育休給付金の対象給与とは【通勤手当・手当判定まとめ】

育休給付金の対象給与とは【通勤手当・手当判定まとめ】 育休給付金

育休給付金の給付額を計算するとき、「すべての給与が対象になるの?」という疑問を持つ方は少なくありません。結論から言うと、育休給付金は一部の給与のみを基礎として計算されます。通勤手当・住宅手当・家族手当などが対象に含まれるかどうかは、申請前に必ず確認しておく必要があります。

この記事では、法的根拠に基づいて対象給与と対象外給与を完全解説します。手当ごとの判定基準を一覧表で確認できるので、申請書類の準備前に必ずお読みください。


育休給付金の「対象給与」とは何か

育休給付金(正式名称:育児休業給付金)の給付額は、「支給対象となる賃金(法定給与)」のみで計算されます。毎月受け取っている給与の合計額がそのまま基礎になるわけではありません。

「支給対象となる賃金」と「対象外の給与」に分けて計算する理由は、雇用保険制度の賃金定義にあります。育休給付金は雇用保険の制度であるため、雇用保険法が定める「賃金」の範囲でのみ給付額が算出されます。

賃金月額の定義と法的根拠

育休給付金の給付額計算の基礎となる「賃金月額」は、以下の法令に基づいて定義されています。

法令 条文 内容
雇用保険法 第4条第4項 賃金の基本定義(労働の対価として支払われるもの)
雇用保険法施行規則 第71条の2 育休給付金における賃金月額の計算方法
厚生労働省通知 基本通達 対象給与・対象外給与の具体的な判定基準

賃金月額の原則的な計算方法は、育児休業開始前6か月間の賃金合計 ÷ 180日です。この計算に使う「賃金」が、法令上の「支給対象となる賃金」に限られます。

計算例
育休開始前6か月の対象賃金合計:240万円
賃金日額:240万円 ÷ 180日 = 13,333円
賃金月額(目安):13,333円 × 30日 = 約40万円

賃金月額には上限・下限が設定されており、毎年8月1日に改定されます。2024年8月1日現在の上限額は545,100円です。上限を超える部分は給付額計算に反映されません。

給付額計算に使われる賃金と使われない賃金の違い

対象・対象外を分ける最大の判断基準は、「その給与が労働の対価として支払われているか」という点です。

区分 特徴
支給対象となる賃金 労働の対価・定期的に支給 基本給、通勤手当、住宅手当
対象外の給与 実費弁償・臨時的・福利厚生 賞与、出張日当、食事補助

「実費弁償」とは、実際にかかった費用を穴埋めするだけの支給を指します。出張先での宿泊費や食事代の精算がその典型例です。これらは労働の対価ではなく費用の補填であるため、賃金には該当しません。


対象給与に含まれるもの完全リスト

ここでは、育休給付金の計算に含まれる給与(支給対象となる賃金)を網羅的に解説します。「通勤手当は含まれるか」という検索意図に直接答えます。

基本給・月給・時間給・日給

雇用形態を問わず、以下の基本的な賃金はすべて対象給与に含まれます。

賃金の種類 対象判定 備考
月給(固定給) ✅ 対象 全額が賃金月額に算入
日給(日給制) ✅ 対象 月内の支給額合計で算入
時間給(時給制) ✅ 対象 月内の支給額合計で算入
歩合給・出来高給 ✅ 対象 定期的に支給される場合

時給制・日給制の場合、育休開始前6か月間に実際に支払われた賃金の合計額を用いて賃金日額を計算します。月給制と計算の手順は同じです。育児休業中も計算対象となることに変わりはありません。

対象になる各種手当の判定基準(通勤手当・住宅手当・家族手当など)

毎月定期的に支給される各種手当は、原則として対象給与に含まれます。以下の一覧表で確認してください。

手当種類 対象判定 判定理由
通勤手当 ✅ 対象 労働の対価として定期的に支給される賃金
住宅手当 ✅ 対象 定期的支給、賃金性あり
家族手当 ✅ 対象 定期的支給、賃金性あり
役職手当 ✅ 対象 役職に応じた定期的賃金
職務手当 ✅ 対象 職務に応じた定期的賃金
勤務地手当 ✅ 対象 勤務地に応じた定期的賃金
調整手当 ✅ 対象 定期的に支給される賃金
資格手当 ✅ 対象 資格保有に伴う定期的賃金

通勤手当が対象になる理由を詳しく解説

通勤手当の取り扱いは、多くの方が疑問を持つポイントです。通勤手当は「実費弁償」ではなく「賃金」として扱われるため、育休給付金の計算対象に含まれます。

その根拠は雇用保険法の賃金定義にあります。通勤手当は「労働者が労働を提供するにあたって使用者から支払われる対価」として賃金性が認められています。定期券代の実費を超える部分が支給されている場合や、定額で毎月支給されている場合も同様に対象です。

注意点
「交通費実費精算」として支給されているケースでも、定期的・一律に支給されているものは対象給与として扱われます。一方、出張ごとに精算する交通費は後述する対象外給与に該当します。


対象外給与(支給対象にならないもの)完全リスト

次に、育休給付金の計算に含まれない給与(対象外給与)を解説します。これらは賃金月額の計算から除外されるため、実際の給付額は「額面給与」より低くなるのが一般的です。

対象外になる給与の判定基準と一覧表

① 臨時的・一時的な給与

給与種類 対象判定 判定理由
ボーナス・賞与 ❌ 対象外 臨時的支給、定期賃金ではない
期末手当 ❌ 対象外 臨時的支給
年末年始特別手当 ❌ 対象外 臨時的支給
決算賞与 ❌ 対象外 臨時的支給
慶弔見舞金 ❌ 対象外 臨時的・福利厚生的支給

賞与・ボーナスは給与額の大きな部分を占めることがありますが、雇用保険法上の「賃金」定義では「定期的に支払われる」ことが要件とされており、年数回の臨時的支給は対象外です。

② 実費弁償的な給与

給与種類 対象判定 判定理由
出張交通費精算 ❌ 対象外 実費弁償、賃金ではない
出張日当 ❌ 対象外 実費弁償的性格、臨時的
宿泊費精算 ❌ 対象外 実費弁償
食事補助・食事手当(現物) ❌ 対象外 福利厚生費

出張日当については「定期的ではない・実費弁償的」という2つの理由から対象外とされます。通勤手当と出張交通費が異なる扱いになる理由は、定期性と賃金性の有無の違いにあります。

③ 現物給与

食事や制服など、現金以外の形で支給される現物給与も原則として賃金月額の計算から除外されます。ただし、厚生労働大臣が定める額が設定されているものは一定額が算入される場合があります。


賃金月額の具体的な計算手順

対象給与の判定ができたら、実際に賃金月額を計算してみましょう。

ステップ1:育休開始前6か月の対象給与を合算する

育休開始日(産休後に続けて取得する場合は産休開始日)の前日から遡って6か月間に支払われた「支給対象となる賃金」をすべて合計します。

計算例(月給制・各種手当あり)

基本給 通勤手当 住宅手当 家族手当 月計
1か月目 280,000円 15,000円 20,000円 10,000円 325,000円
2か月目 280,000円 15,000円 20,000円 10,000円 325,000円
3〜6か月目 各月同額 各325,000円
6か月合計 1,950,000円

ステップ2:賃金日額を計算する

賃金日額 = 6か月間の対象賃金合計 ÷ 180日

1,950,000円 ÷ 180日 = 10,833円

ステップ3:給付率を掛けて給付額を算出する

育休給付金の給付率は以下のとおりです。

期間 給付率 計算方法
育休開始〜180日目 67% 賃金日額 × 67% × 支給日数
181日目以降 50% 賃金日額 × 50% × 支給日数

給付額例(30日の場合)
– 育休開始〜180日目:10,833円 × 67% × 30日 = 約217,744円
– 181日目以降:10,833円 × 50% × 30日 = 約162,495円


申請に必要な書類と手続きの流れ

対象給与の判定結果は、申請書類の記載内容にも影響します。申請前に以下を確認しておきましょう。

必要書類

書類名 取得先 備考
育児休業給付金支給申請書 ハローワーク・事業主 初回と2回目以降で様式が異なる
賃金台帳(直近6か月分) 事業主 支給対象賃金の確認に使用
出勤簿またはタイムカード 事業主 勤務実績の確認
母子健康手帳(写し) 本人 出産予定日・出産日の確認
育児休業取得証明書 事業主 事業主が発行

申請のタイムライン

育休開始から約2か月後に初回申請をハローワークへ提出します(原則として事業主経由)。その後、2か月ごとに継続申請を行い、育休終了まで(最長で子が2歳になるまで)給付を受けることができます。

申請期限の注意点
初回申請は、育休開始から2か月経過後の翌月末までが期限です。事業主経由で申請するケースが多いため、早めに人事担当者へ連絡しましょう。


人事担当者向け:賃金台帳の記載と給与区分の確認ポイント

企業の人事担当者が申請手続きをサポートする際には、以下のポイントに注意してください。

給与明細の区分確認

毎月の給与明細で「定期支給の手当」と「臨時支給・精算の手当」を明確に区分しているかを確認します。通勤手当が「定額支給」か「実費精算」かによって、取り扱いが変わる場合があります。定額支給は対象、出張ごとの精算は対象外という点を押さえておくことが重要です。

賃金台帳には対象となる賃金項目のみを記載するよう、ハローワークの指示に従うようにしましょう。

賃金月額の上限・下限の確認

賃金月額には毎年更新される上限額(2024年8月現在:545,100円)と下限額(2024年8月現在:59,715円)が設定されています。高額所得者の場合、上限を超えた部分は給付額に反映されないため、事前に従業員へ説明しておくことが望ましいです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 通勤手当は必ず育休給付金の対象になりますか?

A. 原則として、定期的に毎月支給される通勤手当は対象給与に含まれます。ただし、出張や業務上の移動ごとに精算される交通費は実費弁償として対象外となります。定期券代を会社が負担している場合や定額支給の場合は対象です。

Q2. ボーナスが多い月があっても給付額には影響しませんか?

A. 影響しません。賞与・ボーナス・期末手当は対象外給与のため、育休給付金の賃金月額計算には含まれません。月給・各種手当のみで計算されます。

Q3. 歩合給がある場合はどう計算しますか?

A. 歩合給や出来高給は定期的に支給される場合、支給対象となる賃金として計算に含まれます。育休開始前6か月間に実際に支払われた歩合給の合計額を他の対象給与と合算してください。

Q4. 住宅手当と食事補助は、両方対象ですか?

A. 住宅手当は対象(✅)です。毎月定期的に支給される賃金性のある手当として扱われます。一方、食事補助(現物給付・福利厚生費扱い)は対象外(❌)です。

Q5. 育休給付金の給付額はいつ振り込まれますか?

A. 申請が受理された後、原則2週間以内にハローワークから指定口座に振り込まれます。初回は申請手続きに時間がかかるため、育休開始から最初の給付まで3〜4か月程度かかることがあります。

Q6. 対象給与の判定に迷ったときはどこに相談すればよいですか?

A. お近くのハローワーク(公共職業安定所)または会社の社会保険労務士にご相談ください。給与明細や就業規則を持参すると、手当ごとの判定がスムーズに進みます。


まとめ:育休給付金の対象給与判定チェックリスト

育休給付金の給付額計算で使う「支給対象となる賃金」のポイントを整理します。

✅ 対象給与(含まれるもの)
– 基本給・月給・日給・時間給・歩合給
– 通勤手当(定期支給・定額支給)
– 住宅手当・家族手当・役職手当・職務手当
– 勤務地手当・調整手当・資格手当

❌ 対象外給与(含まれないもの)
– ボーナス・賞与・期末手当・決算賞与
– 出張交通費精算・出張日当・宿泊費精算
– 食事補助(福利厚生費扱い)・慶弔見舞金

申請前に給与明細を確認し、対象給与の合計額を正確に把握しておくことで、給付額の見通しが立てやすくなります。不明点はハローワークや社会保険労務士に相談することをおすすめします。


参考法令・情報源
– 雇用保険法(第4条第4項)
– 雇用保険法施行規則(第71条の2)
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
– ハローワークインターネットサービス

よくある質問(FAQ)

Q. 育休給付金の計算に使われる給与と使われない給与の違いは何ですか?
A. 労働の対価として定期的に支給されるかどうかが判断基準です。基本給や手当など定期的な給与は対象、賞与や実費弁償は対象外となります。

Q. 通勤手当や住宅手当は育休給付金の対象給与に含まれますか?
A. はい、含まれます。通勤手当・住宅手当・家族手当など定期的に支給される手当は、労働の対価として賃金に算入されます。

Q. 育休給付金の賃金月額はどのように計算しますか?
A. 育休開始前6か月間の対象賃金合計を180日で割った賃金日額に、30日を掛けて算出します。計算額が上限額を超える場合は上限額となります。

Q. 賞与やボーナスは育休給付金の対象給与に含まれますか?
A. いいえ、含まれません。賞与は臨時的な給与で労働の対価性が薄いため、育休給付金の計算対象外となります。

Q. 時給制や日給制の従業員の場合、育休給付金の対象給与はどう計算されますか?
A. 月給制と同じく、育休開始前6か月間に実際に支払われた給与合計を180日で割って賃金日額を算出します。

タイトルとURLをコピーしました