育休中に再婚や配偶者変更があると、「給付金が止まってしまうのか」「何か届け出が必要なのか」と不安になる方は少なくありません。結論から言えば、再婚や配偶者変更があっても、育児休業給付金は原則として継続支給されます。ただし、状況によっては減額・停止になるケースも存在します。
この記事では、育休中の再婚・配偶者変更が給付金に与える影響を、継続支給の要件、届出手続き、必要書類まで2025年の最新情報をもとに詳しく解説します。
育休中に再婚・配偶者変更が起きたら給付金はどうなる?
再婚しても給付金が継続支給される基本的な考え方
育児休業給付金は、「雇用保険に加入している労働者が育児休業を取得している」という事実に基づいて支給される給付金です。そのため、再婚や配偶者変更という家族状況の変化は、給付金の支給要件の根幹には直接影響しません。
法的根拠となる雇用保険法第61条の4では、支給要件として「被保険者が育児休業を取得していること」「休業前2年間に一定の被保険者期間があること」「休業中の賃金が一定基準を下回ること」を定めています。これらの要件はいずれも、配偶者の有無や変更とは独立した要件です。
したがって、再婚後も同じ会社に籍を置き、同じ子どもを養育するために育児休業を継続しているならば、給付金は引き続き受け取れます。
影響が出るのは「どんなケース」か?早見表で整理
すべての再婚・配偶者変更が問題ないわけではありません。以下の早見表で自分のケースを確認してください。
| ケース | 給付金への影響 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 再婚したが同じ会社に雇用継続・同じ子の育休中 | 継続支給(影響なし) | ハローワークへの届出(変更通知) |
| 再婚相手(新配偶者)も育児休業を取得 | 出生後休業支援給付金の要件に注意 | 要件確認・届出 |
| 育休中に離婚→再婚で子の監護状況が変わった | 養育実態の確認が必要 | 監護・養育の証明書類を準備 |
| 再婚により転職・退職が伴う | 給付金停止の可能性あり | 事前に会社・ハローワークに相談 |
| 育休中に就業日数が増加した | 減額・停止の可能性あり | 就業日数の申告が必要 |
育児休業給付金の基本要件をおさらい
再婚・配偶者変更の影響を正確に理解するためには、まず育児休業給付金の支給要件を把握しておくことが重要です。
雇用保険加入者であることが大前提
育児休業給付金を受給するには、以下の4つの基本要件をすべて満たす必要があります。
①雇用保険に加入していること
正社員だけでなく、一定の条件を満たすパートタイム労働者や契約社員も対象です。週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上の雇用見込みがあれば加入対象となります。
②育児休業を取得していること
育児・介護休業法に基づく育児休業を取得していることが必要です。育休の対象は原則として1歳未満の子ですが、保育園への入園ができない等の事情があれば最長2歳まで延長可能です。
③休業前2年間に被保険者期間が12か月以上あること
休業を開始する前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業時間が80時間以上)の月が12か月以上あることが必要です。
④育休中の賃金が休業前賃金月額の80%未満に低下していること
育休中に就労して賃金が支払われる場合、その賃金が「休業開始時賃金日額×支給日数の80%」以上になると支給停止となります。
賃金月額80%未満とは?計算の仕組みをわかりやすく解説
給付金の支給額と就業賃金の合計が「賃金月額の80%」を超えると、超えた分だけ給付金が減額・停止されます。具体的な計算式は以下のとおりです。
給付金の基本支給額
- 育休開始から180日目まで:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 181日目以降:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
支給停止の基準(就労した場合)
就労中の賃金 ÷ 賃金月額 が 80% 以上 → 給付金は支給停止
就労中の賃金 ÷ 賃金月額 が 80% 未満 → 給付金は一部支給(減額)
就労なし → 通常どおり支給
たとえば、休業前の月給が30万円だった人が育休中に6万円の賃金を受け取った場合:
- 6万円 ÷ 30万円 = 20%(80%未満のため継続支給・減額なし)
一方、同じ人が28万円の賃金を受け取った場合:
- 28万円 ÷ 30万円 ≒ 93%(80%以上のため支給停止)
再婚後に就労状況が変化した場合は、この計算に影響が出るため注意が必要です。
再婚・配偶者変更で給付金が「継続される」ケースと要件
継続支給の4つの要件チェックリスト
再婚・配偶者変更があっても給付金が問題なく継続されるために、以下の4つの要件を確認しましょう。
✅ 要件1:被保険者本人の雇用関係に変更がない
再婚後も同じ会社に継続して雇用されていることが必要です。再婚を機に転職・退職した場合は、雇用保険の被保険者資格を失うため、給付金の支給は停止します。
✅ 要件2:雇用保険の被保険者資格が継続している
雇用関係が継続していても、所定労働時間の変更などにより雇用保険の加入要件を満たさなくなった場合は、被保険者資格を失います。
✅ 要件3:育児休業の対象となる子が同一である
現在育児休業を取得している子どもが変わっていないことが必要です。再婚相手の連れ子を養育するために新たな育児休業を取得する場合は、別途申請が必要です。
✅ 要件4:養育実態が継続している
離婚や別居、再婚の前後を問わず、実際に子どもを養育していることが必要です。同居・別居にかかわらず、子の養育を行っていることが認められれば要件を満たします。
再婚によって「配偶者なし→あり」に変わった場合の取り扱い
もともと一人親として育休を取得していた人が、育休中に再婚した場合を考えてみましょう。
育児休業給付金の支給要件において「配偶者の有無」は直接的な要件ではないため、「配偶者なし」から「配偶者あり」に変わっても、給付金の支給額・支給期間に原則として影響しません。
ただし、出生後休業支援給付金(2025年4月新設)を受給している場合は注意が必要です。この給付金は、配偶者とともに育児休業を取得する場合に付加給付(最大10%上乗せ)が受けられる仕組みであり、再婚によって配偶者が新たに育休を取得できる状況になった場合は、その要件に変化が生じます。
給付金が「減額・停止」になるケースと注意点
就業状況の変化による給付金減額のメカニズム
再婚後に就業状況が変化すると、給付金の計算に直接影響します。育休中でも一定日数・時間内であれば就労可能ですが、以下の基準を超えると減額・停止となります。
就労日数による制限
| 就労日数(支給単位期間中) | 給付金への影響 |
|---|---|
| 10日以下(かつ就業時間80時間以下) | 通常どおり支給 |
| 10日超・80時間超(賃金が80%未満) | 超過した賃金分だけ給付金を減額 |
| 賃金が賃金月額の80%以上に達した | 支給停止 |
再婚によって生活環境が変化し、育休中にアルバイト等の就労を開始する場合は、必ず上記の基準を事前に確認してください。
配偶者の就業状況変化が影響するケース
新しい配偶者(再婚相手)の就業・育休取得状況が、給付金に影響を及ぼす場合があります。
ケースA:新配偶者が同じ子の育児休業を取得する場合
再婚相手が同居し、同じ子どもを養育することになった場合、その配偶者も育児休業を取得できるケースがあります(養子縁組等の法的手続きが整った場合)。この場合、出生後休業支援給付金の「両親同時取得」要件に関わる可能性があります。
ケースB:養育者が変わり自分が育休を返上するケース
再婚により実質的に子どもの養育を配偶者が担うことになり、自分は育休を早期に切り上げて復職する場合は、育休終了届の提出と給付金支給終了の手続きが必要です。
再婚・配偶者変更時の届出手続きと必要書類
ハローワークへの届出が必要な理由
育児休業給付金は、原則として事業主(会社)を経由してハローワーク(公共職業安定所)に申請します。再婚・配偶者変更があった場合、以下の理由から届出が必要になることがあります。
- 氏名変更が生じた場合(雇用保険の被保険者氏名変更届の提出)
- 住所変更が生じた場合(住所変更の通知)
- 扶養関係や家族状況の変化(健康保険・厚生年金等の社会保険手続き)
- 支給申請書の記載内容(配偶者の有無等)に変更が生じた場合
手続きの流れ(ステップ別)
STEP 1:会社の人事・総務部門への報告(再婚後すみやかに)
まず勤務先の人事・総務担当者に再婚の事実を報告します。氏名変更がある場合は、雇用保険の被保険者氏名変更届の提出が必要となるため、早めに連絡することが重要です。
STEP 2:社会保険・雇用保険の変更手続き(事実発生から5日以内が目安)
氏名変更が生じた場合、事業主は以下の手続きを行います。
- 雇用保険:雇用保険被保険者氏名変更届(ハローワークへ)
- 健康保険・厚生年金:被保険者氏名変更(訂正)届(年金事務所・健保組合へ)
STEP 3:育児休業給付金の次回支給申請時に変更内容を反映
育児休業給付金は2か月ごとに支給申請を行いますが、再婚による変更事項がある場合は、次回の育児休業給付金支給申請書に正確な情報を記載します。
STEP 4:必要に応じて確認書類を添付
ハローワークから追加書類の提出を求められる場合があります。確認書類としては、戸籍謄本(氏名変更の場合)や住民票(世帯構成の確認)が一般的です。
必要書類一覧
再婚・配偶者変更の状況に応じて、以下の書類が必要になる場合があります。
氏名変更が生じた場合
| 書類名 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者氏名変更届 | ハローワーク(事業主経由) | 速やかに提出 |
| 戸籍謄本または婚姻届受理証明書 | 会社・ハローワーク | 氏名変更の証明 |
| 新しい氏名の身分証明書 | 会社・ハローワーク | マイナンバーカード等 |
養育実態の確認が必要な場合
| 書類名 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 住民票(世帯全員記載) | ハローワーク | 子との同居確認 |
| 母子健康手帳 | ハローワーク | 養育実態の証明 |
| 保育施設の利用証明または育児日誌 | ハローワーク | 別居養育の場合に必要 |
支給申請時に毎回提出
| 書類名 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク(事業主経由) | 2か月ごと |
| 賃金台帳・出勤簿 | ハローワーク(事業主経由) | 就労状況の確認 |
出生後休業支援給付金と再婚の関係
2025年4月新設の「出生後休業支援給付金」とは
2025年4月から、育児休業給付金に上乗せする形で出生後休業支援給付金が新設されました。これは「男性の育休取得促進」を目的としており、父母ともに一定期間育児休業を取得した場合に、通常の給付率(67%)に最大10%を上乗せして実質的に手取りの100%近くを保障する制度です。
支給要件(概要)
- 子の出生後8週間以内に父母ともに育児休業を14日以上取得すること
- それぞれが雇用保険の被保険者であること
- 通常の育児休業給付金の支給要件を満たしていること
再婚によって新配偶者が育休取得できる場合
再婚相手が養子縁組等を経て法的に子の親となった場合、新配偶者も育児休業の取得が可能となるケースがあります。この場合、出生後休業支援給付金の「両親同時取得」要件を新たに満たせる可能性があります。
ただし、子の出生後8週間以内という期間制限があるため、再婚のタイミングによっては要件を満たさない場合もあります。詳細はハローワークまたは社会保険労務士に相談することを強くお勧めします。
社会保険(健康保険・厚生年金)の手続きも忘れずに
育休中の再婚で必要な社会保険の手続き
育児休業給付金(雇用保険)の手続きだけでなく、健康保険・厚生年金(社会保険)の手続きも必要です。育休中であっても社会保険料は原則免除されていますが、身分関係の変更は適切に届け出る義務があります。
氏名変更の場合(健康保険・厚生年金)
事業主が被保険者氏名変更(訂正)届を所管の年金事務所または健康保険組合に提出します。新しい氏名が記載された保険証が発行されます(マイナ保険証利用の場合は不要なケースあり)。
被扶養者の追加・変更(配偶者を扶養に入れる場合)
再婚相手を健康保険の被扶養者にする場合は、被扶養者(異動)届の提出が必要です。配偶者の年収が130万円未満(被扶養者の要件)であることの確認書類も必要となります。
子の被扶養者手続き
再婚相手の連れ子を被扶養者として追加する場合も、被扶養者(異動)届の提出が必要です。
育休中の再婚に関するよくある疑問と注意点
再婚・配偶者変更に伴う手続きは複雑に見えますが、基本的な給付金の支給要件は「自分が雇用保険に加入して育休を取得しているか」に尽きます。届出をきちんと行い、就労状況を正確に申告することが、給付金を適切に受け取り続けるための最大のポイントです。
不明な点や判断に迷った際は、お勤めの会社の人事・総務担当者やハローワーク、あるいは社会保険労務士に相談することで、安心して育休期間を過ごすことができます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中に再婚して氏名が変わった場合、給付金の振込口座はどうなりますか?
氏名変更後も、口座番号が変わらなければ振込は通常どおり継続されます。ただし、金融機関によっては氏名変更の届出が必要な場合があります。また、ハローワークへの雇用保険被保険者氏名変更届を提出することで、支給申請書の名義と口座名義の不一致を防げます。事前に会社の担当者を通じて確認しておきましょう。
Q2. 育休中に再婚相手の子(連れ子)の養育も始めた場合、新たに育休の申請はできますか?
連れ子を養子縁組した場合は、養子縁組成立後に新たな育児休業の申請が可能です。ただし、育児休業給付金を受給するには、養子縁組後にあらためて育休申請を行い、雇用保険の支給要件を満たしていることの確認が必要です。実子の育休との並行取得については、ハローワークに個別に相談することをお勧めします。
Q3. 育休中に再婚相手(新配偶者)が仕事を辞めた場合、給付金に影響はありますか?
原則として、配偶者の就業状況は育児休業給付金の支給要件に直接影響しません。ただし、新配偶者が失業したことで家計の状況が変わり、自分が就労を開始した場合は、就労日数・賃金の基準に照らして給付金が減額・停止になる可能性があります。育休中の就労については、必ず事業主を通じてハローワークに申告してください。
Q4. 再婚後に引っ越して住所が変わった場合、手続きは必要ですか?
住所変更の場合、管轄するハローワークが変わる可能性があります。事業所(会社)の所在地を管轄するハローワークに申請しているため、通常は申請者自身の住所変更がハローワークの変更に直結することはありません。ただし、住民票の変更や健康保険証の住所変更など、関連する行政手続きを忘れずに行ってください。
Q5. 育休中に離婚・再婚を繰り返した場合、給付金の受給に問題はありますか?
給付金の支給は「育休取得の継続」と「被保険者資格の継続」が基本要件です。離婚・再婚の回数自体が問題になることはありませんが、子の養育実態が継続していることが重要です。複数回の変更があった場合は、都度ハローワークに状況を報告し、必要書類を準備することで、受給権が守られます。
Q6. 再婚前に受け取っていた給付金を返還しなければならないケースはありますか?
給付金の要件を満たしていた期間に支給された給付金を、遡って返還する必要はありません。ただし、育休中に就労して賃金を得ていたにもかかわらず申告せずに給付金を受け取っていた場合など、不正受給に該当するケースでは返還(および3倍返しのペナルティ)が求められます。状況の変化は必ず適切に申告することが重要です。
まとめ:再婚・配偶者変更時のポイント
育休中の再婚・配偶者変更と給付金の関係について、重要なポイントを整理します。
給付金継続のために必要な3つの行動
- 会社への報告を速やかに行う:氏名変更・住所変更・家族構成の変化を人事担当者に伝え、雇用保険・社会保険の変更手続きを依頼する
- 就労状況を正確に申告する:再婚後に就労状況が変わった場合は、支給申請書に正確な就労日数・賃金を記載する
- 養育実態を維持・証明できる準備をする:住民票や保育関係書類など、子どもを養育していることを示す書類を整備しておく
再婚・配偶者変更は人生の大きな節目ですが、手続きをきちんと行えば、育児休業給付金は引き続き受け取ることができます。不明な点はハローワークまたは社会保険労務士に相談することで、安心して育休期間を過ごすことができます。
参考法令・資料
– 雇用保険法 第61条の4~第61条の4の4
– 雇用保険法施行規則 第107条~第124条
– 育児・介護休業法 第5条・第6条
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き(2025年版)」


