確定申告で配偶者控除を受ける方法|育休中の親族扶養を完全ガイド

確定申告で配偶者控除を受ける方法|育休中の親族扶養を完全ガイド 育児休業制度

育児休業中は給与が減少・途絶えるため、それまで配偶者控除の対象外だった配偶者が新たに控除対象となったり、扶養要件が変わったりします。本記事では、育休中の税務申告と配偶者控除・扶養制度について、法的根拠と手続きを完全ガイドします。


1. 育休中の税務申告・扶養制度の基礎知識

1.1 育児休業給付金は「非課税」が大原則

育児休業給付金は、雇用保険法第10条に基づく給付金であり、所得税法上の非課税給付です。つまり、給付金は以下の場面で所得に含まれません。

項目 扱い 法的根拠
育児休業給付金 非課税 雇用保険法第10条、所得税法第9条第1項
配偶者控除の所得計算 含めない 所得税法第76条施行令第185条
被扶養者認定 基本的に含めない 健康保険法第161条運用基準
扶養控除の所得計算 含めない 所得税法第79条

具体例:
– 育児休業給付金:月額20万円 × 12ヶ月 = 240万円(非課税)
– 給与:2ヶ月間勤務分5万円(課税)
配偶者控除判定時の所得:5万円(給付金は含めない)

この仕組みにより、育休中は配偶者控除や扶養要件が有利に変わる可能性が高いのです。

1.2 給与所得と給付金の違い

育休中に発生する所得は「給与」と「給付金」に分かれます。これらは全く異なる税務扱いを受けます。

給与所得の計算方法

給与から給与所得控除を差し引いた額が「給与所得」になります。

給与所得の計算式:
給与収入 - 給与所得控除 = 給与所得

【給与所得控除額の早見表】
給与収入        控除額
~550万円      収入 × 20% + 44万円
550~900万円   収入 × 10% + 110万円
900~1,500万円  収入 × 5% + 170万円

育休中の給与が少額の場合の例:
– 復帰月の給与:6万円
– 給与所得控除:6万円 × 20% + 44万円 = 56万円
給与所得:マイナス(0円として扱う)

この場合、給与がある月があっても配偶者控除要件に影響しません。

育児休業給付金は計算対象外

育児休業給付金は所得税の計算対象外であり、以下の書類には記載されません。

  • 源泉徴収票(給付金は記載されない)
  • 給与明細(給付金と給与は分離記載)
  • 被扶養者認定の「収入」(基本的に含めない)

1.3 2026年改正内容と最新法改正

配偶者控除の改正予定(2026年度税制改正)

現在の配偶者控除制度は以下の改正が検討されています。

改正内容 施行時期 影響
配偶者特別控除の範囲拡大 2026年度(検討中) 所得48万~133万円の配偶者にも控除適用の可能性
育休保険料免除制度の拡充 2025年4月実施 従来の要件が緩和される見込み
被扶養者認定基準の見直し 2026年度 育休給付金の扱いがより明確化

2026年改正の現況:
厚生労働省・財務省による税制改正大綱で、育児休業と税制優遇の連動強化が示唆されています。育休取得者の手続き負担軽減が目標です。


2. 配偶者控除を受けるための要件と申請手続き

2.1 配偶者控除の所得要件(完全チェックリスト)

配偶者控除の対象となるための要件:

✓ 配偶者が以下のすべてを満たす必要があります

【所得要件】
└─ 1月1日~12月31日の合計所得が48万円以下(2020年度以降)
   ├─ 2019年度以前は38万円以下
   └─ 育児休業給付金は含めない

【身分要件】
├─ 法律上の配偶者である
├─ 納税者と生計を一にしている
└─ 配偶者が青色申告事業専従者ではない

【給与所得者の場合】
└─ 給与所得控除後が0円以下
   例)給与6万円の場合:6万円 - 55万円 = -49万円(0円として扱う)

【その他】
└─ 給与所得者の配偶者特別控除適用者ではない

配偶者控除の控除額

配偶者控除の控除額は、納税者の合計所得金額により異なります。

納税者の合計所得 控除額(配偶者45歳未満) 控除額(配偶者70歳以上)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円
1,000万円超 控除なし 控除なし

育休中の節税効果の例:
– 育休前:配偶者控除なし(配偶者が正社員で収入150万円)
– 育休中:配偶者控除38万円を適用可能
節税額:38万円 × 20%(所得税率) = 7,600円~11,400円

2.2 被扶養配偶者(健康保険)の認定要件と手続き

配偶者控除と別に、健康保険の被扶養配偶者認定も申請が必要です。これはセットで検討する必要があります。

被扶養配偶者の要件(健康保険法第161条)

要件:
├─ 月額収入が130万円以下(60歳以上は180万円以下)
├─ 年間所得が130万円未満
├─ 被保険者(夫)の収入の2分の1未満
└─ 認定申請書を健康保険組合に提出

【育児休業給付金の扱い】
└─ 運用基準により「当座の生活費」として扱う
   ├─ 月額108,333円は収入に計上しない場合がある
   └─ 超過分は収入に算入される場合がある

重要:2022年10月の運用基準改正

健康保険組合によって育児休業給付金の扱いが異なるため、必ず加入先の健康保険組合に確認してください

被扶養配偶者認定の申請手続き

手続き 内容 期限
認定申請書提出 「健康保険被扶養者認定申請書」を健康保険組合に提出 状況変化後30日以内
必要書類 源泉徴収票、給与明細、戸籍謄本、住民票 同上
認定開始日 原則として申請日の属する月の翌月1日 申請書受領日による
保険証更新 認定後、新しい保険証が発行される 1~2週間後

2.3 扶養親族控除の対象要件と手続き

配偶者のほか、親や子どもなどの親族を扶養している場合、扶養控除の対象になる可能性があります。

扶養控除の対象となる親族

要件:
├─ 年間所得が48万円以下(2020年度以降)
│  └─ 2019年度以前は38万円以下
├─ 納税者と生計を一にしている
├─ 配偶者ではない
├─ 日本国内に住所がある(転出者を除く)
└─ 青色申告事業専従者ではない

【控除額】
├─ 16~18歳:38万円(特定扶養親族)
├─ 19~22歳:63万円(特定扶養親族)
├─ 23~69歳:38万円
└─ 70歳以上:48万円(老人扶養親族)

3. 確定申告の手続きと必要書類

3.1 確定申告が必要な人・不要な人

育休中に確定申告が必要かどうかは、給与とその他の所得によります。

確定申告が必要なケース

以下のいずれかに該当する場合:

✓ 給与が2箇所以上の会社から発生している
✓ 給与以外に20万円以上の所得がある
✓ 医療費控除・住宅ローン控除を初めて受ける
✓ 育休から復帰して給与が大幅に変わった
✓ 配偶者控除を新たに受ける(税務署への届け出)

確定申告が不要なケース

以下のいずれかで給与が1箇所のみ:

✗ 給与所得が150万円以下
✗ その他所得が20万円以下
✗ 配偶者控除・扶養控除は年末調整で対応可能
  (ただし状況変化時は届け出必要)

3.2 必要書類の完全リスト

確定申告時に必ず用意すべき書類を「入手先」「タイミング」まで記載します。

書類 入手先 取得時期 備考
源泉徴収票 勤務先 1月末日まで 給与のみの場合
育児休業給付金支給通知 ハローワーク 給付時 非課税だが記録として必要
健康保険被扶養者認定通知書 健康保険組合 認定時 扶養要件の根拠となる
戸籍謄本 市町村役場 必要に応じて 配偶者・親族の身分確認
住民票 市町村役場 必要に応じて 生計を一にする根拠
医療費控除の領収書 医療機関 領収時に保存 ある場合のみ
給与明細書 勤務先 毎月 源泉徴収票の確認用
マイナンバーカード 自身で用意 確定申告時 本人確認書類

3.3 確定申告書の記入方法(配偶者控除の場合)

申告書第一表への記入

【重要記入箇所】

1. 給与所得金額欄
   └─ 給与から給与所得控除を差し引いた額を記入
      例)給与6万円 - 給与所得控除55万円 = 0円

2. 配偶者控除欄
   └─ 配偶者の氏名・マイナンバー・生年月日を記入
   └─ 配偶者控除額(38万円または48万円)を記入

3. 扶養親族欄
   └─ 該当者がいる場合、氏名・マイナンバー・生年月日を記入
   └─ 控除額を集計して記入

申告書第二表への記入

【配偶者の所得内容を記入】

配偶者の氏名:〇〇〇〇
マイナンバー:【記入】
続柄:配偶者

配偶者の合計所得金額:【〇万円】
├─ 育児休業給付金は含めない
└─ 給与所得のみで計算

配偶者の同一生計配偶者チェック:✓

3.4 確定申告の提出方法と期限

方法 手続き 期限
税務署窓口提出 申告書類一式を持参 3月15日(期間外の場合は4月中旬まで受け付け)
郵送提出 申告書類を税務署に郵送 消印日が3月15日以内
e-Tax(電子申告) マイナンバーカードまたはID/パスワードで申告 3月21日まで(電子申告は期限延長)
税理士代理申告 税理士に委任 原則3月15日まで

育休中の申告者向け:e-Taxの利用を強く推奨
– 自宅から申告可能
– 期限が4日延長される
– 訂正がしやすい


4. よくある質問(FAQ)

Q1. 育児休業給付金を受け取った場合、確定申告で申告する必要はありますか?

A. いいえ、申告不要です。育児休業給付金は非課税給付であり、所得税の申告対象外です。ただし、以下の場合は確定申告が必要です。

  • 給与が2箇所以上から発生している
  • 医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合
  • 配偶者控除を新たに受ける場合

給付金そのものは申告不要ですが、給与と給付金の両方がある場合は確定申告の検討が必要です。

Q2. 育休中に配偶者が短期アルバイトで15万円の給与を得た場合、配偶者控除は受けられますか?

A. はい、受けられます。計算方法は以下の通りです。

配偶者の給与:15万円
給与所得控除:15万円 × 20% + 44万円 = 54万円
給与所得:マイナス(0円として扱う)

⇒ 配偶者の合計所得は0円のため、配偶者控除38万円を適用可能

給与所得控除により、150万円程度までのアルバイト収入は配偶者控除要件に大きく影響しません。

Q3. 育休中に両親を扶養に入れた場合、扶養控除の手続きは?

A. 扶養控除は以下の手続きで対応します。

  1. 申告時に扶養親族欄に記入:確定申告書第一表に両親の氏名・マイナンバー・生年月日を記入
  2. 親族の所得要件確認:両親の合計所得が48万円以下であることを確認(年金受取や給与収入から計算)
  3. 生計を一にする根拠:住民票で同一世帯であることを確認、または仕送り領収書・送金記録を保存

70歳以上の親を扶養する場合、控除額は48万円となり、より節税効果が大きいです。

Q4. 被扶養配偶者認定と配偶者控除は同時に申請できますか?

A. はい、別途の申請手続きで対応します。ただし注意点があります。

手続き:
1. 配偶者控除 → 確定申告(税務署に提出)
2. 被扶養認定 → 健康保険組合に申請書提出

留意点:
├─ 両者の所得要件が異なる
│  ├─ 配偶者控除:合計所得48万円以下
│  └─ 被扶養認定:月収130万円以下
├─ 育児休業給付金の扱いが異なる場合がある
│  └─ 健康保険組合に事前確認必須
└─ 申請先が異なるため、別々の手続きが必要

重要:健康保険組合に育休給付金の扱いを必ず確認してください。 組合によって基準が異なります。

Q5. 育休後に復帰した場合、配偶者控除はどうなりますか?

A. 配偶者の収入状況によって以下のように対応します。

ケース1:配偶者が専業主婦のまま
└─ 翌年も配偶者控除を継続申告

ケース2:配偶者が就職または給与が増加した場合
├─ 配偶者の合計所得が48万円超過
├─ 配偶者控除は終了
└─ 配偶者特別控除の対象になるか確認(所得48万~133万円の範囲)

ケース3:配偶者の収入が再び減少した場合
└─ 翌年から配偶者控除の適用再開可能

年末調整時に配偶者の年間所得見積額から控除対象かを判断します。

Q6. 2026年の改正で育休中の税務手続きはどう変わりますか?

A. 現在検討中の主な改正内容は以下の通りです。

改正予定項目:
1. 配偶者特別控除の拡大
   └─ より多くの家庭で配偶者控除が適用される見込み

2. 育休保険料免除制度との連動
   └─ 税制優遇がより明確化される

3. 被扶養者認定基準の整理
   └─ 育休給付金の扱いが統一化される可能性

現状:具体的な改正内容は2025年度税制改正大綱で確定予定

育休取得者は情報更新に注意し、改正実施時には税務署か健康保険組合に確認することをお勧めします。


5. まとめと相談先

育休中の確定申告と配偶者控除・扶養制度は複雑ですが、以下のポイントを押さえておけば対応できます。

最重要ポイント3つ:
1. 育児休業給付金は非課税であり、配偶者控除・扶養要件に含めない
2. 配偶者控除と被扶養認定は別手続きであり、それぞれ要件・期限が異なる
3. 健康保険組合によって給付金の扱いが異なるため、事前確認必須

相談先一覧:

相談内容 相談先 連絡先
所得税・配偶者控除 税務署 国税庁ホームページから地域の税務署を検索
被扶養認定・保険料 健康保険組合 健康保険証裏面に記載
育児休業給付金 ハローワーク 厚生労働省ハローワークインターネットサービス
育児休業制度全般 勤務先人事部門 社内問い合わせ窓口
総合的なアドバイス 税理士・社労士 税理士会・社労士会から紹介可能

育児休業中は家計管理や税務手続きが重なりますが、事前に制度を理解しておくことで、手続きがスムーズになり、さらに適切な税軽減措置を受けられます。本記事が皆様のお役に立つことを願っています。

よくある質問(FAQ)

Q. 育児休業給付金は税務申告時に所得に含める必要がありますか?
A. いいえ、育児休業給付金は所得税法上の非課税給付であり、所得に含めません。配偶者控除や扶養要件の判定時も給付金は計算対象外です。

Q. 育休中に配偶者控除を新たに受けられる場合はありますか?
A. はい、育休で給与が減少・途絶えた場合、配偶者の所得が48万円以下なら、それまで対象外だった配偶者が新たに配偶者控除の対象となる可能性があります。

Q. 育休中の確定申告で気をつけるべきポイントは何ですか?
A. 給与と給付金を区別し、給付金を所得計算に含めないこと。復帰月など給与がある月がある場合でも、給付金と給与は分けて計算します。

Q. 配偶者控除を受けるための配偶者の所得要件はいくらですか?
A. 2020年度以降、配偶者の合計所得が48万円以下(給与のみの場合は給与収入103万円以下)である必要があります。育児休業給付金は含めません。

Q. 2026年の税制改正で育休と配偶者控除の扱いは変わりますか?
A. はい、2026年度税制改正では配偶者特別控除の範囲拡大と被扶養者認定基準の見直しが検討されており、育休取得者の手続き負担軽減が目標です。

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