出産後の家庭にとって、夫婦そろって育児に専念できる環境を整えることは非常に重要です。2022年10月に施行された産後パパ育休(出生時育児休業)制度により、母親が産休を取得している期間中に、父親も同時に育休を取得できるようになりました。
しかし「具体的にどう申請するのか」「どんな書類が必要か」「給付金はいくらもらえるのか」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、産後パパ育休と産休の併用に関する制度の全体像から、申請手順・必要書類・給付金の計算方法まで、夫婦で取得する際の調整ポイントをすべて網羅して解説します。
産後パパ育休と産休の「併用」とは?制度の全体像を把握しよう
まずは制度の基本的な枠組みを正確に理解しましょう。産後パパ育休と産休の「併用」とは、母親が産前産後休業(産休)を取得している期間中に、父親が産後パパ育休を取得することを指します。
2つの制度が重なって同時進行することから「併用」と呼ばれますが、法律上はそれぞれ独立した制度であり、互いに相手側の取得状況に影響を与えません。それぞれの制度の仕組みを順番に確認しましょう。
産前産後休業(産休)の基本ルール
産前産後休業は、労働基準法第65条に基づく制度です。妊娠中または出産後の女性労働者を対象とし、以下の期間が保障されています。
| 区分 | 期間 | 取得の性質 |
|---|---|---|
| 産前休業 | 出産予定日前6週間(多胎妊娠は14週間) | 本人が請求した場合に付与(任意) |
| 産後休業 | 出産日翌日から8週間 | 産後6週間は強制付与(就業不可) |
ポイント:産後6週間は強制休業
産後休業のうち最初の6週間は、労働者本人の意思にかかわらず就業が禁止されています。産後6週間を経過した後は、医師が認めた場合に限り本人の申請により就業することが可能です。
なお、多胎妊娠(双子・三つ子など)の場合、産前休業が14週間に延長されます。出産予定日が複数ある場合はいずれか最も早い日を基準にして計算します。
産休は正社員だけでなく、パートやアルバイトを含むすべての女性労働者が対象であり、勤続期間に関係なく取得できます。
産後パパ育休(出生時育児休業)の基本ルール
産後パパ育休は、育児・介護休業法第9条の2に基づき、2022年10月1日から施行された制度です。通常の育児休業とは別枠で設けられており、父親が子の出生直後に集中して育児に参加できるよう設計されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得可能期間 | 子の出生から8週間以内 |
| 最大取得日数 | 28日(4週間) |
| 分割取得 | 2回まで可能(事前申出が必要) |
| 就業の可否 | 労使協定を締結した場合のみ、一部就業が可能 |
| 申出期限 | 原則として休業開始の2週間前まで |
通常の育児休業と大きく異なる点は、出生後8週間という短い期間に特化している点と、28日という日数上限がある点です。また、分割取得が2回まで認められているため、夫婦のスケジュールや仕事の都合に合わせて柔軟に組み合わせることができます。
「同時取得」が認められる法的根拠
産後パパ育休と産休の同時取得を可能にしているのが、育児・介護休業法第9条の2第1項の規定です。
同法では、産後パパ育休の対象期間を「子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日まで」と定めており、母親の産後休業期間(出産後8週間)とほぼ重なります。従来の育児休業制度には「配偶者が育児休業中は原則取得不可」とする制限がありましたが、産後パパ育休にはこの制限が設けられておらず、母親が産休中であっても父親が産後パパ育休を取得できます。
これが「産後パパ育休と産休の併用」を制度的に支える法的根拠です。
夫婦別々の取得要件と対象者の確認
制度の概要を把握したら、次は夫婦それぞれの取得要件を確認しましょう。要件を満たしていない場合、申請が認められないケースがあります。
母親側(産休取得者)の要件チェックリスト
産前産後休業は、雇用形態や勤続期間を問わずすべての女性労働者が取得できます。以下の項目を申請前に確認してください。
- ✅ 妊娠中または出産後の女性労働者であること
- ✅ 雇用契約が存在すること(正社員・契約社員・パート・アルバイト、すべて対象)
- ✅ 産前休業の場合は「本人からの申請」があること(産後休業は申請不要)
- ✅ 出産予定日または出産日を会社に届け出ていること
勤続期間は一切不問であり、入社直後であっても取得できます。また、産後6週間は法律上の強制休業であるため、会社側が拒否することはできません。
父親側(産後パパ育休取得者)の要件チェックリスト
産後パパ育休の取得には、一定の要件を満たす必要があります。
- ✅ 子の出生時に、子の父親であること(養子縁組も含む)
- ✅ 法律上の配偶者(婚姻届を提出した関係)であること
- ✅ 子と同居し、養育していること(別居は原則対象外)
- ✅ 雇用保険の被保険者であること
- ✅ 子の出生から8週間以内に取得開始すること
- ✅ 休業開始の2週間前までに申出を行うこと
勤続期間に関する注意点
2022年以前は「勤続1年未満の労働者は対象外とする」労使協定を会社が設けることが認められていました。しかし、2025年4月以降はこの除外規定が廃止される方向で改正が進んでいます。勤続期間が短い場合は、勤務先の人事担当者に現行の取り扱いを確認することが重要です。
申請スケジュールと手続きの流れ
夫婦で制度を併用する場合、申請のタイミングと手順を誤ると給付金が受け取れなくなることがあります。時系列で整理した申請フローを確認しましょう。
出産前から出産後1か月のスケジュール
【出産予定日の6週間前】
母親:産前休業の開始・会社へ届出
【出産予定日の2週間前ごろ】
父親:産後パパ育休の申出(会社へ休業開始日を通知)
※出産後の申請でも可だが、2週間前が原則
【出産当日】
母親:産後休業が自動的に開始される
【出産後8日以内】
父親:会社に出生の事実を証明する書類を提出
【出産後2か月以内】
父親:産後パパ育休の育児休業給付金申請(ハローワーク)
母親側の申請手続きステップ
ステップ1:産前休業の申請(出産予定日の6週間前)
会社の就業規則・社内書式に従い、産前休業の開始日を届け出ます。書類の名称は会社によって異なりますが、一般的に「産前産後休業申請書」または「休暇申請書」と呼ばれます。
ステップ2:健康保険組合への出産手当金の申請
産休中の所得補償として「出産手当金」を受け取ることができます。申請は産後に行うのが一般的で、出産日の翌日から2年以内が請求期限です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 標準報酬日額の3分の2 × 休業日数 |
| 支給期間 | 産前42日(多胎は98日)+産後56日 |
| 申請先 | 加入している健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ) |
ステップ3:社会保険料の免除申請
産休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。会社の担当者が日本年金機構に申請するため、母親本人の手続きは原則不要ですが、確認は行っておきましょう。
父親側の申請手続きステップ
ステップ1:産後パパ育休の申出(休業開始2週間前まで)
会社に「出生時育児休業申出書」を提出します。申出には以下の内容を記載します。
- 休業開始予定日と終了予定日
- 分割取得の場合は第1回・第2回それぞれの期間
- 就業可能日の上限(就業する場合のみ)
ステップ2:育児休業給付金の申請(出産後2か月以内を目安に)
ハローワークへ「育児休業給付金支給申請書」を提出します。会社を経由して申請するのが一般的です。
ステップ3:社会保険料の免除申請
育休中は社会保険料が免除されます。2022年の法改正により、月の末日を含む14日以上の育休を取得した月、または同一月に2週間以上の育休を分割取得した場合も免除対象となりました。
産後パパ育休の育児休業給付金:計算方法と支給額
産後パパ育休を取得した父親が受け取れる育児休業給付金の仕組みを詳しく解説します。
育児休業給付金の基本的な計算式
育児休業給付金は、雇用保険から支給されます。産後パパ育休中の給付率は以下のとおりです。
| 休業期間 | 給付率(休業前賃金比) |
|---|---|
| 休業開始から180日以内 | 67% |
| 180日経過後 | 50% |
産後パパ育休の最大取得期間は28日(4週間)であるため、実質的にすべての期間で67%の給付率が適用されます。
計算例:月収40万円の場合
① 休業開始前6か月の賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額
(40万円 × 6か月)÷ 180 = 13,333円
② 賃金日額 × 67% = 給付日額
13,333円 × 0.67 ≒ 8,933円
③ 給付日額 × 休業日数 = 支給総額
8,933円 × 28日 ≒ 250,124円(28日取得の場合)
なお、給付金には上限額が設定されており、2025年時点での上限日額は15,190円(変動する場合あります)です。上限を超える賃金の場合は上限日額で計算されます。
社会保険料が免除されることで実質給付率が上がる
産後パパ育休中は社会保険料が免除されるため、手取りベースの実質的な給付率は67%を超えることがあります。健康保険料・厚生年金保険料の免除分を加味すると、実質80〜90%程度の手取り維持が可能なケースもあります。
給付金を受け取れない場合に注意
以下の場合は給付金が支給されないまたは減額されます。
- 休業中に就業した場合(就業日数が10日を超えた場合は不支給)
- 雇用保険の被保険者期間が休業開始前2年間に12か月未満の場合
- 給与の支払いが80%以上ある場合
申請に必要な書類一覧
夫婦それぞれが揃えるべき書類をまとめました。
母親側が準備する書類
| 書類名 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 産前産後休業申請書 | 会社(人事・総務) | 社内書式を使用 |
| 母子健康手帳(出産予定日の確認) | 会社 | コピーで可 |
| 出産手当金請求書 | 健康保険組合/協会けんぽ | 出産後に提出 |
| 産前産後休業取得者申出書 | 会社経由→年金事務所 | 社会保険料免除のため |
父親側が準備する書類
| 書類名 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 出生時育児休業申出書 | 会社(人事・総務) | 休業開始2週間前まで |
| 出生を証明する書類 | 会社 | 母子健康手帳・出生届受理証明書など |
| 育児休業給付金支給申請書 | 会社経由→ハローワーク | 休業終了後に申請 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 会社経由→ハローワーク | 初回申請時のみ |
| 育児休業等取得者申出書 | 会社経由→年金事務所 | 社会保険料免除のため |
書類取得の注意点
- 「出生時育児休業申出書」の様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできますが、会社独自の書式がある場合はそちらを使用します。
- 「育児休業給付金支給申請書」はハローワークまたは厚生労働省のWebサイトで入手可能です。
- すべての書類に記入漏れがないか、提出前に必ず確認してください。
夫婦が調整すべき具体的なポイント
産後パパ育休と産休を実際に併用する際には、夫婦間での調整が不可欠です。以下の4つのポイントを事前に話し合っておきましょう。
産後パパ育休の取得タイミングを決める
産後パパ育休は子の出生後8週間以内に取得する必要があります。父親の職場状況によっては「出生直後に全部取得する」「2回に分割して取得する」など、スケジュールを柔軟に設計することが可能です。
分割取得の活用例
- 第1回(1〜2週間): 出産直後の入院・退院サポート、母親の体力回復支援
- 第2回(1〜2週間): 産後1か月健診ごろの体調が落ち着かない時期、母親の社会復帰準備
分割取得を希望する場合は、事前に2回分の申出をまとめて行うか、または1回目の終了前に2回目を申出する必要があります。
産後パパ育休中の「就業可能日数」の設定
産後パパ育休中は、労使協定が締結されている場合に限り、労働者が同意した範囲で就業することができます。ただし就業日数には上限があります。
| 就業日数の上限 | 計算方法 |
|---|---|
| 休業期間中の所定労働日の50%以下 | 例:28日取得で所定労働日20日なら最大10日 |
就業した日数・時間が一定水準を超えると育児休業給付金が減額または不支給になるため、慎重に設定する必要があります。
パパ・ママ育休プラスとの違いを理解する
「パパ・ママ育休プラス」は、通常の育児休業において父母両方が育休を取得した場合に、父親または母親の育休終了期限を1歳2か月まで延長できる制度です。
産後パパ育休とパパ・ママ育休プラスは別々の制度ですが、産後パパ育休(出生後8週間以内の最大28日)を取得した後に、通常の育児休業をパパ・ママ育休プラスで延長するという組み合わせが可能です。長期間の育休取得を計画している場合は、この組み合わせも検討してみてください。
申請期限を夫婦でカレンダー管理する
申請期限を見逃すと給付金を受け取れないリスクがあります。以下の期限を夫婦共通のカレンダーに登録しておきましょう。
| イベント | 期限・タイミング |
|---|---|
| 父親の産後パパ育休申出 | 休業開始の2週間前まで |
| 母親の出産手当金請求 | 出産日の翌日から2年以内 |
| 育児休業給付金申請(父親) | 各支給単位期間終了から2か月以内 |
| 社会保険料免除の申出 | 育休開始後速やかに(会社が手続き) |
よくある疑問とトラブル防止のポイント
Q1. 父親が産後パパ育休の申出をするタイミングが出産後になってしまいました。まだ申請できますか?
原則として休業開始の2週間前までに申出が必要ですが、出産が予定日より早まった場合などやむを得ない事情がある場合は、会社との協議により柔軟に対応できるケースがあります。まず速やかに会社の人事担当者に相談してください。ただし、申出が遅れた場合でも、子の出生後8週間以内であれば取得自体は可能です。
Q2. 産後パパ育休中に少し仕事をすると給付金はどうなりますか?
就業した場合、就業による賃金と給付金の合計が休業前の賃金の80%を超えると給付金が不支給になります。また、就業日数が休業期間中の所定労働日の半分を超えた場合も支給停止になります。就業する場合は事前に会社と詳細な条件を確認してください。
Q3. 母親が産休中に父親がパパ育休(通常の育児休業)を取ることはできますか?
はい、可能です。産後パパ育休は最大28日(4週間)ですが、それ以上の期間を取得したい場合は通常の育児休業に切り替えることができます。産後パパ育休(出生後8週間以内・最大4週間)を利用した後、通常の育児休業をつなげて取得するケースも多くみられます。
Q4. 給付金はいつ振り込まれますか?
ハローワークが申請書を受理してからおおむね2週間程度で振り込まれます。ただし書類に不備があった場合は遅延することがあります。初回の申請から受取まで1か月程度みておくと安心です。
Q5. 産後パパ育休中に双子が生まれた場合、1人分のみの申請でよいですか?
産後パパ育休の取得要件・日数(最大28日)は同時に生まれた子ども1人につき1回の休業が基準です。双子・三つ子の場合でも取得可能な最大日数は28日となります(2人分で56日とはなりません)。ただし養育する子が2人以上いる場合の詳細取り扱いは、ハローワークまたは社会保険労務士に確認することをお勧めします。
Q6. 内縁関係のパートナーも産後パパ育休を取得できますか?
現行制度では、産後パパ育休の取得要件として「法的配偶者」であることが求められています。内縁関係や同性パートナー(法律婚をしていない場合)は原則として対象外です。ただし今後の法改正により要件が変わる可能性があるため、厚生労働省のホームページで最新情報を確認することをお勧めします。
まとめ:産後パパ育休と産休の併用で夫婦育児をスムーズにスタート
産後パパ育休と産休の併用制度は、夫婦がともに出産直後の大切な時期を育児に専念するために設けられた、非常に重要な制度です。本記事の要点を整理します。
制度の核心ポイント
- 母親の産後休業(出産後8週間)と、父親の産後パパ育休(出生後8週間以内・最大28日)は同時取得が可能
- 法的根拠は育児・介護休業法第9条の2
- 産後パパ育休の申出は休業開始2週間前までに会社へ提出
- 育児休業給付金は休業前賃金の67%(社会保険料免除込みで実質80〜90%程度)
- 2回の分割取得が可能で、スケジュールを柔軟に設計できる
給付金受取の流れ(再確認)
- 産後パパ育休開始2週間前に、会社へ申出書を提出
- 出生日を会社へ証明する書類を提交
- 育休終了後、会社経由でハローワークに給付金申請書を提出
- ハローワーク受理後、2週間程度で指定口座へ振込
次のアクション
- 夫婦で取得期間のスケジュールを話し合う
- 勤務先の人事担当者に産後パパ育休の申出書様式を確認する
- 出産予定日2週間前を目安に父親が会社へ申出書を提出する
- 育児休業給付金の申請書類を会社経由でハローワークに提出する
- 社会保険料免除の手続きが正式に完了したか会社に確認する
制度の詳細は厚生労働省の公式サイトや最寄りのハローワーク、年金事務所でも確認できます。法改正が続いている分野ですので、申請前に最新情報を確認することを強くお勧めします。疑問や不明な点があった場合は、遠慮なく会社の人事部門や社会保険労務士に相談してください。夫婦二人で安心して育児のスタートを切れるよう、しっかり準備を整えてください。

