・支給額・上限 |
| 出生時育児休業(産後パパ育休) | 育児・介護休業法 第9条の2 | 子の出生後8週以内・最大4週 |
ポイント:育休を「取れるかどうか」は育児・介護休業法、「給付金が出るかどうか」は雇用保険法が根拠です。両方の条件を満たす必要があります。
【複数回取得の大枠ルール(2026年時点)】
育児・介護休業法 → 同一の子について「原則2回まで」分割取得可
雇用保険法 → 同一の子について「通算2回まで」給付金を支給
※出生時育児休業(産後パパ育休)は別途2回まで可
1回目と2回目で何が変わる?取得回数ごとの違い
2022年10月の法改正以降、育児休業は同一の子について原則2回まで分割取得できます。また、産後パパ育休(出生時育児休業)は別途2回まで分割取得できるため、組み合わせると父親は最大4回の休業が可能です。
| 比較項目 | 1回目 | 2回目 |
|---|---|---|
| 育休取得権利 | あり(原則) | あり(条件付き) |
| 給付金の支給 | 対象(雇用保険加入が前提) | 対象(通算上限内) |
| 67%給付率の適用 | 開始〜180日目まで | 1回目と通算で180日以内 |
| 申請書類 | 育児休業給付受給資格確認票など | 育児休業給付金支給申請書(継続) |
重要:2回目育休の「67%給付率」は1回目からの通算日数で判定されます。1回目で180日を超えていた場合、2回目は開始初日から50%になります。
公務員・パート・契約社員は対象になる?
雇用形態による適用可否は以下の通りです。
| 雇用形態 | 育休取得権 | 育休給付金 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 正社員 | ◎ | ◎ | 原則すべて対象 |
| 契約社員・派遣社員 | ◎ | ◎ | 同一企業1年以上継続雇用が条件 |
| パートタイム | ◎ | ◎ | 週所定労働日数3日以上などの要件あり |
| 日雇い労働者 | × | × | 雇用保険加入対象外のため不可 |
| 国家公務員 | ◎ | △ | 給付金は共済組合の手当で対応(雇用保険法対象外) |
| 地方公務員 | ◎ | △ | 同上(各共済組合の規定による) |
複数回育休を再取得できる条件と対象者
2回目の育児休業を取得するには、基本条件と再取得が認められる特定のパターンの両方を満たす必要があります。
基本条件(共通)
- 同一企業に1年以上継続雇用されていること
- 子が2歳に達する日の前日までに育休が終了すること(延長含む)
- 週3日以上の勤務日がある等、雇用保険の加入要件を満たすこと
【パターン別】2回目育休が認められる4つのケース
✅ パターン①:1歳前の分割取得(法定の2回分割)
2022年10月の改正により、1歳までの期間を最大2回に分けて取得できるようになりました。
例)
出生 → [育休1回目:出生〜生後6ヵ月] → 一時復職
→ [育休2回目:生後6ヵ月〜1歳] → 終了
この場合、2回目は申請書類を改めて提出する必要があります。申請期限は休業開始予定日の2週間前までです。
✅ パターン②:待機児童による1歳〜2歳への延長
子が1歳になった時点で保育園に入園できない場合、最大2歳まで延長できます(育児・介護休業法第5条3項)。
- 延長の条件:子が1歳(または1歳6ヵ月)になる日までに保育園の利用申込をしたが入所できない
- 必要書類:市区町村が発行する「保育所等の利用申し込みに係る待機証明書(入所不承諾通知書)」
- 申請先:ハローワーク(給付金の延長申請)+勤務先(休業延長の申出)
【延長の流れ】
1歳到達前 → 「保育所入所不承諾通知書」を取得
→ 勤務先に1歳6ヵ月までの延長申出(書面)
→ ハローワークへ給付金の延長申請
1歳6ヵ月 → さらに入所不可の場合、2歳まで再延長可能
✅ パターン③:配偶者との交互取得(パパ・ママ育休)
父母がそれぞれ育休を取得する場合、通常より2ヵ月長い期間(最大1年2ヵ月)の育休が認められます(いわゆる「パパ・ママ育休プラス」)。
- 条件:配偶者が子の1歳の誕生日以前に育休を取得していること
- 延長後の上限:子が1歳2ヵ月になるまで(給付金の上限は通算1年分)
✅ パターン④:配偶者の死亡・負傷など特別事情による再取得
育休終了後に以下の特別事情が生じた場合、例外的に再取得が認められます(育児・介護休業法第5条2項)。
- 配偶者の死亡
- 配偶者が負傷・疾病・身体・精神上の障害により育児が困難になった場合
- 離婚等による配偶者との別居
- 子の養育者である配偶者が育休を取得することになった場合
よくある落とし穴:再取得が認められないケースとは
以下のケースは申請が却下される可能性が高いため注意が必要です。
| よくある誤解 | 実際のルール |
|---|---|
| 「職場復帰後に自由に2回目が取れる」 | 1歳超の子について職場復帰後に再申請する場合、特別事情が必要 |
| 「子が1歳を超えてから初めて育休を申請できる」 | 原則として子が1歳になるまでの育休取得が前提 |
| 「2回目は別の給付金扱いになる」 | 1回目と通算されるため、給付日数・給付率に影響する |
| 「延長すれば必ず給付金が出る」 | 給付金は雇用保険の加入要件・就労実績要件を満たす必要あり |
給付金の計算方法と支給額の目安
育児休業給付金の基本計算式は以下の通りです。
【育児休業給付金の計算式】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
▶ 休業開始時賃金日額 = 育休開始前6ヵ月の賃金合計 ÷ 180日
▶ 支給日数 = 支給単位期間(原則30日)
▶ 給付率 = 67%(開始〜180日) または 50%(181日以降)
給付率67%と50%の切り替えタイミング
【給付率タイムライン】
育休開始日
│
├─────────────── 180日目(通算)
│ 給付率 67% │ 給付率 50%
│ (手取りのほぼ8割相当) │ (手取りのほぼ6〜7割相当)
│ │
└──────────────────────────┘
※1歳以降の延長期間も50%
月収30万円の場合の目安
| 月収 | 日額換算 | 180日以内(67%) | 181日以降(50%) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約6,667円 | 約134,000円/月 | 約100,000円/月 |
| 30万円 | 約10,000円 | 約201,000円/月 | 約150,000円/月 |
| 40万円 | 約13,333円 | 約268,000円/月 | 約200,000円/月 |
注意:賃金月額の上限(2025年度:約450,300円)があり、計算上の日額にも上限が設けられています。最新の上限額はハローワークの公式ページでご確認ください。
2回目育休の給付金は1回目と別カウント?通算の考え方
2回目の給付金は1回目と「通算」してカウントされます。 別々にリセットされるわけではありません。
【通算カウントのイメージ図】
1回目育休:90日間(給付率67%) ← 1〜90日目
↓ 一時復職(30日)
2回目育休開始
91〜180日目:引き続き67%
181日目〜 :50%に切り替わる
支給対象期間の上限まとめ
| 取得パターン | 給付金の支給上限期間 |
|---|---|
| 通常の育休(1人) | 子が1歳になるまで(最大365日) |
| パパ・ママ育休プラス適用 | 子が1歳2ヵ月になるまで(給付は通算365日まで) |
| 待機児童による延長 | 最大2歳まで(給付は通算最大730日) |
| 出生時育児休業(産後パパ育休) | 最大28日(通算2回まで・別枠) |
申請手続きと必要書類
ハローワークへの手続き手順
2回目育休の申請は基本的に勤務先経由で行います。本人が直接ハローワークに行く必要は原則ありません。
【申請の流れ】
STEP 1:勤務先への育休申出(休業開始2週間前までに書面で)
↓
STEP 2:勤務先が「育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書」を作成
↓
STEP 3:勤務先がハローワークへ提出(最初の支給申請は育休開始から4ヵ月以内)
↓
STEP 4:2ヵ月ごとにハローワークへ継続申請(勤務先経由)
↓
STEP 5:給付金が振り込まれる(申請から約2週間後が目安)
必要書類一覧
初回申請時(勤務先からハローワークへ提出)
| 書類名 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書(初回) | ハローワーク or 厚生労働省サイト | 勤務先が記入して提出 |
| 母子健康手帳(写し) | 本人 | 子の出生日確認用 |
| 賃金台帳・出勤簿(写し) | 勤務先 | 過去6ヵ月分 |
| 雇用保険被保険者証 | 本人 | 番号確認用 |
| 本人の振込先口座情報 | 本人 | 給付金振込先 |
延長申請時に追加で必要な書類
| 書類名 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 保育所等の入所不承諾通知書(待機証明書) | 市区町村 | 子が1歳到達日以降の延長時 |
| 育児休業期間変更申出書 | 勤務先の所定様式または自由書式 | 勤務先への延長申出 |
2026年の法改正ポイントと注意事項
2025〜2026年にかけて、育児・介護休業法・雇用保険法の改正が段階的に施行されています。主な変更点を確認しておきましょう。
| 改正内容 | 施行時期 | 概要 |
|---|---|---|
| 育休取得状況の公表義務(従業員300人超) | 2025年4月〜 | 企業が育休取得率を開示する義務 |
| 柔軟な育休取得の推進(時間単位取得) | 2025年10月〜(予定) | 一部時間単位での育休取得検討中 |
| 給付率の引き上げ検討 | 2026年度以降 | 育休開始28日間は手取り実質100%相当を目指す方向性(法案審議中) |
注意:給付率の変更等は法案審議中のため、最新情報は厚生労働省・ハローワーク公式サイトで必ずご確認ください。
人事担当者が知っておくべき企業側の対応
育休を複数回取得する社員が増える中、企業側にも以下の対応が求められます。
- 育休取得の申出を拒否できない:法定要件を満たす場合、企業は育休取得を拒否できません(育児・介護休業法第6条)
- ハラスメント防止措置の義務化:マタハラ・パタハラ防止のための研修・相談窓口設置が義務
- 給付金の申請代行義務:企業はハローワークへの申請手続きを速やかに行う義務があります
- 社内規定の整備:法改正に合わせた就業規則・育休規程の見直しが必要
よくある質問(FAQ)
Q1. 1回目の育休中に2人目を妊娠した場合、給付金はどうなりますか?
A. 1人目の育休を終了し、産前休業(出産予定日の6週間前から)に切り替えることになります。1人目の給付金は育休終了時点で打ち切りとなり、2人目の産休・育休については別途新たに給付が開始されます。ただし、雇用保険の加入期間算定の特例により、育休中の期間は雇用保険加入期間に算入されます。
Q2. 夫婦で交互に育休を取得する場合、給付金はそれぞれ別に計算されますか?
A. はい。夫婦それぞれが自身の賃金をもとに個別に計算されます。妻の育休給付金と夫の育休給付金は別々の申請・別々の支給となります。同時取得も可能で、双方が給付金を受け取れます。
Q3. 育休中にアルバイト・副業をすると給付金はどうなりますか?
A. 育休中の就労時間が一定の基準(就業日数が月10日以下、かつ就業時間が月80時間以下)を超えると、その月の給付金が減額または不支給となります。副業・アルバイトを検討している場合は、事前にハローワークへご相談ください。
Q4. 育休取得を会社に拒否されました。どうすればいいですか?
A. 法定要件を満たしている場合、会社は育休取得を拒否できません。まず都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談窓口があります。また、社内に育休拒否を理由とした不利益扱い(解雇・降格など)があった場合は、育児・介護休業法違反として会社を指導する対象となります。
Q5. 育休給付金はいつから振り込まれますか?
A. 最初の支給申請(休業開始から約4ヵ月以内が申請期限)をハローワークが処理してから、約2〜3週間後に本人口座へ振り込まれます。2回目以降は2ヵ月ごとの継続申請となります。申請が遅れると給付金の受取も遅れるため、勤務先と連携して速やかに手続きを行いましょう。
Q6. 2回目育休の開始日は自由に設定できますか?
A. 1歳以前の分割取得であれば、育休開始日を自由に設定できます。ただし、勤務先への申出は休業開始予定日の原則2週間前(最低1週間前)までに書面で行う必要があります。1歳を超えての再取得は特別事情がない限り認められないため、計画的に申請する必要があります。
Q7. パパ・ママ育休プラスを利用する場合の手続きは?
A. パパ・ママ育休プラスは勤務先への書面申出で成立し、特別な給付金申請書は不要です。ただし、配偶者が子の1歳の誕生日以前に育休を取得していることが条件となります。勤務先経由でハローワークに通常の給付申請書を提出すれば、自動的に延長期間(1歳2ヵ月まで)の扱いとなります。
まとめ
複数回の育休取得と給付金について、要点を整理します。
- 同一の子について育休は原則2回まで分割取得可能(2022年10月改正)
- 給付金は1回目と2回目を通算してカウントされ、180日までが67%・181日以降は50%
- 延長(最大2歳まで)には入所不承諾通知書が必須
- 申請はすべて勤務先経由でハローワークへ提出
- 2026年度以降の法改正により給付率が変更される可能性があるため、最新情報の確認が重要
- パパ・ママ育休プラスを活用すれば、両親合計で最長1年2ヵ月の育休取得が可能
育休制度は頻繁に改正されています。申請前にはハローワーク(0120-952-532)または都道府県労働局雇用環境・均等部への事前確認を強くおすすめします。
本記事は2026年1月時点の法令・情報をもとに作成しています。制度の詳細や最新情報は必ず厚生労働省・ハローワーク公式サイト(https://www.hellowork.mhlw.go.jp)にてご確認ください。

