賃金月額に含まれる給与の範囲|育休給付金計算の基本【2026年対応】

賃金月額に含まれる給与の範囲|育休給付金計算の基本【2026年対応】 育休給付金

育休給付金の申請を前に「自分の給付金額はいくらになるのか」と計算しようとして、「賃金月額に何の給与が含まれるのか分からない」と壁にぶつかる方は少なくありません。基本給だけなのか、各種手当も含まれるのか、この判断を誤ると給付金額が実際より少なく見積もられてしまうことがあります。

本記事では、育休給付金の賃金月額に含まれる給与の範囲を法的根拠とともに体系的に解説します。給与明細を手元に置いて、ぜひ確認しながらお読みください。


育休給付金の賃金月額とは|制度の基本を押さえる

賃金月額の定義と給付額算出の流れ

育休給付金(育児休業給付金)の給付額は、次の計算フローで算出されます。

【賃金月額】 × 【給付率】 = 【月額給付額】

給付率は、育休取得期間によって異なります。

育休取得期間 給付率
育休開始から180日目まで 67%
181日目以降 50%

つまり、賃金月額が高ければ高いほど給付金額も大きくなるため、何が賃金月額に含まれるかの判定は給付金計算の出発点として非常に重要です。

賃金月額は、育休開始前の過去12ヶ月分の賃金合計を180で割った額に30を乗じた額(実質的な月平均賃金)として算定されます。なお、賃金月額には上限額(2025年現在:約458,100円)と下限額(約77,220円)が設けられています。

また、2022年10月に創設された出生時育児休業給付金(通称:産後パパ育休)も同様の賃金月額を基準に計算されますが、給付率は一律67%となっています。

なぜ給与範囲の判定が重要なのか

賃金月額に含まれる給与の範囲を誤って判定すると、以下のような問題が生じます。

  • 過少計上のリスク:時間外手当や通勤手当を「含まれない」と誤解し、給付金額を低く見積もってしまう
  • 過大計上のリスク:臨時的な賞与や一時金を含めてしまい、実際の給付額と乖離する
  • 申請書類の記載ミス:ハローワークへの申請書に誤った賃金額を記載することで、修正・再申請の手間が発生する

特に給与体系が複雑な企業(残業が多い職種、手当の種類が多い職場)では、正確な判定が不可欠です。


【完全ガイド】含まれる給与の全パターン

雇用保険法第13条は「賃金」を「賃金、給料、手当、賞与その他の名称を問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定義しています。ただし、すべての支給物が賃金月額に算入されるわけではありません

基本給は100%含まれる|計算の起点

基本給は、賃金月額計算の中核をなす要素です。月給制・日給制・年俸制いずれの雇用形態でも、労働契約書や就業規則に定められた基本報酬の全額が算入されます。

給与明細で確認する際は、「基本給」「本俸」「基準内賃金」などと記載されている金額が該当します。年俸制の場合は年俸額を12で割った月額が基本給相当額となります。

確認ポイント:雇用契約書の「賃金」欄の金額と給与明細の基本給欄が一致しているか照合しましょう。

定期的手当(役職手当・資格手当・家族手当など)の判定基準

毎月決まった額が支給される定期的手当は、原則として賃金月額に含まれます。

手当の種類 含否 判定の理由
役職手当・職務手当 ✅ 含む 職務に対する固定報酬として毎月支給
資格手当・技能手当 ✅ 含む 保有資格・スキルに対する定期的給付
勤続手当 ✅ 含む 継続雇用に対する定期的報酬
地域手当・勤務地手当 ✅ 含む 勤務地に応じた固定的手当
家族手当・扶養手当 ✅ 含む 配偶者・子の扶養に応じた定期支給
住宅手当(固定額) ✅ 含む 毎月一定額が支給される場合

判定の核心:「毎月、一定の条件のもとで支給されるか」が含否の基準です。条件が変わらない限り固定的に支給される手当は含まれると考えてください。

変動給(時間外手当・休日手当・深夜手当)の計算方法

時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金も、賃金月額に含まれます。ただし、月によって金額が変動するため、過去12ヶ月の総額を集計して月平均を算出します。

時間外手当の月平均 = 過去12ヶ月の時間外手当合計 ÷ 12
変動給の種類 含否 算入方法
時間外(残業)手当 ✅ 含む 過去12ヶ月平均
休日勤務手当 ✅ 含む 過去12ヶ月平均
深夜勤務手当 ✅ 含む 過去12ヶ月平均
交替勤務手当 ✅ 含む 過去12ヶ月平均
皆勤手当 ✅ 含む 育休前の支給実績を参照

注意:皆勤手当は育休取得後は事実上受給できなくなりますが、育休前の賃金月額算定には含まれます。

通勤手当・交通費の扱い|「異常な高額」に注意

通勤手当は、通常の通勤に要する交通費相当額であれば賃金月額に含まれます

ただし、雇用保険法の解釈上、「異常なほど高額」と判断される通勤手当は除外される場合があります。具体的な上限金額は明示されていませんが、実態にそぐわない高額な手当(たとえば通勤実費とかけ離れた額)は算入されない可能性があります。

ケース 判定
電車・バスの定期代相当額 ✅ 含む
マイカー通勤の距離に応じた手当 ✅ 含む(合理的な範囲内)
実態と乖離した異常な高額通勤手当 ⚠️ 除外される場合あり

【重要】含まれない給与のパターン

含まれる給与と同じくらい重要なのが、算入されない給与の把握です。

支給の種類 含否 理由
賞与・ボーナス(3ヶ月を超える期間ごと) ❌ 含まない 臨時・一時的な支給のため
解雇予告手当 ❌ 含まない 賃金ではなく補償金
退職金 ❌ 含まない 賃金ではなく退職給付
結婚祝い金・出産祝い金 ❌ 含まない 臨時的・慶弔的給付
財形貯蓄奨励金(会社負担分) ❌ 含まない 賃金の対償に当たらない
通勤費の実費精算(領収書払い) ❌ 含まない 費用弁償的性格

「賞与」について補足:毎月支給される賞与(月次賞与)は3ヶ月以内の期間ごとに支払われる場合、賃金月額に含まれます。四半期ごと・年2回など3ヶ月を超える間隔の賞与は含まれません。


賃金月額の計算シミュレーション

実際の給与明細を想定した計算例を確認しましょう。

計算例:Aさんのケース(月給制・残業あり)

【給与明細の内訳(育休前12ヶ月分の月平均)】

基本給              : 250,000円
役職手当            :  30,000円
資格手当            :  15,000円
家族手当            :  10,000円
時間外手当(12ヶ月平均):  40,000円
通勤手当            :   8,000円
------------------------------------
賃金月額合計         : 353,000円

※ 年2回の賞与(各30万円)は除外
【給付金額の計算】

育休開始〜180日目:353,000円 × 67% = 約 236,510円/月
181日目以降   :353,000円 × 50% = 約 176,500円/月

このように、手当を正確に算入するかどうかで月額数万円単位の差が生まれることがわかります。


申請時の確認手順と必要書類

賃金月額を正確に申請するために、以下の書類と手順を確認してください。

必要書類

書類名 入手先 確認ポイント
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 事業主(会社)が作成 過去6ヶ月の賃金が正確に記載されているか
育児休業給付金支給申請書 ハローワーク/会社 支給対象期間・賃金月額の記載
給与明細書(過去12ヶ月分) 会社の給与担当 各手当の支給実績の確認用
母子健康手帳(写し) 本人保管 出産日・育休開始日の確認

申請の流れ

  1. 育休開始の1ヶ月前までに:会社の人事・総務担当に育休取得を申し出る
  2. 育休開始後2ヶ月経過後:初回の育児休業給付金支給申請(会社経由でハローワークへ提出)
  3. 以降2ヶ月ごと:継続申請(支給対象期間終了後のハローワーク指定期限内)

申請期限の注意:支給申請は支給対象期間の末日翌日から起算して2ヶ月以内が原則です。期限を過ぎると原則として給付が受けられなくなるため注意してください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に給与が支払われた場合、給付金はどうなりますか?

育休中に会社から賃金が支払われた場合、その額に応じて給付金が減額・不支給となります。支給された賃金が休業前賃金の80%以上になると給付金は支給されません。13%以上80%未満の場合は一部支給となります。

Q2. 昇給・降給があった場合、賃金月額はどの時点の給与で計算されますか?

賃金月額は育休開始前の過去12ヶ月分の賃金実績に基づいて算定されます。育休直前に昇給した場合でも、12ヶ月分の平均値が基準となるため、昇給月数が少ないほど反映率は低くなります。

Q3. パートタイム・契約社員でも同じ計算方法ですか?

はい、雇用保険の被保険者であれば雇用形態を問わず同様の計算方法が適用されます。ただし、所定労働時間が週20時間未満の場合は雇用保険の被保険者に該当しないため、給付金を受け取ることができません。

Q4. 会社が作成する「賃金月額証明書」に誤りがあった場合はどうすればいいですか?

給与明細と照合し、手当の記載漏れや金額の誤りを発見した場合は、ハローワークに訂正を申し出ることができます。証明書の修正は会社経由で行うのが原則ですが、会社側の対応が困難な場合はハローワークへ直接相談してください。

Q5. 育休前の12ヶ月以内に産休(産前産後休業)が含まれる場合はどうなりますか?

産休期間は賃金月額の算定から除外されます。産休が含まれる場合は、産休前の賃金支払い実績がある月に遡って12ヶ月分を集計します。


まとめ

育休給付金の賃金月額に含まれる給与の範囲を整理すると、以下のポイントが重要です。

ポイント 内容
✅ 基本給 全額算入
✅ 毎月支給の固定手当 役職・資格・家族・地域手当など全額算入
✅ 変動給(残業・休日・深夜手当) 過去12ヶ月平均で算入
✅ 通勤手当 合理的な範囲内で算入
❌ 賞与・一時金(3ヶ月超) 除外
❌ 退職金・慶弔見舞金 除外

給与体系は会社によって異なります。給与明細・雇用契約書・就業規則の3点セットで確認し、不明な点は会社の人事担当またはハローワーク(最寄りの公共職業安定所)に相談することをおすすめします。

正確な賃金月額の把握により、受け取るべき給付金を過不足なく申請してください。


参考法令・公的情報源
– 雇用保険法 第13条(賃金の定義)
– 雇用保険法施行規則 第64条〜第67条
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続について」
– ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)

よくある質問(FAQ)

Q. 育休給付金の賃金月額に基本給は含まれますか?
A. はい、基本給は賃金月額に100%含まれます。月給制・日給制・年俸制いずれの雇用形態でも、労働契約書に定められた基本報酬の全額が算入されます。

Q. 役職手当や資格手当は賃金月額に含まれますか?
A. はい、毎月決まった額が支給される定期的手当は原則として含まれます。役職手当、資格手当、家族手当、勤続手当なども対象です。

Q. 時間外手当(残業代)は育休給付金の計算に含まれますか?
A. はい、含まれます。過去12ヶ月の時間外手当合計を12で割った月平均額が賃金月額に算入されます。

Q. 賃金月額の計算方法を教えてください。
A. 育休開始前の過去12ヶ月分の賃金合計を180で割った額に30を乗じた額です。なお、2025年現在、賃金月額には約77,220円~458,100円の上限・下限が設けられています。

Q. 臨時的な賞与やボーナスは賃金月額に含まれますか?
A. 一般的に、臨時的で一時的な支給物は含まれません。毎月決まって支給される定期給与のみが対象です。詳細は企業の給与体系によるため確認が必要です。

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