2025年4月から、産前産後休業(産休)中の社会保険料免除制度が廃止され、保険料の納付が義務化されます。これまで「産休中は保険料を払わなくていい」と理解していた方にとっては大きな制度変更です。
本記事では、廃止される現行制度の内容から、2025年4月以降の新ルール・納付額の計算方法・企業側の対応まで、実務に直結する情報をまとめて解説します。産休取得を検討中の方も、人事担当者の方も、制度改正の全体像をしっかり把握してください。
【速報】2025年から産休保険料免除が廃止|何が変わるのか
廃止される現行制度の概要(2025年3月まで)
現行制度では、産前産後休業を取得した女性労働者について、その期間中の社会保険料が全額免除されます。これは「産前産後休業保険料免除制度」と呼ばれ、以下の法律を根拠としています。
| 保険の種類 | 法的根拠 |
|---|---|
| 健康保険料 | 健康保険法第159条 |
| 厚生年金保険料 | 厚生年金保険法第47条 |
| 雇用保険料 | 雇用保険法第12条の2 |
免除の対象期間は次のとおりです。
- 産前休業:出産予定日の6週間前(42日前)から出産日まで。多胎妊娠(双子以上)の場合は14週間前(98日前)から出産日まで
- 産後休業:出産の翌日から8週間(56日間)まで
この期間中は、被保険者本人の保険料負担分はもちろん、事業主(企業)が折半で負担する分も含めて全額免除されます。つまり、従業員・企業の双方が保険料を支払わなくよい仕組みでした。
なお、免除期間中であっても被保険者としての資格は継続されるため、健康保険証を使った医療機関の受診や、年金記録の継続加算(保険料を払っているものとして扱われる)といった給付は通常どおり受けられます。この点は2025年4月以降も基本的に維持される予定です。
2025年4月以降の新ルール|保険料納付が義務化
2025年4月1日以降に開始する産前産後休業から、上記の免除制度が廃止され、産休期間中も通常どおり社会保険料を納付する義務が生じます。
主な変更点を整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 2025年3月まで(現行) | 2025年4月以降(新制度) |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 全額免除(本人・企業分とも) | 通常どおり納付義務あり |
| 厚生年金保険料 | 全額免除(本人・企業分とも) | 通常どおり納付義務あり |
| 雇用保険料 | 免除(産休中は賃金支払いなしのため実質0円) | 産休中の賃金が不支給の場合は納付なし |
| 適用開始時期 | ― | 2025年4月1日以降に開始する産休から |
ただし、産休中は通常無給(賃金支払いなし)となるケースが多いため、給与から保険料を控除できない月が生じます。その場合、企業が一時的に立て替えたうえで、職場復帰後に従業員の給与から遡って控除する方法をとるのか、分割して控除するのかといった運用ルールの策定は各企業の判断に委ねられる部分があります。企業の人事・給与担当者は、社内規程や給与システムの見直しが必要になります。
改正の目的と背景
今回の制度廃止は、少子化対策・出産・育児支援の強化を目的とした社会保険制度の抜本的な見直しの一環です。
厚生労働省は「全世代型社会保障の構築」という政策方針のもと、出産・育児期の経済的支援を給付面で充実させる代わりに、保険料の免除という優遇措置を見直す方向性を打ち出しています。背景にある主な考え方は以下のとおりです。
- 財源の確保:少子化対策の拡充(出産育児一時金の増額・こども家庭庁の設置など)に伴う財源を安定的に確保するため、保険料免除の範囲を見直す
- 制度の公平性:育休中(育児休業期間)の保険料免除は引き続き維持される一方、産休中のみ免除を廃止することで、制度の整合性を図る
- 女性の就業継続促進:産休・育休を通じた年金記録の連続性を強化し、女性が長期にわたって安心して働き続けられる制度基盤を整える
産休中の保険料納付|対象者・納付額・計算方法
対象者の条件|女性労働者のみに適用
新制度(2025年4月以降)で保険料納付が義務化される対象は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者である女性労働者です。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 被保険者の身分 | 健康保険・厚生年金保険の被保険者(社会保険加入者) |
| 性別 | 女性のみ(産前産後休業の取得者) |
| 雇用形態 | 正社員・契約社員・派遣社員等、雇用形態不問 |
| 勤続年数 | 制限なし(入社直後でも対象) |
| 企業規模 | 従業員数の規模不問 |
男性の育休取得者は産前産後休業の対象外であるため、本制度変更の直接的な影響は受けません。男性が取得するのは「育児休業」であり、育休中の社会保険料免除制度は2025年4月以降も引き続き存続します(育休保険料免除制度は別の法体系により維持)。
また、国民健康保険・国民年金に加入している自営業・フリーランスの方は対象外です。これらの保険制度には従来から産休中の保険料免除制度がなく、今回の改正も直接適用されません。
納付対象期間|産前休業と産後休業の区分
新制度の下で保険料を納付しなければならない期間は、以下のとおりです。
【産前休業期間】
– 単胎妊娠:出産予定日の6週間前(42日前)から出産日まで
– 多胎妊娠(双子以上):出産予定日の14週間前(98日前)から出産日まで
【産後休業期間】
– 出産の翌日から8週間(56日間)まで
– ※医師が認めた場合、産後6週間経過後に本人の請求があれば就業可能(労働基準法第65条第3項)
これらの期間が連続して保険料納付の対象期間となります。単胎妊娠の場合、最大で産前6週間+産後8週間=合計14週間(約3.5ヶ月分)の保険料を納付する必要があります。
保険料の計算方法|具体的な金額シミュレーション
産休中に納付する保険料は、産休前と同じく「標準報酬月額」をもとに計算します。産休中に賃金の支払いがない場合でも、保険料の計算基準となる標準報酬月額は変わりません。
計算式(月額ベース):
健康保険料(月額)= 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2(本人負担分)
厚生年金保険料(月額)= 標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2(本人負担分)
※健康保険料率は都道府県・健保組合によって異なります。協会けんぽ(東京都)の場合、2024年度は約10.0%(本人負担5.0%)です。
【具体的な計算例】
月収30万円(標準報酬月額30万円)の女性が産休を取得した場合:
| 保険の種類 | 計算式 | 月額(本人負担) |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 300,000円 × 10.0% ÷ 2 | 15,000円 |
| 厚生年金保険料 | 300,000円 × 18.3% ÷ 2 | 27,450円 |
| 合計(月額) | ― | 42,450円 |
産前6週間+産後8週間(約3.5ヶ月)の産休全体では、本人負担分だけで約14万〜15万円の保険料負担が生じる計算になります(雇用保険料は産休中が無給の場合は原則ゼロ)。
さらに企業側も同額の事業主負担分を支払う義務があるため、企業全体の保険料支出も増加します。月収30万円の社員1名の産休で、企業も約4万2,000円/月の追加負担が発生します。
申請手続きの変更点|免除申請が不要になる
現行(2025年3月まで)の申請手続きフロー
現行制度では、産休中の保険料免除を受けるために、企業が以下の書類を関係機関に提出する必要があります。
提出書類:
– 健康保険料免除申請書(産前産後):様式第233号
– 厚生年金保険料免除申請書:様式第169号
– 出産予定日を証明する書類(母子健康手帳のコピーなど)
– 出産後は出産日を確認できる書類(出生証明書のコピーなど)
提出先:
– 健康保険組合(組合健保加入の場合)
– 全国健康保険協会(協会けんぽ加入の場合)
– 年金事務所(厚生年金保険分)
提出時期:
– 産前休業開始後、速やかに提出(目安として産前休業開始月中)
– 出産後の報告:出産日から14日以内
2025年4月以降|免除申請は原則不要になる
制度廃止後は、産休中も通常の社会保険料の徴収・納付が継続されるため、保険料免除のための申請手続きそのものが不要になります。
ただし、企業の人事・給与担当者には以下の実務対応が新たに求められます。
① 産休中の保険料の立替・精算ルールの策定
産休中は無給となることが多いため、毎月の給与から保険料を控除できません。企業が一時立て替えを行い、復職後の給与から分割控除する方法が一般的になると想定されます。この対応を社内規程や就業規則に明記しておく必要があります。
② 給与計算システムの改修
現行システムが「産休期間中は保険料免除」を前提に設計されている場合は、免除処理を削除し、通常の控除計算が行われるよう改修が必要です。
③ 従業員への周知
産休取得予定の従業員に対して、保険料負担が発生することを事前に説明しておく必要があります。特に「産休中は無給だが保険料は納める義務がある」という点は、トラブルを防ぐためにも丁寧に説明することが重要です。
企業側が取るべき対応と注意点
人事・給与担当者のチェックリスト
2025年4月以降の新制度に備えて、企業の担当者は以下の項目を確認・整備してください。
【制度理解・情報収集】
– ☑ 2025年4月1日以降に開始する産休から新ルール適用であることを把握する
– ☑ 加入している健保組合または協会けんぽから最新の通知・案内を確認する
– ☑ 顧問社労士・年金事務所に確認のうえ、自社への影響を把握する
【社内規程・就業規則の見直し】
– ☑ 産休中の保険料負担に関する規定を新設・改定する
– ☑ 保険料の立替・分割控除の取り扱いを明文化する
– ☑ 従業員への説明義務や同意取得の手続きを整備する
【給与計算システムの対応】
– ☑ 産休中の保険料免除フラグをシステム上で削除・無効化する
– ☑ 産休中の保険料を未払い管理できる仕組みを構築する
– ☑ 復職後の分割控除が正確に処理されるか動作確認を行う
【従業員への案内・周知】
– ☑ 産休取得予定の従業員に対して新制度の内容を書面で案内する
– ☑ 産休中の保険料負担額の試算を提示し、資金計画のサポートをする
– ☑ 社内FAQや説明会の実施を検討する
産休中の保険料立替と復職後の控除の実務
産休中に賃金が支払われない場合、企業は保険料を一時立て替えた後、復職後の給与から控除する形をとることになります。この際のポイントを確認しておきましょう。
立替期間と金額の管理:
– 立替期間(産休月数)ごとに本人負担分の保険料金額を記録する
– 産前6週間+産後8週間(最大14週間=最大3カ月分以上)の合計額を管理する
復職後の控除方法:
– 一括控除の場合:復職初月の給与から全額控除(給与が低い場合、手取りがマイナスになるリスクあり)
– 分割控除の場合:複数月に分けて控除(従業員の生活負担を分散できる)
どちらの方法も法的に認められていますが、従業員とのトラブルを防ぐためには、事前に書面で合意しておくことが強く推奨されます。
産休中の家計負担を軽減する給付金・支援制度
保険料の納付義務が生じる一方で、産休中の収入をカバーする給付制度も利用できます。保険料分の負担を考慮したうえで、これらをしっかり活用しましょう。
出産手当金(健康保険から支給)
産休中の収入減をカバーする主要な給付制度です。出産手当金は、産前産後の無給期間における重要な収入源となります。
- 支給額:支給開始日以前12カ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3 × 日数
- 支給期間:産前42日(多胎98日)+産後56日の合計期間
- 申請先:加入している健保組合または協会けんぽ
- 申請時期:産後休業終了後に申請(産前・産後まとめて、または産前分を先行申請も可)
月収30万円の場合の出産手当金の目安:
標準報酬月額 300,000円 ÷ 30 × 2/3 × 98日間(産前42日+産後56日)
= 約643,000円(税込み、約3.5ヶ月分)
保険料の本人負担総額(約14〜15万円)と比べると、出産手当金が大幅に上回るため、実質的な手取りはプラスを維持できるケースが多いです。ただし、保険料の支払いタイミングと給付金の受取時期にはズレが生じるため、手元資金の確保は事前に計画しておく必要があります。
出産育児一時金(健康保険から支給)
出産にかかる費用を一定額給付する制度です。
- 支給額:50万円(産科医療補償制度加入の医療機関での分娩の場合)
- 申請先:健保組合・協会けんぽ(または直接支払制度を利用して医療機関に直接給付)
- 申請期限:出産日の翌日から2年以内
直接支払制度を利用すれば、出産時に医療機関に一時金が直接給付されるため、窓口での大きな支払いを避けることができます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2025年4月より前に産休を開始し、4月以降も産休が続く場合はどうなりますか?
2025年3月31日以前に産休が開始している場合は、その産休全体について現行の免除制度が適用されます。4月以降も継続する産後休業についても免除が維持されます。新制度の適用は「2025年4月1日以降に産前休業が開始した場合」が対象です。ただし、行政の最終通知で確認が必要なため、加入している健保組合・年金事務所への確認を推奨します。
Q2. 産休中に無給の場合、保険料はどのように支払えばよいですか?
産休中は賃金の支払いがないため、毎月の給与からの天引きができません。実務上は、企業が一時立て替えを行い、復職後の給与から控除する方法が想定されています。具体的な取り扱いは企業ごとに就業規則等で定める必要があります。事前に会社の人事担当者へ確認し、書面で合意しておくと安心です。
Q3. 育休中の保険料免除は2025年以降も続きますか?
はい、育児休業(育休)中の社会保険料免除制度は2025年4月以降も引き続き維持されます。廃止されるのは「産前産後休業(産休)中」の免除のみです。産休終了後に引き続き育休を取得した場合、育休期間中は保険料が免除される状態に戻ります。
Q4. 国民健康保険・国民年金に加入しているフリーランスや自営業者にも影響がありますか?
今回の制度変更は、健康保険(社会保険)・厚生年金保険の被保険者(会社員・派遣社員等)が対象です。国民健康保険・国民年金に加入するフリーランスや自営業者には、もともと産休中の保険料免除制度が存在しないため、今回の改正による直接的な影響はありません。
Q5. 産休中の保険料免除廃止によって、将来もらえる年金額は変わりますか?
現行制度では産休中も「保険料を納めたもの」として年金記録が加算されていました(免除でも年金に影響なし)。2025年4月以降は実際に保険料を納付するため、年金記録上の扱いは変わりません。年金受給額への影響は基本的に生じないと考えられます。
Q6. 会社が保険料を立て替えてくれない場合はどうすれば良いですか?
産休中の保険料納付は法的義務であり、会社は保険料を事業主負担分とともに納付する責任を負います。会社が保険料の取り扱い方針を示さない場合は、社内の人事担当者・労務担当者に書面で確認を求めてください。それでも対応がない場合は、所轄の労働基準監督署または年金事務所に相談することができます。
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まとめ|2025年4月からの産休保険料変更を正確に把握しよう
本記事の重要ポイントを振り返ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変更の開始時期 | 2025年4月1日以降に産前休業が開始するケースから適用 |
| 廃止される制度 | 産休中の健康保険料・厚生年金保険料の全額免除 |
| 新ルールの内容 | 産休中も通常どおり社会保険料の納付義務あり |
| 対象者 | 健康保険・厚生年金の被保険者である女性労働者 |
| 対象外 | 育休期間中・国保/国民年金加入者・男性育休取得者 |
| 企業側の主な対応 | 給与システム改修・立替精算ルールの整備・従業員への周知 |
| 活用できる給付 | 出産手当金(標準報酬月額の2/3×日数)・出産育児一時金(50万円) |
産休中の保険料負担は、出産手当金でカバーできる部分が大きいですが、支払いと受取のタイミングにズレがある点には注意が必要です。産休前に手元資金を確認し、不安な場合は企業の人事担当者や社会保険労務士に相談することをお勧めします。
企業の人事担当者は、制度廃止に向けた社内整備を早めに進め、産休取得予定の従業員が安心して休業に入れる環境を整えていきましょう。2025年4月まで残り時間は限られています。今すぐ準備をスタートしてください。
本記事の情報は執筆時点の法令・制度に基づいています。制度の詳細・最新情報は、厚生労働省・協会けんぽ・加入している健保組合・年金事務所にご確認ください。


