育休に入ったとたん、「上の子の保育料がそのまま続くのは家計的にきつい…」と感じる方は少なくありません。実は、育休取得中に上の子の保育料が減免される制度を設けている自治体が各地に存在します。ただし国の統一ルールではないため、「知らなかった」「手続きを忘れた」というケースも多く見られます。
この記事では、制度の仕組みから対象者の条件、申請に必要な書類、窓口への提出手順、よくあるつまずきポイントまでを体系的に解説します。育休取得を控えた方も、すでに育休中の方も、ぜひ最後までお読みください。
育休中に保育料が減免される制度とは?基本をやさしく解説
制度の概要と背景
育休中の保育料減免制度とは、下の子のために育児休業を取得している期間中、認可保育所などに通う上の子の保育料を自治体が減額・免除する仕組みです。
この制度が生まれた背景には、育休中の経済的矛盾があります。育休中は育児休業給付金を受け取るとはいえ、収入は休業前より確実に減少します。にもかかわらず、下の子の育児に専念しているあいだも上の子の保育料は毎月発生し続けます。「自宅にいるのに保育料を払い続ける」この状況は、育休取得を躊躇させる一因にもなってきました。
そこで一部の自治体では、育休取得者の経済的負担を軽減し、仕事復帰を後押しするために、独自財源を使った保育料減免制度を導入しています。
重要なポイント: この制度は法律で定められた全国統一の制度ではありません。実施しているかどうか、減免の幅や条件は自治体によって大きく異なります。まず、お住まいの市区町村の保育課に確認することが最初のステップです。
幼保無償化と保育料減免制度は何が違う?
「幼保無償化で保育料はタダになるのでは?」と思われる方もいますが、幼保無償化と育休中の保育料減免制度はまったく別の制度です。以下の表で違いを整理します。
| 比較項目 | 幼保無償化(子育て支援法) | 育休中の保育料減免(自治体独自制度) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 子ども・子育て支援法 | 児童福祉法第24条に基づく自治体裁量 |
| 対象年齢 | 原則3歳〜5歳 | 主に0歳〜2歳(自治体による) |
| 全国統一か | 全国統一 | 自治体ごとに異なる |
| 申請の要否 | 支給認定申請が必要 | 別途、減免申請が必要 |
| 適用タイミング | 年齢に達した月以降 | 育休取得中のみ |
| 対象者の条件 | 年齢要件のみ(原則) | 育休取得中の保護者 |
0歳〜2歳の子どもは幼保無償化の対象外(住民税非課税世帯を除く)であるため、育休中に保育料の負担が重くなりやすい年齢層です。この層を支援するために設けられているのが、育休中の保育料減免制度です。
つまり、3歳以上の子どもが在園している場合は幼保無償化が適用されますが、0〜2歳の子どもが在園しているケースでは、この減免制度が頼みの綱となります。
制度が「ない」自治体もある理由
育休中の保育料減免制度の法的根拠は、児童福祉法第24条に定める「市町村は保育を実施する責任を負う」という規定です。ただし同条は、市町村が保育料減免を行う「義務」までは規定していません。あくまでも各自治体の裁量判断による任意の支援制度であり、財源も自治体の独自財源(一般財源)から捻出されます。
そのため、
- 財政状況が厳しい自治体は制度を設けていないことがある
- 制度があっても減免幅が自治体によって異なる(50%減免〜全額免除まで様々)
- 対象施設の範囲(認可保育所のみか、認定こども園・小規模保育事業も含むか)も異なる
という現実があります。
まずはお住まいの市区町村の公式ウェブサイトまたは保育課の窓口に問い合わせ、制度が存在するかどうかを確認しましょう。
対象者の条件チェックリスト【5項目で自己判定】
申請前に、以下の5項目を確認してください。すべてに該当する場合は、申請対象となる可能性が高いです(最終判断は各自治体)。
✅ チェック1:認可保育所・認定こども園に在籍する子(上の子)がいる
✅ チェック2:育児・介護休業法に基づく育児休業を取得している(または取得予定である)
✅ チェック3:育休取得の理由が「下の子の出産・育児」である
✅ チェック4:当該市区町村に住民票がある
✅ チェック5:在籍保育所が自治体の制度対象施設に含まれている
1つでも該当しない項目があれば、要件を満たさない可能性があります。 特にチェック5は見落とされがちです。認可外保育施設や企業内保育所は対象外となるケースがほとんどです。
対象となる保育料の範囲(上の子のみ)
この制度で減免されるのは、下の子の育休中に保育所に通い続けている上の子(在園児)の保育料です。下の子自身の保育料ではない点に注意してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減免対象 | 在園している上の子の保育料 |
| 減免の対象外 | 実費徴収分(給食費・教材費・行事費など) |
| 適用期間 | 育休開始日〜育休終了日(自治体により月単位での適用) |
| 上限額 | 自治体が定める減免上限額の範囲内 |
給食費や教材費などの実費徴収分は減免対象外となることがほとんどです。制度を利用しても完全に「0円」になるわけではない点は事前に把握しておきましょう。
対象外となるケースと注意点
以下に該当する場合は、申請しても減免が認められない可能性があります。
| 対象外のケース | 理由・補足 |
|---|---|
| 企業内保育施設の利用 | 自治体の補助制度対象外 |
| 認可外保育施設の利用 | 多くの自治体で対象外(一部例外あり) |
| 育休を取得していない場合 | 育休取得が減免の前提条件 |
| 自営業・フリーランスで雇用保険未加入 | 育児・介護休業法上の育休取得者に該当しないケースがある |
| 育休終了後の保育料 | 育休終了と同時に通常料金に戻る |
| 他の減免制度との重複適用 | 多子世帯減免など他制度との併用可否は自治体に確認 |
特に自営業・フリーランスの方は、雇用保険に加入していないため育児・介護休業法上の「育休取得者」と認定されないケースがあります。この場合、制度の適用対象外となる自治体が多いため、事前確認が欠かせません。
申請手続きの流れと必要書類
申請から減免開始までのステップ
手続きの全体像を把握しておくことで、書類の準備漏れや期限切れを防ぐことができます。以下の7ステップで進めましょう。
STEP 1:居住自治体に制度の有無を確認する
↓
STEP 2:在籍保育所に育休取得の予定を事前相談する
↓
STEP 3:勤務先から「育休取得証明書」を発行してもらう
↓
STEP 4:市区町村保育課から「保育料減免申請書」を入手する
↓
STEP 5:必要書類をそろえて申請窓口に提出する
↓
STEP 6:審査・承認を受ける(目安:2週間〜1ヶ月)
↓
STEP 7:育休終了時に「育休終了通知」を提出し、通常保育料に戻る
STEP 2の保育所への事前相談を忘れがちですが非常に重要です。 育休中も子どもを保育所に通わせ続けるためには、「保育が必要な理由」が継続していることを自治体に認めてもらう必要があります。育休中は「保育を必要とする事由」が変更になりますので、支給認定の変更手続きも併せて行う必要があります。
必要書類の一覧
自治体によって異なりますが、一般的に求められる書類は以下のとおりです。事前に保育課に確認して漏れなく準備しましょう。
必須書類(ほぼすべての自治体で必要)
| 書類名 | 発行・取得元 | 備考 |
|---|---|---|
| 保育料減免申請書 | 市区町村保育課(窓口またはHP) | 自治体所定の様式を使用 |
| 育休取得証明書(または育休通知書) | 勤務先企業の人事・総務部門 | 育休開始日・終了予定日の記載が必要 |
| 保育所在籍証明書 | 在籍保育所 | 在籍児童の氏名・入所日などを記載 |
| 母子健康手帳(下の子の出生証明部分) | 出産後に記載済みのもの | 出産事実の確認用 |
| 申請者の身分証明書 | 運転免許証・マイナンバーカードなど | 窓口持参時に必要 |
追加で求められることがある書類
| 書類名 | 発行・取得元 | 求められるケース |
|---|---|---|
| 住民税課税証明書 | 市区町村税務課 | 収入確認が必要な自治体の場合 |
| 雇用保険受給資格者証または育児休業給付受給資格確認通知書 | ハローワーク(会社経由で交付) | 雇用保険被保険者であることの確認 |
| 支給認定変更申請書 | 市区町村保育課 | 保育が必要な事由が変わる場合 |
| 育休終了予定通知書 | 勤務先から取得または自己申告 | 育休終了後の更新手続き時 |
書類取得のタイムラグに注意: 勤務先からの証明書は発行まで数日〜1週間かかることがあります。育休開始前から余裕をもって依頼しておきましょう。
申請期限と申請窓口
申請期限
多くの自治体では、育休開始月または翌月末を申請期限として設定しています。ただし、申請期限を過ぎても遡及して適用される自治体と、申請月からしか適用されない自治体があります。早めの申請が原則です。
| 申請タイミング | 一般的な扱い |
|---|---|
| 育休開始前(事前申請) | 最も確実。育休開始日から適用されるケースが多い |
| 育休開始月中 | ほぼすべての自治体で開始月からの適用が可能 |
| 育休開始翌月以降 | 遡及適用しない自治体も多い。要注意 |
申請窓口
| 申請方法 | 詳細 |
|---|---|
| 窓口持参 | 市区町村保育課・子育て支援課(自治体により名称異なる) |
| 郵送申請 | 受け付けている自治体と受け付けていない自治体がある |
| オンライン申請 | マイナンバーを活用したオンライン手続きに対応する自治体が増加中 |
保育料はいくら安くなる?減免額の計算方法と目安
減免額の決まり方
減免額は自治体ごとに設定方式が異なりますが、大きく以下の3パターンに分類できます。
| 減免パターン | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 全額免除型 | 育休中は保育料を0円にする | 東京都世田谷区など一部自治体 |
| 定率減額型 | 保育料の一定割合を減免する | 保育料の50%減額など |
| 定額減額型 | 月額一定金額を上限に減免する | 月額1万円を上限に減免など |
減免額の試算例
認可保育所に通う0〜2歳児の保育料は、世帯の住民税額(前年度の所得)によって決まります。以下は一般的な保育料と減免後の負担イメージです(あくまでも目安)。
| 世帯収入の目安(年収) | 一般的な月額保育料の目安 | 50%減免の場合 | 全額免除の場合 |
|---|---|---|---|
| 〜250万円 | 〜1万円程度 | 〜5,000円 | 0円 |
| 250〜400万円 | 約1.5〜3万円 | 約7,500〜1.5万円 | 0円 |
| 400〜600万円 | 約3〜5万円 | 約1.5〜2.5万円 | 0円 |
| 600万円以上 | 約5〜7万円 | 約2.5〜3.5万円 | 0円 |
※上記はあくまでも参考値です。実際の保育料は自治体の保育料表に基づいて決定されます。
重要: 保育料は「住民税課税額」をもとに算定されます。育休取得年度の翌年は収入が下がっている場合でも、前年(または前々年)の所得をベースに算定されるケースがほとんどです。収入が大きく変動した場合は、自治体に相談してみましょう。
iDeCoや生命保険料控除と保育料の関係
「iDeCoに加入すると保育料が下がる」という情報を目にしたことがある方もいるかもしれません。iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になるため、課税所得が下がり、翌年度の住民税額が減少します。住民税額が保育料の算定基準になっている自治体では、iDeCoの掛金分だけ保育料が下がる可能性があります。ただし、保育料の算定方式は自治体によって異なるため、必ずしも全員に当てはまるわけではありません。
育休延長・早期復職時の保育料への影響
育休延長した場合
育休を1年から1年半、または2年に延長した場合でも、延長後も育休取得中である限り減免制度の適用が継続されるケースが多いです。ただし、延長の都度「育休延長の証明書類(育休延長通知書など)」の提出を求められる自治体があります。
延長手続きが遅れると、いったん通常保育料に戻されてしまうことがあるため、延長が決まったら速やかに保育課に連絡しましょう。
| 育休延長時の対応 | 内容 |
|---|---|
| 提出書類 | 育休延長通知書、ハローワークの受給期間延長通知など |
| 提出先 | 市区町村保育課 |
| 提出タイミング | 当初の育休終了予定日より前に提出 |
早期復職(育休途中で職場復帰)した場合
育休期間の途中で職場に復帰した場合、復職日から通常の保育料に戻ります。この際、勤務先から「育休終了(復職)証明書」が発行されますので、保育課に提出してください。
過払いが発生した場合は返金手続きが必要になることもありますが、逆に減免終了を報告せずにいると不正受給とみなされる可能性があります。復職が決まったら速やかに保育課に連絡することが大切です。
自治体別制度の確認方法と相談窓口
居住自治体の制度確認方法
- 市区町村の公式ウェブサイトを検索(「〇〇市 育休 保育料 減免」で検索)
- 市区町村の保育課・子育て支援課に電話(番号は自治体HPに掲載)
- 子育て支援センター・保育所を通じた確認も有効
制度がない自治体に住んでいる場合
制度がない自治体では保育料の減免は受けられませんが、以下の代替的な支援を活用できる可能性があります。
| 代替支援 | 内容 |
|---|---|
| 多子世帯保育料軽減 | 第2子・第3子の保育料減免(所得制限あり) |
| 低所得世帯向け減免 | 住民税非課税世帯への保育料軽減 |
| 自治体の子育て給付金 | 独自の現金給付で保育料相当分を補助する自治体もある |
| 児童手当の活用 | 保育料の一部充当 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 産休中も保育料の減免は受けられますか?
産休(産前・産後休業)中は育休ではないため、「育休中の保育料減免制度」の対象外となる自治体がほとんどです。ただし、産休中も独自に減免対象としている自治体もあります。産休・育休それぞれについて確認が必要です。
Q2. 申請を忘れていました。遡及して減免してもらえますか?
自治体によります。申請日以降分しか認めない自治体が多いですが、一部の自治体では育休開始月まで遡及して適用してくれるケースもあります。気づいたらすぐに保育課に相談してください。
Q3. 認可外保育施設(ベビーシッターなど)でも減免は受けられますか?
多くの自治体では、認可外保育施設は減免制度の対象外です。ただし、認可外保育施設への補助制度を別途設けている自治体もありますので、確認してみましょう。
Q4. 育休中でも、夫婦どちらの育休取得でも減免対象になりますか?
多くの自治体では、父・母どちらが育休を取得していても申請可能です。「育児・介護休業法に基づく育休取得者」であることが要件のため、パパ育休を取得した場合も対象になるのが一般的ですが、念のため自治体に確認しましょう。
Q5. 育休中に転居した場合、減免はどうなりますか?
転居先の自治体に制度があれば、新居の自治体で改めて申請することで減免を受けられる可能性があります。ただし、保育所の継続入園自体が転居によって認められなくなるケースもありますので、転居前に両方の自治体に確認することをおすすめします。
Q6. 育休中の保育料減免と多子世帯減免は同時に受けられますか?
自治体によって異なります。どちらか有利な方を選択する形になる自治体もあれば、重複適用できる自治体もあります。保育課に具体的な条件を確認してください。
Q7. 申請書類は何部必要ですか?原本とコピーはどうすればいいですか?
基本的には正本1部の提出で足りますが、「控え」として手元用のコピーを作成しておくことを強くおすすめします。審査状況の確認や、育休延長時の再申請の際に役立ちます。窓口での申請時に「控えに受付印を押してもらう」ようにするとより安心です。
まとめ:育休中の保育料減免、申請の5つのポイント
育休中の保育料減免制度について、重要なポイントを最後に整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ① まず確認 | 自治体に制度の有無を問い合わせる(国の統一制度ではない) |
| ② 早めの申請 | 育休開始前または開始月中に申請するのが原則 |
| ③ 書類を揃える | 勤務先発行の育休証明書・減免申請書・母子手帳などを準備 |
| ④ 延長・復職を報告 | 育休延長・早期復職の際は速やかに保育課へ連絡 |
| ⑤ 他制度との組み合わせ | 多子世帯減免・無償化との組み合わせ可否を確認 |
育休中は何かと手続きが重なりがちですが、保育料の減免は申請しなければ自動的に適用されません。家計への影響も大きいため、育休取得の準備と並行して早めに動くことが大切です。不明点は遠慮なく市区町村の保育課へ相談してください。
参考法令・関連制度
- 児童福祉法第24条(市町村の保育の実施責任)
- 育児・介護休業法(育児休業の取得要件)
- 子ども・子育て支援法(幼児教育・保育の無償化)
- 各市区町村の保育料減免に関する規則・要綱

