本記事の監修ポイント:2022年10月施行の育児・介護休業法改正に対応。産後パパ育休との組み合わせ、ハローワーク申請の実務手順、給付金の具体的な計算例まで網羅しています。
もくじ
- 育休の分割取得とは?2022年改正で何が変わったか
- 育休分割取得の対象者と取得条件チェックリスト
- 申請書類の完全一覧と入手先
- 分割取得のスケジュールと申請タイムライン
- 育児休業給付金の計算方法(分割取得版)
- 産後パパ育休との組み合わせ実例
- 申請時のよくあるミスと対策
- FAQ:よくある質問
育休の分割取得とは?2022年改正で何が変わったか
育児休業の「分割取得」とは、子ども1人の養育に際して、育休期間を一度にまとめて取得するのではなく、複数回に分けて取得できる制度です。2022年10月1日に施行された改正育児・介護休業法により、取得できる回数と柔軟性が大幅に拡充されました。
改正前後の制度比較
| 比較項目 | 改正前(〜2022年9月30日) | 改正後(2022年10月1日〜) |
|---|---|---|
| 取得可能回数 | 原則1回(例外2回) | 最大4回(子1人あたり) |
| 産後パパ育休 | なし | 新設(2回まで分割可) |
| 申出のタイミング | 1ヶ月前まで | 原則1ヶ月前(産後パパ育休は2週間前) |
| 夫婦同時取得 | 制限あり | 同時取得可 |
| 有期雇用の条件 | 子が1歳6ヶ月までの継続雇用見込みが必要 | 子が2歳までの継続雇用見込みに緩和 |
改正前(2022年3月以前)の取得ルール
改正前の育児・介護休業法では、育休は原則として1人の子につき1回のみの取得に限られていました。例外として、配偶者の死亡・傷病・離婚などのやむを得ない事情がある場合にのみ2回目の申出が認められていましたが、それ以上の分割は原則不可でした。
この制限が男性の育休取得を妨げる要因のひとつとされており、「取りたくても取りにくい」状況が続いていました。政府は男性育休取得率を2025年度末までに50%・2030年度末までに85%へ引き上げる目標を掲げており、2022年の大幅改正はその中核施策として位置づけられています。
改正後(2022年10月以降)の取得ルール
2022年10月1日施行の改正育児・介護休業法(第5条・施行規則第2条〜第6条)により、以下が可能になりました。
法的根拠:育児・介護休業法第5条第1項・第3項、同施行規則第2条・第4条・第5条
「最大4回」の内訳
子1人あたりの育休取得回数(合計最大4回)
─────────────────────────────────────────
【産後パパ育休(出生時育児休業)】
└─ 子の出生後8週間以内に最大2回
【通常の育児休業】
└─ 子が1歳になるまでに最大2回
─────────────────────────────────────────
合計:最大4回(両制度の合算)
「子1人あたり」のカウントは、同じ子どもに対して父・母それぞれが独立してカウントします。夫婦それぞれが4回ずつ取得できるため、家庭全体では最大8回の取得が可能です。
産後パパ育休(出生時育児休業)との組み合わせ方
産後パパ育休は通常の育休とは別枠の制度です。主に男性の取得を促進することを目的として新設されましたが、女性も取得可能です。
| 制度 | 対象期間 | 分割回数 | 申請期限 |
|---|---|---|---|
| 産後パパ育休 | 出生後8週間以内 | 最大2回 | 取得希望日の2週間前まで |
| 通常育休 | 子が1歳になるまで(延長で2歳まで) | 最大2回 | 取得希望日の1ヶ月前まで |
たとえば父親が「産後パパ育休2回+通常育休2回」を組み合わせると、子の出生から1歳になるまでの間に計4回、子育ての節目に合わせて柔軟に休業できます。
育休分割取得の対象者と取得条件チェックリスト
雇用形態別の対象要件早見表
| 雇用形態 | 継続雇用要件 | 雇用継続見込み | 労使協定による除外 |
|---|---|---|---|
| 正社員 | 不要 | 不要 | 一部除外可能(入社1年未満など) |
| 契約社員・パート | 同一企業で1年以上 | 子が2歳までの更新見込みが必要 | 同上 |
| 派遣社員 | 派遣元企業で1年以上 | 同上 | 同上 |
| 日雇い労働者 | 対象外 | ─ | ─ |
⚠️ よくある誤解:「派遣社員は育休が取れない」という誤解がありますが、派遣元(登録している派遣会社)との間で1年以上継続雇用されていれば対象です。派遣先企業の規定ではなく、派遣元との雇用契約を確認しましょう。
取得条件チェックリスト
以下の項目をすべて確認してください。
【基本要件】
– [ ] 育休開始日において同一企業(または派遣元)に1年以上継続して雇用されている(正社員は不要)
– [ ] 育休開始予定日から起算して1年以内に雇用期間が終了しないことが見込まれる(有期雇用の場合)
– [ ] 育休取得対象となる子どもが2歳未満である
【手続き要件】
– [ ] 通常育休は取得希望日の1ヶ月前までに申出する
– [ ] 産後パパ育休は取得希望日の2週間前までに申出する
– [ ] 2回目以降の育休は、前回の育休終了後に一定期間就業している(休業と休業の間に就業期間が必要)
【給付金受給要件(雇用保険)】
– [ ] 育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上ある
– [ ] 育休中の就業日数が月10日以下(または就業時間が月80時間以下)
申請書類の完全一覧と入手先
育休分割取得の申請では、事業主への申出とハローワークへの給付金申請の2段階の手続きが必要です。
事業主への申出書類
通常の育児休業(2回分割)の場合
| 書類名 | 作成者 | 提出先 | 入手先 | 提出タイミング |
|---|---|---|---|---|
| 育児休業申出書(第1回目) | 労働者 | 事業主 | 厚生労働省HPまたは会社書式 | 取得希望日の1ヶ月前まで |
| 育児休業申出書(第2回目) | 労働者 | 事業主 | 同上 | 取得希望日の1ヶ月前まで |
| 育児休業取扱通知書 | 事業主 | 労働者 | 事業主が作成 | 申出後速やかに |
| 母子手帳の写し(出生証明ページ) | 労働者 | 事業主 | ─ | 申出時 |
産後パパ育休(出生時育児休業)の場合
| 書類名 | 作成者 | 提出先 | 入手先 | 提出タイミング |
|---|---|---|---|---|
| 出生時育児休業申出書(第1回目) | 労働者 | 事業主 | 厚生労働省HPまたは会社書式 | 取得希望日の2週間前まで |
| 出生時育児休業申出書(第2回目) | 労働者 | 事業主 | 同上 | 同上 |
| 出生時育児休業取扱通知書 | 事業主 | 労働者 | 事業主が作成 | 申出後速やかに |
| 出生を証明する書類(母子手帳等) | 労働者 | 事業主 | ─ | 申出時または出生後速やかに |
ハローワークへの給付金申請書類
給付金申請は、事業主が労働者に代わってハローワークへ提出するのが通常の流れです。
| 書類名 | 作成者 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | 事業主(労働者の情報を基に) | 管轄ハローワーク | 育休開始日から1ヶ月以内が推奨(遅くとも4ヶ月以内) |
| 休業開始時賃金月額証明書 | 事業主 | ハローワーク | 初回申請時に同時提出 |
| 賃金台帳・出勤簿の写し | 事業主 | ハローワーク | 直近6ヶ月分が必要 |
| 母子手帳(出産日・子の氏名が確認できるページ)の写し | 労働者 | 事業主経由 | 初回申請時 |
| 育児休業給付金支給申請書(2ヶ月ごと) | 事業主 | ハローワーク | 支給単位期間(原則2ヶ月)ごとに申請 |
💡 2回目以降の分割育休で再申請する場合:新たに「育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書」を提出します。受給資格確認は初回のみでよい場合もありますが、間に就業期間が入るためハローワークに事前確認を推奨します。
分割取得のスケジュールと申請タイムライン
分割取得では「いつ申出するか」「いつ給付金を申請するか」のタイミング管理が重要です。以下に標準的なスケジュール例を示します。
スケジュール例:父親が産後パパ育休2回+通常育休2回を取得する場合
【出産予定日の8週間前〜出産】
↓
産後パパ育休(第1回目)の申出 ───── 取得希望日の2週間前まで
【出生後0〜8週間】
├─ 産後パパ育休①:例)出生〜3週間(21日間)
↓
中断(就業)
↓
産後パパ育休(第2回目)の申出 ───── 取得希望日の2週間前まで
↓
├─ 産後パパ育休②:例)出生後5〜7週(14日間)
↓
就業(職場復帰)
↓
通常育休(第1回目)の申出 ────────── 取得希望日の1ヶ月前まで
↓
【子が3ヶ月〜6ヶ月頃】
├─ 通常育休①:例)子が3ヶ月〜5ヶ月(2ヶ月間)
↓
就業(職場復帰)
↓
通常育休(第2回目)の申出 ────────── 取得希望日の1ヶ月前まで
↓
【子が6ヶ月〜1歳頃】
├─ 通常育休②:例)子が7ヶ月〜10ヶ月(3ヶ月間)
↓
職場復帰
申請期限カレンダー(重要日程の早見表)
| 手続き | 期限 | 遅延した場合のリスク |
|---|---|---|
| 通常育休の申出 | 取得希望日の1ヶ月前 | 事業主から開始日の繰り下げを求められる場合あり |
| 産後パパ育休の申出 | 取得希望日の2週間前 | 同上 |
| 受給資格確認(初回ハローワーク申請) | 育休開始日から4ヶ月以内 | この期限を超えると給付金受給が困難になる |
| 2ヶ月ごとの給付金支給申請 | 支給単位期間終了後2ヶ月以内 | 期限超過で不支給になるリスクあり |
| 育休延長の申出(保育所不承諾の場合) | 子が1歳の誕生日の2週間前まで | 延長が認められない可能性あり |
育児休業給付金の計算方法(分割取得版)
給付率と給付額の基本構造
育児休業給付金(雇用保険法第61条の4)は、休業開始前の賃金日額を基準に計算されます。
| 休業期間 | 給付率 | 給付金額(目安) |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日目まで | 賃金日額 × 67% | 月給30万円の場合:約20.1万円/月 |
| 181日目以降 | 賃金日額 × 50% | 月給30万円の場合:約15万円/月 |
重要:分割取得の場合、180日のカウントは通算で行われます。1回目の育休で100日取得した場合、2回目は80日間は67%、残りは50%の給付率となります。
賃金日額の計算式
賃金日額 = 育休開始前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180日
- 賞与(ボーナス)は含まれません
- 産前産後休業中の賃金は含めません
- 育休開始前6ヶ月のうち、賃金支払基礎日数が11日未満の月は除外して計算
具体的な計算例
【前提条件】
– 月給:300,000円(固定)
– 育休パターン:産後パパ育休28日間(1回目)+14日間(2回目)+通常育休90日間(1回目)+60日間(2回目)
【STEP1:賃金日額の計算】
賃金日額 = (300,000円 × 6ヶ月) ÷ 180日
= 1,800,000円 ÷ 180日
= 10,000円/日
【STEP2:各取得期間の給付額計算】
| 育休の回 | 取得日数 | 通算日数(累計) | 給付率 | 給付金額 |
|---|---|---|---|---|
| 産後パパ育休① | 28日 | 28日目まで | 67% | 28日×10,000円×67% = 187,600円 |
| 産後パパ育休② | 14日 | 42日目まで | 67% | 14日×10,000円×67% = 93,800円 |
| 通常育休① | 90日 | 132日目まで | 67% | 90日×10,000円×67% = 603,000円 |
| 通常育休②(前半) | 48日 | 180日目まで | 67% | 48日×10,000円×67% = 321,600円 |
| 通常育休②(後半) | 12日 | 192日目まで | 50% | 12日×10,000円×50% = 60,000円 |
| 合計 | 192日 | ─ | ─ | 約1,266,000円 |
給付金の上限・下限額(2025年度)
| 区分 | 金額(日額) |
|---|---|
| 賃金日額の上限(67%計算対象) | 15,190円(67%適用時:10,177円) |
| 賃金日額の上限(50%計算対象) | 15,190円(50%適用時:7,595円) |
| 賃金日額の下限 | 2,746円 |
上限・下限は毎年8月1日に改定されます。最新の金額はハローワークインターネットサービスでご確認ください。
育休中に就業した場合の調整
分割取得の「中断期間(就業期間)」に給付金は支給されません。ただし、育休中に一時的・臨時的に就業した場合(月10日以下または月80時間以下)は、就業日数や就業時間に応じて給付金が一部減額されます。
【就業日数が10日以下の場合】
調整後給付金 = 本来の給付金 −(賃金日額 × 就業日数)× 0.8
※ただし、給付金と就業収入の合計が休業前賃金の80%を超えないよう調整
産後パパ育休との組み合わせ実例
パターンA:夫が産後パパ育休2回+通常育休1回、妻が通常育休1回
出生 子1歳
│ │
妻:──[産後休業]─┤───[育休(通常1回)]───┤──→ 職場復帰
│
夫:──────────[PaP①]──[復帰]──[PaP②]──[復帰]─────[通常①]───→ 職場復帰
(出生後1〜2週) (出生後4〜8週) (3ヶ月〜6ヶ月)
凡例:PaP = 産後パパ育休
パターンB:夫婦交互に育休を取り、ほぼ途切れなくカバーする
| 時期 | 取得者 | 制度 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 出産直後〜6週 | 妻 | 産後休業(法定) | 8週間 |
| 出生後1〜3週 | 夫 | 産後パパ育休① | 3週間(妻の産後休業と重複可) |
| 産後8週〜6ヶ月 | 妻 | 通常育休① | 4ヶ月 |
| 出生後6〜8週 | 夫 | 産後パパ育休② | 2週間 |
| 子3〜6ヶ月 | 夫 | 通常育休① | 3ヶ月(妻の育休と重複可) |
| 子6ヶ月〜1歳 | 妻 | 通常育休② | 6ヶ月 |
| 子6〜10ヶ月 | 夫 | 通常育休② | 4ヶ月(妻の育休と重複可) |
💡 ポイント:夫婦が同時に育休を取得することも2022年改正から明示的に認められています。「パパ・ママ育休プラス」制度(子が1歳2ヶ月まで延長可)と組み合わせると、さらに柔軟なスケジュールが組めます。
申請時のよくあるミスと対策
ミス1:「2回目以降の育休も1ヶ月前の申出が必要」を忘れる
分割取得の2回目・3回目も、取得希望日の1ヶ月前(産後パパ育休は2週間前)までの申出が必要です。「前回と同じ会社だから省略できる」と勘違いするケースが多く見られます。
対策:スケジュール表を作成し、各回の申出期限をスマートフォンのカレンダーに登録しておく。
ミス2:給付金の「通算180日ルール」を意識せず給付率が下がる
前述のとおり、給付率67%が適用されるのは通算180日までです。複数回の育休を合計すると意外と早く180日を超えてしまうことがあります。
対策:事前に取得日数の合計を計算し、67%適用期間を最大限活かせるよう休業期間を設計する。
ミス3:復職期間が短すぎて「就業実績なし」と判断される
分割取得の中断期間(就業期間)が形式的すぎると、実質的に連続した育休とみなされるリスクがあります。法令上の明確な日数規定はありませんが、少なくとも1週間以上の実就業期間を設けることが実務上推奨されています。
対策:会社の人事担当者・社労士と事前に相談し、就業期間の設定について確認を取る。
ミス4:有期雇用労働者が「雇用継続見込み要件」を確認しない
有期雇用の場合、育休申出時点で「子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されることが見込まれること」が要件です。この確認を怠ると、2回目以降の育休申出時に「対象外」と判断される可能性があります。
対策:育休申出前に労働契約書を確認し、更新予定が不明な場合は会社に確認書面を求める。
ミス5:ハローワークへの初回申請が遅れる
受給資格確認・初回支給申請は育休開始後4ヶ月以内に行う必要があります(実務上は1ヶ月以内が推奨)。事業主が申請手続きをしてくれると思い込み、確認を怠るケースがあります。
対策:育休開始前に「ハローワーク申請は事業主が行うか、自分で行うか」を人事部門に確認しておく。
ミス6:産後パパ育休と通常育休の間の就業期間を意識しない
産後パパ育休から通常育休への移行時に、「中断期間なしで連続取得できる」と勘違いするケースがあります。法的には特定の条件下で連続取得が可能ですが、給付金申請の手続きが異なるため注意が必要です。
対策:遷移時期の1ヶ月前までに、次の育休申出を事業主に提出し、ハローワークにも手続き内容を事前確認する。
FAQ:よくある質問
Q1. 育休を4回すべて取得した場合、給付金は4回分それぞれ申請が必要ですか?
A. はい、原則として育休の回ごとに支給申請が必要です。ただし、同一の受給資格の範囲内であれば、申請書の一部情報は省略できる場合があります。ハローワークの窓口か事業主の担当者に確認してください。
Q2. 産後パパ育休の期間中に育児休業給付金とは別に「出生時育児休業給付金」が支給されると聞きました。通常育休の給付金と何が違うのですか?
A. 2022年10月以降、産後パパ育休(出生時育児休業)に対応した出生時育児休業給付金が新設されました。給付率・計算方法は通常の育児休業給付金と同じ(67%または50%)ですが、申請様式が異なります。また、出生時育児休業給付金は通算日数のカウントに含まれます(産後パパ育休の日数も180日のカウントに算入)。
Q3. 2回目の育休申出を1ヶ月前より遅れて出した場合はどうなりますか?
A. 事業主は育休の開始日を申出日から1ヶ月後の日まで繰り下げることができます(育児・介護休業法第6条第3項)。ただし、あらかじめ会社に相談し、書面で合意した場合は開始日の変更が認められる場合もあります。いずれにしても、早めの申出が最善策です。
Q4. 育休を取得中に給与が一部支払われた場合、給付金はどうなりますか?
A. 育休中に事業主から賃金が支払われた場合、給付金と合わせた額が休業前賃金の80%を超えると給付金が減額され、100%以上になると給付金は支給されません。詳細な計算方法はハローワークに確認してください。

