育休中に配偶者も育休を取得すると、通常の育児休業給付金に上乗せして給付金を受け取れる制度があることをご存じでしょうか。
「出生後休業支援給付金」と呼ばれるこの制度は、夫婦が協力して育休を取得することを促進するために設けられました。しかし、受給条件や申請手順が複雑なため、「自分は対象になるのか」「いくらもらえるのか」「配偶者育休との関係は?」と疑問をお持ちの方も多いはずです。
この記事では、出生後休業支援給付金の対象条件・給付金額の計算方法・必要書類・申請手順を、2025年最新情報をもとに徹底解説します。夫婦で育休を交代取得する場合の具体的な手順や、社会保険料免除との組み合わせ効果についても説明します。
出生後休業支援給付金とは?制度の基本をわかりやすく解説
出生後休業支援給付金(しゅっしょうごきゅうぎょうしえんきゅうふきん) とは、両親がともに育児休業を取得する場合に、雇用保険から支給される給付金です。
2021年8月1日に施行された比較的新しい制度であり、「育休を取るなら夫婦一緒に」という国の方針を反映しています。少子化対策や男性育休の取得率向上を目的として設けられており、配偶者の育休取得を条件とすることで、育児の分担を制度面からサポートするのが最大の特徴です。
法的根拠は雇用保険法第69条の2です。育休そのものの根拠法である育児・介護休業法(第5条など)とあわせて理解しておくと、申請手続きがスムーズになります。
通常の育児休業給付金との違い
多くの方がすでにご存じの「育児休業給付金」は、育休開始から最初の180日間は賃金月額の67%、それ以降は50%が支給される制度です。一方、出生後休業支援給付金はこれに加算される「上乗せ給付」として機能します。
| 項目 | 通常の育児休業給付金 | 出生後休業支援給付金(上乗せ分) |
|---|---|---|
| 支給率 | 休業前賃金の67%(最初の180日) | 休業前賃金の13%を上乗せ(合計80%相当) |
| 支給期間 | 育休全期間(子が1歳になるまで等) | 出生後8週間以内の最大4週間 |
| 配偶者の育休取得 | 不要 | 必須 |
| 適用対象 | 雇用保険加入者 | 雇用保険加入者(配偶者も条件あり) |
| 法的根拠 | 雇用保険法第61条の4 | 雇用保険法第69条の2 |
ポイント: 67%+13%=実質80%相当の給付となるため、社会保険料の免除も考慮すると「手取りがほぼ変わらない」水準に近づきます。
対象となる子の出生時期と施行日(2021年8月1日以降)
出生後休業支援給付金を受け取るには、対象となる子が2021年8月1日以降に出生していることが前提条件です。
施行日より前に生まれた子は、いかに条件を満たしていても対象外となります。出生日を必ず確認したうえで申請を進めましょう。
受給できる人の条件|本人・配偶者それぞれのチェックリスト
「自分はこの給付金をもらえるのか?」を確認するため、本人と配偶者それぞれの要件を整理します。
本人(給付金を受け取る側)が満たすべき5つの要件
以下の5つすべてを満たす必要があります。
| # | 要件 | 詳細 |
|---|---|---|
| ① | 雇用保険に加入している | 出生予定日の8週間前から継続して加入していること |
| ② | 育児休業を取得している | 育児・介護休業法第5条に基づく育児休業であること |
| ③ | 出生後8週間以内に育休を開始している | 子の出生日から数えて8週間(56日)以内に育休が始まっていること |
| ④ | 4週間(28日)以上の育休を取得している | 連続・分割を問わず合計4週間以上取得すること |
| ⑤ | 育休期間中の給与が80%未満である | 育休中に事業主から通常給与の80%以上を受け取っていると不支給 |
確認チェックリスト
– [ ] 雇用保険の被保険者期間が過去2年間にある
– [ ] 育休取得を会社に申請済みである
– [ ] 子の出生日から8週間以内に育休が始まっている
– [ ] 育休期間が4週間(28日)以上ある
– [ ] 育休中に会社から賃金の80%以上を受け取っていない
配偶者が満たすべき条件(最重要ポイント)
本制度の最大の特徴は、配偶者も育休を取得していることが必須要件である点です。配偶者の育休取得がなければ、本人がどれだけ条件を満たしていても給付金は支給されません。
配偶者が満たすべき条件は以下のとおりです。
- 出生予定日の6週間(42日)前〜出生後8週間(56日)以内に育休を取得していること
- 出生後8週間以内に実際に育休を取得していること(予定だけでは不可)
- 配偶者も雇用保険の加入者であること(正社員に限らず、パートや派遣社員も対象)
- 配偶者の育休期間が4週間以上あることが望ましい(要確認)
よくある誤解: 配偶者が「専業主婦(夫)」や「雇用保険未加入のアルバイト」の場合は、配偶者要件を満たせないため対象外となります。事前に配偶者の雇用保険加入状況を確認しましょう。
給付金の計算方法|実際にいくらもらえる?
給付額の計算式
出生後休業支援給付金は、通常の育児休業給付金(67%)に13%を上乗せする形で計算されます。
支給額(合計)= 賃金日額 × 支給日数 × 80%
上乗せ分 = 賃金日額 × 支給日数 × 13%
賃金日額とは: 育休開始前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180日で算出します(雇用保険の基本日額と同一)。
計算例
- 前提: 月収30万円、育休取得期間4週間(28日)
- 賃金月額: 300,000円
- 賃金日額: 300,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円/日
| 給付種別 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 通常の育児休業給付金(67%) | 10,000円 × 28日 × 67% | 187,600円 |
| 出生後休業支援給付金(上乗せ13%) | 10,000円 × 28日 × 13% | 36,400円 |
| 合計受給額(80%相当) | 10,000円 × 28日 × 80% | 224,000円 |
上限額に注意: 賃金月額には上限(2025年現在:約56万円)が設定されているため、高所得者は上限額をもとに計算されます。
申請方法と手続きの流れ
STEP1:会社への育休申請
本人および配偶者ともに、育休開始予定日の2週間前までに勤務先へ育児休業の申出を行います。「産後パパ育休(出生時育児休業)」を活用する場合は、開始予定日の2週間前までに申し出が必要です。
STEP2:事業主による申請代行(ハローワーク経由)
給付金の申請は、原則として事業主がハローワークを通じて代行します。個人で直接申請するケースは少数ですが、事業主に確認のうえ進めましょう。
STEP3:必要書類の準備
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 事業主が作成・提出 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 育休開始前の給与を証明 |
| 育児休業取得確認通知書(配偶者分) | 配偶者の育休取得を証明する書類 |
| 出生証明書または母子手帳(写し) | 子の出生日を確認するため |
| 配偶者の雇用保険被保険者証(写し) | 配偶者の加入確認 |
| 育休期間中の出勤簿・タイムカード | 就業状況の確認 |
注意: 必要書類はハローワークの窓口や管轄の都道府県によって若干異なる場合があります。事前に事業主または所轄ハローワークへ確認することを推奨します。
STEP4:申請期限
育児休業給付金(出生後休業支援給付金を含む)の申請期限は、支給単位期間の末日から2ヶ月以内です。申請が遅れると不支給となるリスクがあるため、育休開始後は速やかに手続きを進めましょう。
夫婦で育休を交代取得する場合の手順
出生後休業支援給付金を最大限活用するには、夫婦が出生後8週間以内に育休を取得し、期間を重ねる(同時または交代) ことが重要です。
推奨パターン:交代取得の例
【子の出生】
↓
【妻が産後休業(出産翌日〜8週間)+育休開始】
↓(2〜4週間後)
【夫が産後パパ育休(4週間分割取得可能)を開始 → 妻と一定期間重複】
↓(夫の育休4週間以上で条件達成)
【妻が育休継続・夫は職場復帰または継続取得】
産後パパ育休(出生時育児休業)との組み合わせ: 2022年10月に施行された「産後パパ育休」制度を活用すると、出生後8週間以内に最大4週間の育休を分割取得できます。出生後休業支援給付金の4週間要件と合致するため、積極的に活用することをおすすめします。分割取得の柔軟性により、夫が仕事と育児のバランスを取りやすくなります。
社会保険料の免除との組み合わせ効果
育休期間中は、健康保険料・厚生年金保険料が免除されます(育児・介護休業法に基づく申請が必要)。
- 出生後休業支援給付金(80%相当)+社会保険料免除を合わせると、実質的な手取り額は育休前とほぼ同水準になると言われています。
- 社会保険料免除の申請は、事業主が年金事務所または健康保険組合に対して行います。育休申請と同時に依頼しておくとスムーズです。
- 社会保険料免除期間は将来の年金額計算にも反映され、支払わずに年金を受給するときに有利に働きます。
よくある疑問・注意点まとめ
「同時取得」でも給付金は受け取れる?
両親が完全に同じ期間で育休を取得する「完全同時取得」の場合も、それぞれの要件(4週間以上・出生後8週間以内など)を満たしていれば、両方が出生後休業支援給付金を受け取れます。ただし、支給対象期間の計算上の取り扱いについては所轄ハローワークに確認することをおすすめします。
配偶者が自営業・フリーランスの場合は?
雇用保険に加入していない自営業者やフリーランスの配偶者は、配偶者要件を満たせないため対象外となります。ただし、雇用契約で雇用保険に加入している場合は対象となる可能性があります。
双子・多胎の場合は?
子が複数の場合も、制度の適用は基本的に同様です。各子ごとに出生後8週間の範囲で育休取得条件を満たす必要があります。詳細は所轄ハローワークにご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出生後休業支援給付金は、いつ口座に振り込まれますか?
A. 支給単位期間(約2ヶ月ごと)終了後、ハローワークでの審査を経て2〜4週間程度で指定口座に振り込まれます。初回は育休開始から2〜3ヶ月後になるケースが多いです。
Q2. 育休を分割取得した場合でも対象になりますか?
A. はい、産後パパ育休(出生時育児休業)の分割取得制度を活用した場合でも、合計4週間以上・出生後8週間以内の要件を満たせば対象となります。
Q3. 配偶者が育休を途中でやめた場合はどうなりますか?
A. 配偶者が育休を途中で終了した場合、終了時点までの期間が要件を満たしていれば、すでに支給済みの給付金は返還不要です。ただし、今後の支給要件に影響する場合があるため、変更が生じたら速やかに事業主・ハローワークへ相談してください。
Q4. 正社員でない(派遣・パートタイム)場合でも受け取れますか?
A. 雇用保険に加入し、被保険者期間の要件(過去2年間)を満たしていれば、雇用形態にかかわらず対象となります。
Q5. 申請を忘れた(期限を過ぎた)場合はどうすればよいですか?
A. 申請期限(支給単位期間末日から2ヶ月以内)を超えると、原則として不支給となります。ただし、やむを得ない理由がある場合には例外的な取り扱いが認められるケースもあるため、速やかに所轄ハローワークに相談してください。
まとめ
出生後休業支援給付金は、夫婦がともに育休を取得することで最大80%相当の給付を受け取れる制度です。育児・介護休業法の施行拡大に伴い、男性の育休取得をサポートする重要な仕組みとなっています。制度を最大限活用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 子の出生日 | 2021年8月1日以降であること |
| 本人の育休期間 | 出生後8週間以内・4週間以上 |
| 配偶者の育休 | 雇用保険加入・出生後8週間以内に取得 |
| 給与要件 | 育休中の給与が80%未満 |
| 申請期限 | 支給単位期間末日から2ヶ月以内 |
手続きに不安がある場合は、所轄のハローワークや社会保険労務士に早めに相談することをおすすめします。給付金の取りこぼしがないよう、育休開始前から計画的に準備を進めましょう。
免責事項: 本記事は2025年時点の情報をもとに作成しています。制度の内容は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省公式サイトまたはハローワークにてご確認ください。

