2025年改正で被保険者負担・事業主負担が変わる|育休中の保険料免除完全解説

育休法改正

はじめに|なぜ今、負担構造が変わるのか

育児休業(育休)取得中の社会保険料をめぐるルールが、2025年を起点に大きな転換期を迎えています。これまで「育休中も社会保険料はかかる」という前提のもとで運用されてきた健康保険・厚生年金・雇用保険の徴収ルールが、段階的に見直されつつあります。

本記事では、被保険者(従業員)側の負担事業主(会社)側の負担がどのように変化するのかを、法的根拠をふまえながら、実務で使える計算例つきで徹底解説します。

対象読者: 育休取得を検討中の従業員、給与計算担当者、人事・総務担当者


2025年改正の全体像|被保険者負担と事業主負担の大転換

改正の背景と施行スケジュール

少子化対策の一環として、政府は育休取得をより経済的に「取りやすい」制度へ改革する方針を打ち出しました。2023年の育児・介護休業法改正(令和5年3月厚生労働省通達)を受け、2025年4月施行分から保険料の徴収ルールが順次変更されます。

改正の主な方向性は次の3点です。

  1. 被保険者(従業員)側の経済的負担を軽減する
  2. 事業主側の雇用保険二事業コスト配分を見直す
  3. 育休取得期間中の給付金と保険料免除の整合性を高める

改正の3大ポイント【2025年4月施行】

ポイント 内容 対象
① 健康保険料の免除見直し 育休中の被保険者負担について、免除対象期間・条件の整備が進む 被保険者・事業主
② 厚生年金保険料の免除見直し 免除期間の要件が明確化され、短期育休への適用が整理される 被保険者・事業主
③ 雇用保険二事業の財源見直し 職業訓練・雇用福祉を支える事業主負担分の算定方法が変更 事業主

法的根拠:
– 育児・介護休業法(2023年改正版)
– 健康保険法第159条(育休中の保険料免除)
– 厚生年金保険法第81条の2(育休中の保険料免除)
– 雇用保険法第62条の5〜第62条の8(育児休業給付)

現行制度との対比表【2024年 vs 2025年】

保険種類 被保険者負担(2024年) 被保険者負担(2025年以降) 事業主負担(2024年) 事業主負担(2025年以降)
健康保険料 育休中も課税(約5%) 🔶 免除要件の整備・拡充 育休中も課税(約5%) 🔶 同様に免除対象拡充
厚生年金保険料 育休中も課税(約9.15%) 🔶 短期育休の免除明確化 育休中も課税(約9.15%) 🔶 短期育休の免除明確化
介護保険料 40~65歳に課税(約0.9%) 変更なし(現時点) 40~65歳に課税(約0.9%) 変更なし(現時点)
雇用保険料 育休中は免除(0.5~0.6%) 据え置き 0.7~1.5%(業種別) 🔴 二事業分の算定見直し

🔶 変更あり・拡充予定 🔴 算定方法の変更あり


現行制度の被保険者負担【2024年の基準を正確に理解する】

育休中の保険料免除を正しく理解するには、まず「現在どれだけ負担しているか」を把握することが重要です。

健康保険料の被保険者負担率と計算式

健康保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出し、事業主と被保険者で約50%ずつ折半します。

月間保険料(被保険者負担分)
= 標準報酬月額 × 保険料率(全体) ÷ 2

【例】標準報酬月額30万円、協会けんぽ東京都(保険料率10.00%)の場合
= 300,000円 × 10.00% ÷ 2
= 15,000円(被保険者の月額負担)

注意: 保険料率は健康保険組合によって異なります(概ね9~12%の範囲)。協会けんぽの料率は毎年3月に改定されます。

厚生年金保険料の被保険者負担率と計算式

厚生年金保険料率は全国一律で18.3%(2017年9月以降固定)。被保険者と事業主で折半します。

月間保険料(被保険者負担分)
= 標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2

【例】標準報酬月額30万円の場合
= 300,000円 × 18.3% ÷ 2
= 27,450円(被保険者の月額負担)

雇用保険料の被保険者負担(育休中は免除)

雇用保険料は折半ではなく、被保険者と事業主で異なる率が設定されています。

区分 被保険者負担率(2024年度) 事業主負担率(2024年度)
一般の事業 0.6% 0.95%
農林水産・清酒製造業 0.7% 1.05%
建設業 0.7% 1.15%

重要: 育休中は雇用保険料の被保険者負担分は免除されますが、事業主負担分は引き続き徴収されます。この非対称な取り扱いが、2025年改正で見直しの対象となっています。


育休中の社会保険料免除制度【現行ルールの詳細】

健康保険・厚生年金の育休中免除条件(現行)

健康保険法第159条・厚生年金保険法第81条の2に基づき、育休取得中は一定条件下で保険料が免除されます。

免除の要件(現行2024年):

  1. 健康保険・厚生年金の被保険者であること
  2. 育児・介護休業法に基づく育児休業を取得していること
  3. 育休開始日の属する月から、育休終了日の翌日の属する月の前月まで免除

具体的な免除期間の例:

育休開始日:4月15日 → 4月分から免除開始
育休終了日:翌年3月31日 → 4月分(翌日5月1日の前月)まで免除

つまり:4月~3月の12ヶ月分が免除対象

被保険者・事業主ともに免除される点が重要です。
免除を受けても、将来の年金受給額の計算には保険料を納めたものとして算入されます(保険料納付済扱い)。

短期育休(月内完結)の取り扱いと2025年改正の関係

現行制度では、同一月内に開始・終了する短期育休については、月末時点で育休中でない場合に保険料免除が適用されないケースがありました。

2025年改正では、この点を整理し、14日以上の育休取得に対して月内完結の場合でも免除を認める方向で制度が整備されます。

育休期間 現行(2024年)の免除 2025年改正後の免除
月をまたぐ育休 免除あり 免除あり(変更なし)
月内完結・14日以上 免除なし(月末在職のため) 🔶 免除対象に追加
月内完結・14日未満 免除なし 免除なし

事業主負担への影響【2025年改正で何が変わるか】

雇用保険二事業の財源見直しと事業主負担

事業主が負担する雇用保険料には、失業給付に充てられる「失業等給付分」と、職業訓練・雇用創出などに充てられる「雇用保険二事業分」の2つが含まれます。

2024年度の内訳(一般事業の場合):

事業主負担率(計):0.95%
  ├── 失業等給付・育児休業給付:0.35%
  └── 雇用保険二事業:0.60%

2025年改正では、育児休業給付の財源の一部を労使折半方式へ移行する議論が進んでおり、事業主負担の配分に変更が生じる可能性があります。

事業主が行うべき実務対応チェックリスト

2025年改正への対応として、人事・給与担当者は以下の点を確認してください。

  • [ ] 給与計算システムの保険料率を2025年4月以降の改定値に更新する
  • [ ] 育休取得者の免除申請書類(「育児休業等取得者申出書」)の提出フローを見直す
  • [ ] 月内完結育休(14日以上)の社員について、免除申請の対象か確認する
  • [ ] 雇用保険料の事業主負担分について、顧問社労士・税理士と最新料率を確認する
  • [ ] 労働保険料の年度更新(毎年6月)に向けて、育休取得者の賃金総額計算を整理する

事業主が申請する「育児休業等取得者申出書」の提出方法

育休中の社会保険料免除を受けるには、事業主が年金事務所または健康保険組合に「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。

必要書類・手続きの流れ:

  1. 書類: 「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」(日本年金機構書式)
  2. 提出先: 管轄の年金事務所または健康保険組合
  3. 提出期限: 育休取得中、または育休終了後速やかに(遅延しても遡及申請可)
  4. 提出方法: 窓口持参・郵送・電子申請(e-Gov)
【申出書に記載する主な項目】
・被保険者の氏名・生年月日・標準報酬月額
・育児休業の開始日・終了予定日
・育休対象となる子の生年月日
・2025年改正後は「14日以上の月内育休」の該当有無も追記予定

給付金と保険料の関係【手取りへの実質的インパクト】

育児休業給付金の計算と保険料免除の相乗効果

育児休業給付金は、育休開始前の賃金日額の67%(最初の180日)・50%(181日目以降)が支給されます。さらに社会保険料が免除されることで、手取りベースの実質給付率は大幅に上昇します。

【モデルケース】月給30万円の場合

■ 通常就労時の手取り(概算)
  月給30万円 - 健保15,000円 - 厚年27,450円 - 雇保1,800円 - 所得税・住民税等
  → 手取り概算:約24万円

■ 育休中の手取り(概算・改正後)
  育児休業給付金:300,000円 × 67% = 201,000円
  社会保険料:免除(0円)
  所得税・住民税:非課税
  → 手取り概算:約20万円(通常時の約83%相当)

2025年の改正により月内短期育休での免除が拡充されると、従来は恩恵を受けられなかったパパ育休(産後パパ育休)取得者にとっても経済的メリットが増加します。

育児休業給付金の申請スケジュール

手続き タイミング 提出先
育休開始届出 育休開始後速やかに 事業主経由でハローワーク
初回給付金申請 育休開始から約2ヶ月後 事業主経由でハローワーク
2回目以降の申請 2ヶ月ごと 事業主経由でハローワーク
社会保険料免除申出 育休取得中(随時) 年金事務所・健保組合

よくある質問

Q1. 2025年4月から保険料は必ず免除されますか?

A. 健康保険・厚生年金については、従来通り育休中は原則免除です。2025年改正では月内完結の短期育休(14日以上)に対して免除が拡充される点が新しいポイントです。ただし、14日未満の育休は引き続き免除対象外となります。

Q2. 事業主負担分も免除されますか?

A. 健康保険・厚生年金については、被保険者・事業主ともに免除されます。雇用保険の事業主負担については、2025年改正で算定方法が見直される予定ですが、完全免除とはなりません。最新情報は厚生労働省の公式告示を確認してください。

Q3. 育休中に賞与を受け取った場合も保険料は免除されますか?

A. 育休期間が月末をまたぐ月(1ヶ月以上)に支払われた賞与については、保険料免除の対象となります。ただし、月内短期育休中に支払われた賞与には、従来は免除が適用されませんでした。2025年改正後も、賞与への適用条件は別途確認が必要です。

Q4. パパ育休(産後パパ育休)でも社会保険料は免除されますか?

A. 産後パパ育休(出生時育児休業)も育児・介護休業法に基づく制度であるため、要件を満たせば免除対象です。2025年改正により14日以上の月内完結育休への免除拡大が適用されると、2週間程度の産後パパ育休でも免除を受けやすくなります。

Q5. 「育児休業等取得者申出書」はいつまでに提出すれば遡及できますか?

A. 明確な提出期限は設定されていませんが、育休終了後の早い段階で提出することが推奨されます。遅延提出でも遡及適用は可能ですが、還付手続きが発生するため、育休開始月または翌月中の提出が実務上の目安です。


まとめ:2025年改正で押さえるべき3つのポイント

  1. 月内完結の短期育休(14日以上)に社会保険料免除が拡充
    → 産後パパ育休取得者にとって経済的メリットが増加

  2. 雇用保険の事業主負担分の算定方法が変更
    → 人事担当者は2025年4月以降の料率改定を給与システムに反映する必要あり

  3. 免除申請(育児休業等取得者申出書)は事業主が行う
    → 従業員が自動的に免除されるわけではないため、事業主側の申請漏れに注意


参考法令・通達
– 育児・介護休業法(令和5年改正)
– 健康保険法第159条(育児休業等期間中の保険料の徴収の特例)
– 厚生年金保険法第81条の2(育児休業等期間中の保険料の徴収の特例)
– 雇用保険法第62条の5~第62条の8
– 厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」(令和5年3月)


本記事は2024年時点の情報をもとに作成しています。2025年4月以降の施行内容については、厚生労働省の最新通達および年金事務所・ハローワークの公式情報を必ずご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 2025年から育休中の保険料はどう変わりますか?
A. 健康保険と厚生年金の免除要件が整備・拡充され、被保険者負担が軽減されます。事業主負担も同様に免除対象が広がる予定です。

Q. 育休中に健康保険料を払う必要はありますか?
A. 2025年以降、免除要件の拡充により支払い不要となる期間が増える見込みです。詳細な対象条件は厚生労働省の最新通達を確認してください。

Q. 厚生年金保険料の免除はいつから適用されますか?
A. 2025年4月施行予定です。短期育休の免除要件が明確化され、より多くの被保険者が対象になる見通しです。

Q. 標準報酬月額30万円の場合、毎月の保険料負担はいくら減りますか?
A. 健康保険料約15,000円と厚生年金約27,450円が免除対象になれば、月約42,450円の負担軽減が見込まれます。

Q. 育休中の雇用保険料の扱いは変わりますか?
A. 被保険者負担は現行通り据え置きです。変更は事業主側の二事業分の算定方法の見直しに限定される予定です。

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