育休給付金を申請しない場合の社会保険料・年金への影響【2025年版】

育休給付金を申請しない場合の社会保険料・年金への影響【2025年版】 育休給付金

育休を取得する際、「給付金を申請しなかったら社会保険料も免除されないのでは?」と心配される方は少なくありません。しかし、育休給付金と社会保険料免除はまったく別の制度です。給付金を申請しない場合でも、正しい手続きを踏めば健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料免除をしっかり受けることができます。

本記事では、育休給付金を未申請のまま育休を取得した場合の社会保険料免除の仕組み、年金記録への影響、企業担当者が行うべき手続きを2025年版の最新情報でわかりやすく解説します。


育休給付金を申請しない場合でも社会保険料は免除されるのか?

保険制度 給付金申請時 給付金未申請時 年金記録への影響
健康保険 保険料免除 保険料免除(別手続き) 影響なし
厚生年金 保険料免除・加入継続 保険料免除・加入継続(別手続き) 加入期間として記録
雇用保険 保険料免除 保険料免除(別手続き) 影響なし
給付金 受給可能 受給なし 該当なし

給付金申請と保険料免除は独立した権利

「育休給付金を受け取らなければ、保険料の免除も受けられない」と誤解されがちですが、これは事実ではありません。二つの制度は根拠となる法律がそもそも異なります

制度 根拠法 手続き先 申請主体
育休給付金 雇用保険法 第61条の4 ハローワーク 企業(本人委任)
社会保険料免除 育児・介護休業法 第23条 年金事務所・健康保険組合 企業

育休給付金は「雇用保険」から支払われる所得補償の制度です。一方、社会保険料免除は「育児・介護休業法」を根拠とし、育休を取得したこと自体を条件として認められる権利です。

つまり、給付金の申請をしない選択をしても、育休を取得していれば保険料免除の権利は失われません。ただし、免除は「自動的に適用」されるわけではなく、企業側が別途届出を行う必要があります。この点を人事担当者はとくに注意してください。

給付金未申請を選ぶ主なケース

実際に育休給付金を申請しないケースとして、以下のような状況が考えられます。

  • 配偶者の収入が十分で家計への影響が小さい:共働き世帯で、一方の収入だけで生活が成り立つ場合
  • 副業・フリーランス収入がある:本業は会社員だが、育休中も副業で一定の収入を確保できるケース
  • 雇用保険の被保険者期間が不足している:育休開始前2年間に12か月以上の被保険者期間がなく、給付金の受給資格を満たしていない場合
  • 短期間の育休取得:育休期間が非常に短く、申請手続きの手間に対して受給額が少ない場合
  • 企業独自の育休手当が充実している:法定の育休給付金を超える水準の会社独自給付があり、そちらで補填される場合

いずれのケースにおいても、給付金を申請しないこと=保険料免除を諦めることではない点を明確に認識しておくことが大切です。


免除される社会保険料の種類と金額のめやす

健康保険・厚生年金・雇用保険それぞれの免除範囲

育休中に免除される社会保険料の種類と対象範囲を整理します。

保険の種類 免除対象 免除期間 手続き窓口
健康保険料 本人負担分・企業負担分の両方 育休開始月〜終了月前月(※) 年金事務所・健康保険組合
厚生年金保険料 本人負担分・企業負担分の両方 育休開始月〜終了月前月(※) 年金事務所
雇用保険料 本人負担分のみ 育休期間中(賃金不支給期間) ハローワーク

(※)免除期間の注意点:2022年10月の法改正により、月末日に育休を取得している場合はその月も免除対象になります。また、同月内に育休を開始・終了した場合でも、その月に14日以上育休を取得した場合は、その月の保険料が免除されます(2022年10月改正)。

ポイント:健康保険と厚生年金は企業負担分まで丸ごと免除されます。これは給与から天引きされる本人負担分だけでなく、会社がひそかに肩代わりしている部分(通常は本人負担と同額)もゼロになるという、非常に大きな経済的メリットです。

給与水準別・保険料免除額のシミュレーション例

給付金を受け取らない場合でも、保険料免除だけでどれだけの金額が節約できるか、月収別に試算します(2025年度の保険料率・東京都の例)。

前提条件
– 健康保険料率:10.0%(協会けんぽ・東京都)
– 厚生年金保険料率:18.3%
– 雇用保険料率:0.6%(労働者負担分)

月収(標準報酬月額) 健康保険料(本人+企業) 厚生年金保険料(本人+企業) 雇用保険料(本人分) 月間免除合計 12か月免除累計
30万円 30,000円 54,900円 1,800円 86,700円 約104万円
40万円 40,000円 73,200円 2,400円 115,600円 約139万円
50万円 50,000円 91,500円 3,000円 144,500円 約173万円

※上記は本人・企業の両負担を合算した金額です。本人負担分のみに絞ると、おおむね上記の約半額が個人の節約額となります。

この試算から明らかなように、給付金を申請しなかったとしても、保険料免除だけで年間50〜90万円程度の経済的メリット(本人負担分)が得られます。給付金未申請イコール「損」ではなく、免除手続きさえ正しく行えば十分な価値があります。


育休中の年金記録への影響と老後給付への反映

免除期間は「未納」にはならない

「保険料を払っていない育休期間は、老後の年金が減るのでは?」という不安はよく聞かれます。結論から言えば、育休中の保険料免除期間は”未納”とは扱われず、年金記録上は保険料を納めたのと同等の扱いになります

これは国民年金の「免除制度」とは仕組みが異なります。育休中の厚生年金免除は、「免除された期間も保険料を納めた期間として計算される」という特例措置です。

比較項目 育休中の厚生年金免除 国民年金の保険料免除
年金記録上の扱い 保険料納付済みと同等 一部または全額の納付済みと同等(免除割合による)
老後の年金額への影響 影響なし(満額反映) 免除割合により一部減額
受給資格期間への算入 算入される 算入される

厚生年金の計算基礎となる標準報酬月額は、育休前の水準がそのまま維持されます。例えば月収40万円の方が1年間育休を取得した場合、その1年間は「月収40万円の保険料を納めた」ものとして老後の年金額が計算されます。

年金記録への反映のしくみ

育休中の年金記録は以下のような流れで保全されます。

  1. 企業が「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出することで、免除期間が記録される
  2. 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」上で育休期間が確認できる
  3. 免除期間終了後、報酬月額の変動が大きければ「月額変更届(随時改定)」の検討が必要

人事担当者へ:企業が年金事務所への届出を怠った場合、従業員の年金記録が正しく反映されないリスクがあります。育休開始後、速やかに手続きを行うことが求められます。

育休終了後の標準報酬月額の取り扱い

育休終了後に復職する際、育休前と比べて賃金や勤務日数が変化することがあります。このとき活用できる制度として「育児休業等終了時月額変更届」があります。

  • 育休終了日から起算して3か月間の報酬平均が、育休前の標準報酬月額と比べて1等級以上の差がある場合に届け出ることができる
  • 通常の随時改定(月額変更届)は2等級以上の差が必要ですが、育休終了後の特例では1等級の差で変更申請が可能
  • 標準報酬月額が下がることで保険料負担が軽減され、家計への影響を和らげることができる

企業担当者が行う手続きの全体フロー

給付金申請の有無にかかわらず必要な企業側の届出

育休給付金の申請はハローワークへの届出ですが、社会保険料免除の手続きは年金事務所・健康保険組合への別途届出が必要です。給付金を申請しない場合でも、この手続きは省略できません。

【企業が行う手続きフロー】

STEP 1:従業員から育休取得の申出を受理
         (育児・介護休業法に基づく書面申請)
         ↓
STEP 2:育休開始月(または翌月)に
         「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を
         年金事務所・健康保険組合へ提出
         ↓
STEP 3:社会保険料免除の開始
         (給与明細上の控除がゼロになる)
         ↓
STEP 4:育休終了時に「育児休業等取得者申出書(終了届)」を提出
         ↓
STEP 5:必要に応じて「育児休業等終了時月額変更届」を提出

必要書類一覧

手続き 書類名 提出先 タイミング
社会保険料免除の開始 健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書 年金事務所・健康保険組合 育休開始後速やかに(育休期間中いつでも可)
社会保険料免除の終了 同上(終了届) 年金事務所・健康保険組合 育休終了後速やかに
報酬変動がある場合 育児休業等終了時月額変更届 年金事務所 復職後3か月経過後
産前産後休業中の免除 産前産後休業取得者申出書 年金事務所・健康保険組合 産休期間中

育児休業等取得者申出書の記載ポイント

「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。記載時に注意すべき主なポイントは以下の通りです。

  • 育休開始日・終了(予定)日:日付を正確に記載。終了日が変更になった場合は再提出が必要
  • 子の生年月日:満3歳未満の子を養育していることが条件。パパ育休の場合は出生日も記載
  • 1か月単位の更新か連続取得か:育休を分割取得する場合は期間ごとに届出が必要(2022年10月の法改正後)
  • 提出期限:法律上の提出期限はありませんが、育休開始月から免除を受けるには育休開始月中に提出することが望ましい

給付金未申請時の社会保険料免除に関するよくある疑問

育休給付金を申請しない場合の保険料免除について、よくある疑問をQ&A形式でまとめます。

Q1. 育休給付金の受給資格がなくても保険料免除は受けられますか?

受けられます。育休給付金の受給資格(雇用保険の被保険者期間12か月以上など)を満たさない場合でも、育児・介護休業法に基づく育休取得の要件を満たしていれば保険料免除の対象です。有期雇用労働者など一部のケースを除き、雇用契約が継続していることが主な条件です。

Q2. 給付金を申請しないと会社の手続きが省略できますか?

省略できません。給付金申請(ハローワーク)と保険料免除の届出(年金事務所)はまったく別の手続きです。給付金を申請しない場合でも、社会保険料免除の届出は企業が必ず行う必要があります。この手続きを怠ると、免除を受けるべき期間の保険料が徴収されてしまいます。

Q3. 育休中に無給の場合、雇用保険料も免除になりますか?

はい、免除されます。雇用保険料は「賃金に保険料率を乗じる」計算方法のため、育休中に賃金(給与)が支払われない場合は、雇用保険料が発生しません(実質的な免除)。なお、企業が育休手当として賃金を支払っている場合は、その賃金に対して雇用保険料が発生します。

Q4. 2人目の育休でも同じように保険料免除は受けられますか?

受けられます。育休取得のたびに保険料免除の手続きを行えば、子どもの人数にかかわらず同様の免除が適用されます。ただし、1人目の育休中に2人目を妊娠した場合など、産前産後休業と育休が重なるケースは免除期間の管理が複雑になるため、年金事務所や社会保険労務士に確認することをおすすめします。

Q5. 育休中の社会保険料免除は確定申告に影響しますか?

保険料免除自体は確定申告の対象外ですが、育休中に収入がゼロまたは大幅に減少した場合、年末調整での社会保険料控除額が変わります。育休給付金は非課税のため所得に含まれませんが、年間の給与収入が少なくなることで所得税が減り、還付を受けられるケースがあります。勤務先の年末調整または確定申告で適切に処理してください。

Q6. 育休中に転職した場合、保険料免除はどうなりますか?

育休中の転職は「雇用契約の継続」という免除の前提条件が崩れるため、原則として保険料免除は終了します。転職先での育休取得・保険料免除は新たな雇用契約のもとで別途申請が必要です。なお、育休中の転職は法的に禁止されているわけではありませんが、労務上のリスクが生じる可能性があるため、事前に専門家への相談を強くおすすめします。


給付金未申請でも損をしないための確認チェックリスト

育休給付金を申請しないケースでも、以下の点を確認することで経済的な損失を防ぎましょう。

育休取得前に確認すること
– [ ] 育休取得の書面申請を勤務先に提出した(口頭だけでなく書面で)
– [ ] 勤務先の人事担当者が「育児休業等取得者申出書」の提出を知っている
– [ ] 給付金の受給資格の有無を一度は確認した(意外と受給できる場合がある)
– [ ] 産前産後休業中の保険料免除(産休中は別途免除制度がある)も申請済みか確認した

育休開始後に確認すること
– [ ] 給与明細で社会保険料が免除されているか確認した
– [ ] 「ねんきん定期便」で育休中の年金記録が正しく反映されているか確認した
– [ ] 育休期間が変更になる場合は、変更の届出を会社に依頼した

育休終了後に確認すること
– [ ] 保険料免除の終了届が提出されたか確認した
– [ ] 復職後の報酬が変わった場合、月額変更届が必要かどうか確認した


まとめ

育休給付金を申請しない場合でも、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)の免除は独立した制度として利用できます。本記事のポイントを最後に整理します。

確認事項 まとめ
給付金と保険料免除の関係 根拠法が異なる独立した制度。給付金未申請でも免除可能
免除される保険料 健康保険・厚生年金(本人・企業両方)、雇用保険(本人分)
経済的メリット 月収40万円なら月約12万円、年間約139万円(本人+企業分)の免除
年金記録への影響 免除期間は「未納」扱いにならず、年金額にも影響なし
企業の手続き 「育児休業等取得者申出書」を年金事務所・健康保険組合へ別途提出必須
注意点 手続きは自動ではない。企業側の届出が遅れると免除が受けられないリスクあり

給付金の申請有無にかかわらず、育休を取得したすべての方が保険料免除の権利を正しく行使できるよう、人事担当者と従業員が連携して手続きを進めることが重要です。不明点は勤務先の管轄の年金事務所や、社会保険労務士に相談することをおすすめします。


参考法令・参考資料
– 育児・介護休業法 第23条
– 雇用保険法 第61条の4
– 健康保険法 第159条
– 厚生年金保険法 第23条の3
– 日本年金機構「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」
– 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(2025年版)」

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