復帰予定日通知は1ヶ月前が義務|企業向け育休復帰手続き完全ガイド

企業の育休対応

育休からの職場復帰は、労働者にとっても企業にとっても大きな転換点です。しかし「いつ復帰するのか」「どのような条件で働くのか」を事前に確認しないまま復帰日を迎えると、双方に混乱が生じます。

そのため育児・介護休業法では、企業が育休取得者に対して「育休終了予定日の1ヶ月前までに」復帰予定日を通知することを義務付けています

本記事では、企業の人事担当者が今すぐ実践できるよう、通知義務の法的根拠・通知書の書き方・手続きフロー・よくあるミスまでを体系的に解説します。


育休復帰予定日通知とは?法的義務を理解する

育児・介護休業法第23条で定められた通知義務

育休復帰予定日通知の根拠となる法律は、育児・介護休業法第23条第2項です。

同条は、育休終了に際して使用者(企業)が果たすべき義務を規定しており、育休終了予定日の1ヶ月前までに、復帰予定日を労働者に通知しなければならないと定めています。

また、第23条第3項では、通知を受けた労働者が復帰予定日の変更を希望する場合の申出手続きが規定されており、双方向のコミュニケーションが制度的に担保されています。

さらに第24条では、育休復帰時の就業条件の変更等について企業が労働者と協議する義務が定められています。

条文 内容
第23条第2項 育休終了予定日の1ヶ月前までに使用者が復帰予定日を通知する義務
第23条第3項 労働者が復帰予定日の変更を申し出る手続き
第24条 復帰時の就業条件変更に関する協議義務

📌 ポイント: この通知義務は正社員だけでなく、有期労働者・契約社員・パートタイム労働者にも適用されます。育休取得が認められたすべての労働者が対象です。


企業が通知しないと生じるリスク

通知義務を怠った場合、企業には以下のリスクが発生します。

①行政指導・是正勧告

都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)による調査対象となり、是正勧告を受ける可能性があります。繰り返し違反が確認された場合は企業名の公表につながるケースもあります。

②労使トラブルの発生

復帰日が曖昧なまま放置されると、「復帰するつもりで保育園を申し込んだのに企業側の準備が間に合わなかった」などのトラブルに発展します。

③育休復帰後の不当配置・ハラスメントリスク

事前に就業条件を確認していないと、復帰後に不当な配置転換が行われたと見なされるケースもあります。これはマタハラ・パタハラとして問題化することがあります。


労働者が知っておくべき通知受け取りの権利

育休取得者は、育休終了予定日の1ヶ月前までに企業から通知を受ける権利を持っています。

通知が届かない場合は、以下のアクションを取ることができます。

  • 人事・総務部門へ直接確認を申し入れる
  • 都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」へ相談する(無料・匿名相談可)
  • 社内相談窓口・外部EAPへ相談する

復帰予定日通知の「1ヶ月前」ルールを詳しく解説

通知期限は「育休終了予定日の1ヶ月前」の根拠

育児・介護休業法の1ヶ月前通知義務は、保育園入所・家族のスケジュール調整・引き継ぎ準備など、復帰に向けた現実的な準備期間を確保するために設定されています。

厚生労働省の「育児・介護休業法施行規則」および厚生労働省告示第206号に基づく細則でも、書面または電磁的方法による通知が推奨されており、口頭のみの通知では証拠性が低くなるため注意が必要です。


1ヶ月の計算方法(カレンダー例付き)

「育休終了予定日の1ヶ月前」とは、民法第140条・第141条の規定に基づき、終了予定日の属する月の前月の同日を指します。

【計算例】

育休終了予定日 通知期限(1ヶ月前)
2026年4月30日 2026年3月30日まで
2026年6月1日 2026年5月1日まで
2026年8月31日 2026年7月31日まで
2026年9月30日 2026年8月30日まで

⚠️ 注意: 1ヶ月前が土日・祝日に当たる場合でも、期限は変わりません。通知が遅れないよう、余裕を持って数日前に発送・送付することを強く推奨します


期限を超過した場合の対応と法的リスク

もし1ヶ月前の通知期限を過ぎてしまった場合は、速やかに通知を行い、労働者に対して謝罪と経緯の説明を書面で実施することが重要です。

また、通知の遅延によって労働者に実損害(例:保育園の申込期限を過ぎた、仕事の引き継ぎが間に合わなかった等)が生じた場合、企業は損害賠償責任を問われる可能性があります。


企業が準備すべき通知書類と記載内容

育休復帰予定日通知書の標準様式と記載項目

育休復帰予定日通知書に法定の統一書式はありませんが、以下の内容を必ず記載した書面を用意することが実務上のスタンダードとなっています。

【育休復帰予定日通知書 記載例】

育児休業復帰予定日通知書

                            発行日:○○年○月○日
○○ ○○ 様

                            株式会社○○○○
                            人事部長 ○○ ○○

下記のとおり、育児休業終了予定日を確認しましたのでお知らせします。
なお、復帰予定日の変更を希望される場合は、○○年○月○日までに
ご申出ください。

【記】
育児休業開始日:  年 月 日
育児休業終了予定日:  年 月 日
職場復帰予定日:  年 月 日
復帰後の所属:○○部○○課
担当者連絡先:
  以上

法定必記載事項5つ

実務において必ず盛り込むべき記載事項は以下の5項目です。

# 記載事項 記載例
対象者氏名 山田 花子 様
育休開始日 2025年4月1日
復帰予定日(育休終了予定日) 2026年3月31日
変更申出の期限 2026年2月28日まで
担当者連絡先・署名欄 人事部 ○○、TEL:XXX-XXXX

書面通知とメール通知の法的効力の違い

通知方法 法的有効性 注意点
書面(郵送・手渡し) ◎ 最も確実 受領確認書・送達記録を残す
電子メール(PDF添付) ○ 有効(証拠性あり) 送信・開封記録を保管する
口頭のみ △ 原則として不十分 記録が残らず、後日トラブルになりやすい
社内ポータル(通知機能付き) ○ 有効 既読確認機能があること

📌 実務のポイント: 電子メールで通知する場合は、PDFに会社の公印または担当者署名を入れた正式文書を添付することで、書面通知と同等の証拠力を持たせることができます。


企業の手続きフロー【育休開始から復帰まで】

ステップ別完全フロー図

育休開始から職場復帰までの流れを以下に整理します。

【STEP 1】育休開始前
  └─ 育休期間・終了予定日を書面で確認・記録
  └─ 通知スケジュールをカレンダーに設定

         ↓

【STEP 2】育休終了予定日の2ヶ月前(社内準備)
  └─ 復帰予定日通知書の作成
  └─ 復帰後の配置・勤務条件の検討開始
  └─ 上司・部署への連絡

         ↓

【STEP 3】育休終了予定日の1ヶ月前(法定通知期限)
  └─ 復帰予定日通知書を労働者へ送付
  └─ 変更申出の期限を明記(通常2週間程度)

         ↓

【STEP 4】変更申出期間(通知後2週間程度)
  └─ 労働者からの復帰日変更申出を受け付け
  └─ 育児・介護休業法第23条第3項に基づく対応

         ↓

【STEP 5】復帰予定日の2週間前(最終確認)
  └─ 就業条件変更通知書の送付(変更がある場合)
  └─ 復帰後の業務内容・勤務時間の最終確認
  └─ 職場への受け入れ準備の確認

         ↓

【STEP 6】職場復帰当日
  └─ 復帰面談の実施
  └─ 短時間勤務・育児目的の時間外免除等の申請受付
  └─ 社会保険・給与の復旧手続き

復帰日変更が発生した場合の対応

労働者から復帰予定日の変更申出があった場合、企業は以下の書類を用意します。

書類名 記載内容 提出時期
育休復帰予定日変更確認書 旧復帰予定日、新復帰予定日、変更理由、双方の署名 変更申出受理後、速やかに
就業条件変更通知書 復帰後の勤務地・職務・給与・勤務時間 復帰2週間前まで

⚠️ 注意: 育休の延長(子が1歳6ヶ月まで、または2歳まで)が必要な場合は、育休延長の要件(保育所入所不承諾通知書など)を確認したうえで、別途延長申請書を受理する必要があります。


有期労働者への対応

有期労働者(契約社員)の場合、育休終了時に契約期間が満了するケースがあります。この場合は、雇用継続の意思確認を育休終了予定日より前に行い、契約更新の手続きと育休復帰通知を同時に進めることが重要です。


復帰後の就業条件調整と関連制度

短時間勤務制度(育児・介護休業法第23条第1項)

3歳未満の子を養育する労働者は、1日6時間の短時間勤務を申し出る権利があります。企業はこれを拒否することができません。

復帰面談の際には、この申請書の案内も忘れずに行いましょう。

時間外労働の免除・制限

制度 対象 内容
時間外労働の免除 3歳未満の子を養育する労働者 請求により時間外労働を免除
時間外労働の制限 小学校就学前の子を養育する労働者 1ヶ月24時間・年150時間を超える時間外労働を制限
深夜業の制限 小学校就学前の子を養育する労働者 請求により深夜業を制限

社会保険・育児休業給付金の手続き

育休終了・復帰に伴い、以下の社会保険・給付金手続きが必要です。

手続き 内容 期限・担当
育児休業給付金の終了手続き ハローワークへ育休終了日を報告 育休終了後、速やかに
社会保険料免除の終了 標準報酬月額の復旧 復帰月から再計算
育児休業等終了時報酬月額変更届 復帰後に給与が変わる場合 復帰後3ヶ月の報酬確定後
子の看護休暇等の案内 各種育児支援制度の周知 復帰面談時

📌 育児休業給付金の支給額目安:
育休開始から180日目まで:休業開始前賃金の67%
181日目以降:休業開始前賃金の50%
※2025年4月以降の改正内容を確認のうえ、最新情報を都度確認してください。


人事担当者がよく犯す5つのミスと対策

# ありがちなミス 対策
通知を口頭のみで済ませる 必ず書面または電磁的記録を残す
通知期限を「うっかり忘れる」 育休開始時点でカレンダーにリマインドを設定する
有期労働者への通知を忘れる 対象者リストを育休期間で管理し、全員に通知する
復帰後の就業条件を「口約束」のみにする 就業条件変更通知書を必ず書面で交付する
短時間勤務申請の案内をしない 復帰面談チェックリストに必須項目として組み込む

よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に連絡が取れない従業員に通知書を送る方法は?

A. 育休開始前に、育休中の連絡手段(自宅住所・個人メールアドレス等)を確認しておくことが重要です。郵送の場合は「書留」を使用し、受領記録を残してください。メールの場合も送信・開封記録を保管します。


Q2. 育休終了予定日を過ぎても復帰しない場合、どうなりますか?

A. 育休終了予定日以降は育児休業の権利が消滅しています。ただし、保育園の入所が決まらない等の正当な理由がある場合は、育休延長の申請(子が1歳6ヶ月または2歳まで)が可能です。延長要件を確認し、書面での申請を受理してください。


Q3. パパ育休(産後パパ育休)の場合も1ヶ月前通知義務はありますか?

A. はい、産後パパ育休(出生時育児休業)においても同様の通知義務が適用されます。育休の種類に関わらず、終了予定日の1ヶ月前までの通知が必要です。


Q4. 通知後に労働者から「やはり退職したい」と申し出があった場合の対応は?

A. 退職申し出は労働者の自由意思によるものです。ただし、育休中の退職勧奨は育児・介護休業法第10条(不利益取扱いの禁止)に抵触するおそれがあります。退職の意思が自発的なものかどうかを慎重に確認し、必要に応じて弁護士や社会保険労務士に相談してください。


Q5. 復帰予定日通知書の保存期間はどのくらいですか?

A. 労働基準法第109条に基づき、労働関係書類は3年間の保存義務があります。ただし、将来的なトラブルに備えて、育休関連書類については在職中プラス3年の保存を推奨する社会保険労務士も多くいます。


まとめ:育休復帰通知は「準備が8割」

育休復帰予定日の通知義務(育休終了予定日の1ヶ月前まで)は、単なる手続きではありません。育休取得者が安心して復帰できる職場環境を整えるための、企業側の重要なコミュニケーションです。

本記事のポイントを振り返ります:

  • ✅ 根拠法令:育児・介護休業法第23条第2項
  • ✅ 通知期限:育休終了予定日の1ヶ月前まで
  • ✅ 通知方法:書面または電磁的記録(口頭のみは不可)
  • ✅ 対象者:正社員・有期労働者・パート含む全育休取得者
  • ✅ 通知後:変更申出期間(2週間程度)を設ける
  • ✅ 復帰2週間前:就業条件変更通知書の交付
  • ✅ 復帰面談:短時間勤務・時間外免除の申請案内を実施

人事担当者の方は、育休開始時点でスケジュールを設定し、通知漏れのない体制を構築してください。育休取得者の方は、1ヶ月前を目安に企業からの連絡がない場合は、自ら確認することをためらわないでください。


参考法令・参考資料

  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)
  • 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(2022年改正対応版)」
  • 厚生労働省告示第206号(育児・介護休業法施行規則に基づく細則)
  • 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

⚠️ 免責事項: 本記事は執筆時点(2025年)の法令・通達に基づく一般的な解説です。法改正や個別事情によって対応が異なる場合があります。具体的なご判断については、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 育休復帰予定日通知は本当に必須ですか?
A. はい。育児・介護休業法第23条第2項で、企業が育休終了予定日の1ヶ月前までに復帰予定日を通知することは法的義務です。

Q. 通知期限の「1ヶ月前」はどのように計算しますか?
A. 民法の規定に基づき、育休終了予定日の属する月の前月の同日です。例えば4月30日終了なら3月30日までに通知します。

Q. 通知しなかった場合、企業にどんなリスクがありますか?
A. 是正勧告・企業名公表・労使トラブル・マタハラ認定など複数のリスクが生じます。早期の対応が重要です。

Q. 口頭での通知では不十分ですか?
A. 不十分です。厚生労働省は書面または電磁的方法を推奨しており、証拠性を確保するため文書での通知が必須です。

Q. 通知期限を過ぎてしまった場合、どう対応すべきですか?
A. 速やかに通知を行い、書面で謝罪と経緯説明を実施してください。遅延による労働者の損害賠償請求に備えましょう。

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