育休給付金の賃金日額計算で欠勤日を除外する方法【計算式・ケース別解説】

育休給付金の賃金日額計算で欠勤日を除外する方法【計算式・ケース別解説】 育休給付金

育休給付金の支給額は「賃金日額」によって決まります。その賃金日額を正確に算定するうえで、見落としがちなのが欠勤日の扱いです。欠勤日を誤って含めてしまうと給付金額が変わり、ハローワークでの審査にも影響が出る可能性があります。

本記事では、賃金日額の定義・法的根拠・計算式から、欠勤理由別の除外判定表・具体的なケース別計算例まで、最新の制度情報に基づいて詳しく解説します。


目次

  1. 育休給付金における「賃金日額」とは
  2. 欠勤日が除外される理由と基本原則
  3. 除外対象と除外されない欠勤日の判定表
  4. 賃金日額計算の具体的ケース別解説
  5. 申請時の注意点と必要書類
  6. よくある質問(FAQ)

育休給付金における「賃金日額」とは

賃金日額の定義と法的根拠

賃金日額とは、育休給付金の支給額を算出するための基準となる1日あたりの賃金額です。法的根拠は雇用保険法第61条の4に定められており、育児休業を開始した日(基準日)前の一定期間における賃金をもとに算定されます。

法律・規則 条文 主な内容
雇用保険法 第61条の4 育児休業給付の支給要件・給付額の計算根拠
育児・介護休業法 第23条 育児休業中の賃金・給与に関する定め
労働基準法 第26条 休業手当(最低補償)の考え方

賃金日額は、育休開始日前2年間に存在する「完全月(賃金支払基礎日数が11日以上ある月)」のうち直近12か月分の賃金をもとに計算されます。

ポイント:賃金支払基礎日数が10日以下の月は完全月と見なされず、算定対象から除外されます。

給付金額を決める重要な要素

育休給付金の1支給単位期間の支給額は、以下の式で計算されます。

【育休給付金の支給額】

休業開始後180日まで:
支給額 = 賃金日額 × 支給日数 × 67%

181日目以降:
支給額 = 賃金日額 × 支給日数 × 50%

賃金日額が高いほど給付額も増えるため、欠勤日を正確に除外して賃金日額を正しく算定することが重要です。誤った計算で賃金日額が低く算定されると、毎月の給付金が少なくなってしまいます。

基本計算式(欠勤日を除いた場合)

賃金日額の基本計算式は次のとおりです。

【賃金日額の基本式】

賃金日額 = 支給対象期間の総賃金 ÷ 賃金支払基礎日数
          (欠勤による無給日を除いた日数)

ここでいう「賃金支払基礎日数」には、欠勤による無給日は含まれません。具体的にどの日が除外対象になるかは次章で詳しく解説します。


欠勤日が除外される理由と基本原則

ノーワークノーペイとは何か

欠勤日が賃金日額の算定から除外される根本的な理由は、「ノーワークノーペイ(No Work, No Pay)の原則」にあります。これは、労働の提供がなければ使用者は賃金を支払う義務がないとする考え方で、日本の労働法体系においても基本原則として定着しています。

簡単に言えば、「働いていない日には給与が発生しない」ということです。欠勤して実際に給与が支払われていない日を計算日数に含めてしまうと、「実際よりも少ない賃金を多くの日数で割る」ことになり、賃金日額が不当に低く算定されてしまいます。

給与が支払われていない日のみ除外

重要な判断基準は、「その日に給与が支払われているかどうか」という1点です。

  • 給与が支払われていない日 → 賃金支払基礎日数から除外する
  • 給与が支払われている日 → 賃金支払基礎日数に含める

有給休暇を取得した場合は給与が支払われるため、欠勤であっても計算から除外されません。一方で、無給の病気休暇や私事欠勤は給与が支払われないため除外されます。

雇用保険法・労働基準法との関係

雇用保険法における賃金日額の算定は、労働基準法上の「平均賃金」の概念とも密接に関連しています。労働基準法第12条に定める平均賃金でも、業務外の傷病による欠勤日数や賃金は算定の基礎から除外されており、雇用保険の賃金日額算定でも同様の考え方が採用されています。


除外対象と除外されない欠勤日の判定表

除外される欠勤(給与支払いなし)

以下に該当する日は、賃金が支払われないため賃金支払基礎日数から除外されます。

欠勤の種類 除外判定 理由・備考
私事欠勤(本人都合による無給欠勤) 除外 給与が差し引かれるため
病気休暇(無給) 除外 就業規則で無給とされている場合
傷病手当金受給中の欠勤 除外 健保からの補填はあるが賃金は不支給
無給の育児・介護対応の休暇 除外 給与補償がない場合
災害・天災による欠勤(無給) 除外 給与補償なしの場合

注意:傷病手当金は健康保険からの給付であり「賃金」ではありません。そのため、傷病手当金を受給している期間に賃金が支払われていなければ、その日数は除外されます。

除外されない日(給与支払いあり)

以下の日は給与が支払われているため、賃金支払基礎日数に含める必要があります。

日の種類 除外判定 理由・備考
年次有給休暇取得日 除外しない 通常どおり賃金が支払われるため
所定休日・公休日 除外しない 月給制では賃金計算の基礎に含む
特別休暇(慶弔・有給扱い) 除外しない 給与が支払われているため
病気休暇(有給) 除外しない 就業規則で有給とされている場合
育児休業期間中の実出勤日 除外しない 給与が支払われた日として算入
休業手当支給日(会社都合) 除外しない 労働基準法第26条により最低60%補償

要確認事項(企業ごとの取扱い)

以下のケースは就業規則や会社の取り決めによって扱いが異なります。必ず人事担当者または社会保険労務士に確認してください。

ケース 確認すべきポイント
特別休暇(無給扱い) 就業規則で無給と明記されているか
事業所都合による休業 給与補償(休業手当)があるか否か
半日欠勤 半日分の賃金が差し引かれているか
フレックスタイム制における不足時間 清算期間内の賃金控除の有無
育児時短勤務中の給与 時短分の控除額と基礎日数の扱い

賃金日額計算の具体的ケース別解説

ケース1|月給制・欠勤3日(無給)があった場合

【前提条件】
– 雇用形態:月給制(月給30万円・所定労働日数20日)
– 対象月:3月(31日間)
– 欠勤日数:3日(給与減額あり・無給欠勤)

【欠勤控除額の計算】

月給制の場合、欠勤控除は「月給 ÷ 所定労働日数 × 欠勤日数」で算出するのが一般的です。

欠勤控除額 = 300,000円 ÷ 20日 × 3日 = 45,000円

実際の支給賃金 = 300,000円 − 45,000円 = 255,000円

【賃金日額の計算】

欠勤3日を除いた賃金支払基礎日数:20日 − 3日 = 17日

賃金日額 = 255,000円 ÷ 17日 = 15,000円

解説:欠勤日を除外することで日数(分母)も小さくなりますが、同時に賃金(分子)も欠勤分が引かれるため、賃金日額は欠勤なし(300,000 ÷ 20 = 15,000円)と同額になります。欠勤日を除外しないと分母が大きくなり、賃金日額が不当に低くなってしまいます。

ケース2|傷病手当金を受給していた月が含まれる場合

【前提条件】
– 月給:28万円、所定労働日数:22日
– 対象月に10日間、業務外傷病で休業
– 傷病手当金を受給(健保から補填)、会社からの賃金は不支給

【賃金支払基礎日数の計算】

賃金支払基礎日数 = 22日 − 10日(無給欠勤) = 12日

この場合、賃金支払基礎日数が11日以上(12日)なので、完全月として算定対象に含まれます。

【実際の支給賃金と賃金日額】

欠勤控除額 = 280,000円 ÷ 22日 × 10日 = 127,272円(端数切捨て)
実際の支給賃金 = 280,000円 − 127,272円 = 152,728円

賃金日額 = 152,728円 ÷ 12日 ≒ 12,727円

注意:傷病手当金(健康保険からの給付)は「賃金」ではないため、賃金日額の計算には含めません。

ケース3|有給休暇を取得した月の場合

【前提条件】
– 月給:25万円、所定労働日数:20日
– 5日間の有給休暇を取得(給与は通常どおり支払い)

【計算方法】

有給休暇取得日は給与が支払われているため除外しません

賃金支払基礎日数 = 20日(有給休暇5日も含む)
実際の支給賃金 = 250,000円(有給休暇分も含め満額支給)

賃金日額 = 250,000円 ÷ 20日 = 12,500円

ポイント:有給休暇は「給与を受け取りながら休む権利」であるため、欠勤日としてカウントせず、賃金日額の計算において不利に働くことはありません。

ケース4|賃金支払基礎日数が10日以下になった場合

無給欠勤が多く、賃金支払基礎日数が10日以下になった月は完全月として算定されません(対象月の候補から除外されます)。

例)月20日勤務のうち12日間無給欠勤した場合

賃金支払基礎日数 = 20日 − 12日 = 8日(10日以下)
→ この月は算定対象から除外され、別の月に置き換えられる

給付金の算定には直近12か月分の完全月が必要なので、除外された月の分は遡ってさらに古い月が使用されます(最大2年以内)。


申請時の注意点と必要書類

申請手続きの流れと期限

育休給付金の申請は、事業主(会社)を通じてハローワークに行うのが原則です。

ステップ 内容 期限・目安
① 育休開始の申出 会社の人事・総務部門に育休開始を申請 育休開始の1か月前まで
② 初回申請 育休開始後、事業主がハローワークに申請 育休開始日から4か月以内
③ 2回目以降の申請 2か月ごとに支給申請 各支給対象期間終了後
④ 支給決定・振込 ハローワーク審査後に振込 申請から約2週間が目安

重要:申請期限を過ぎると給付金が受け取れなくなる場合があります。期限管理は会社と連携して行いましょう。

賃金日額算定に必要な書類

書類名 説明 準備担当
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 賃金日額算定の基礎となる書類。欠勤日数・欠勤控除額を記載 事業主
育児休業給付受給資格確認票・初回支給申請書 初回申請時に使用 事業主(本人署名欄あり)
賃金台帳(直近2年分) 賃金支払状況を証明 事業主
出勤簿・タイムカード 賃金支払基礎日数を確認するための勤怠記録 事業主
育児休業申出書のコピー 育休取得の事実を証明 事業主

欠勤日数の記載ミスを防ぐポイント

賃金日額の誤算定は、多くの場合「賃金月額証明書における欠勤日数の記載誤り」から発生します。以下のチェックリストを活用してください。

  • [ ] 無給欠勤日と有給休暇日を明確に区別して記録しているか
  • [ ] 傷病手当金受給日に会社から賃金が支払われていないか確認したか
  • [ ] 欠勤控除の計算方法が就業規則と一致しているか
  • [ ] 賃金支払基礎日数が11日以上ある月を正しく選定したか
  • [ ] フレックスタイム制・変形労働時間制における基礎日数の扱いを確認したか

よくある質問(FAQ)

Q1. 半日欠勤した日は賃金支払基礎日数にどう扱われますか?

A. 半日欠勤の場合、半日分の賃金が控除されます。賃金支払基礎日数の扱いは就業規則によって異なりますが、一般的には「0.5日の欠勤」として処理し、賃金支払基礎日数から0.5日を差し引く方法が多く採用されています。実際の扱いは会社の就業規則を確認するか、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

Q2. 育休前に長期欠勤していた場合、給付金はもらえなくなりますか?

A. 必ずしもそうではありません。無給欠勤が多い月は完全月(賃金支払基礎日数11日以上)の要件を満たさず算定対象から外れますが、育休開始前2年以内に12か月分の完全月を確保できれば給付金の受給資格自体は維持されます。ただし、長期欠勤が続き12か月分を確保できない場合は受給資格を失う可能性があるため、早めにハローワークへ相談してください。

Q3. 育休給付金の賃金日額に上限・下限はありますか?

A. はい、あります。最新の上限・下限額の目安は以下のとおりです(毎年8月1日に見直し)。

区分 金額(目安)
賃金日額の上限(30歳未満) 13,890円
賃金日額の上限(30~44歳) 15,430円
賃金日額の上限(45~59歳) 16,980円
賃金日額の下限(全年齢) 2,869円

最新の上限・下限額は厚生労働省のWebサイトまたはハローワークでご確認ください。

Q4. 会社の給与計算担当者に欠勤日の情報を確認してもらうにはどうすればよいですか?

A. 育休取得前に人事・給与担当者に以下を依頼しましょう。①直近2年間の賃金台帳・出勤簿の確認、②無給欠勤日と有給休暇日の区別の明確化、③「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の作成依頼。この書類の正確な記載が、賃金日額の正しい算定につながります。

Q5. パート・アルバイトでも欠勤日の扱いは同じですか?

A. 基本的な考え方(給与が支払われていない日を除外する)は同じですが、パート・アルバイトは月ごとの所定労働日数が変動しやすいため、賃金支払基礎日数の集計がより複雑になります。週・月単位で所定労働日数が異なる場合は、各月の出勤簿をもとに正確に集計することが重要です。


まとめ

育休給付金の賃金日額算定における欠勤日の扱いを正しく理解することは、適正な給付金額を受け取るうえで非常に重要です。本記事のポイントを以下に整理します。

確認事項 要点
除外の基準 給与が支払われていない日のみ除外
有給休暇 除外しない(給与支払いあり)
傷病手当金受給日 賃金不支給なら除外
完全月の要件 賃金支払基礎日数11日以上
申請書類 賃金月額証明書の欠勤欄の正確な記載が鍵

不明点がある場合は、ハローワークの育児休業給付担当窓口または社会保険労務士への相談をおすすめします。正確な情報をもとに、安心して育児休業を取得しましょう。


免責事項:本記事は現行の法令・通達に基づく一般的な解説です。個別の事情によって適用が異なる場合があります。具体的な手続きについては、ハローワーク・社会保険労務士へご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 育休給付金の賃金日額を計算する際、欠勤日は必ず除外しなければいけませんか?
A. いいえ。給与が実際に支払われている欠勤日(有給休暇など)は除外せず、給与が支払われていない欠勤日のみを除外します。

Q. 有給休暇を取得した日は欠勤日として除外されますか?
A. いいえ。有給休暇は給与が支払われるため、賃金日額の計算から除外されません。賃金支払基礎日数に含めます。

Q. 業務上の傷病による欠勤日と業務外の傷病による欠勤日で、扱いに違いがありますか?
A. はい。業務外の傷病による無給欠勤は除外されますが、業務上傷病で給与が支払われた場合は含めます。

Q. 欠勤日を誤ったまま申請すると、ハローワークで審査に落ちることもありますか?
A. はい。賃金日額が誤って計算されると給付金額が変わり、ハローワークの審査に影響が出る可能性があります。

Q. 賃金日額の計算に使用する「完全月」とは何ですか?
A. 賃金支払基礎日数が11日以上ある月のことです。10日以下の月は算定対象から除外されます。

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