保険料免除廃止で納付額はいくら?2025年10月からの厚生年金計算ガイド

保険料免除廃止で納付額はいくら?2025年10月からの厚生年金計算ガイド 育休法改正

育児休業中の社会保険料(厚生年金・健康保険)免除制度が、2025年10月1日をもって廃止されます。この大きな制度変更により、育児休業を取得する労働者と企業の両者が新たな対応を迫られています。

本記事では、制度廃止の背景から納付額の具体的な計算方法、必要な手続きまでを詳しく解説します。家計への影響をシミュレーションしながら、スムーズな移行準備をサポートします。


2025年10月から何が変わる?育児休業保険料免除廃止の基礎知識

廃止対象となる制度の説明

従来、育児休業期間中は被保険者・事業主双方の社会保険料(厚生年金保険・健康保険)が免除されていました。これにより、育児休業中の労働者の経済的負担が軽減されていたのです。

しかし、令和6年度税制改正の実施に伴い、この免除制度は廃止されます。これまで育児休業期間は「保険関係の一時的中断」として扱われていましたが、2025年10月1日以降は「保険関係が継続」するため、保険料納付義務が発生します。

制度改正の法的根拠と時系列

制度廃止の法的根拠は以下の通りです:

法律・通知 内容
厚生年金保険法第7条 保険関係の発生・消滅を規定
健康保険法第3条 被保険者の保険関係を規定
育児・介護休業法第2条 育児休業の定義を明記
厚生労働省通知(2024年3月) 免除廃止の正式決定・運用要領

制度廃止の時系列:

2019年4月  :育児・介護休業法改正施行
2024年3月  :厚生労働省が免除廃止を正式決定
2025年10月1日:免除制度廃止・保険料納付開始

廃止決定に至った背景

この制度廃止の決定には、以下の政策的背景があります:

1. 少子化対策の強化
– 男性育休取得率の向上を目指した環境整備
– 育児休業制度の利用しやすさ向上と公平性の確保

2. 年金制度の財源確保
– 高齢化社会における年金財源の枯渇対策
– 社会保険料の徴収範囲拡大による財源確保

3. 子育て支援との連携
– 育児休業給付金(日額制への見直し)と組み合わせた総合的支援

政府は「出生率向上」と「年金財源確保」の両立を掲げており、保険料免除廃止はその一環です。

廃止対象の社会保険料

2025年10月1日以降、以下の保険料が育児休業中も納付対象となります:

保険種別 被保険者負担 事業主負担 対象期間
厚生年金保険 ○ 納付対象 ○ 納付対象 育児休業全期間
健康保険 ○ 納付対象 ○ 納付対象 育児休業全期間
雇用保険 據え置き 據え置き 変更なし

重要:雇用保険は引き続き免除されます。変更対象は「厚生年金」と「健康保険」のみです。


保険料納付対象者は誰?2025年10月以降の該当条件

納付義務が生じる対象者パターン

✓ 納付義務が生じる者

パターン1:2025年10月1日以降に新規で育児休業を開始する者
– 対象児童は問わず(第1子・第2子以降すべて対象)
– 育児休業期間の全月が保険料納付対象

パターン2:出生時育児休業(産後パパ育休)取得者
– 出生後8週間以内の「産後パパ育休」期間も納付対象
– 夫婦で分割取得する場合も対象となります

パターン3:育児休業を部分休業で取得する者
– 勤務時間短縮により育児休業を取得する場合も納付対象
– 標準報酬月額は短縮前の額で計算(詳細は後述)

パターン4:2025年9月30日の時点で休業中だが、10月以降も継続する者
– 10月1日以降の継続期間のみ保険料納付対象
– 9月30日までは免除継続

✗ 納付対象外

  • 2025年9月30日までに育児休業を終了した者:免除継続
  • 対象児童の年齢制限により休業が終了した者

対象者判定チェックリスト

以下の項目をご確認ください:

□ 2025年10月1日以降に育児休業を開始する予定である
□ または、現在育児休業中で10月以降も継続予定である
□ 厚生年金・健康保険に加入している
□ 育児対象児童は3歳未満である

☑ 上記すべてに該当 → 保険料納付対象となります

厚生年金・健康保険の納付額計算方法

基本となる計算式

育児休業中の保険料納付額は、標準報酬月額をベースに計算されます。

計算式

月額保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率

【被保険者負担分】
  厚生年金:標準報酬月額 × 9.150%(2024年度現在)
  健康保険:標準報酬月額 × 5.40%(全国平均、地域により異なる)

【事業主負担分】
  厚生年金:標準報酬月額 × 9.150%
  健康保険:標準報酬月額 × 5.40%

標準報酬月額の決定

標準報酬月額は、育児休業開始前の給与を基準に決定されます。

時期 基準となる給与 適用時期
7月の算定基礎届提出時 4月・5月・6月の給与平均 9月〜翌年8月
育児休業開始時 開始前月の給与 休業開始月より
部分休業時 短縮前の通常給与 部分休業期間中

重要ポイント:育児休業中でも給与が支払われている場合、その給与額で標準報酬月額が再計算される可能性があります。

具体的な納付額シミュレーション

例1:月給30万円の場合

【標準報酬月額】300,000円

【被保険者負担】
  厚生年金:300,000円 × 9.150% = 27,450円
  健康保険:300,000円 × 5.40% = 16,200円
  合計(被保険者):43,650円

【事業主負担】
  厚生年金:300,000円 × 9.150% = 27,450円
  健康保険:300,000円 × 5.40% = 16,200円
  合計(事業主):43,650円

【月間トータル保険料】:87,300円
【年間保険料】:87,300円 × 12ヶ月 = 1,047,600円

例2:月給50万円の場合

【標準報酬月額】500,000円

【被保険者負担】
  厚生年金:500,000円 × 9.150% = 45,750円
  健康保険:500,000円 × 5.40% = 27,000円
  合計(被保険者):72,750円

【事業主負担】
  厚生年金:500,000円 × 9.150% = 45,750円
  健康保険:500,000円 × 5.40% = 27,000円
  合計(事業主):72,750円

【月間トータル保険料】:145,500円
【年間保険料】:145,500円 × 12ヶ月 = 1,746,000円

育児休業給付金との関係

育児休業給付金(基本給付金)は、保険料納付額とは別で支給されます。

給付 算出根拠 受給対象
育児休業給付金 賃金日額 × 給付率 保険料納付にかかわらず継続
保険料納付 標準報酬月額 × 料率 2025年10月以降は発生

つまり、育児休業給付金を受け取りながら、同時に保険料を納付することになります。


企業側の対応:給与計算システムの変更

事業主が行うべき手続き・対応

ステップ1:社員への事前通知(2025年9月末まで)

すべての育児休業取得予定者・休業中の社員に対し、以下の内容を周知してください:

  • 2025年10月1日からの制度廃止
  • 保険料納付額の具体的計算
  • 給与控除方法
  • 給付金受給への影響(受給に影響なし)

ステップ2:給与計算システムの変更(2025年10月までに)

現在、育児休業中の社員を「保険料計上対象外」としている給与計算システムを修正する必要があります。

変更項目:

変更前:育児休業中 → 保険料計上なし
変更後:育児休業中 → 保険料計上あり(標準報酬月額 × 料率)

ステップ3:被保険者への給与控除

被保険者負担分の保険料は、毎月の給与から控除します。

控除方法 概要
通常控除 毎月の給与から控除
別途納付 育児休業給付金から控除
後払い 復帰後の給与で調整

厚生労働省の推奨: 給付金から控除する方式が多くの企業で採用されています(後述の「給付金控除方式」を参照)。

ステップ4:社会保険料の納付手続き

事業主負担分を含めた保険料を、毎月指定の口座へ納付します。

  • 納付先:年金事務所(厚生年金)・健康保険組合
  • 納付期限:翌月末(通常の納付スケジュールと同じ)
  • 納付方法:口座振替・納付書・電子納付から選択可能

給付金からの保険料控除と手取り額の試算

給付金控除方式とは

育児休業給付金から保険料の被保険者負担分を差し引く方式です。これにより、給与の支払いがない育児休業中でも、給付金から自動的に保険料が納付されます。

受取額シミュレーション

例:月給30万円で12ヶ月育児休業を取得する場合

【前提条件】
  ・月給:300,000円
  ・育児休業期間:12ヶ月
  ・育児休業給付金:賃金日額 × 50%(最初の6ヶ月)、50%(その後)
  ・標準報酬月額:300,000円
  ・保険料率:厚年9.15% + 健保5.40% = 14.55%

【育児休業給付金の日額】
  (300,000円 / 21.7日) × 50% = 6,912円/日

【月額給付金】
  6,912円 × 21.7日 = 150,000円(最初の6ヶ月)
  150,000円 × 2 = 300,000円(その後6ヶ月も同額)

【保険料控除】
  月額:43,650円(前述計算)

【月間受取額】
  最初の6ヶ月:150,000円 - 43,650円 = 106,350円
  その後6ヶ月:150,000円 - 43,650円 = 106,350円

【12ヶ月トータル】
  受取総額:106,350円 × 12 = 1,276,200円
  納付保険料:43,650円 × 12 = 523,800円

手取り額が減少する理由

育児休業中の経済状況が変わる主な理由:

要因 変化
給付金の減額 従来の免除制度下より実質的に減少
保険料の新規発生 2025年10月から新たな負担
所得控除の変化 保険料控除により確定申告の控除額が増加

ただし、後述する「激変緩和措置」により、一定期間の経過措置が講じられる予定です。


激変緩和措置と経過措置

2025年9月30日時点の休業者への対応

2025年9月30日の時点で育児休業中の労働者については、急激な経済状況変化を緩和するための措置が検討されています。

対象者 措置内容 適用期間
9月30日時点で休業中 段階的な保険料導入 未定(検討中)
10月1日以降新規開始 全額納付(経過措置なし)

詳細は、厚生労働省から2025年6月末までに発出される通知で確認してください。

部分休業時の計算

育児短時間勤務制度を利用する場合の保険料計算:

【部分休業での保険料】

標準報酬月額:変更なし(短縮前の額を使用)

例:フルタイム時月給30万円 → 時間短縮で実給与15万円の場合
  保険料は依然として300,000円ベースで計算

  厚生年金:27,450円(変更なし)
  健康保険:16,200円(変更なし)

この点で部分休業は育児休業よりも保険料負担が大きくなる可能性があるため、事前に試算を行うことが重要です。


申請・手続きの流れと必要書類

事業主が実施すべき手続き

手続き1:育児休業届の確認と更新(10月以降毎月)

各社員の育児休業状況を月次で把握し、保険料計上対象月を確認します。

確認項目:
– 育児休業開始年月日
– 対象児童の生年月日
– 予定終了年月日
– 部分休業の有無

手続き2:算定基礎届の提出(7月期限)

毎年7月に提出する算定基礎届に、育児休業者の情報を反映させます。

記載事項:

・被保険者氏名
・4月〜6月の給与額(育児休業者も該当月のみ記載)
・10月以降の育児休業予定の有無
・保険料納付対象月の明記

手続き3:月次保険料納付(毎月末が期限)

育児休業中の社員の保険料(事業主負担分含む)を年金事務所・保険組合へ納付します。

納付方法:
– 口座振替(推奨:自動控除で手続き簡素化)
– 納付書での納付
– 電子納付(e-Tax等)

手続き4:源泉徴収票への反映(翌年1月)

育児休業期間の保険料控除を、年末調整・源泉徴収票に反映させます。

控除額の計算:

社会保険料控除額 = 育児休業中の保険料納付額

例:12ヶ月育児休業(保険料月43,650円)
  → 控除額:43,650円 × 12ヶ月 = 523,800円

労働者が提出すべき書類

育児休業時に準備する書類

書類 提出先 期限
育児休業申告書 事業所人事部 休業開始1ヶ月前
対象児童の出生証明書コピー 事業所人事部 同上
源泉徴収票(前年度) 人事部(確認用) 随時
扶養親族申告書 人事部 復帰時

給付金請求時の書類

ハローワークへの育児休業給付金申請書:

  • 初回申請:育児休業給付金支給申請書(様式1-①)
  • 継続申請:育児休業給付金支給申請書(様式1-②)
  • 添付書類:本人確認書類、母子手帳の写し(対象児童確認用)

よくある質問と回答(FAQ)

Q1:育児休業給付金はもらえなくなるのか?

A:いいえ、給付金は継続支給されます。

保険料免除廃止は、社会保険料の納付ルール変更であり、育児休業給付金の支給廃止ではありません。給付金は従来通り受け取れますが、そこから保険料が控除される方式が一般的です。

Q2:給付金では保険料が賄えない場合、どうするのか?

A:給付金を超える部分は別途納付するか、事業主が立替えることになります。

給付金が月15万円で、保険料が月4.3万円の場合:

給付金:150,000円
保険料:43,650円
差額:106,350円(労働者の手取り)

給付金額が標準報酬月額と異なる場合、不足分の取扱いは企業と労働者で事前に協議してください。

Q3:2025年9月30日で育児休業が終了した場合は?

A:終了した月までは免除が継続され、10月以降の休業のみ保険料納付対象です。

例:9月30日で終了 → 保険料納付なし
例:10月1日〜31日を継続 → 10月分のみ納付対象

Q4:第2子以降の育児休業中でも対象か?

A:対象児童の制限なく、全員が保険料納付対象となります。

第1子:免除対象(9月30日以前開始)
第2子:納付対象(10月1日以降開始)

Q5:配偶者が先に終了した場合、自分の保険料は?

A:配偶者の休業状況は関係なく、自分の休業期間で判定されます。

夫が9月終了、妻が10月開始の場合、妻の分のみ保険料納付対象。

Q6:保険料が控除されると、将来の年金受給額は増える?

A:はい、保険料納付期間が増加するため、将来の老齢厚生年金額が増加します。

2025年10月以降の保険料納付により、厚生年金の被保険者期間が延長され、受給額が増加する可能性があります。


まとめ:2025年10月に向けた準備チェックリスト

労働者がすべき準備

□ 制度廃止の内容を理解した
□ 自分の保険料納付額をシミュレーションした
□ 給付金から控除される額を把握した
□ 家計への影響を試算した
□ 事業主に詳細な説明を求めた
□ 手取り額減少に対する貯蓄計画を立てた

企業(事業主)がすべき準備

□ 2025年10月1日の制度廃止を把握した
□ 全社員への周知・説明会を企画している
□ 給与計算システムベンダーに変更を依頼した
□ 育児休業者の人数・休業期間を確認した
□ 保険料納付額の総額を試算した
□ 年金事務所・保険組合と事前相談した
□ 算定基礎届の様式を確認した
□ 源泉徴収票作成ロジックを修正する予定である

参考資料・関連情報

公式通知・法令

  • 厚生労働省「育児休業保険料免除制度の廃止について」(2024年3月)
  • 令和6年度税制改正大綱(育児・介護休業制度関連)
  • 日本年金機構「育児休業保険料免除廃止に関するご質問」

相談・問い合わせ窓口

機関 内容 連絡先
年金事務所 厚生年金保険料の詳細 0120-100-928
健康保険組合 健康保険料の詳細 各組合に要確認
ハローワーク 育児休業給付金 0120-808-609
厚生労働省 制度全般 https://www.mhlw.go.jp

本記事の内容は2024年3月の厚生労働省通知に基づいています。制度変更の最新情報は、公式サイトで確認してください。個別相談は、年金事務所またはハローワークにお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q. 2025年10月から育児休業中の保険料納付はいくらになりますか?
A. 標準報酬月額に保険料率(厚生年金9.15%、健康保険約5%)を掛けた額が毎月必要です。給与から天引きされます。

Q. 雇用保険料も納付が必要になりますか?
A. いいえ。雇用保険は引き続き免除されます。厚生年金と健康保険のみが2025年10月から納付対象です。

Q. 2025年9月30日時点で育児休業中の場合はどうなりますか?
A. 10月1日以降の継続期間のみ保険料納付対象となります。9月30日までは従来通り免除です。

Q. 育児休業を部分休業で取得する場合、保険料はどう計算されますか?
A. 短縮前の標準報酬月額で計算され、納付対象となります。実際の給与額ではなく通常時の月額がベースです。

Q. 保険料納付により年金受給額は増えますか?
A. はい。納付期間が増えることで、将来受け取る厚生年金額が増加します。納付は年金加入期間として計上されます。

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