育休給付金は学生が対象外の理由「被保険者要件」を徹底解説

育休給付金は学生が対象外の理由「被保険者要件」を徹底解説 育休給付金

育児休業中の生活を支援する育休給付金は、働く親にとって重要な経済支援制度です。しかし、学生身分で就業している場合、原則として給付対象外となることをご存じでしょうか。

本記事では、なぜ学生が育休給付金の対象外とされるのか、その法的根拠から判定基準、具体的な申請手続きまでを完全解説します。大学生・大学院生のアルバイト、既卒者との区別方法も含めて、実務的で分かりやすい情報をお届けします。


1. 育休給付金で学生が対象外となる理由と法的根拠

1-1. 法的根拠となる「雇用保険法第60条第7項」

育休給付金の学生除外規定は、雇用保険法第60条第7項に明記されています。

法律条文 内容
雇用保険法第60条第7項 育児休業給付金は、被保険者が学生身分にある場合、支給しないと規定

この条文により、以下のいずれかに該当する場合、育休給付金は支給されません:

  • 学生身分にある者(その職業の訓練を受けることを本来の目的とする者)
  • 同一事業所で同時に2つ以上の職に就いている場合の一部

1-2. 育休給付金の制度対象者の定義

育休給付金は、以下の条件を満たす「労働者」を対象としています:

【育休給付金の対象となる労働者の定義】

雇用保険被保険者 かつ 学生でない者
         ↓
    働くことが本来目的の者

重要なポイントは、制度設計における「働く者」の定義です。

  • 学生:職業訓練(学業)が本来の目的
  • 労働者:生計維持のために働くことが本来の目的

雇用保険制度全体は、失業時の生活保障や職業訓練を通じて、働く意思と能力を持つ人を保護することが趣旨です。学生は「働く意思がある」かどうかが曖昧であり、学業復帰の可能性が高いため、育休給付金の対象外とされています。

1-3. 学生除外規定の歴史的背景と改正動向

育休給付金は1992年の導入以来、学生を対象外としてきました。この背景には以下の経緯があります:

導入当時(1992年)の考え方
– 育児休業は「労働者の生活保障」が目的
– 学生は学業復帰が想定されるため、生活保障の必要性が低い
– 学業と育児の両立が困難という判断

現在の改正動向(2024年以降)
– 働き方の多様化に対応
– 学生でも「就業が主たる目的」と判断される場合の個別審査が進展
– 通信制大学や定時制高校在籍者への判定が柔軟化傾向


2. 「学生」の定義と対象外の判定基準

2-1. 対象外となる学生の具体例

以下に該当する場合、原則として育休給付金の対象外です:

大学学部生

  • 在学中にアルバイトで就業している学生
  • 卒業予定者であっても、在学期間は対象外
  • 授業・課題・試験が主たる活動である場合

大学院生

  • 修士課程・博士課程に在籍しながら、アルバイトで就業
  • 研究が本来の目的で、就業が補助的な場合

高等専修学校・高等専門学校の生徒

  • 在学中のアルバイトは対象外

通信制・定時制在籍者

  • 原則は対象外だが、「就業が主」と判定される場合は対象となり得る

2-2. 対象となり得る学生身分者の条件

以下の場合は、学生身分であっても育休給付金の対象となる可能性があります:

条件 判定 理由
既卒者(学生身分を脱している) ✓対象 学生ではなく、労働者として扱われる
休学中で就業が主目的 ✓対象 就業が本来の目的と判定される
学位取得後の雇用開始 ✓対象 学生ではない労働者
定時制高校でも就業が主 △個別判定 勤務時間数・給与額・キャリアパスで判断
通信制大学でも就業が主 △個別判定 学習時間と勤務時間の比較で判断

2-3. 定時制・通信制・夜間大学生の判定方法

定時制・通信制・夜間課程の判定は最も複雑です。以下の3つの観点で総合判定されます:

判定方法1:学習時間 vs 勤務時間

【判定基準】
勤務時間 > 学習時間 → 「就業が主」で対象となる可能性
学習時間 > 勤務時間 → 「学業が主」で対象外

例:
– 夜間大学通学(月3時間)+ 昼間フルタイム勤務 → 対象の可能性あり
– 通信制大学(月8時間)+ 短時間アルバイト(月60時間)→ 対象の可能性あり

判定方法2:給与額と生活費負担

  • 給与が生活費の主要源 → 就業が主
  • 給与が補助的 → 学業が主

判定方法3:キャリアパスと雇用契約

  • 正社員契約で昇進・昇給が期待される → 就業が主
  • アルバイト・時給制で短期雇用 → 学業が主

2-4. 既卒者と現役学生の区別方法

最も実務的な判定方法は「学校の在籍確認」です:

確認方法 確認内容 判定基準
学生証の確認 有効期限・発行日 有効な学生証 = 学生
在籍証明書 学校が発行する公式文書 現在の在籍状況を確認
卒業証書 学位取得の日付 卒業日以降は学生ではない
休学届 学校への提出状況 休学中であっても在籍扱い

重要:育休給付金の申請時に、ハローワークが学校に在籍確認を行うことがあります。虚偽の申告は違法です。


3. 育休給付金の対象となる基本要件(学生以外)

3-1. 雇用保険被保険者であること

育休給付金を受け取るための最初の条件は、雇用保険の被保険者であることです。

被保険者の条件

  • 事業所で雇用されている
  • 31日以上の雇用予定がある
  • 週20時間以上の勤務(一般的な要件)

被保険者でない場合

  • 自営業者、個人事業主 → 対象外
  • 派遣社員で派遣元と雇用契約なし → 対象外
  • 勤務予定が30日以内 → 対象外

3-2. 育休開始時点での被保険者期間要件(2024年改正対応)

2024年4月の育児休業給付金改正により、要件が拡充されました:

改正前(2024年3月まで) 改正後(2024年4月以降)
育休開始2年以内に被保険者期間12ヶ月以上 育休開始2年以内に被保険者期間12ヶ月以上(変更なし)
妊娠・出産による離職後に再就職の場合も対象化

具体例
– 2024年4月に育休開始予定
– 被保険者期間:2022年4月~2024年3月(24ヶ月)
判定:対象 ✓(2年以内に12ヶ月以上の期間あり)

3-3. 育児休業期間中の就業日数要件

育休給付金を受け取るためには、育児休業中に一定の就業日数制限があります:

【育休給付金の就業日数要件】
育児休業期間中の就業日数 ≤ 10日(原則)
または
就業時間 ≤ 80時間(原則)

育休期間中にこれを超えて働いた場合、その月の給付金は支給されません。

3-4. 継続雇用(育休前後で同一事業所)

育休給付金を受け取るには、育休前後で同一事業所での雇用継続が原則です。

状況 判定
育休前と同じ事業所に復帰予定 ✓対象
育休期間中に転職予定 ✗対象外
育休後に別の事業所に配転 △要相談(事業所内の異動なら対象)

3-5. 育児休業の対象となる子

原則として、1歳未満の子が対象です:

  • 通常:出生日から1歳の誕生日の前々日まで
  • パパママ育休プラス:最大1歳2ヶ月まで延長可能
  • 保育園入園不可等の事由:1歳6ヶ月まで延長可能(最大2歳まで)

3-6. 育児休業給付金の給付額と計算方法

項目 内容
給付率 育休開始から6ヶ月:67% / 7ヶ月目以降:50%
計算基準 育休開始前の賃金日額 × 給付率 × 日数
上限額 厚生労働大臣が定める額(年1回改定)
下限額 3,612円/日(2024年度)

具体例
– 育休前の月給:300,000円
– 賃金日額:約10,000円(300,000円 ÷ 30日)
– 1ヶ月の給付額(開始6ヶ月以内):約200,000円(10,000円 × 67% × 30日)


4. 学生が育休給付金を申請する際の実務的手続き

4-1. ハローワークでの申請方法

学生身分の方が育休給付金を申請する場合、ハローワークが学生身分の確認を行います:

Step1: 必要書類の準備

【必須書類】
☑ 育児休業給付金支給申請書(ハローワーク指定様式)
☑ 育児休業開始予定日が分かる資料
☑ 在籍確認書(学校発行)または学生証コピー
☑ 雇用保険被保険者証
☑ 母子健康手帳(出生予定日の確認)
☑ 給与明細(直近3ヶ月分)

Step2: ハローワークへの相談

申請前に、必ずハローワークに「学生身分での申請が可能か」相談してください

相談ポイント
– 現在、学校に在籍しているか
– 勤務時間と学習時間の比較
– 雇用契約の内容(正社員 or アルバイト)
– 育休期間中の学業継続予定

Step3: 学生身分の判定

ハローワークが以下の観点で判定します:

  1. 在籍確認:学校に在籍確認を行う
  2. 勤務状況確認:雇用契約書・給与明細で就業が主か判定
  3. 復学予定確認:育休終了後の学業継続有無

4-2. 学生が「対象外」と判定された場合

残念ながら学生と判定された場合、育休給付金は受け取れません。しかし、以下の支援を受けられる可能性があります:

支援制度 内容 対象者
失業給付(基本手当) 学生アルバイト終了後、求職時に支給 一部の学生アルバイト
雇用調整助成金 勤務先の経営困難時に一部給与補助 事業所側(個人には支給されず)
教育訓練給付金 職業訓練や資格取得時の支給 給付要件を満たす者
児童手当 出生から中学卒業まで支給 親の年収要件あり

4-3. 既卒者・学業終了者の申請手続き

既に大学を卒業した、または大学院を修了した場合は、学生ではないため、通常の手続きで申請できます

必要書類(既卒者)

【通常の育休給付金申請に必要な書類】
☑ 育児休業給付金支給申請書
☑ 育児休業開始予定日が分かる資料
☑ 雇用保険被保険者証
☑ 母子健康手帳
☑ 給与明細(直近3ヶ月分)

※学生証や在籍確認書は不要

申請時の記載項目

  • 最終学歴の修了日
  • 現在の雇用契約上の身分(正社員 / 契約社員 / アルバイト)
  • 勤続期間

5. よくある質問(FAQ)

Q1: 大学4年生で、卒業予定日が育休開始日より後です。育休給付金は受け取れますか?

A: 原則として受け取れません。在学中は学生と扱われるため、卒業予定日であっても対象外です。

ただし、卒業後に育休を開始する場合は対象となります:
– 例:3月15日卒業 → 4月1日から育休開始 → 受給可能

Q2: 通信制大学に通いながら、フルタイムで会社員をしています。育休給付金は受け取れますか?

A: 個別判定となります。以下の3点を確認してください:

  1. 勤務時間 > 学習時間か
  2. 給与が生活費の主要源か
  3. 育休後も通学を続ける予定か

ハローワークに相談し、詳細な就業状況を説明することで、判定結果が変わる可能性があります。

Q3: 定時制高校に通う18歳です。彼氏の子どもを出産予定。育休給付金は受け取れますか?

A: 法的には以下の2つの課題があります:

  1. 学生身分:定時制高校在籍 → 原則対象外
  2. 年齢:育児休業制度自体、婚外子の場合の法的保護が限定的(扶養関係の確認が必要)

本人または親のサポート制度(児童扶養手当など)を検討してください。

Q4: 育休給付金が対象外と判定されました。給付金以外の支援制度は?

A: 以下の制度を検討してください:

制度名 給付額 対象
児童手当 月15,000円~10,000円 中学卒業まで(所得制限あり)
児童扶養手当 月44,140円~10,410円 ひとり親家庭(学生でも対象)
出産育児一時金 50万円 健康保険加入者全員
学資保険 各保険商品による 事前の貯蓄

Q5: アルバイト学生が育休給付金対象外で、ハローワークの判定に納得できません。異議申し立てはできますか?

A: はい、可能です:

異議申し立ての手続き
1. 支給決定通知書を受け取る
2. 通知書記載の「異議申し立て期間」内にハローワークに相談
3. 追加の証拠資料(勤務契約書、タイムシートなど)を提出
4. 管轄の労働局が再判定

ただし、明確に「在籍中の学生」であれば、判定が覆る可能性は低いです。


6. 学生と判定された場合の経済支援の選択肢

育休給付金が受け取れない学生の親向けに、以下の支援制度をまとめました:

国の支援制度

制度 月額(目安) 申請先
児童手当 10,000~15,000円 市区町村
児童扶養手当 10,410~44,140円 市区町村(ひとり親のみ)
出産育児一時金 500,000円(一時) 健康保険

学生本人向けの支援

  • 奨学金:日本学生支援機構などの給付型奨学金
  • 授業料減免:大学の経済支援制度
  • 教育ローン:国の教育ローン(日本政策金融公庫)

民間の支援

  • 学資保険:出産前の加入で準備
  • ベビー用品支援:NPO・自治体による物資支援

まとめ

育休給付金が学生対象外とされるのは、雇用保険制度が「働く意思がある労働者」を保護対象とするためです。在学中、つまり「学業が本来の目的」である間は、給付の対象外となります。

重要なポイント

学生身分 = 対象外(法律で規定)
既卒者 = 対象(学生ではないため)
通信制・定時制 = 個別判定(就業が主なら対象の可能性あり)
判定は厳格(ハローワークが学校に在籍確認を行う)

育休給付金が受け取れない場合、児童手当やひとり親向けの児童扶養手当などの代替制度を活用してください。

不安な場合は、必ずハローワークに事前相談を。虚偽の申告は違法であり、給付金の返納を求められるケースもあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 学生が育休給付金の対象外になるのはなぜですか?
A. 雇用保険法第60条第7項で学生身分者は支給対象外と規定されています。学業が本来の目的であり、働くことが主目的ではないと判断されるためです。

Q. 大学生のアルバイトは育休給付金がもらえませんか?
A. 原則として対象外です。ただし休学中で就業が主目的と判定される場合は、個別審査で対象となる可能性があります。

Q. 通信制大学生や定時制高校生は育休給付金をもらえますか?
A. 勤務時間が学習時間より長く、就業が主目的と判定されれば対象となる可能性があります。学習時間と勤務時間の比較で総合判定されます。

Q. 既卒者と学生の判断基準は何ですか?
A. 学位取得や卒業で学生身分を脱している場合は対象となります。在学中か修了・卒業したかが重要な判断基準です。

Q. 育休給付金の学生除外規定はいつからありますか?
A. 1992年の育休給付金導入時からです。ただし働き方の多様化に伴い、2024年以降は個別審査が柔軟化する傾向にあります。

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