2025年4月1日、育児・介護休業法の改正により、企業には新たに育休取得計画書の作成・提出義務が課されることになりました。対象は従業員規模を問わずすべての企業です。人事担当者にとって「何を、いつまでに、どのように提出すればよいのか」が最大の関心事となっているはずです。
本記事では、計画書の記載必須項目・様式・提出スケジュール・よくある疑問まで、実務に直結する情報を網羅的に解説します。
【2025年改正】育休取得計画書とは何か
法改正の背景と目的
日本の男性育休取得率は2023年度に初めて30%を超えましたが、政府目標の「2025年度に50%」には依然として大きな差があります。この課題を解消するため、育児・介護休業法(2024年法律第100号) が改正され、2025年4月1日に施行されます。
改正の柱は「企業が育休取得を見える化し、計画的に推進する仕組みを法的義務として定める」ことです。これまで努力義務にとどまっていた育休推進策が、書面による計画・報告という形で強制力を持つようになりました。
法的根拠:育児・介護休業法 第17条・第20条
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第17条 | 育休取得促進措置の策定義務 |
| 第20条 | 育休取得状況の報告義務 |
従来制度との違い
従来、企業には育休取得を「促進する努力義務」はあっても、具体的な計画書を作成して行政に提出する義務はありませんでした。2025年改正では、以下の3つの義務が新たに課されます。
| 義務の種類 | 概要 | 従来との違い |
|---|---|---|
| ① 育休取得計画書の作成・提出 | 各労働者の取得予定を書面化し提出 | 新設(努力義務→法的義務) |
| ② 育休取得状況報告書の定期提出 | 年1回以上の取得実績の報告 | 新設 |
| ③ 育休取得促進措置の実行計画策定 | 社内環境整備の具体的施策を明示 | 努力義務から義務化 |
ポイント: 企業規模にかかわらず、従業員を1名以上雇用するすべての企業が対象です。中小企業や個人事業主も例外ではありません。
計画書の対象企業・対象労働者の条件
対象企業の条件(規模制限なし)
2025年4月改正では、従来の大企業先行型の義務化とは異なり、企業規模の下限が設けられていません。
| 区分 | 詳細 |
|---|---|
| 対象企業 | 常時雇用される労働者を1名以上雇用するすべての企業 |
| 報告頻度 | 原則として毎年1回(4月を基準月) |
| 担当部署 | 人事・労務担当者が作成・提出の中心となる |
対象労働者の条件(雇用期間・申し出期限)
計画書に記載すべき「育休取得予定者」として対象になるのは、以下の3条件をすべて満たす労働者です。
- 雇用期間が1年以上(有期雇用の場合は1年以上の見込みを含む)
- 配偶者の出産予定日から遡って1年以内に育休取得を申し出る予定
- 育児休業給付金の受給資格を有する(雇用保険加入・過去2年間に11日以上就業した月が12ヶ月以上)
対象外となる場合と経過措置
以下に該当する労働者は、計画書への記載対象から除外されます。
| 対象外となるケース | 根拠・備考 |
|---|---|
| 配偶者が専業主婦(夫)の場合 | 経過措置あり。2025年度中は申し出を猶予可能 |
| 有期雇用で通算雇用期間が1年未満 | 原則として育休取得資格なし |
| 育休を取得しない意思を明示している労働者 | 計画書記載は不要だが、理由確認を推奨 |
| 日雇い・週3日未満の超短時間労働者 | 雇用保険適用除外となるケースあり |
経過措置の注意点: 配偶者が専業主婦(夫)の場合の経過措置は2026年3月31日までの時限措置です。2026年4月以降は対象外ではなくなります。人事担当者は早めに社内整備を進めてください。
育休取得計画書の記載必須項目と内容
計画書は大きく①企業情報、②労働者の基本情報、③取得計画の詳細、④配偶者・出産関連情報の4カテゴリで構成されます。
企業情報・報告者情報の記載方法
企業情報の記入例を以下に示します。
□ 企業名(正式名称) :株式会社〇〇〇
□ 法人番号(13桁) :1234567890123
□ 本社所在地 :東京都千代田区〇〇1-2-3
□ 担当部署・役職 :人事部 人事課長
□ 担当者氏名・連絡先 :山田 太郎 / 03-XXXX-XXXX
□ 報告者署名・日付 :山田 太郎 / 2025年3月20日
法人番号は国税庁の「法人番号公表サイト」で確認できます。未記入の場合は受理されないケースがあるため、必ず事前に確認してください。
労働者の基本情報(フリガナ・性別・雇用形態)
労働者情報の記入例を以下に示します。
□ 氏名(漢字) :佐藤 花子
□ 氏名(フリガナ) :サトウ ハナコ
□ 性別 :女性
□ 雇用形態 :正社員(無期雇用)
□ 入社年月日 :2018年4月1日
□ 雇用契約期間 :無期(有期の場合は契約終了予定日を記載)
□ 所属部署・職種 :営業部 営業職
有期雇用労働者については、「契約更新の見込みの有無」も記載が求められます。「更新見込みあり」と明記することで、取得資格を満たすことが確認されます。
取得予定日・期間・日数の記載ルール
取得計画の記入例を以下に示します。
□ 育休取得予定開始日 :2025年7月1日
□ 育休取得予定終了日 :2026年3月31日
□ 取得予定日数 :274日(約9ヶ月)
□ 取得形態 :一括取得 / 分割取得(2回)
□ パパ育休(産後パパ育休)取得予定:あり/なし
分割取得の場合は、第1期・第2期それぞれの開始日・終了日・日数を個別に記載します。2022年10月導入の「産後パパ育休(出生時育児休業)」を活用する場合は、その旨を明示する欄が設けられています。
配偶者情報・出産予定日の必須記載項目
出産・配偶者情報の記入例を以下に示します。
【記入例(男性労働者が育休取得する場合)】
□ 配偶者氏名 :佐藤 花子
□ 配偶者の出産予定日 :2025年6月15日
□ 出産(予定)日 :2025年6月15日
□ 子の氏名(出産後) :佐藤 三郎(出産後に追記)
□ 子の生年月日 :2025年6月15日(出産後に追記)
出産予定日は申請時点の情報でかまいません。実際の出産日が前後した場合は、取得計画書の修正届を提出することが必要です。
計画書の提出期限・スケジュール・提出先
年間スケジュールと提出期限
2025年度の年間スケジュール例を以下に示します。
【2025年度 年間スケジュール(例)】
1月〜2月 :出産予定者・育休希望者からの申し出受付
↓
2月〜3月 :各労働者との面談・取得計画の確認・計画書作成
↓
3月31日 :育休取得計画書の提出(推奨期限)
↓
4月1日 :改正法施行。計画に基づく育休取得開始
↓
6月30日 :第1回取得状況中間報告
↓
12月31日 :年間取得状況最終報告
↓
翌年1月〜 :次年度計画書の作成準備開始
提出先と提出方法
計画書の提出先と提出方法は以下の通りです。
| 提出先 | 提出方法 |
|---|---|
| 所轄の都道府県労働局(雇用環境・均等部) | 郵送・窓口持参 |
| 厚生労働省指定のオンラインシステム(e-Gov) | 電子申請(推奨) |
電子申請はe-Gov電子申請サービスから行えます。電子証明書(GビズIDなど)が必要ですので、未取得の企業は早めに申請してください。取得まで約2〜3週間かかります。
初年度(2025年度)の特例措置
2025年4月1日の施行直後は、準備期間として2025年6月30日までを「初年度提出猶予期間」とする経過措置が設けられています。ただし、猶予期間内であっても計画書の作成自体は4月1日時点で義務が発生していることに注意が必要です。
計画書の様式・テンプレートの入手方法
公式様式の入手先
厚生労働省が公式の様式(Word・PDF形式)を提供しています。
| 配布先 | 場所 |
|---|---|
| 厚生労働省公式サイト | 「育児・介護休業法 様式集」のページ |
| 都道府県労働局窓口 | 直接受け取り可能 |
| 社会保険労務士会 | 各都道府県の社労士会窓口でも配布 |
様式の主要構成(2025年版)
2025年4月改正に対応した計画書様式は、従来の届出書類と異なり以下の4枚綴りで構成されています。
| 様式番号 | 書類名 | 枚数 |
|---|---|---|
| 様式第1号 | 育児休業取得計画書(企業記載欄) | 1枚 |
| 様式第2号 | 育休取得予定者一覧表 | 1枚(人数分) |
| 様式第3号 | 育休取得促進措置実行計画書 | 1枚 |
| 様式第4号 | 育休取得状況報告書(中間・最終) | 1枚 |
実務Tips: 様式はExcel形式で自社管理することを推奨します。年度をまたいだ管理・修正が容易になり、監査対応にも役立ちます。
計画書作成〜提出までの実務フロー(人事担当者向け)
計画書作成から提出までの実務フローを以下に示します。
STEP 1:対象者の特定(1月〜2月)
└ 出産予定者・配偶者に子が生まれる予定の社員をリストアップ
└ 雇用期間・給付金受給資格を個別確認
STEP 2:面談・意向確認(2月)
└ 取得希望の有無・期間・分割取得希望を確認
└ 「産後パパ育休」取得の案内も同時に実施
STEP 3:計画書の作成(2月〜3月)
└ 様式第1号〜第4号をすべて記入
└ 法人番号・出産予定日など必須項目の漏れチェック
STEP 4:社内承認(3月)
└ 代表者または人事部門責任者の確認・署名
STEP 5:提出(3月31日まで推奨)
└ e-Gov電子申請 または 労働局窓口・郵送
STEP 6:取得状況のモニタリング(4月〜12月)
└ 6月30日:中間報告書提出
└ 12月31日:最終報告書提出
違反した場合のペナルティ
計画書の未提出・虚偽記載は育児・介護休業法違反となります。
| 違反の種類 | 罰則・対応 |
|---|---|
| 計画書の未提出 | 都道府県労働局からの指導・勧告 |
| 虚偽記載 | 20万円以下の過料 |
| 勧告後も改善なし | 企業名の公表(是正勧告→公表制度) |
企業名公表は採用・ブランドへの深刻な影響を及ぼします。計画書の期限内提出を最優先事項として捉えてください。
育休給付金の計算方法と受給資格の確認
計画書と併せて、対象労働者への育児休業給付金の説明も人事担当者の重要な役割です。
給付金の計算式
育児休業給付金の計算式を以下に示します。
| 期間 | 給付率 | 計算式 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日目 | 休業前賃金の67% | 月給30万円 × 67% = 約20.1万円/月 |
| 181日目以降 | 休業前賃金の50% | 月給30万円 × 50% = 約15万円/月 |
2025年改正での給付率引き上げ: 両親が一定期間育休を取得した場合、開始から180日間の給付率が最大80%に引き上げられる「育児休業給付金の拡充」も同時施行されます。計画書にパパ育休の取得を記載することで、この拡充給付の対象になります。
受給資格の確認ポイント
育児休業給付金の受給資格は、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上あること
- 育休中に就業した日数が月10日以下であること
よくある質問(FAQ)
Q1. 計画書は毎年提出が必要ですか?
はい、毎年1回の定期提出が義務です。育休取得予定者がいない年度も、「対象者なし」として提出する必要があります。
Q2. 育休取得予定者が直前にキャンセルした場合はどうなりますか?
取得計画書の修正届(様式別途)を速やかに提出してください。正当な理由(本人の申し出取り下げ等)がある場合、企業側の法令違反にはなりません。
Q3. 有期雇用(パートタイム)の社員も計画書に記載が必要ですか?
雇用期間が1年以上(更新見込みを含む)で育休取得要件を満たす場合は記載が必要です。1年未満の有期雇用は原則対象外ですが、個別に確認することを推奨します。
Q4. 産後パパ育休(出生時育児休業)と通常の育休は別々に計画書を作成しますか?
同一の計画書内に「産後パパ育休」と「通常育休」の両方を記載します。様式第2号の取得予定者一覧表に両期間を明記してください。
Q5. 小規模の事業所(従業員5名未満)も計画書の提出は必要ですか?
はい、2025年改正では従業員規模による免除規定はありません。1名以上の常時雇用労働者がいる場合は提出義務があります。
Q6. 計画書の様式は自社でアレンジして使用できますか?
厚生労働省の公式様式に記載された必須項目をすべて含んでいる場合は、レイアウト調整は許容されます。ただし、任意様式を使用する場合は事前に所轄労働局に確認することを強く推奨します。
まとめ
2025年4月改正で企業に義務化された育休取得計画書のポイントを整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象企業 | 従業員1名以上のすべての企業(規模不問) |
| 提出推奨期限 | 毎年3月31日 |
| 初年度猶予期限 | 2025年6月30日 |
| 必須記載項目 | 企業情報・労働者情報・取得計画・配偶者情報 |
| 提出先 | 所轄都道府県労働局 または e-Gov電子申請 |
| 未提出のペナルティ | 指導・勧告・最大20万円の過料・企業名公表 |
育休取得計画書は単なる行政手続きではなく、社員が安心して育休を取れる職場環境を作るための第一歩です。期限に余裕を持って準備を進め、社員との丁寧な面談と組み合わせることで、制度の実効性を高めてください。
不明点は所轄の都道府県労働局(雇用環境・均等部)または社会保険労務士への相談をお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q. 2025年4月から育休取得計画書の提出が義務化されるのは大企業だけですか?
A. いいえ。企業規模を問わず、常時雇用される労働者を1名以上雇用するすべての企業が対象です。中小企業や個人事業主も例外ではありません。
Q. 育休取得計画書に記載する対象労働者の条件は何ですか?
A. 雇用期間1年以上、配偶者の出産予定日から遡って1年以内に育休申し出予定、育児休業給付金受給資格を有する者の3条件を満たす必要があります。
Q. 配偶者が専業主婦(夫)の場合、計画書への記載が必要ですか?
A. 2026年3月31日までは経過措置により記載を猶予できます。ただし2026年4月以降は対象外ではなくなるため、早めの準備が必要です。
Q. 育休取得計画書の提出頻度と基準月はいつですか?
A. 原則として毎年1回、4月を基準月として提出します。提出の詳細なスケジュールは別途確認が必要です。
Q. 育休を取得しない意思を明示している労働者は計画書に記載する必要がありますか?
A. 記載義務はありませんが、その理由を確認することを推奨します。労働者の希望と企業の育休推進施策のギャップを把握できます。

