育休給付金の返納が必要な違反ケース5選【返納額の計算方法・期限】

育休給付金の返納が必要な違反ケース5選【返納額の計算方法・期限】 育休給付金

育児休業給付金は、子育てと仕事の両立を支援する重要な制度ですが、不適切な受給状況が判明すると返納義務が生じます

この記事では、実際に返納請求される主要なケース5つを、法的根拠・計算方法・具体例を交えて完全解説します。返納期限や手続き手順についても網羅しているため、育休取得予定者や人事担当者の方は必ず確認してください。


育休給付金の返納制度とは|法的根拠と基本ルール

育休給付金返納制度の法的根拠

育休給付金の返納制度は、雇用保険法第115条に基づいています。

法律 条文 規定内容
雇用保険法 第115条 不正な給付を受けた場合の返還義務
雇用保険法施行規則 第107条 支給要件の詳細(就業・給与受給基準)
育児休業給付金支給要件確認票 厚労省規定 月次報告時の確認項目
雇用保険法施行規則 第108条 返納額の計算方法

重要ポイント: 育休給付金は「育児休業中」という状態に対して支給されるため、その条件を満たさなくなった場合は、支給済み給付金を返納する必要があります。これは「不正受給」に該当し、延滞金の対象になることもあります。

返納と返金の違いは何か

育休給付金に関する「返納」と「返金」の定義を整理します。

区分 返納 返金
定義 支給済み給付金を返還請求される 申請時点で本来支給額が確定し、差額を調整
対象者 支給後に支給条件違反が判明した者 支給中に条件変更(給与受給等)が生じた者
手続き ハローワークが督促状を発行 月次確認票提出時に自動計算・調整
延滞金 対象になる可能性あり 通常は対象外

実務的には両者を「返納」と総称する場合が多いため、本記事では「返納」で統一して説明します。

対象者となる人の範囲

育休給付金の返納義務が生じる対象者は、以下のいずれかに該当する者です。

  • 育休期間中に月10日を超える就業日がある者
  • 育休期間中に給与・賞与を受け取った者
  • 育児休業の実態がなく虚偽申請した者
  • 離職者として育休給付を受けながら新たに就職した者
  • 給付金算定時の申告内容に誤りがあった者

就業しながらの受給|最も多い違反ケース

月10日を超える勤務での返納額計算

最も多い違反ケースが、育休期間中に勤務日数が月10日を超える場合です。育児休業給付金の支給要件は「育児休業期間中の就業日数が月10日以下」と明確に定められています。

返納計算の基本ルール

育休給付金が支給される条件は月10日以下の就業です。月11日以上の勤務で支給条件違反となり、その月の育休給付金全額が返納対象になります。

具体例1:月15日勤務した場合

項目 金額・内容
基本給 30万円
想定育休給付金(月額) 15万円(基本給の50%)
育休期間 4月1日~4月30日
実際の勤務日数 15日
違反判定 月10日を超える → 支給条件違反
返納額 15万円全額
返納期限 ハローワークから督促を受けた日から30日以内

重要: 4月に既に15万円を受け取っていれば、その全額を返納する必要があります。

具体例2:月11日勤務(わずかな超過)

月10日を「1日超過」したのみでも、その月の給付金全額返納が原則です。「11日目は数時間だけ」という場合でも、1日として数えられます。

項目 内容
勤務日数 11日
超過日数 1日(月10日超過)
返納額 その月の給付金全額
返納義務 免除されない

テレワーク・在宅勤務は「就業」に該当するか

これは多くの労働者が誤解する重要なポイントです。

結論:テレワーク・在宅勤務も「就業」に該当し、育休給付金の返納対象になります。

テレワーク就業の判定基準

厚生労働省の通知では、育児休業中の就業判定について以下のように規定しています。

就業形態 判定 理由
オフィス出勤 就業 明確に労働時間が発生
テレワーク 就業 在宅でも労働時間は発生
在宅勤務 就業 テレワークと同じ扱い
メール対応のみ 就業(1日) 労務提供に該当
オンライン会議出席 就業(1日) 労働日数に計上
資料作成・提出 就業(1日) 勤務日数に計上

実際の違反事例:
– 育休中にテレワークで月12日勤務 → 返納対象
– 在宅で顧客対応を月15日実施 → 返納対象
– 自宅でメール業務を週3日実施(月12日相当) → 返納対象

就業日数の数え方と注意点

就業日数は「実時間」ではなく「日数」で計算される点が重要です。

就業日数のカウント方法

パターン 日数計上 備考
1日フルタイム勤務 1日 8時間以上の勤務
1日4時間以上の勤務 1日 半日勤務でも1日扱い
1日4時間未満の勤務 カウントなし ただし複数日の合算で4時間以上なら1日に計上
複数日の細切れ勤務 合算して計上 例:2時間×3日=6時間で1日分

注意点

  1. 給与支給形態に関わらず計上
  2. 時給・日給・月給どれでも、勤務日数でカウント

  3. 有給休暇の使用は就業に含まれない

  4. 有給で休んだ日は「就業日」にカウントされない

  5. 育休から復帰した月の計算

  6. 復帰日によって当月の就業日数判定が変わる
  7. 例:4月20日復帰なら、4月1日~19日の育休日数で判定

  8. 給与が発生しなくても計上

  9. ボランティア勤務や無給勤務でも就業日数に含まれる可能性

給与・賞与受給による返納ケース

育休中に給与を受け取った場合の返納額計算

育休期間中に給与や報酬を受け取った場合、その金額に応じて育休給付金が減額またはそれ以上に返納される場合があります。

返納計算の基本公式

本来支給額 = 通常の給付予定額 ー 受け取った給与

返納額 = 既に受け取った給付金 ー 本来支給額

具体例1:育休中に給与の50%を支給された場合

項目 金額
基本給 40万円
育休給付金(月額予定額) 20万円(基本給の50%)
育休期間中の給与 20万円(基本給の50%を会社から支給)
本来支給額計算 20万円(給付金)- 20万円(給与)= 0円
既に受給済み 20万円
返納額 20万円

解説: この場合、雇用保険からの給付金と会社からの給与を合わせて基本給と同等額を受け取ることになり、育休給付は不要になるため全額返納です。

具体例2:育休中に給与の20%のみ支給された場合

項目 金額
基本給 50万円
育休給付金(月額予定額) 25万円(基本給の50%)
育休期間中の給与 10万円(基本給の20%を会社から支給)
本来支給額計算 25万円 – 10万円 = 15万円
既に受給済み 25万円
返納額 10万円

解説: 給与10万円を受け取ったため、育休給付金は15万円に減額されるべきでした。既に25万円受け取っているので、差額10万円を返納します。

具体例3:給与が発生しなかった場合(返納なし)

項目 金額
基本給 30万円
育休給付金(月額) 15万円
育休期間中の給与 0円
本来支給額 15万円 – 0円 = 15万円
返納額 0円(返納なし)

夏季・冬季賞与が返納対象になるケース

育休期間中に賞与(ボーナス)を受け取った場合、通常の給与以上に返納額が大きくなります。

賞与受給時の返納計算

育休給付金対象月 × 月額給付金 ー 賞与額 = 本来支給額

具体例1:夏季賞与が育休期間中に支給された場合

項目 内容
基本給 35万円
月額育休給付金 17.5万円
育休期間 4月1日~9月30日(6ヶ月)
夏季賞与(6月支給) 70万円
給与支給 0円

計算方法:
– 6月の本来支給額 = 17.5万円 – 70万円 = -52.5万円(マイナス)
– この場合、6月の給付金17.5万円全額と、翌月以降の給付金から控除される

対象月 計算 返納額
6月 17.5万円 – 70万円 = -52.5万円 17.5万円(6月分全額)
7月 -52.5万円 + 17.5万円 = -35万円 17.5万円(7月分全額)
8月 -35万円 + 17.5万円 = -17.5万円 17.5万円(8月分全額)
9月 -17.5万円 + 17.5万円 = 0円 0円

結果: 6月~8月分(52.5万円)の全額返納が必要

具体例2:冬季賞与が育休終了直前に支給された場合

項目 内容
基本給 40万円
月額育休給付金 20万円
育休期間 10月1日~12月31日
冬季賞与(12月支給) 80万円

計算:
– 12月の本来支給額 = 20万円 – 80万円 = -60万円
– 返納額:10月(20万円)+ 11月(20万円)+ 12月(20万円)= 60万円全額

返納額計算の公式と具体例3パターン

育休給付金の返納額を正確に計算するための統一公式を示します。

標準的な返納額計算公式

月別返納額 = MAX(0, 既受給額 - 本来支給額)

本来支給額 = 通常月額給付金 - (その月に受け取った給与・賞与)

パターンA:賞与なし、給与のみのケース

条件 内容
基本給 32万円
月額給付金 16万円
4月受取給与 8万円
5月受取給与 12万円
6月受取給与 0円

計算:

給付金額 給与額 本来支給額 返納額
4月 16万円 8万円 8万円 8万円
5月 16万円 12万円 4万円 12万円
6月 16万円 0円 16万円 0円
合計 20万円

パターンB:給与+賞与のケース

条件 内容
基本給 30万円
月額給付金 15万円
育休期間 4月~9月
月次給与 毎月5万円
6月賞与 60万円

計算:

給付金 給与 賞与 本来支給額 返納額
4月 15万 5万 10万 5万
5月 15万 5万 10万 5万
6月 15万 5万 60万 -50万 15万
7月 15万 5万 10万 15万
8月 15万 5万 10万 15万
9月 15万 5万 10万 15万
合計返納額 65万円

解説: 6月の賞与60万円により、その月の給付金(15万円)が全額返納対象になり、さらに翌月以降への繰越控除が発生します。

パターンC:育休開始時期により異なるケース

条件 内容
基本給 28万円
月額給付金 14万円
育休開始 7月15日(月中)
7月給与 12万円(15日分)
8月~10月 給与0円
9月賞与 50万円

計算:

対象日数 給付金 給与 賞与 本来支給額 返納額
7月 16日 7万 12万 -5万 7万
8月 31日 14万 0万 14万 0万
9月 30日 14万 0万 50万 -36万 14万
10月 31日 14万 0万 14万 14万
合計 35万円

育児休業給付金の支給要件違反|不正申請のケース

虚偽記載・実態のない育休の返納

最も重大な違反が「不正申請」です。実際には育児をしていない、または子どもを預けて働いているのに育休給付を受給した場合、全額返納に加えて延滞金が発生します。

典型的な不正申請ケース

不正内容 具体例 返納額 延滞金
育児実態なし 子どもを認可保育所に預けて育休中に就職 全額 あり
親族に預けっぱなし 実母に子ども全面依存し、自分は通常勤務 全額 あり
離職して他社入社 育休届を提出したまま別の企業で勤務 全額 あり
虚偽の育休理由 育児理由ではなく、病気治療のため休職 全額 あり

返納額計算例:完全な不正受給の場合

項目 内容
基本給 35万円
月額給付金 17.5万円
育休期間 1月~6月(6ヶ月)
既受給額 17.5万円 × 6ヶ月 = 105万円
支給要件違反判明 4月の検査で不適切が発覚
返納額 105万円全額
延滞金 返納額 × 年3.0% × 経過日数 ÷ 365日
返納期限 ハローワークからの督促後30日以内

延滞金の計算例(3ヶ月遅延の場合):
– 延滞金 = 105万円 × 3.0% × 90日 ÷ 365日 = 約7,700円

離職者として育休給付を受けながら新たに就職したケース

育児休業給付金は「被保険者の身分を保持したまま」取得することが前提条件です。育休中に離職して新企業に就職した場合、以下のようになります。

違反となるパターン

パターン 判定 返納対象
育休中に退職、新企業に入社 違反 全額返納
育休から復帰予定で退職 グレー 個別判断
育休中に転職、勤務開始 違反 転職後の分

具体例:育休6ヶ月予定が3ヶ月後に転職した場合

状況 給付金 返納対象
1月 育休継続中 18万円 対象外
2月 育休継続中 18万円 対象外
3月 A社退職・B社入社 18万円 返納対象
4月~6月 B社で勤務 0円(給付停止)
合計返納額 18万円

重要: 転職が判明した時点で給付は自動停止されますが、既受給分については返納請求が来ます。

給付金算定時の誤りがあった場合の返納

申請時の誤記入や、ハローワーク側の計算誤りによる返納も発生します。

返納が必要になる算定誤りの例

誤り内容 影響 返納額
基本給申告額の誤り(過大申告) 本来より多く受給 差額全額
扶養家族数の誤り 給付率が誤算 差額分
勤務日数報告の誤り 本来返納対象だったのに支給 その月分全額
就業時間数の過少申告 本来返納対象が支給された 違反月の全額

誤り発見から返納までの流れ

① ハローワークが誤りを発見(定期監査時等)
   ↓
② 対象者に通知書を発送(15日以内)
   ↓
③ 返納額の計算と説明
   ↓
④ 対象者が同意(異議申し立ても可能)
   ↓
⑤ 返納期限:通知受取から30日以内
   ↓
⑥ 指定銀行口座に返金

返納手続きの流れと返納期限

返納督促から返金完了までの流れ

ハローワークが不適切な受給を発見した場合、以下の流れで返納手続きが進みます。

ステップ1:ハローワークからの督促通知

項目 内容
通知書名 育児休業給付金返納請求書
発送元 対象者の管轄ハローワーク
同封書類 返納額計算書、返納方法説明書
返納期限 通知受取から30日以内
督促内容 返納すべき具体額と理由

重要: 返納督促通知は「郵送」で届きます。受け取り拒否や無視をした場合でも、法的返納義務は消滅しません。

ステップ2:返納額の確認と異議申し立て

通知を受け取ったら、計算額が正確か確認します。異議がある場合は、通知から20日以内にハローワークに申し出てください。

異議申し立ての流れ:
① 返納請求書の計算根拠を確認
② 疑問点をリスト化
③ 管轄ハローワークの給付部門に電話連絡
④ 書面での異議申し立て(郵送)
⑤ ハローワークが調査・回答(通常2週間)

ステップ3:返納方法の選択

返納方法 手続き 対応
銀行振込 指定口座への振込 最も一般的
分割納付 ハローワークに相談 返納額が大きい場合
給与からの天引き 在職中の場合のみ 会社経由の控除

分割納付例:
– 返納額60万円の場合、月1万円 × 60ヶ月等での相談が可能
– ただし返納期限内の最初の支払いは必須

ステップ4:返納完了の確認

確認項目 チェック
返納額の全額納付 指定口座からの振込確認
領収証の保管 ハローワークから送付される
完了通知の受取 返納義務消滅通知書

返納が必要になる場合の対応フロー

返納が発生した時の相談・対応ステップ

返納督促が届いた場合、以下のステップで対応してください。

【返納発生時の対応フロー】

1. 通知内容の確認(受取から3日以内)
   ├─ 返納額の確認
   ├─ 違反内容の確認
   └─ 返納期限の確認

2. 返納額の検証(受取から10日以内)
   ├─ 育休期間と実際の勤務日数を確認
   ├─ 受け取った給与額を確認
   ├─ 計算が正確か検算
   └─ 誤りがあれば異議申し立て

3. 返納方法の決定(受取から20日以内)
   ├─ 一括返納の可否判断
   ├─ 分割納付が必要か検討
   └─ 在職中なら会社に相談

4. 返納実行(受取から30日以内)
   ├─ 指定口座への振込
   ├─ 領収証の保管
   └─ 完了通知の確認

返納に関するよくある質問(FAQ)

Q1:育休中に数日のテレワークをしたことを忘れていました。返納額は?

A: テレワークの日数によります。

  • 月10日以下 → 返納なし
  • 月11日以上 → その月の給付金全額返納

「数日だけ」という理由では免除されません。即座にハローワークに自己申告することをお勧めします。自己申告なら延滞金が免除される可能性があります。

Q2:返納期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

A: 以下のペナルティが発生します。

ペナルティ 詳細
延滞金の加算 年3.0%が期限超過分に加算
督促状の再発送 二次督促が届く
強制徴収の可能性 給与差押えの対象になる可能性

30日以内の返納が困難な場合は、必ずハローワークに相談して分割納付の申し出をしてください。

Q3:会社都合で育休中に出勤させられました。返納義務は労働者にありますか?

A: 返納義務は労働者(受給者)にあります

ただし以下の対応が可能です:

  1. 会社に

よくある質問(FAQ)

Q. 育休中に月何日以上働くと給付金の返納対象になりますか?
A. 月11日以上の勤務で返納対象です。月10日以下なら支給要件を満たしていますが、11日以上で支給条件違反となり、その月の給付金全額を返納する必要があります。

Q. テレワークや在宅勤務中の育休給付金受給はどうなりますか?
A. テレワークも「就業」に該当し、勤務日数として数えられます。在宅勤務中でも月10日を超えると返納対象になるため注意が必要です。

Q. 育休給付金の返納期限はいつまでですか?
A. ハローワークから督促状を受けた日から30日以内が返納期限です。期限を超過すると延滞金が発生する可能性があります。

Q. 育休中に給与や賞与を受け取った場合、返納額はどう計算されますか?
A. 給与受給月はその月の給付金が全額返納対象になります。月次確認票提出時に給与受給を報告すれば、自動的に調整される場合もあります。

Q. 「返納」と「返金」は何が違いますか?
A. 返納は支給後に条件違反が判明した場合に返還請求されること、返金は申請時点での差額調整です。返納は延滞金対象となる可能性があり、返金は通常対象外です。

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