育休給付金は育休未取得だと受給不可?給付要件を徹底解説

育休給付金は育休未取得だと受給不可?給付要件を徹底解説 育児休業制度

育児休業給付金(育休給付金)を受け取りたいが、「実際に育休を取らなくても給付金だけもらえるのでは?」と考える方が一定数います。結論から言えば、育休を取得しない限り給付金は受け取れません。本記事では、その法的根拠・受給要件・申請手続きを詳細に解説します。

厚生労働省の統計によれば、育休給付金の受給要件をめぐる誤解は後を絶たず、毎年多くの不正受給申告が寄せられています。本記事を通じて正確な知識を身につけ、安心して育休制度を活用できるようにしましょう。


育休給付金は「育休を取らずに」もらえるのか?結論を先に解説

育休給付金は「育児休業を取得している期間中の所得補償」です。育休を取得していない場合は、原則として受給できません。

この一点を最初に理解しておくことで、申請ミスや不正受給のリスクを回避できます。「給付金だけ先にもらって、後で育休を取る」「会社には出勤しながら給付金を申請する」といった行為は制度上認められておらず、不正受給として返還請求や処罰の対象となる場合があります。


育児休業給付金の制度趣旨とは(休業×所得補償のセット)

育児休業給付金は雇用保険法第61条~第67条を根拠とする制度です。

雇用保険法第61条(育児休業給付金)
育児休業給付金は、被保険者が育児休業を取得した場合において、一定の要件を満たしたときに支給する。

法律の文言が示すとおり、「育児休業の取得」が給付金支給の大前提です。育休中に収入が途絶えることで生活が困窮しないよう補償するのがこの制度の趣旨であり、就労中の労働者に対して支給される性格ではありません。

育児・介護休業法に基づき育児休業を取得し、雇用保険の被保険者である労働者が、一定の要件を満たした場合に初めて給付金を受け取れる仕組みです。「休業」と「所得補償」はセットで成立しており、どちらか一方だけを切り取ることはできません。


育休未取得で給付金を申請した場合どうなるか

育休を取得していない状態で育休給付金を申請した場合、ハローワークは申請を却下します。さらに、虚偽の申告によって給付金を受け取った場合は不正受給と認定され、以下のペナルティが課される可能性があります。

ペナルティの種類 内容
給付金の全額返還 受け取った給付金の全額を返還
追加徴収(3倍返し) 不正受給額の最大3倍の金額を徴収(雇用保険法第10条の4)
刑事罰 詐欺罪として刑事告発される場合もあり(刑法246条)
会社への影響 事業主が申請に関与した場合、会社も連帯して返還義務を負う

「会社に黙って申請できる」と誤解されるケースもありますが、給付金の申請は事業主(会社)経由でハローワークに行うのが原則です。会社が育休の実態を証明する書類を提出するため、育休未取得での申請は手続き上成立しません。


育児休業給付金の受給要件5つを図解でチェック

育休給付金を受け取るためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

【受給要件チェックリスト】

✅ 要件① 雇用保険に加入している
✅ 要件② 育児休業を「実際に」取得している
✅ 要件③ 育休開始前2年間に加入実績がある(12ヶ月以上)
✅ 要件④ 育休期間中の就業日数が月10日以下
✅ 要件⑤ 子どもが1歳未満(延長の場合は最大2歳未満)

5つすべてに該当する場合のみ、給付金の支給対象となります。


要件① 雇用保険に加入していること

雇用保険の被保険者であることが大前提です。以下のケースは雇用保険に加入できないため、給付金の受給対象外となります。

対象外となるケース 理由
週所定労働時間が20時間未満 雇用保険の加入要件を満たさない
日雇い労働者 雇用保険の一般被保険者に該当しない
自営業・フリーランス 雇用保険制度の適用対象外
公務員(国家・地方) 共済組合等の別制度が適用される

パートタイム・アルバイトでも、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みであれば雇用保険に加入できるため、非正規雇用だからといって一律に対象外になるわけではありません。


要件② 育児休業を「実際に」取得していること(最重要)

育休給付金受給において最も重要な要件です。書面上で育休届を出すだけでなく、実態として休業していることが求められます。

具体的には以下の状態を指します。

  • 育児・介護休業法に基づく育児休業を取得している
  • 育休期間中、原則として就労していない
  • 会社への届出と実態が一致している

「名目上は育休だが実際は働いている」「育休届だけ出して出勤している」といった状況は、たとえ会社が黙認していても給付金の支給対象外となります。また後述の就業日数制限に抵触するため、申請しても受理されません。


要件③〜⑤ 加入期間・就業日数・子どもの年齢

要件③:育休開始前2年間の加入期間

育休開始日から遡って2年間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あることが必要です。

【計算例】
育休開始日:2024年4月1日
確認期間:2022年4月1日~2024年3月31日(24ヶ月)
必要条件:上記期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上

産前産後休業期間は加入期間の算定に含まれます。転職直後で在籍期間が短い場合や、長期欠勤が続いた場合は要件を満たさない可能性があります。

要件④:育休期間中の就業日数(月10日以下)

育休中に就業できる日数には上限があります。

就業状況 給付金への影響
月10日以下の就業 給付金は通常どおり支給
月11日以上の就業 その月の給付金は不支給
就業日数が80時間以下(10日超の場合) 時間換算で判断される場合もあり

育休期間中に会社から「少しだけ手伝ってほしい」と頼まれることがありますが、月11日以上勤務した月は給付金が支給されません。注意が必要です。

要件⑤:子どもの年齢

原則として子が1歳の誕生日の前日までが支給対象期間です。ただし、以下の条件を満たす場合は延長が認められます。

延長事由 延長後の上限
保育所等に入所できない(待機児童) 1歳6ヶ月まで
1歳6ヶ月時点でも入所できない 2歳まで
配偶者が育休を取得する場合(パパ・ママ育休プラス) 1歳2ヶ月まで(各自の上限)

給付金はいくらもらえる?金額の計算方法

育休給付金の給付率は、育休開始から180日目(6ヶ月)を境に変わります

期間 給付率 実質手取りへの換算
育休開始〜180日目 休業前賃金の67% 社会保険料免除を考慮すると実質約80%
181日目〜育休終了 休業前賃金の50% 同様に実質約60〜65%
【給付金額の計算式】
給付金額 = 休業開始前の賃金日額 × 支給日数 × 給付率(67% or 50%)

【例:月給30万円の場合(育休開始〜180日目)】
賃金日額 = 300,000円 ÷ 30日 = 10,000円
給付金額 = 10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円/月

なお、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されるため、手取りベースでは給付率以上の水準を維持しやすくなっています。


申請手続きの流れと必要書類

申請の全体フロー

【STEP 1】出産前
  └─ 会社に育休取得の意思を伝え、育児休業申出書を提出

【STEP 2】育休開始後
  └─ 会社がハローワークに「育児休業給付受給資格確認票・
     (初回)育児休業給付金支給申請書(様式第2-8号)」を提出

【STEP 3】最初の申請
  └─ 育休開始から約2ヶ月後(第1・第2支給単位期間終了後)
     2ヶ月分をまとめて申請

【STEP 4】以降の申請
  └─ 2ヶ月ごとに継続申請(会社経由でハローワークへ)

【STEP 5】育休終了・復職
  └─ 給付金の支給終了

必要書類一覧

書類名 入手先 提出先
育児休業給付受給資格確認票・支給申請書(様式第2-8号) ハローワーク・厚生労働省HP ハローワーク(会社経由)
育児休業申出書 会社所定書式 会社
母子健康手帳(子の出生を証明するページ) 市区町村 ハローワーク(写し)
賃金台帳・出勤簿 会社 ハローワーク(写し)
雇用保険被保険者証 ハローワーク 確認用として提示

申請は原則として事業主(会社)が行います。本人が直接ハローワークに申請することは通常できないため、会社の担当者(総務・人事)と連携して進めましょう。

申請期限に注意

育休給付金の申請には支給単位期間終了翌日から2ヶ月以内という期限があります。期限を過ぎると時効(2年)の範囲内でも受給できなくなる場合があるため、会社への申告は早めに行いましょう。


出生時育児休業給付金(産後パパ育休)との違い

2022年10月から新設された出生時育児休業給付金(いわゆる「産後パパ育休」)も、同様に育児休業の取得が必須要件です。

項目 通常の育休給付金 出生時育休給付金
対象者 主に母親(父親も可) 主に父親
取得期間 子が1歳まで(最大2歳) 子の出生後8週間以内に最大28日間
給付率 67%(最初180日)/ 50% 67%
育休取得の要件 必須 必須

出生時育休給付金についても、実際に育休を取得していない場合は受給できません。「パパは仕事を続けながら給付金だけもらう」という利用方法は認められていません。


非正規雇用・契約社員でも受給できるか

パートタイマー・契約社員・派遣社員であっても、以下の要件を満たせば育休給付金を受け取れます。

確認事項 内容
雇用保険加入 週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば加入義務あり
加入期間 育休開始前2年間に12ヶ月以上(前の会社の期間も通算可)
育休取得 会社が育児休業の取得を認めていること
雇用継続の見込み 育休後も引き続き雇用される見込みがあること

有期契約労働者の場合、2022年4月の育児・介護休業法改正により、「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が廃止されました。現在は雇用継続の見込みがあれば取得できます。ただし、雇用保険の加入要件・加入期間の要件は引き続き適用されます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に副業をしても給付金はもらえますか?

A. 副業先が別の雇用保険加入の会社であり、その就業日数が月10日を超えた場合、その月の給付金は支給されません。副業が10日以下であれば、支給が停止されることはありませんが、事前に会社・ハローワークへ確認することを推奨します。

Q2. 育休を取得したが、思ったより早く復帰した場合はどうなりますか?

A. 復職した日をもって育休期間が終了し、給付金の支給も停止されます。復職した月については、就業日数・支給単位期間に応じた日割り計算で支給される場合があります。

Q3. 産後パパ育休と通常の育休を両方取得した場合、給付金は二重にもらえますか?

A. 二重受給にはなりません。出生時育児休業給付金と育児休業給付金はそれぞれの休業期間に対して支給されますが、同一期間に対して重複して受給することはできません。

Q4. 会社が育休申請を認めてくれない場合はどうすればいいですか?

A. 育児・介護休業法上、一定要件を満たす労働者には育休取得の権利があります。会社が不当に拒否した場合は、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」への相談、または労働基準監督署への申告が有効です。

Q5. 雇用保険に加入していない自営業者でも育休給付金に代わる制度はありますか?

A. 雇用保険に基づく育休給付金は対象外ですが、国民健康保険加入者や個人事業主向けに自治体独自の助成制度が設けられている場合があります。居住する市区町村の窓口にご確認ください。


まとめ:育休給付金は「育休取得」あってこそ

本記事のポイントを整理します。

ポイント 内容
給付金の受給には育休取得が必須 雇用保険法第61条が根拠。育休なしでの受給は不可
5つの受給要件をすべて満たすこと 雇用保険加入・育休取得・加入期間・就業日数・子の年齢
給付率は最初の180日が67% 社会保険料免除で実質約80%相当
申請は会社経由でハローワークへ 2ヶ月ごとに継続申請が必要
不正受給は3倍返しのリスクあり 虚偽申告は刑事罰の対象にもなりえる

育休給付金は、育休を取得した労働者の生活を守るための大切な制度です。「育休を取らずに給付金だけ受け取りたい」という疑問を持つ方もいますが、それは制度の趣旨に反し、法的にも認められていません。本記事で解説した正確な知識を持って、安心して育休・育休給付金の申請に臨んでください。


参考法令・資料

  • 雇用保険法(第61条〜第67条)
  • 育児・介護休業法(第1条〜第23条)
  • 雇用保険法施行規則(第76条〜第82条)
  • 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
  • ハローワークインターネットサービス(育児休業給付)

タイトルとURLをコピーしました