試用期間中でも育休は取れる?権利・条件・確認書類を解説

試用期間中でも育休は取れる?権利・条件・確認書類を解説 育児休業制度

試用期間中に妊娠がわかった、あるいは育休取得を検討しているという方は少なくありません。「まだ試用期間中だから育休なんて無理だろう」と諦めてしまう方もいますが、それは大きな誤解です。本記事では、試用期間中の育休権の法的根拠・取得要件・必要書類・申請の注意点を徹底的に解説します。

試用期間中であっても育児休業を取得する権利は法律によって保障されており、適切な手続きと要件確認を行えば、ほぼすべての労働者が育休を取得できます。


試用期間中でも育休は取れる?法律の原則を確認しよう

結論から言えば、試用期間中であっても育児休業を取得する権利は法律によって保障されています。試用期間という雇用形態は育休権を制限する理由にはなりません。

育児・介護休業法が「全労働者」に適用される理由

育児・介護休業法(以下、育介法)第1条には「この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度を設けることにより、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図る」と明記されており、対象は「労働者」全般です。

育介法第2条では「育児休業とは、労働者がその養育する1歳に満たない子について、この法律の定めるところにより休業することをいう」と定義されており、正社員・パート・有期雇用・試用期間中の労働者を問わず適用されます。また第5条は育休申出の権利を規定しており、「試用期間中は除外」という限定文言は一切存在しません。

📌 ポイント:育介法は雇用形態・契約内容・試用期間の有無にかかわらず、すべての労働者に育休権を保障しています。

試用期間中の育休拒否は違法になるケースがある

会社が試用期間中という理由で育休申出を拒否した場合、育介法違反になる可能性が高いです。厚生労働省は「試用期間中も育児・介護休業法の適用対象」と公式見解を示しており、試用期間を理由とした育休拒否は法的に認められません。

さらに、男女雇用機会均等法第9条は妊娠・出産・育休取得を理由とした不利益取扱いを明確に禁止しています。育休申出を理由とした解雇・降格・本採用拒否・試用期間の延長なども「不利益取扱い」に該当し得ます。

育休申出を拒否された場合の対抗手段としては、以下の方法があります。

  • 都道府県労働局への申告(育介法違反)
  • 労働基準監督署への相談
  • 都道府県の労働相談センターへの相談
  • 弁護士・社労士への法的相談

試用期間中に育休を取得するための4つの要件

「権利がある」ことと「実際に取得できるか」は別の問題です。以下の4要件を一つひとつ確認しましょう。

①雇用関係の存在:試用期間中は雇用契約が成立しているか

試用期間中であっても、雇用契約は入社日から成立しています。試用期間は本採用前の能力評価期間ですが、法律上は「雇用関係が存在する期間」であることに変わりはありません。

ただし、以下の状態は雇用関係が成立していないため注意が必要です。

状態 雇用関係 育休申出の可否
入社日以降(試用期間中) ✅ 成立 申出可能(他の要件を満たす場合)
内定段階(まだ入社前) ❌ 未成立 申出不可
口頭での採用承諾のみ ❌ グレーゾーン 雇用契約書の確認が必要

口頭採用の場合、雇用契約書や採用通知書の有無を必ず確認してください。書面がない場合でも雇用関係の成立を主張できることがありますが、立証が難しくなります。

②継続雇用1年以上の要件:最も注意が必要なポイント

育介法上、有期雇用労働者(パート・契約社員など)は、申出時点で同一事業主に引き続き1年以上雇用されていることが要件となります(育介法第5条第1項)。

⚠️ 2022年改正の重要点:2022年4月1日施行の改正育介法により、無期雇用労働者(正社員など)については「1年以上継続雇用要件」が撤廃されました。しかし有期雇用労働者には引き続き適用されます。

要件充足の確認計算式

育休開始予定日 − 入社日 ≧ 1年(365日)

具体的なケース判定

ケース 入社日 育休開始予定日 継続雇用期間 判定
ケースA(正社員) 2024年4月1日 2025年1月1日 9か月 ✅ 正社員のため1年要件不要
ケースB(有期雇用) 2024年1月1日 2024年6月15日 約5.5か月 ❌ 1年未満で取得不可
ケースC(有期雇用) 2024年1月1日 2025年2月1日 約13か月 ✅ 1年以上で取得可
ケースD(有期雇用) 2023年7月1日 2025年1月15日 約18か月 ✅ 1年以上で取得可

チェックすべき3点

  1. 入社日(雇用契約の開始日) :試用期間の開始日=入社日で計算します
  2. 試用期間の長さ :試用期間中も継続雇用期間にカウントされます
  3. 育休開始予定日 :この時点で1年以上を満たしているか確認します

③週所定労働日数:パート・時短勤務の場合の確認方法

有期雇用労働者には、週の所定労働日数が2日以下の場合は育休取得の対象外となる規定があります(育介法施行規則)。

勤務形態 週所定労働日数 育休取得可否
フルタイム 5日
週3日パート 3日
週2日パート 2日 ❌ 対象外
週1日パート 1日 ❌ 対象外

雇用契約書の「勤務日数」の欄を必ず確認してください。実際の出勤日数ではなく「所定労働日数」(契約上定められた日数)で判定されます。

④申出タイミング:産前から逆算した申請期限

育休の申出は、育休開始予定日の1か月前までに書面または口頭で使用者に申し出る必要があります(育介法第6条)。保育所に落選した場合など、育休を延長する場合は1歳6か月・2歳まで延長可能で、それぞれ期限前に申出が必要です。

育休の種類 申出期限
通常の育休(〜1歳) 開始予定日の1か月前まで
延長(〜1歳6か月) 1歳誕生日の2週間前まで
再延長(〜2歳) 1歳6か月到達日の2週間前まで
パパ・ママ育休(出生時育休) 開始予定日の2週間前まで

試用期間中の育休申請で必要な確認書類・手続き

雇用契約書で確認すべき5つのポイント

育休申請前に、必ず手元の雇用契約書(または労働条件通知書)で以下を確認してください。

確認項目 確認内容 注意点
①契約開始日 入社日(試用期間の起算日) 継続雇用1年の計算に使用
②雇用形態 正社員・有期雇用・パートの別 1年要件の適用有無が変わる
③契約期間 有期の場合、更新の可否 育休終了後の雇用継続確認
④週所定労働日数 契約上の勤務日数 2日以下は対象外
⑤育休に関する特記事項 就業規則・育休規程の参照先 会社独自の要件確認

育休申請時に必要な書類一覧

書類名 提出先 備考
育児休業申出書 勤務先(会社) 法定様式あり・会社書式でも可
育休確認書(育休取扱通知書) 会社から労働者へ交付 会社側の義務(育介法第6条2項)
母子健康手帳の写し 会社・必要に応じて 出産予定日の確認
雇用保険被保険者証 ハローワーク経由 育休給付金申請に必要
育児休業給付金支給申請書 ハローワーク(会社経由) 受給開始後2か月ごとに提出

育休確認書(育休取扱通知書)とは

育介法第6条第2項により、会社は育休申出を受けた後、遅滞なく「育休取扱通知書」を労働者に交付する義務があります。この書類には以下が記載されます。

  • 育休開始・終了予定日
  • 申出を拒む場合はその理由(拒否できる場合は限定的)
  • 育休中・育休後の賃金・社会保険の取扱い

この通知書が交付されない場合は、会社に請求する権利があります。試用期間中であることを理由に交付を拒否された場合、それ自体が育介法違反となる可能性があります。


試用期間中の育休給付金:もらえる金額と条件

育児休業給付金の支給条件

雇用保険に加入している労働者が育休を取得した場合、育児休業給付金(雇用保険から支給)を受け取れます。試用期間中の労働者であっても、以下の条件を満たせば受給できます。

受給要件(試用期間中の場合の確認ポイント)

  1. 雇用保険の被保険者であること
  2. 育休開始前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること
  3. 育休中に就業した日数が月10日以下であること

試用期間が長い場合、入社後まもなく育休を開始するケースでは、「2年間で12か月」の要件を前職の雇用保険加入期間と通算できる場合があります(離職から1年以内が条件)。

給付金の計算方法

育休期間 給付率 計算式
育休開始〜180日目 67% 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
181日目〜育休終了 50% 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

📌 2025年改正の注意点:2025年4月より、一定の条件を満たす場合に給付率が最大80%に引き上げられる改正が施行されています。両親ともに育休を取得する場合などが対象となるため、最新の厚生労働省情報を確認してください。

給付金額の計算例(月収30万円の場合)

月収30万円 → 賃金日額 = 300,000 ÷ 30 = 10,000円
育休開始〜180日:10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円/月
181日目以降  :10,000円 × 30日 × 50% = 150,000円/月

試用期間中の育休に関する不利益取扱い禁止のポイント

試用期間中に育休を申し出た、または取得した場合に、会社が以下のような行為をとることは違法です。

不利益取扱いの例 根拠法
育休申出を理由とした解雇 育介法第10条・男女雇用機会均等法第9条
「育休を取るなら本採用しない」という通告 育介法第10条
試用期間の不当な延長 男女雇用機会均等法第9条
降格・減給・不利な配置転換 育介法第10条
自主退職の強要 労働基準法・育介法

これらの不利益取扱いを受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)への申告・相談が有効です。調停・是正指導などの行政上の措置が取られる場合があります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 試用期間3か月の正社員ですが、入社半年で育休を申請できますか?

A. 正社員(無期雇用)の場合、2022年4月の法改正により「1年以上継続雇用」の要件は撤廃されました。入社直後でも育休申出は可能です。ただし、育児休業給付金の受給には雇用保険の加入期間等の別途要件があります。


Q2. 有期雇用で入社8か月目に育休を申し出たいが、取得できますか?

A. 有期雇用労働者の場合、申出時点で1年以上の継続雇用が要件となっています。育休開始予定日を入社日から1年以上後に設定することで要件を満たせる場合があります。産前休業(産前6週間)の終了後に育休を開始するよう日程を調整することも一つの方法です。


Q3. 試用期間中に育休申出をしたら、本採用を拒否されました。これは違法ですか?

A. 育休申出を理由とした本採用拒否は、育介法第10条(不利益取扱いの禁止)および男女雇用機会均等法第9条に違反する可能性が高いです。都道府県労働局または弁護士・社会保険労務士に相談することを強くお勧めします。


Q4. 育休確認書(育休取扱通知書)をもらえない場合はどうすればよいですか?

A. 育介法第6条第2項に基づき、会社には通知書の交付義務があります。まず会社の人事部門に書面での交付を求め、それでも対応されない場合は労働局に申告することができます。


Q5. 育休給付金の申請は自分でするのですか?

A. 原則として会社(事業主)経由でハローワークに申請します。会社の担当者(総務・人事)が手続きを行うことが一般的です。ただし会社が手続きをしてくれない場合は、自分でハローワークに直接相談することもできます。


まとめ:試用期間中の育休、まず雇用契約書の確認から

試用期間中の育休取得については、以下のポイントを押さえておきましょう。

チェック項目 確認内容
✅ 法的権利 試用期間中でも育休権は保障されている
✅ 雇用形態 正社員なら1年要件不要・有期雇用なら1年以上必要
✅ 雇用契約書 入社日・雇用形態・週所定労働日数を確認
✅ 申出タイミング 育休開始予定日の1か月前までに書面で申出
✅ 確認書類 育休取扱通知書の交付を会社に求める
✅ 給付金 雇用保険の加入期間・前職の期間通算を確認
✅ 不利益取扱い 申出・取得を理由とした不利益は違法

まず行うべきことは、手元の雇用契約書(労働条件通知書)を確認することです。雇用形態・入社日・週所定労働日数の3点を確認すれば、取得要件を満たしているか大まかに判断できます。不明点がある場合は、会社の人事担当者、社会保険労務士、または都道府県労働局の無料相談窓口に相談してください。


参考リンク・相談窓口
厚生労働省:育児・介護休業法のあらまし
– 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):育児・介護休業に関するトラブル相談
– ハローワーク:育児休業給付金の受給相談
– よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)

タイトルとURLをコピーしました