双子や三つ子などの多胎妊娠の場合、産前休業は通常より早く「出産予定日の14週前」から取得できます。しかし「いつから休めるのか」「計算方法がわからない」「申請書類は何が必要?」という疑問を抱える妊婦さんや人事担当者は少なくありません。
この記事では、多胎妊娠における産前休業開始日の正確な計算方法・早見表・申請手続きを体系的に解説します。パート・契約社員の方も対象となる権利ですので、ぜひ最後までご確認ください。
双子・三つ子の産前休業は「14週前」から取れる|通常妊娠との違いを一覧比較
産前休業は労働基準法で定められた権利ですが、妊娠の種類によって開始できる時期が異なります。多胎妊娠(双子・三つ子など)の場合は、通常の単胎妊娠よりも大幅に早い時期から産前休業を取得できます。
まずは通常妊娠と多胎妊娠の主な違いを表で確認しましょう。
| 項目 | 通常妊娠(単胎) | 多胎妊娠(双子・三つ子等) |
|---|---|---|
| 産前休業の開始時期 | 出産予定日の6週間前から | 出産予定日の14週間前から |
| 産後休業の期間 | 出産翌日から8週間 | 出産翌日から8週間 |
| 強制休業期間(産後) | 産後6週間(本人の請求不要) | 産後6週間(同左) |
| 対象法令 | 労働基準法第65条第1項 | 労働基準法第65条第1項(14週) |
ポイント: 産前休業の「6週間前」と「14週間前」の差は8週間(約2か月)。多胎妊娠は体への負担が大きいため、より早期に休暇を取得できる仕組みになっています。
この差が生まれた背景には、2019年4月の制度改正があります。それ以前は多胎妊娠でも産前休業開始は「出産予定日の6週間前」に限定されており、実態として体調管理が困難でした。改正後は14週前への拡充が明文化され、現場での運用が適正化されました。
なお、産前休業は本人が請求しなければ取得できない「任意取得」です(産後6週間の強制休業とは異なります)。申請を忘れると制度上の権利があっても休めない場合があるため、早めの申請が重要です。
多胎妊娠とは?双子・三つ子が「多胎」に該当する条件
多胎妊娠とは、医師の診断により子宮内に2人以上の胎児がいると確認された妊娠を指します。双子(2人)・三つ子(3人)・四つ子(4人)以上のいずれも対象です。
| 確認事項 | 詳細 |
|---|---|
| 診断方法 | 超音波検査(エコー)による確認が一般的 |
| 診断時期 | 早ければ妊娠7〜10週頃に判明することもある |
| 雇用形態の制限 | なし(正社員・派遣・パート・契約社員すべて対象) |
| 雇用期間の条件 | 産前休業開始日時点で雇用契約が継続していること |
パート・アルバイトや契約社員の方も対象です。 雇用形態を問わず、労働基準法の保護下にある労働者であれば産前休業を取得できます。「自分はパートだから対象外では?」と思い込んでいる方も、安心して申請してください。
ただし、会社から義務付けられているわけではなく「請求した場合に就業させてはならない」という形式のため、自分から申し出る必要があります。
法的根拠:労働基準法第65条が定める産前休業の範囲
多胎妊娠の産前休業14週前取得は、以下の法令に基づく確固たる権利です。
| 法令・通達 | 内容 |
|---|---|
| 労働基準法 第65条第1項 | 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、就業させてはならない |
| 労働基準法施行規則 第25条 | 産前休業の期間計算の基準(出産予定日を含む週の計算方法)を規定 |
| 厚生労働省 基発第1116号 | 産休期間の具体的な計算に関する通達 |
「会社に申請したら断られた」という事態は、この第65条に違反する行為です。産前休業の請求を会社が拒否することは法律上認められません。万が一拒否された場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
【保存版】双子・三つ子の産前休業開始日 計算方法と早見表
ここからが記事の核心です。出産予定日から産前休業開始日を正確に計算するステップと、月別早見表を提供します。
STEP1:出産予定日を確認する(医師の診断書が基準)
計算の出発点は医師が証明した出産予定日です。自己判断や妊娠検査薬のみでは申請できません。
出産予定日の確認に必要なもの
- 母子健康手帳(医師の記載ページのコピー)
- 出産予定日証明書(医療機関が発行)← 多胎妊娠である旨の記載が必須
出産予定日証明書は、かかりつけの産婦人科・産科クリニックで発行してもらえます。発行費用は医療機関によって異なりますが、数百円〜3,000円程度が相場です。
⚠️ 注意: 証明書には必ず「多胎妊娠(双子/三つ子等)」の記載をしてもらってください。単に「出産予定日:○月○日」とだけ記載された書類では、多胎妊娠向けの14週前適用が認められない場合があります。
STEP2:「出産予定日の14週前」を計算する
計算の基本ルール(労働基準法の数え方)
労働基準法における「14週間前」の計算は、以下のルールに従います。
- 出産予定日を「第0日」として起算する
- 出産予定日が属する週を「第1週目」として、14週分さかのぼる
- 産前休業開始日=出産予定日の14週前にあたる週の初日(月曜日)
ただし、実務上は「出産予定日から98日(14週×7日)を引いた日」という計算が広く使われます。
計算例
出産予定日:2025年10月10日(金曜日)の場合
10月10日 − 98日 = 7月4日(金曜日)
→ 産前休業開始可能日:2025年7月4日(金曜日)
計算のコツは「98日を引くだけ」です。カレンダーアプリや日付計算サイトでも簡単に算出できます。
STEP3:早見表で確認する|出産予定日別・産前休業開始日一覧
下記の早見表で、出産予定日から産前休業開始日を素早く確認できます。
【多胎妊娠】産前休業開始日 早見表(2025年〜2026年)
| 出産予定日 | 産前休業開始日(14週前) |
|---|---|
| 2025年4月1日 | 2024年12月24日 |
| 2025年4月15日 | 2025年1月7日 |
| 2025年5月1日 | 2025年1月23日 |
| 2025年5月15日 | 2025年2月6日 |
| 2025年6月1日 | 2025年2月24日 |
| 2025年6月15日 | 2025年3月10日 |
| 2025年7月1日 | 2025年3月25日 |
| 2025年7月15日 | 2025年4月8日 |
| 2025年8月1日 | 2025年4月25日 |
| 2025年8月15日 | 2025年5月9日 |
| 2025年9月1日 | 2025年5月27日 |
| 2025年9月15日 | 2025年6月10日 |
| 2025年10月1日 | 2025年7月4日 |
| 2025年10月15日 | 2025年7月18日 |
| 2025年11月1日 | 2025年8月4日 |
| 2025年11月15日 | 2025年8月18日 |
| 2025年12月1日 | 2025年9月4日 |
| 2025年12月15日 | 2025年9月18日 |
| 2026年1月1日 | 2025年10月6日 |
| 2026年1月15日 | 2025年10月20日 |
| 2026年2月1日 | 2025年11月6日 |
| 2026年2月15日 | 2025年11月20日 |
| 2026年3月1日 | 2025年12月4日 |
| 2026年3月15日 | 2025年12月18日 |
計算式:産前休業開始可能日 = 出産予定日 − 98日
上記に記載のない日付は、この計算式で算出してください。
計算時の注意点:出産予定日が変更になった場合
双子・三つ子の妊娠では、健診のたびに出産予定日が変わることがあります。
- 予定日が早まった場合: 産前休業をすでに申請済みであれば、会社に変更を連絡。開始日の繰り上げを書面で申請し直す
- 予定日が遅れた場合: 産前休業の開始日も後ろにずれるが、すでに休業に入っている場合は継続して休業可能
- 実際の出産が予定日より早い場合: 産後休業は「実際の出産日」を起算日として計算するため、産後休業終了日も変わる
出産予定日が変更になった際は、速やかに会社の人事・総務部門へ書面で報告し、証明書類を再提出することをお勧めします。
申請手続きの完全ステップ|いつ・何を・どこに提出するか
産前休業を適切に取得するための手続きは、以下の流れで進めます。
手続きの全体フローと推奨タイミング
【妊娠判明〜16週頃】
医師に多胎妊娠を確認・出産予定日証明書(多胎記載あり)を取得
↓
【妊娠20〜24週頃】
会社(上司・人事部)へ報告・相談
産前休業開始日の目安を伝える
↓
【産前休業開始の1〜2か月前】
産前休業申請書を会社所定のフォームで提出
出産予定日証明書・母子健康手帳コピーを添付
↓
【産前休業開始日】
休業スタート
↓
【出産後・産後休業期間中】
出産育児一時金・育児休業給付金の申請手続き
申請に必要な書類一覧
本人が準備する書類
| 書類名 | 発行元 | 提出先 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|
| 出産予定日証明書 | 産婦人科・産科医療機関 | 会社人事部 | 多胎妊娠の記載が必須 |
| 母子健康手帳(コピー) | 市区町村 | 会社・雇用保険窓口 | 多胎妊娠の記載ページを添付 |
| 産前休業申請書 | 会社指定書式 | 会社人事部 | 開始予定日・出産予定日を明記 |
| 健康保険被保険者証 | 健康保険組合・協会けんぽ | 給付申請時 | 番号確認のため手元に保管 |
会社(人事担当者)が準備する書類
| 書類名 | 用途 | 提出先 |
|---|---|---|
| 出産手当金支給申請書 | 産前産後休業中の給付申請 | 健康保険組合・協会けんぽ |
| 育児休業給付金支給申請書 | 育休中の給付申請 | ハローワーク |
| 社会保険料免除申請書 | 産休・育休中の保険料免除 | 年金事務所 |
出産手当金の計算方法と受給金額の目安
産前産後休業中は「出産手当金」を受け取れます。多胎妊娠の場合は産前休業期間が長いため、受給総額も通常より大きくなります。
出産手当金の計算式
1日あたりの支給額 = 標準報酬日額 × 2/3
標準報酬日額 = 過去12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30
受給総額の計算例(多胎妊娠)
月給30万円(標準報酬月額30万円)の方が双子を妊娠し、出産予定日どおりに出産した場合:
| 区分 | 日数 | 1日あたり支給額 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 産前休業(14週) | 98日 | 約6,667円 | 約653,366円 |
| 産後休業(8週) | 56日 | 約6,667円 | 約373,352円 |
| 合計 | 154日 | 約1,026,718円 |
※通常妊娠(産前6週)と比べると、産前休業分が56日分(約373,352円)多く受給できる計算になります。
出産手当金は、健康保険に加入していることが受給条件です。国民健康保険加入者(自営業・フリーランス等)は原則として対象外となります。
出産育児一時金についても確認を
産前産後休業中に忘れがちな給付として出産育児一時金があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 子ども1人につき50万円(2023年4月以降) |
| 双子の場合 | 50万円 × 2人 = 100万円 |
| 三つ子の場合 | 50万円 × 3人 = 150万円 |
| 申請先 | 加入している健康保険組合・協会けんぽ・国民健康保険 |
| 直接支払い制度 | 医療機関が代わりに申請し、差額のみ自己負担 |
多胎妊娠では出産育児一時金も子どもの人数分受け取れるため、忘れずに申請しましょう。
人事担当者が知っておくべき対応手順
企業の人事担当者として多胎妊娠した従業員をサポートする際は、以下の点に注意してください。
受け付け時のチェックリスト
- [ ] 出産予定日証明書に「多胎妊娠」の記載があるか確認
- [ ] 産前休業開始日が14週前以内の日付であるか確認(98日前を計算)
- [ ] 産前休業申請書に開始予定日・出産予定日・多胎であることが明記されているか
- [ ] 社会保険料免除手続きの準備(産前休業開始月から免除申請が可能)
- [ ] 出産手当金支給申請書の準備・記入サポート
社会保険料の免除申請
産前産後休業期間中は、本人・会社ともに社会保険料(健康保険・厚生年金)の支払いが免除されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 免除期間 | 産前産後休業の開始月から終了翌月まで |
| 申請先 | 年金事務所(日本年金機構) |
| 申請書 | 産前産後休業取得者申出書 |
| 申請期限 | 原則として休業終了日の翌日から2か月以内 |
社会保険料が免除されても、その期間は年金の被保険者期間として算入されるため、将来の年金額への影響はありません。
解雇禁止・不利益取扱いの禁止
産前休業中の従業員に対して以下の行為は法律上禁止されています。
| 禁止行為 | 根拠法令 |
|---|---|
| 解雇 | 労働基準法第19条 |
| 降格・減給などの不利益取扱い | 男女雇用機会均等法第9条 |
| 休業取得を理由とした嫌がらせ(マタハラ) | 男女雇用機会均等法第11条の3 |
万が一こうした事案が発生した場合、従業員は都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」に相談・申告できます。
双子・三つ子の産前休業に関するよくある疑問
産前休業の申請や計算について、特に多く寄せられる疑問をまとめました。
Q1. 多胎妊娠と診断されたのが妊娠後期でした。14週前の計算はどうなりますか?
多胎妊娠の診断時期にかかわらず、14週前(98日前)の制度適用は変わりません。診断が遅れた場合でも、診断後すぐに証明書を取得し、可能な範囲で産前休業を請求できます。ただし、すでに産前休業開始可能日を過ぎている場合は、残りの期間から休業に入ることになります。
Q2. 双子妊娠中に切迫早産で入院しました。産前休業の期間はどう計算されますか?
入院期間が「会社の指示による業務上の休業」でなく「傷病による欠勤・休職」として扱われる場合、産前休業とは別途カウントされます。入院期間が傷病手当金の対象になっているケースでは、産前休業の開始日は別に申請し直すことになります。会社の人事部門と健康保険組合に状況を相談してください。
Q3. パートで週3日勤務です。産前休業中も出産手当金はもらえますか?
パートでも健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に加入していれば出産手当金を受け取れます。支給額は実際に支払われていた標準報酬日額の3分の2です。ただし、雇用保険のみ加入で健康保険未加入の場合は、出産手当金の対象外となります。
Q4. 産前休業中に出産した日はどちらの期間に含まれますか?
出産日は産前休業に含まれます。産後休業は出産日の「翌日」から起算するため、出産日当日は産前休業の最終日として扱われます(労働基準法施行規則第25条)。
Q5. 双子の片方が妊娠中に亡くなった場合、産前休業の扱いは変わりますか?
医師の診断で多胎妊娠が確認された時点で14週前の産前休業が認められています。その後一方の胎児が死亡した場合(一胎消失)でも、当初の多胎妊娠診断に基づいてすでに取得・申請済みの産前休業は継続して有効です。ただし、今後の産前休業申請においては医師の診断内容が変わる場合があるため、医療機関・会社と連携して確認しましょう。
Q6. 出産予定日より早く出産した場合、産後休業はいつから数えますか?
実際の出産日の翌日が産後休業の起算日です。予定日より早く産まれた場合、産前休業は予定日前に終了し(出産日が産前休業の最終日)、産後休業は実際の出産翌日から8週間となります。なお、予定日前に取れなかった産前休業日数が産後に加算されるわけではありませんのでご注意ください。
Q7. 産前休業中に給与は支払われますか?
産前休業中の給与については法律で定められていないため、会社の就業規則による判断となります。ただし、健康保険加入者であれば出産手当金が支給され、多くの場合これが給与相当額の3分の2をカバーします。給与について不明な点は、会社の人事部門に確認してください。
まとめ:双子・三つ子の産前休業は早めの確認・申請が鍵
多胎妊娠における産前休業のポイントを整理します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 産前休業開始日 | 出産予定日の98日前(14週前) |
| 計算式 | 出産予定日 − 98日 |
| 申請の条件 | 多胎妊娠記載の出産予定日証明書が必要 |
| 適用対象 | 雇用形態を問わずすべての労働者 |
| 法的根拠 | 労働基準法第65条第1項 |
| 出産手当金 | 標準報酬日額 × 2/3 × 産前産後の日数 |
| 出産育児一時金 | 子ども1人あたり50万円(双子なら100万円) |
双子・三つ子の妊娠は体への負担が大きく、早期から休業を確保することが母体と赤ちゃんの健康を守ります。出産予定日証明書の取得・申請書類の準備は妊娠24週頃までに始めることをおすすめします。
会社への申請や給付金の手続きで不明な点があれば、以下の窓口に相談してください。
- 労働基準監督署:産前産後休業の権利・労働問題全般
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):マタハラ・不利益取扱い相談
- 協会けんぽ・健康保険組合:出産手当金・出産育児一時金
- ハローワーク:育児休業給付金の手続き
- 年金事務所:社会保険料免除手続き
制度を正しく理解し、安心して産前休業を取得しましょう。


