育休中に子どもが亡くなるという、あってはならない悲しい出来事が起きたとき、多くの方が「育児休業給付金はどうすればいいのか」という疑問を抱えます。悲しみの中でも正しい手続きを行わないと、後から不正受給と見なされるリスクがあります。
本記事では、育休中に子どもが死亡した場合の給付金の取り扱い・返納義務の有無・ハローワークへの届出手順・必要書類をわかりやすく解説します。返納が必要な場合と不要な場合の線引きも明確に示しますので、ぜひ参考にしてください。
育休中に子どもが死亡した場合、育児休業給付金はどうなるのか
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業を取得している間に支給される給付です。その支給の大前提は「養育する子どもが存在していること」です。
したがって、育休中に対象の子どもが亡くなった場合、育児休業の取得理由そのものが消滅します。その結果、死亡後の給付金は支給根拠を失い、誤って受け取った分については返納義務が生じます。
これは冷たいルールに聞こえるかもしれませんが、雇用保険制度の給付が「現に養育中である」という事実に基づくことから、やむを得ない取り扱いです。悲しみの中でも、速やかに手続きを行うことで不必要なトラブルを避けることができます。
返納が必要になる仕組みと法的根拠(雇用保険法第61条・第65条)
育児休業給付金の根拠は雇用保険法第61条に定められており、支給要件として「被保険者が育児休業をしていること」と「育児のための休業であること」が明記されています。
さらに雇用保険法第65条は給付の支給期間を規定しており、育児休業の終了事由が発生した場合にはその時点で支給期間が終了すると定めています。
子どもの死亡は、育児・介護休業法上の育児休業の終了事由に該当します。つまり、子どもが亡くなった日の翌日には育児休業自体が終了したものとみなされ、給付金の支給根拠も同日に消滅します。
この点について、雇用保険法施行規則第74条は育児休業給付金の対象となる児童の範囲を定めており、対象児童が存在しなくなった場合の給付停止を前提とした届出義務も規定しています。
ポイント: 法的には「子どもが亡くなった翌日から育休終了」となるため、その後に受け取った給付金はすべて返納対象となります。
返納が必要な場合と不要な場合の違い
返納義務の有無は、「いつの分の給付金か」によって明確に区分されます。以下の表で整理します。
| 給付金の対象期間 | 返納の要否 | 理由 |
|---|---|---|
| 子どもが死亡した月より前の既支給分 | 返納不要 | 支給時点では適法に支給された給付 |
| 子どもが死亡した月の給付金(死亡前の日数分) | 原則返納不要 | 死亡日前の育休期間に対応する給付 |
| 子どもが死亡した翌日以降の分 | 返納必要 | 支給根拠が消滅した後の受給 |
| 死亡後に誤って申請・受給した給付金 | 全額返納必要 | 不正受給に該当するリスクあり |
補足: 育児休業給付金は「2か月ごとに後払い」で支給されます。そのため、死亡が発生した時点で「まだ受け取っていない分」の中に「返納不要な期間分」と「返納必要な期間分」が混在するケースがあります。ハローワークが計算を行いますので、自己判断せずに届け出ることが重要です。
返納対象となる人・ならない人の条件
給付対象となる子どもの範囲(実子・養子・連れ子の扱い)
育児休業給付金の対象となる「子」の範囲は、雇用保険法施行規則に基づき以下のとおり定められています。
対象となる子
- 実子(嫡出子・非嫡出子を含む)
- 養子縁組した子(普通養子・特別養子いずれも対象)
- 特別養子縁組の手続き中の子(一定の要件を満たす場合)
- 養子縁組里親として委託された子
原則として対象外となる子
- 配偶者の連れ子(法律上の養子縁組が成立していない場合)
- 内縁関係のパートナーの子(法律婚がない場合)
重要: 対象外の子の育児を理由として育休を取得していた場合、そもそも育児休業給付金の支給が認められないケースがあります。このような状況では、ハローワークに個別に相談することをお勧めします。
死亡前に育休を終了していた場合は対象外
子どもが亡くなった時点で、すでに育児休業を終了して職場復帰していた場合は、育休中の死亡には該当しません。
この場合、育児休業給付金の受給も既に終了しているため、返納手続き自体が発生しません。
ただし、以下のケースでは注意が必要です。
- 育休終了後に延長申請を検討していた場合
- 育休終了届が未提出のまま死亡が発生した場合
- 育休の終了日と死亡日が近接している場合
このような場合は、ハローワークに状況を詳しく説明し、個別に確認することをお勧めします。
育休中の子ども死亡後にやるべき手続きの全体フロー
悲しみの中でも、手続きには一定の期限があります。以下のステップで対応を進めてください。
【Step 1】子どもの死亡(0日目)
→ 死亡診断書(死体検案書)を受け取る
【Step 2】事業主(勤務先)への報告(速やかに・できれば当日または翌日)
→ 育児休業の終了事由が発生したことを伝える
【Step 3】必要書類の収集(Step 2と並行して進める)
→ 死亡診断書のコピー、住民票(除票)など
【Step 4】事業主がハローワークへ届出書類を準備
→ 「育児休業給付金支給申請書」の記載・修正
→ 「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の確認
【Step 5】ハローワークへの届出・申請(速やかに)
→ 事業主を通じて提出(一般的)
→ 個人で提出する場合は直接ハローワーク窓口へ
【Step 6】ハローワークからの返納通知の受領
→ 返納すべき給付金額・返納期限が通知される
【Step 7】返納金の納付
→ 指定された金融機関または納付書で期限内に納付
注意: 手続きが遅れると、本来返納不要な期間の分まで複雑に絡み合うことがあります。子どもの死亡を知った時点で、できるだけ早く勤務先の人事・総務担当者に連絡することが重要です。
ハローワークへの届出に必要な書類一覧
提出必須書類
| 書類名 | 入手先・備考 |
|---|---|
| 死亡診断書(または死体検案書)のコピー | 病院・医師から発行。原本は手元に保管し、コピーを提出 |
| 住民票(除票) | 市区町村の窓口で取得。子どもの死亡が記載されたもの |
| 育児休業給付金支給申請書(修正版) | 事業主が作成・修正して提出 |
| 雇用保険被保険者証 | 勤務先で管理している場合は事業主が確認 |
| 育児休業取得中であったことを証明する書類 | 育児休業申出書のコピーなど(事業主が保管) |
状況によって必要になる書類
| 書類名 | 必要となるケース |
|---|---|
| 出生届受理証明書 | 死産・出生直後の死亡の場合 |
| 養子縁組に関する書類 | 養子が死亡した場合(縁組成立を証明するもの) |
| 戸籍謄本 | 親子関係の確認が必要な場合 |
| 委託関係を証明する書類 | 養子縁組里親の委託の場合 |
手続き上のポイント: 多くの場合、ハローワークへの届出は事業主(会社)が代行します。個人でハローワークへ直接赴く必要があるケースは限られますが、会社の対応が遅い場合や個人事業主として育休を取得していた場合などは、直接問い合わせることも可能です。
返納金の計算方法と納付手続き
返納金額の計算の仕組み
返納金額はハローワークが計算して通知しますが、基本的な考え方を理解しておくと安心です。
育児休業給付金の支給単位は「支給単位期間」と呼ばれる最大30日の期間ごとに計算されます。
【基本式】
1支給単位期間の給付額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
- 給付率: 育休開始から180日目まで67%、181日目以降50%
- 支給日数: 支給単位期間における育休日数(最大30日)
- 休業開始時賃金日額: 休業開始前6か月の賃金を基に算定
子どもが死亡した場合、死亡翌日以降の日数に対応する給付額が返納対象となります。
【例】
– 休業開始時賃金日額:10,000円
– 給付率:67%(育休開始180日以内)
– 子どもが支給単位期間の15日目に死亡した場合
– 残り15日分(16〜30日目)が返納対象
– 返納額 = 10,000円 × 15日 × 67% = 100,500円
実際の計算はハローワークが行います。 上記はあくまで計算の仕組みを理解するための例示です。
返納金の納付方法
ハローワークから返納通知が届いたら、以下の方法で納付します。
- 納付書による金融機関窓口での納付
-
通知書に同封される納付書を持参して、銀行・郵便局などで納付
-
口座振替による納付
-
事前に登録している場合は自動で引き落とし
-
分割納付の相談
- 一括納付が困難な場合はハローワークに相談することが可能。ただし、分割が認められるかどうかはケースによる
期限を守ることが重要です。 返納期限を過ぎると延滞金が発生する場合があります。期限内に対応できない事情がある場合は、必ずハローワークに事前に連絡してください。
事業主(人事担当者)が行うべき対応
従業員から子どもの死亡を報告された場合、人事担当者は以下の対応を速やかに行う必要があります。
人事担当者のチェックリスト
- [ ] 従業員から死亡の報告を受ける(報告日時を記録)
- [ ] 育児休業の終了日を確認する(子どもの死亡翌日が育休終了日)
- [ ] 直近の給付金申請状況を確認する(いつの期間分まで申請・受給済みか)
- [ ] ハローワークへの届出書類を準備する
- 育児休業給付金支給申請書(必要に応じて修正)
- 添付書類(死亡診断書コピーなど)の収集
- [ ] ハローワークへ速やかに届出を行う
- [ ] 従業員に返納通知が届いた際のサポートを行う
注意すべき対応
❌ やってはいけないこと
– 従業員から報告を受けたにもかかわらず、ハローワークへの届出を怠る
– 死亡後も継続して育児休業給付金の申請を続ける
– 従業員への説明を省略する
✅ 推奨される対応
– 悲しみの中にある従業員への配慮を忘れず、手続きは会社側で最大限サポートする
– 社会保険労務士(社労士)への相談を含めて対応を検討する
– 返納が発生した場合、従業員が過度に負担を感じないよう丁寧に説明する
給付金返納に関する注意点とよくある誤解
注意点1:「2か月後払い」による混乱に注意
育児休業給付金は2か月ごとに後払いで支給されます。たとえば4月・5月分の給付金が6月末に振り込まれるような仕組みです。
子どもが5月に亡くなった場合、6月末に振り込まれた給付金の中には「返納不要な4月分」と「返納必要な5月の一部分」が混在しています。この場合、全額を返納するのではなく、ハローワークの計算に基づいた金額のみ返納することになります。
注意点2:死産・出生直後の死亡も届出が必要
死産(妊娠22週以降の胎児の死亡)や、出生直後(数日以内)の死亡についても、育休・産休の取得状況によっては届出が必要になります。
特に出産手当金(健康保険)と育児休業給付金(雇用保険)は制度が異なるため、それぞれの担当窓口(健康保険組合とハローワーク)に別々に届け出る必要があります。
注意点3:育休の延長申請をしていた場合
育休の延長申請(1歳6か月・2歳まで)を行った後に子どもが亡くなった場合も、基本的な手続きは同じです。延長後の給付金についても、死亡翌日以降の分は返納対象となります。
注意点4:双子・多胎の場合
双子・多胎で育休を取得していた場合、一方の子どもが亡くなっても、もう一方の子どもが存在する限り育児休業は継続できます。この場合、給付金の返納は原則として発生しません。ただし、亡くなった子どもについてはハローワークへの届出は必要です。
まとめ:育休中の子ども死亡時に最低限押さえるべきポイント
悲しい出来事の中でも、制度上の手続きは避けられません。以下の3点を最低限押さえてください。
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 速やかに勤務先へ報告する | 人事・総務担当者に子どもの死亡を速やかに伝える |
| 2 | 死亡診断書のコピーを準備する | ハローワークへの届出に必要な書類として保管する |
| 3 | 死亡後の給付金は受け取らない | 誤って受け取った場合は全額返納が必要になる |
手続きは事業主(会社)が代行するケースが大半ですが、会社の対応が遅い場合は直接ハローワークに問い合わせることも可能です。また、社会保険労務士(社労士)に相談すれば、手続き全体をサポートしてもらえます。
悲しみの中での手続きは精神的に大変な負担です。一人で抱え込まず、会社や専門家のサポートを積極的に活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもが亡くなった当日に会社に報告できなかった場合、どうすればいいですか?
翌日以降でも速やかに報告すれば問題ありません。重要なのは「知った時点でできるだけ早く」報告することです。数日以内に連絡できれば、手続き上の大きな支障はありません。ただし、報告が大幅に遅れると、その間に振り込まれた給付金が全額返納対象になる可能性があるため、注意が必要です。
Q2. 死亡した月の給付金は全額返納しなければなりませんか?
いいえ、死亡した月の給付金を全額返納する必要はありません。死亡日の前日までの日数に対応する部分は返納不要です。具体的な金額はハローワークが計算して通知します。自己判断で全額返納することのないようにしてください。
Q3. 双子の一方が亡くなった場合はどうなりますか?
もう一方の子どもが存在する限り、育児休業は継続でき、給付金も引き続き受給できます。この場合、原則として返納は発生しません。ただし、亡くなった子どもについてはハローワークへの届出が必要です。
Q4. ハローワークへの届出は本人が直接行う必要がありますか?
一般的には事業主(会社)を通じて届出を行います。ただし、個人事業主の場合や会社の対応が遅延している場合は、本人が直接ハローワーク窓口に出向くことも可能です。いずれの場合も、死亡診断書のコピーを持参してください。
Q5. 返納金が払えない場合はどうすればいいですか?
ハローワークに事前に相談することで、分割納付が認められる場合があります。黙って期限を過ぎると延滞金が発生するリスクがあるため、支払いが困難な事情がある場合は必ず期限前にハローワークへ連絡・相談してください。
Q6. 育休中の子どもの死亡に関して、健康保険側での手続きも必要ですか?
はい、健康保険(出産手当金など)と雇用保険(育児休業給付金)は別々の制度です。健康保険については加入している健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)に、雇用保険についてはハローワークにそれぞれ届け出る必要があります。
Q7. 社会保険労務士(社労士)に相談すべき場合はどのような状況ですか?
会社の人事担当者が手続きに不慣れな場合、個人事業主で自分で手続きを行う必要がある場合、返納金額に疑問がある場合、分割納付の交渉が必要な場合などは、社労士への相談が有効です。多くの社労士事務所では、こうした緊急性の高いケースにも対応しています。
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