育休中の不妊治療通院で給付停止になる?条件・手続き・注意点【2025年最新】

育休中の不妊治療通院で給付停止になる?条件・手続き・注意点【2025年最新】 育児休業制度

育休中に次の子を希望して不妊治療に通い始めたら、育児休業給付金が止まってしまった——そんなトラブルが実際に起きています。「通院は働くことじゃないのに、なぜ給付が調整されるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、育休中の不妊治療通院が給付停止・育休終了につながるリスクを法的根拠とともに徹底解説します。通院頻度ごとのリスク早見表、企業への報告手順、必要書類まで、2025年最新情報で網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。


育休中に不妊治療の通院をすると何が問題になるのか

育休中に不妊治療の通院を始める場合、「病院に行くだけなのになぜ問題なの?」と感じる方がほとんどです。しかし制度の仕組みを理解すると、なぜリスクが発生するのかが見えてきます。まずは法的な整理から始めましょう。

育児休業制度における「就業」の定義とは

育児休業給付金は雇用保険法第61条の4に基づき、「育児休業期間中に就業しないこと」を原則的な要件の一つとして設けています。ここでいう「就業」とは、雇用主(または第三者)との雇用関係に基づく労働提供全般を指します。

厚生労働省の通知(「育児休業給付の支給申請等に係る事務処理要領」令和6年改正版)によれば、育休中に就業とみなされる行為の基準は以下のとおりです。

判断区分 行為の例 就業とみなされるか
就業とみなされる 職場への出勤・業務遂行・テレワーク ✅ 原則「就業日」としてカウント
時間数で判断 1日4時間未満の就業 ⚠️ 「就業日」でなく「時間就業」として扱う場合あり
就業とみなされない 通院(私的な医療行為) ❌ 就業には該当しない

この整理だけ見ると「不妊治療の通院は就業に該当しないから問題ない」と思えます。しかし問題が生じるのは、通院に伴って会社の業務を一部行った場合や、通院を理由に育休の実態がなくなると判断された場合です。

さらに、育休中の就業については以下のルールがあります。

  • 月10日以下かつ就業していない日が就業日を上回ることが給付継続の条件
  • 月の就業日数が10日を超えると、超えた日数分の給付が調整(減額)される
  • 月の就業日数が80時間超、または就業日数が10日超かつその比率が高い場合、給付が支給されない

不妊治療通院が直接「就業日」にカウントされるわけではありませんが、通院のついでに職場に立ち寄る・業務連絡をこなす・自宅でリモート業務を行うなどの行為が積み重なると、就業日数の上限を超えるリスクが現実のものとなります。

不妊治療通院が「育休の根拠」にならない理由

育児・介護休業法第1条・第2条を確認すると、育児休業は「1歳に満たない子を養育するために休業する」制度であると明記されています。すなわち、育休の目的は「現在育てている子どもの養育」に限定されており、次の子を授かるための不妊治療は制度の対象外です。

育児・介護休業法 第2条第1号(要約)
「育児休業とは、労働者がその1歳に満たない子を養育するためにする休業をいう。」

このことから、以下の法的結論が導かれます。

  1. 不妊治療は「医療行為」であり、「子の養育」ではない
  2. 育休中の不妊治療通院は、育休の根拠となる行為ではない
  3. 育休中の過ごし方として制度的に想定・保護されているわけではなく、雇用保険上の取り扱いを別途確認する必要がある

また、次世代育成支援対策推進法(2024年改正対応)では、企業に対して「不妊治療と仕事の両立支援」への配慮義務が求められていますが、あくまでも配慮義務レベルにとどまり、育休中の不妊治療通院を法的に保護する強制規定ではありません。つまり、育休中に不妊治療を行うかどうかは労働者の自由ですが、給付や育休継続への影響は自己責任で確認・管理する必要があるのが現状です。


通院頻度ごとのリスク早見表【月1回〜週1回以上】

「自分のケースはどれに当てはまるの?」という疑問に答えるため、通院頻度別のリスクを表で整理します。

通院頻度 就業日数への影響 給付への影響 育休継続への影響 リスク度
月1〜2回・数時間 原則影響なし 調整なし(※条件あり) 継続可 ✅ 低
月3〜4回・半日程度 状況次第でカウントリスク 要確認 原則継続可 ⚠️ 中
週1回以上(月4〜8回) 就業日数に近づく 給付調整の可能性 終了リスクあり 🔶 高
入院・長期治療 就業とは別の問題が発生 傷病手当金への切替検討 終了の可能性 🔴 要相談
通院+業務を並行 就業日数にカウント 給付調整・停止リスク 終了リスク大 🔴 高

月1〜2回程度の通院:給付調整なしの条件とは

月に1〜2回、数時間の通院であれば、それ自体は「就業日」にカウントされません。育休中の給付調整が発生するのは、あくまでも「就業」した日数・時間数が一定のラインを超えた場合だからです。

ただし、以下の条件をすべて満たすことが「給付調整なし」の前提となります。

給付調整なしの条件(月1〜2回通院の場合)

  • ✅ 通院日に業務を一切行っていない(職場への立ち寄り・テレワーク・業務連絡を含まない)
  • ✅ その月の就業日数が10日以下(就業時間が80時間以下)
  • ✅ 通院の事実を企業に適切に報告している
  • ✅ 育休の実態(子の養育)が引き続き認められる

特に注意したいのは、「通院日に少し仕事のメールを確認した」「帰りに職場に立ち寄った」などの行為です。これらは軽微に思えますが、就業日数としてカウントされる可能性があります。通院日は業務から完全に切り離して行動することが重要です。

具体的な計算例

月2回の不妊治療通院(業務なし)+月3日の短時間就業(育休中就業制度を利用)の場合
→ 就業日数:3日(通院は就業日に含まない)
→ 月10日以下のため給付調整なし

週1回以上の定期通院:給付調整・育休終了のリスク

週1回以上の定期通院が必要な不妊治療(体外受精・顕微授精の採卵周期など)では、月に4〜8回以上通院することになります。この場合、通院そのものは就業日にはなりませんが、通院日に業務を行うリスクが高まるため注意が必要です。

また、週1回以上の通院が続く状況では、育休の実態(子の養育に専念しているか)に疑問が生じる可能性もあります。企業や行政(ハローワーク)から「育休の目的を逸脱しているのではないか」と指摘されるリスクを最小化するためにも、早めに企業に状況を報告し、書面で記録を残しておくことが不可欠です。

給付調整が発生する具体的な仕組み(雇用保険法第61条の4)

育児休業給付金の支給単位期間(原則1ヶ月)において:

  • 就業日数が10日超:超えた日数分を控除して支給額を調整
  • 就業時間が80時間超(就業日数10日以下でも):同様に調整
  • 就業日数が10日超かつ就業時間が80時間超:その支給単位期間の給付は不支給
就業日数 就業時間 給付への影響
10日以下 80時間以下 影響なし(通常支給)
11日以上 問わず 超過日数分を調整して支給
問わず 81時間以上 超過時間分を調整して支給
11日以上 かつ 81時間以上 不支給(給付停止)

育休中就業制度を利用している場合の特例的な注意点

2022年10月の育児・介護休業法改正により、育休中の就業(パパ・ママ育休プラス期間も含む)が一定範囲で認められる「育休中就業制度」が整備されました。この制度を利用している場合は、就業日数の上限管理がより重要になります。

不妊治療通院の日と育休中就業日が重なると、就業日数のカウントが意図せず増加するケースがあります。スケジュール管理の観点から、通院日と就業予定日は明確に分けて管理してください。


企業への報告手順と必要書類【ステップごとに解説】

育休中に不妊治療の通院を始める場合、企業への報告は自分を守るための最重要ステップです。報告しないまま問題が発生した場合、給付の返納を求められるリスクがあります。

STEP 1:育休担当部門への事前相談(通院予定日の2週間前まで)

まず、人事部または育休担当部門に口頭または書面で相談します。この段階では以下の内容を確認・共有しましょう。

相談時に確認すべき事項

確認事項 確認先 理由
通院日の取り扱い(就業日か否か) 人事部 就業日数カウントの防止
育休中の業務連絡の範囲 上司・人事部 意図しない就業を防ぐ
就業規則上の「育休中就業」の定義 就業規則・人事部 社内規定の確認
会社の不妊治療支援制度の有無 人事部・福利厚生担当 利用可能な支援の把握

実務上のポイント
相談内容は必ずメールや書面に残してください。口頭だけの相談では後からトラブルになった際に証拠が残りません。「〇月〇日に人事部△△さんに相談済み」という記録が重要です。

STEP 2:就業規則と育休申請内容の確認

次に、自社の就業規則で「育休中の通院」がどのように定義されているかを確認します。

確認書類一覧

  • 📋 就業規則(特に育児休業規程・休職規程の章)
  • 📋 育児休業申出書(自分が提出した書類のコピー)
  • 📋 育児休業取扱通知書(会社から交付された書類)
  • 📋 育児休業給付受給資格確認通知書(ハローワークから)

就業規則に「育休中の私的な通院は就業に含まない」と明記されている企業もあります。一方、規定が曖昧な場合は、人事部に文書で確認を求めることをおすすめします。

STEP 3:通院記録の管理と定期報告

実際に通院を始めたら、以下の内容を毎回記録・管理してください。

通院記録として残すべき情報

・通院日時(年月日・時刻)
・通院した医療機関名
・通院にかかった時間(往復含む)
・通院日に業務を行ったか否か(行っていない旨の記録)
・月の就業日数の累計

この記録は、万が一ハローワークや企業から「就業日数の確認」を求められた際の証拠資料となります。毎月の育児休業給付金の支給申請(2ヶ月ごと)のタイミングで就業日数を再確認し、上限を超えていないかチェックしましょう。

STEP 4:ハローワークへの届出が必要な場合

育休中就業制度を利用して就業した月がある場合、育児休業給付金支給申請書(様式第33号の5)の就業日数欄に正確な日数を記入してハローワークに申告します。

支給申請に必要な書類

書類名 提出先 備考
育児休業給付金支給申請書(様式第33号の5) ハローワーク(事業主経由) 2ヶ月ごとに提出
賃金台帳・出勤簿のコピー 同上 就業実態の証明
母子健康手帳コピー(必要に応じて) 同上 育休継続の実態確認

通院記録そのものを提出する義務はありませんが、就業日数の正確な申告が前提です。虚偽申告は給付返納・詐欺罪の対象となりますので、事実を正確に記載してください。


給付停止・返納になった場合の対応

給付調整が通知された場合

ハローワークから「育児休業給付金の調整・停止通知」が届いた場合、以下の手順で対応します。

  1. 通知内容の確認:調整・停止の理由(就業日数超過か、育休実態の問題か)を確認
  2. 証拠書類の整理:通院記録・就業日数の記録を整理
  3. ハローワークへの問い合わせ:担当窓口に直接相談し、計算根拠を確認
  4. 不服申立て:通知に異議がある場合は、処分を知った日の翌日から3ヶ月以内に審査請求が可能(雇用保険法第69条)

給付の返納が求められた場合

誤った申告等で過払いが発生した場合、ハローワークから返納通知が届きます。分割納付の相談が可能な場合もあるため、通知を受け取ったらすぐに担当窓口に連絡してください。


不妊治療と育休を両立させるための実践的な対策

対策①:通院スケジュールと就業日を明確に分ける

育休中就業制度を利用している場合は、就業日と通院日を同じ日・同じ週に重ねないようにスケジュールを組みましょう。月の就業日数が10日に近づいている月は、通院日に業務を行わないよう特に注意が必要です。

対策②:不妊治療休暇制度の活用を検討する

一部の企業では、育休終了後の復職後に利用できる不妊治療休暇制度を設けています。次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」で不妊治療支援を掲げている企業も増えており、育休復帰後にこうした制度を活用する選択肢もあります。

厚生労働省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのための支援策」(2024年版)では、企業向けの助成金・支援ツールも整備されています。具体的には、両立支援助成金(出生応援コース)で不妊治療休暇の導入・運用実績に対する助成が受けられる可能性があります。

対策③:傷病手当金への切り替えを検討するケース

不妊治療の副作用(OHSS:卵巣過剰刺激症候群など)による入院・就労不能状態が生じた場合、育休のまま継続するよりも育休を終了して傷病手当金の受給に切り替える方が有利なケースがあります。

比較項目 育児休業給付金 傷病手当金
根拠法 雇用保険法 健康保険法
支給額 休業前賃金の67〜50% 標準報酬日額の3分の2
支給期間 育休期間中(最長2年) 通算1年6ヶ月
条件 育休継続が前提 就労不能であること

ただし、一度育休を終了すると再取得できない(同じ子について)ため、この判断は慎重に行う必要があります。必ずハローワーク・社会保険労務士・医療機関と相談のうえ決定してください。

対策④:企業の両立支援担当者・社会保険労務士に相談する

育休中の不妊治療は、会社・ハローワーク・医療機関の三者が関わる複雑な問題です。一人で判断せず、社会保険労務士(特定社会保険労務士)または企業の両立支援担当者に相談することを強くお勧めします。

厚生労働省の「両立支援ダイヤル」(0120-21-3890)や、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」でも相談を受け付けています。多くの相談は無料で利用できます。


企業の人事担当者が知っておくべき対応のポイント

従業員からの申し出があった場合の対応フロー

従業員から「育休中に不妊治療を始めたい」と相談があった場合:

STEP 1. 就業日数・通院日数の情報を整理(相談記録を書面化)
    ↓
STEP 2. 社内の育児休業規程・就業規則を確認し、通院の取り扱いを明示
    ↓
STEP 3. 当月の育休中就業予定日数を確認(月10日ルールの範囲内か)
    ↓
STEP 4. ハローワークへの給付申請に影響が出ないよう就業記録を正確に管理
    ↓
STEP 5. 従業員と定期的に状況を確認(月1回程度)

注意すべき法的リスク

  • 企業が虚偽の就業日数をハローワークに申告した場合:雇用保険法違反(返納命令・過料の対象)
  • 従業員への不当な圧力(育休切り上げの強要など):育児・介護休業法第10条違反(不利益取り扱いの禁止)
  • 不妊治療を理由とした不利益取り扱い:男女雇用機会均等法第9条違反の可能性

よくある質問(FAQ)

Q1. 不妊治療の通院日は「就業日」としてカウントされますか?

A. 通院そのものは就業日にカウントされません。ただし、通院日に職場で業務を行ったり、テレワークで仕事をした場合は就業日(または就業時間)としてカウントされます。通院日は業務から完全に切り離すことが重要です。

Q2. 育休中の不妊治療を会社に報告する義務はありますか?

A. 法律上の明示的な報告義務はありませんが、就業日数の管理や育休の実態確認のために、報告しておくことを強くお勧めします。報告することで、企業側も適切なサポートができ、後のトラブル防止につながります。

Q3. 不妊治療の入院で育休が終了した場合、再度取得できますか?

A. 同一の子について、育休を一度終了すると原則として再取得はできません(育児・介護休業法第5条の例外規定に該当しない限り)。入院が必要な場合は育休を継続したまま傷病手当金を受給する方法も検討できますが、制度の併用には条件があります。必ず事前にハローワーク・社会保険労務士に確認してください。

Q4. 育児休業給付金を返納するよう求められました。どう対応すればよいですか?

A. まずハローワークの窓口で返納理由の詳細を確認してください。計算に誤りがある場合は審査請求(処分を知った日の翌日から3ヶ月以内)が可能です。返納が確定した場合でも、分割納付の相談に応じてもらえるケースがあります。一人で抱え込まず、社会保険労務士や労働局の相談窓口を活用しましょう。

Q5. 育休中就業制度を使って月8日働いています。追加で通院しても大丈夫ですか?

A. 月8日の就業日数であれば、あと2日の余裕があります。通院日に一切業務を行わなければ就業日数は増えません。ただし、月9日目・10日目の就業が入ると給付調整の境界に近づきます。通院日に業務を行わないよう徹底し、月の就業日数を常に10日以下に管理することを心がけてください。

Q6. 体外受精の採卵周期は週2〜3回通院が必要です。給付停止になりますか?

A. 週2〜3回の通院それ自体は給付停止の直接原因にはなりません。問題となるのは、その通院日に業務を行う・あるいは月の就業日数が10日を超えた場合です。採卵周期中は育休中就業制度の利用を一時停止するか就業日数を大幅に減らすなど、月10日ルールを守るための調整を検討してください。


まとめ

育休中の不妊治療通院は、それ自体が給付停止の直接原因になるわけではありません。しかし、通院日に業務を行う・就業日数が月10日を超える・育休の実態が疑われるといった状況が重なると、給付調整・停止・返納のリスクが生じます。

この記事のポイントを整理すると:

  • 🔑 不妊治療通院は「就業」ではないが、通院日の業務行為は就業日数にカウントされる
  • 🔑 月の就業日数10日・就業時間80時間が給付調整の分岐点
  • 🔑 企業への事前報告と書面記録が自分を守る最大の手段
  • 🔑 週1回以上の定期通院や入院が必要な場合は早めに社会保険労務士に相談
  • 🔑 傷病手当金への切り替えが有利なケースもあるが、育休終了は慎重に判断

制度の細かい運用はハローワークや社会保険労務士によって解釈が異なる場合があります。自己判断で進めるのではなく、必ず所轄のハローワーク・社会保険労務士に個別確認を行ってください。不安なことがあれば、無料相談窓口を活用し、専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。


参考法令・通達

  • 育児・介護休業法(昭和63年法律第76号)第1条・第2条・第5条・第10条
  • 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第61条の4・第69条
  • 「育児休業給付の支給申請等に係る事務処理要領」(令和6年版・厚生労働省)
  • 次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)2024年改正対応
  • 「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのための支援策」(厚生労働省・2024年版)

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