2025年10月から、育児休業中の社会保険料免除制度が大きく変わります。特に両親が同時に育休を取得する場合、保険料が発生する可能性が高くなりました。本記事では、改正内容、対象者の判定方法、保険料の納付時期・方法を実例を交えて解説します。
2025年10月改正で何が変わる?育休保険料免除制度の基本
育児休業保険料免除制度とは
育児休業期間中、被保険者本人と事業主が負担する社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除される制度です。従来は育休全期間が免除対象でしたが、2025年10月以降、両親同時取得時には免除期間に制限が生じます。
免除対象の保険料
– 健康保険料(被保険者負担分・事業主負担分)
– 厚生年金保険料(被保険者負担分・事業主負担分)
– 子ども・子育て拠出金(事業主のみ)
2025年10月改正の主な変更点
改正の背景にあるのは、仕事と育児の両立支援政策の転換です。従来の「育児休業全期間免除」から「計画的な交代取得を支援する制度」へシフトしました。
改正の3つのポイント:
- 両親同時取得時の保険料発生
- 子の出生日から2ヶ月間のみ両親とも保険料免除
-
3ヶ月目以降は、同時取得していない親の保険料は免除継続
-
計画的な育休交代を推奨
- 親同士が交代で育休を取得する場合、それぞれ全期間保険料免除
-
企業の「両親同時育休」制度は廃止ではなく、保険料負担が明確化
-
申請手続きの厳格化
- 出産予定日や育休期間を事前に確定することが必須
- 保険料免除申請書に「同時取得の有無」を記載
改正前後の保険料免除対象期間の比較表
| 対象者 | 改正前(2025年9月まで) | 改正後(2025年10月以降) |
|---|---|---|
| 夫婦同時育休 (例:12ヶ月間) |
✅ 12ヶ月全期間免除 | ⚠️ 最初の2ヶ月のみ両親免除 3ヶ月目以降は片親のみ免除 |
| 父親のみ育休 (例:12ヶ月間) |
✅ 12ヶ月全期間免除 | ✅ 12ヶ月全期間免除(変更なし) |
| 母親のみ育休 (例:12ヶ月間) |
✅ 12ヶ月全期間免除 | ✅ 12ヶ月全期間免除(変更なし) |
| 出産後8週間 (産後休業) |
✅ 8週間全期間免除 | ✅ 8週間全期間免除(変更なし) |
誰が保険料を払う?対象者別チェックリスト
パターンA|両親同時育休で保険料が発生するケース
以下に該当する場合、2025年10月以降に保険料納付が発生します。
【事例】子の出生予定日が2025年10月1日以降
│
├─ 夫:2025年10月1日から育休開始(12ヶ月予定)
└─ 妻:2025年10月1日から育休開始(12ヶ月予定)
↓
【保険料免除期間】
2025年10月~11月(2ヶ月間):両親ともに保険料免除
2025年12月~2026年9月:妻が育休続行
↓
妻の保険料が発生!月額約5,000~8,000円の負担
保険料が発生する理由: 両親が同時に育休を取得した3ヶ月目以降、出産者でない親(通常は父親)の保険料免除要件を満たさなくなるため、継続して保険料が発生します。
パターンB|片親のみ取得で保険料免除が継続
保険料免除制度に変更がない場合:
【事例1】父親のみ育休取得
夫が2025年10月1日から12ヶ月育休開始
↓
✅ 12ヶ月全期間、保険料免除(変更なし)
【事例2】母親のみ育休取得
妻が2025年10月1日から12ヶ月育休開始
↓
✅ 12ヶ月全期間、保険料免除(変更なし)
【事例3】両親が交代で育休取得する場合
妻:2025年10月1日~2026年3月31日(6ヶ月)→ 保険料免除
夫:2026年4月1日~2026年9月30日(6ヶ月)→ 保険料免除
↓
✅ 各自の育休期間で全期間保険料免除
(同時取得でなければ免除制度に制限がありません)
パターンC|出産した女性の保険料扱い
出産者(母親)の保険料扱いは変更されません:
- 産後休業期間(8週間): 保険料免除
- その後の育児休業期間: 免除継続
- 同時取得の有無に関わらず、出産者の保険料は優遇
対象外となる職業・雇用形態
以下に該当する場合、本制度の対象外です。別途確認が必要です。
| 職業・身分 | 理由・備考 |
|---|---|
| 国家公務員・地方公務員 | 共済組合による別規定が適用 |
| 自営業者・個人事業主 | 社会保険未加入または国民健康保険対象 |
| 雇用保険非加入者 | 育児休業給付金の支給要件未達 |
| 契約社員(6ヶ月未満勤続) | 育休対象外となる場合あり |
→ 該当する場合は勤務先人事部に相談してください。
保険料発生時期と納付方法|月額計算・支払い流れ
保険料が発生するのは「いつから」?時系列で整理
重要:保険料発生時期は「子の出生日」を基準に計算されます。
【事例】子の出生予定日:2025年10月15日
┌─────────────────────────────────────────┐
│ 2025年10月15日(出生日)から起算 │
│ │
│ ✅ 10月15日~11月14日:2ヶ月間 │
│ → 両親ともに保険料免除 │
│ │
│ ⚠️ 11月15日以降(3ヶ月目) │
│ → 同時取得している場合、 │
│ 保険料が発生する可能性! │
└─────────────────────────────────────────┘
具体的な保険料発生月:
- 同時取得2ヶ月目までの保険料:徴収なし(免除期間)
- 3ヶ月目から発生した保険料:翌月給与から天引きまたは本人納付
月額保険料の計算方法と金額シミュレーション
社会保険料は前月の給与額を基に計算されます。
計算式:
月額保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
【健康保険料(会社・本人折半)】
例)標準報酬月額 30万円の場合
= 300,000円 × 9.73% × 1/2 = 14,595円(本人負担)
【厚生年金保険料(会社・本人折半)】
例)標準報酬月額 30万円の場合
= 300,000円 × 18.30% × 1/2 = 27,450円(本人負担)
【合計月額(本人負担分のみ)】
= 14,595円 + 27,450円 = 42,045円/月
年収別・月額保険料シミュレーション表:
| 年収 | 標準報酬月額 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 | 合計/月 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 25万円 | 12,163円 | 22,875円 | 35,038円 |
| 400万円 | 33万円 | 16,012円 | 30,195円 | 46,207円 |
| 500万円 | 42万円 | 20,412円 | 38,430円 | 58,842円 |
| 600万円 | 50万円 | 24,325円 | 45,750円 | 70,075円 |
※2024年度の保険料率を使用(地域・年齢により異なります)
保険料の納付方法|給与天引き vs 本人納付
育休中の保険料納付は以下の2つの方法があります。
方法①:給与天引き(一般的)
【流れ】
育休が終了して復帰
↓
復帰後の給与から保険料を徴収
↓
未納分を遡及納付(例:4ヶ月分を4ヶ月かけて回収)
メリット:
– 手続きが簡単で、企業が一括管理
– 本人が納付忘れの心配がない
デメリット:
– 復帰後の給与が減少する
– 遡及納付で負担が大きくなる可能性
方法②:本人納付(育休中に直接納付)
【流れ】
育休中に保険料発生
↓
事業主から「納付書」を受け取る
↓
銀行・郵便局・コンビニで本人が直接納付
メリット:
– 復帰後の給与負担がない
– 計画的に納付できる
デメリット:
– 本人が納付手続きを忘れる可能性
– 複数月の納付書管理が煩雑
→ どちらの方法を選択するかは、勤務先企業と協議します。
申請手続きと必要書類|保険料免除申請をスムーズに進める
申請の全体フローと時系列
【出産予定日の1ヶ月前】
↓
Step 1. 育児休業申出書を勤務先に提出
(様式:企業所定の用紙)
↓
【出産予定日の2週間前】
↓
Step 2. 保険料免除申請書を勤務先人事部に提出
(様式:社会保険事務所提供)
↓
【出生日から10日以内】
↓
Step 3. 出生証明書などの証拠書類を勤務先に提出
↓
【育休開始日】
↓
Step 4. 保険料免除期間の決定通知を受け取り
(企業が社会保険事務所に申請)
↓
【育休中】
↓
Step 5. 保険料の納付方法を企業と相談・決定
必要書類チェックリスト
申請時に準備すべき書類:
| 書類名 | 提出時期 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業申出書 | 出産予定日1ヶ月前 | 企業所定様式(指定なし) |
| 保険料免除申請書 | 出産予定日2週間前 | 日本年金機構提供「育児休業保険料免除申請書」 |
| 出生証明書 | 出生日から10日以内 | 市区町村発行(出生届提出時に入手) |
| 母子手帳のコピー | 同時取得の場合 | 子の生年月日確認用 |
| 配偶者の育休申出書コピー | 同時取得の場合 | 「同時取得」を証明するため |
| 健康保険・厚生年金保険被保険者証 | 申請時 | 保険加入確認用 |
→ 企業の人事部が一括準備する場合も多いため、確認が重要です。
同時取得の場合の追加手続き
両親同時育休の場合、以下の記載が必須となります:
【保険料免除申請書に記載する項目】
☑ 配偶者の氏名
☑ 配偶者の社員番号・生年月日
☑ 配偶者の育休開始日
☑ 配偶者の育休終了予定日
☑ 「同時取得する」にチェック
↓ この記載により、以下が自動判定されます:
• 最初2ヶ月:両親ともに保険料免除
• 3ヶ月目以降:片親のみ免除(もう一方に保険料発生)
重要: 配偶者が同一企業に勤務していない場合は、配偶者の企業からも「育児休業証明書」提出が必要となる場合があります。
実例で理解する|家計シミュレーション&納付計画
実例①:年収500万円、夫婦同時育休12ヶ月の場合
【家計への影響シミュレーション】
妻:年収 500万円(標準報酬月額 42万円)
夫:年収 400万円(標準報酬月額 33万円)
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【育休スケジュール】
2025年10月1日:第2子出生
2025年10月1日~2026年9月30日:
• 妻が育休取得(12ヶ月)
• 夫が育休取得(12ヶ月)
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【保険料免除期間】
2025年10月~11月(2ヶ月):両親ともに保険料免除 ✅
【保険料発生期間】
2025年12月~2026年9月(10ヶ月):
→ 同時取得のため、発生要件を満たさない親の保険料が徴収
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【月額保険料(本人負担分)】
妻(42万円報酬):約61,000円/月
夫(33万円報酬):約46,200円/月
【保険料発生額の計算】
妻の発生保険料:61,000円 × 10ヶ月 = 610,000円 ⚠️
夫の発生保険料:46,200円 × 10ヶ月 = 462,000円 ⚠️
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【合計保険料】約1,072,000円
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【納付方法】
オプション①:給与天引き(復帰後10ヶ月で回収)
復帰後の給与から毎月約107,200円上乗せ徴収
オプション②:本人納付(育休中に直接納付)
毎月納付書で約53,600円~61,000円を支払い
育休中でも育児休業給付金から控除する形での納付可能
このケースでの対策:
– 交代育休に変更:合計1,072,000円の負担をゼロにできる
– 妻:10月~3月(6ヶ月)育休 → 全期間免除
– 夫:4月~9月(6ヶ月)育休 → 全期間免除
実例②:育休給付金との関係|実手取りのシミュレーション
【育児休業給付金の仕組み】
育休中の給与は支給されず、代わりに給付金を受給
妻の場合:
育児休業給付金 = 休業前賃金 × 67%(最初6ヶ月)
= 休業前賃金 × 50%(7ヶ月目以降)
例)月給 42万円の場合
• 最初6ヶ月:281,400円/月(67%)
• 7~12ヶ月目:210,000円/月(50%)
【ここに保険料が上乗せされる】
例)3ヶ月目の妻の実手取り:
給付金 281,400円 - 保険料 61,000円 = 220,400円
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重要:給付金から直接控除される可能性も
企業の会計処理方法で異なるため確認が必須
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よくある質問(FAQ)
Q1:保険料が発生した場合、育児休業給付金も減額されますか?
A:いいえ。保険料と給付金は別計算です。
育児休業給付金は、保険料納付の有無に関わらず、休業前の給与の67%(6ヶ月)→ 50%(7ヶ月目以降)が支給されます。保険料は給付金とは別途、本人が負担する形になります。
ただし、企業の会計処理によっては「給付金から控除」される場合もあるため、勤務先人事部に確認が重要です。
Q2:保険料納付を忘れた場合どうなりますか?
A:延滞金が発生し、年金加入履歴に反映されないリスクがあります。
- 納付期限から1ヶ月以内の納付: 延滞金なし
- 1ヶ月以上遅延: 年 14.6% の延滞金が発生
- 未納期間: 将来の年金受給額が減少する可能性
育休給付金から直接控除してもらう、または自動引き落とし設定を活用し、忘れない仕組みづくりが大切です。
Q3:出産予定日が2025年9月30日と10月1日で保険料が変わりますか?
A:はい。大きく変わります。
【2025年9月30日出生の場合】
保険料免除は「改正前」の基準が適用
→ 12ヶ月全期間保険料免除(両親同時取得でも)
【2025年10月1日出生の場合】
保険料免除は「改正後」の基準が適用
→ 最初2ヶ月のみ両親ともに免除
→ 3ヶ月目以降に保険料発生
※出生日時により判定されるため、
出産予定日が9月末の場合は注意が必要です。
Q4:育休を延長する場合、保険料免除は継続されますか?
A:延長期間は通常の育休と同じルールが適用されます。
【例】第1子を育成中の場合
original育休:12ヶ月
延長育休:最大12ヶ月(最大24ヶ月まで)
→ 片親のみの育休なら延長期間も全期間保険料免除
→ 同時取得なら延長期間も最初2ヶ月のみ免除ルール
Q5:公務員の場合、保険料免除制度は適用されますか?
A:いいえ。共済組合による別規定が適用されます。
- 国家公務員: 共済年金による保険料免除制度あり
- 地方公務員: 各自治体の共済組合規定に準拠
- 制度内容は民間企業と異なるため、勤務先の共済組合に要確認
Q6:離婚・配偶者との別居中の場合はどう判定されますか?
A:法律上の配偶者か否かで判定されます。
【同時取得の判定基準】
✅ 法律婚の配偶者が同時に育休を取得 → 制限あり
❌ 事実婚 → 制限の対象外(片親取得扱い)
❌ 離婚成立済み → 制限の対象外(単独取得扱い)
⚠️ 離婚調停中 → 「法律上の婚姻状態」で判定
Q7:企業が両親同時育休を制度として廃止することはできますか?
A:制度廃止はできませんが、保険料負担で実質的に変わります。
- 法的には「育児休業は労働者の権利」(育児・介護休業法第5条)
- 企業が一律に「両親同時は認めない」とはできない
- ただし、保険料負担が明確化されたため、人事評価上の取扱いが変わる可能性
企業側の対応|人事部門向けチェックリスト
育児休業制度の改正対応は、企業にとっても重要な人事課題です。以下を確認しましょう。
企業が準備すべき書類・システム
☑ 社会保険事務所から最新の「育児休業保険料免除申請書」を取得
☑ 同時取得の有無を確認する運用マニュアル作成
☑ HR システムに「同時取得フラグ」を追加実装
☑ 給与計算システムに「保険料発生時期」を反映
☑ 従業員への周知資料(改正内容の説明パンフレット)作成
☑ 保険料納付方法(給与天引き or 本人納付)の決定
☑ 人事部と給与計算部門の連携フロー整理
従業員への周知タイムライン
【改正日の6ヶ月前(2025年4月)】
→ 全従業員に改正概要を周知
【出産予定者が判明した時点】
→ 個別に制度説明・納付方法の相談
【育休申出1ヶ月前】
→ 配偶者の育休予定確認(同時取得判定)
【出産予定日2週間前】
→ 保険料免除申請書を日本年金機構に提出
まとめ:2025年10月改正への準備ポイント
育休保険料免除制度の改正は、多くの働き親に影響を与えます。以下を今から準備しましょう。
| 対象者 | 準備内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 育休申請予定者 | 配偶者の育休予定日を確認 | 出産予定日1ヶ月前 |
| 企業人事部 | 保険料計算システムの更新 | 2025年8月まで |
| 経理部門 | 保険料納付フロー・予算確保 | 2025年9月まで |
最後に: 育休は仕事と育児の両立を支援する大切な制度です。保険料が発生する場合でも、家計計画や交代育休の活用など、複数の選択肢があります。不明な点は、勤務先の人事部または社会保険労務士に相談することをお勧めします。
参考法令:
– 育児・介護休業法(令和4年4月改正版)
– 厚生労働省「育児・介護休業法改正に関するQ&A」(2024年版)
– 日本年金機構「育児休業保険料免除制度」
よくある質問(FAQ)
Q. 2025年10月から育休中の保険料はいつから払う必要がありますか?
A. 両親同時取得の場合、出生日から2ヶ月間は免除ですが、3ヶ月目以降は同時取得していない親の保険料が発生します。片親のみ取得なら全期間免除です。
Q. 夫婦で交代して育休を取る場合、保険料はどうなりますか?
A. 同時取得でなく交代取得であれば、各自の育休期間は全期間保険料免除となります。改正の影響を受けません。
Q. 出産した母親の保険料は改正の影響を受けますか?
A. いいえ。出産者(母親)の保険料は産後8週間と育児休業期間の全期間が免除され、改正による影響はありません。
Q. 両親同時育休で3ヶ月目以降の保険料はいくら位かかりますか?
A. 月額約5,000~8,000円が目安です。実際の金額は給与や加入している保険によって異なります。
Q. 保険料免除を受けるための申請で何か変わりましたか?
A. はい。申請時に出産予定日や育休期間の事前確定が必須になり、保険料免除申請書に同時取得の有無を記載する必要があります。

