賃金日額の欠勤日除外とは?育休給付金の計算方法を解説

賃金日額の欠勤日除外とは?育休給付金の計算方法を解説 育休給付金

育休給付金をいざ受け取る段になって、「予想より少ない金額になった」と気づく方が少なくありません。その原因の多くが、賃金日額の計算における「欠勤日の除外」というルールへの理解不足です。

このルールを正しく理解しておけば、給付金額の見通しを正確に立てられるだけでなく、手続きの際のミスも防げます。本記事では、社会保険労務士監修のもと、欠勤日除外の仕組み・法的根拠・具体的な計算例を順を追って解説します。あなたの育休給付金がいくらになるのかを把握するために、ぜひ最後までお読みください。


育休給付金の支給額はどう決まる?賃金日額の基本を理解する

賃金日額とは何か?基本の定義を確認する

育休給付金の支給額は、「賃金日額 × 給付率 × 支給日数」 という計算式で決まります。この中でも特に重要なのが「賃金日額」です。

賃金日額の基本計算式は次のとおりです。

賃金日額 = 育休開始前3ヶ月間の賃金総額 ÷ 賃金支払基礎日数
要素 内容
賃金総額 育休開始前の完全な3ヶ月間(月をまたぐ端数は原則除外)に支払われた賃金の合計額
賃金支払基礎日数 実際に賃金が支払われた日数(欠勤日を除外したもの)

ここでの「3ヶ月」は暦月を単位に数える「完全月」が原則です。たとえば4月15日に育休を開始した場合、1月・2月・3月の3ヶ月分の賃金をもとに計算します。

ポイント: 賃金総額が同じでも、賃金支払基礎日数が少なければ賃金日額は高くなり、多ければ低くなります。欠勤が多い月は基礎日数も減り、結果として給付金額が変わる場合があります。


給付率67%・50%との関係——支給額の全体像

育休給付金の給付率は一律ではなく、育休開始からの期間によって異なります。

期間 給付率 法的根拠
育休開始から最初の180日(6ヶ月) 67% 雇用保険法第61条の7
181日以降 50% 同上

【計算例】月給30万円の方が育休を取得した場合

賃金支払基礎日数が3ヶ月合計で78日とすると:

賃金総額:300,000円 × 3ヶ月 = 900,000円
賃金日額:900,000円 ÷ 78日 ≒ 11,538円
1支給単位期間(30日)の支給額(67%の場合):
  11,538円 × 67% × 30日 ≒ 232,000円

このように、賃金日額は最終的な手取り額に直接影響します。欠勤が多かった月があれば、賃金支払基礎日数が変わり、支給額も変動します。


賃金支払基礎日数とは?欠勤日除外ルールの核心

賃金支払基礎日数の正確な定義

賃金支払基礎日数とは、給与計算上において実際に賃金が支払われた日数のことです(雇用保険法施行規則第67条)。

月給制と日給制では考え方が異なります。

雇用形態 考え方 具体例
月給制 暦日数から無給の欠勤日を差し引いた日数 30日の月に欠勤3日 → 27日
日給制・時給制 実際に出勤した日(賃金が発生した日) 出勤20日 → 20日

月給制の場合、欠勤しても一定の賃金が支払われるケースがありますが、無給扱いとなった欠勤日は基礎日数に含まれません。


欠勤日が除外される理由——制度設計の趣旨

欠勤日を除外する理由は、育休給付金が「育休前の実際の生活水準を補償する制度」だからです。

欠勤が多く実際の賃金が少なかった月のデータをそのまま使うと、日数で割り算をしたときに「本来の1日当たり賃金」よりも高い数値が出てしまいます。これを防ぎ、実態に即した賃金日額を算出するために欠勤日は除外されるのです。

例えば、欠勤がなかった月の1日当たり賃金が10,000円なのに対し、欠勤が半分あった月の給与を日数で割ると、実際には出勤しなかった日も含めた計算になるため、不当に高い日額が算出されてしまう——このような矛盾を防ぐための仕組みなのです。


除外される日・含まれる日——完全チェックリスト

❌ 賃金支払基礎日数に含まれない日(除外される日)

区分 具体例 補足
無給の欠勤日 無断欠勤・私傷病による欠勤(無給) 欠勤控除で賃金が0円になった日
無給の休業日 会社都合の無給休業、一時帰休 休業手当が支払われる場合は含む場合もあり
労災による休業日 業務災害・通勤災害による休業 労災保険から休業補償給付が支給される期間
不可抗力による休業 自然災害・設備故障による操業停止 賃金支払いが伴わない場合に限る
産前産後休業中の無給期間 健康保険の出産手当金のみ支給の期間 賃金支払いが伴わない日は除外

✅ 賃金支払基礎日数に含まれる日

区分 具体例 補足
年次有給休暇取得日 通常の有給休暇を使用した日 賃金が支払われるため含む
会社の所定休日(月給制の場合) 土日・祝日・会社指定休日 月給制では暦日数ベースのため含む
特別有給休暇日 慶弔休暇・リフレッシュ休暇など 賃金支払いが伴う場合は含む
休業手当支払日 会社都合休業で平均賃金の60%以上を支払 賃金支払いがある日は含む
産前産後休業中の有給期間 会社独自に産休中給与を支給している場合 支給額に応じて計算

注意: 月給制でも「欠勤控除」がある会社の場合、無給となった欠勤日は除外されます。給与明細の「欠勤控除」欄を必ず確認しましょう。


欠勤日除外の具体的な計算例

ケース① 欠勤なし(標準的なケース)

条件: 月給25万円・欠勤なし・3月・4月・5月の3ヶ月が対象

賃金額 暦日数 欠勤日数 基礎日数
3月 250,000円 31日 0日 31日
4月 250,000円 30日 0日 30日
5月 250,000円 31日 0日 31日
合計 750,000円 92日
賃金日額 = 750,000円 ÷ 92日 ≒ 8,152円
月額支給額(67%、30日換算)= 8,152円 × 67% × 30日 ≒ 163,856円

ケース② 欠勤あり(除外ルール適用)

条件: 月給25万円・5月に欠勤5日(無給)

欠勤控除がある場合、5月の賃金は減額されます。

5月の1日当たり賃金(月給制):250,000円 ÷ 31日 ≒ 8,064円
欠勤控除額:8,064円 × 5日 ≒ 40,320円
5月支払賃金:250,000円 − 40,320円 = 209,680円
5月の賃金支払基礎日数:31日 − 5日 = 26日
賃金額 基礎日数
3月 250,000円 31日
4月 250,000円 30日
5月 209,680円 26日
合計 709,680円 87日
賃金日額 = 709,680円 ÷ 87日 ≒ 8,157円
月額支給額(67%、30日換算)= 8,157円 × 67% × 30日 ≒ 163,956円

解説: 欠勤により賃金総額は減りましたが、基礎日数も比例して減るため、賃金日額はほぼ変わらないという結果になります。これが欠勤日除外ルールが合理的に機能している証拠です。欠勤日を除外しなければ、賃金日額は不当に低くなってしまいます。


ケース③ 欠勤日が多く基礎日数が11日未満となるケース

賃金支払基礎日数が11日未満の月は、原則として算定対象の「完全月」に含まれません。その場合は、対象月を遡って11日以上ある月を探します。

これは特に、育休直前に長期欠勤・休職があった方には重要なルールです。最大で育休開始前2年間まで遡ることができます。


申請手続きと必要書類

申請先と申請期限

項目 内容
申請先 事業主を通じてハローワーク(公共職業安定所)へ提出
初回申請期限 育休開始から2ヶ月後の月末まで(原則)
2回目以降 支給単位期間(2ヶ月ごと)に申請

必要書類一覧

  1. 育児休業給付金支給申請書(ハローワーク所定様式)
  2. 賃金台帳のコピー(算定対象3ヶ月分)
  3. 出勤簿・タイムカードのコピー(同3ヶ月分)← 欠勤日の確認に使用
  4. 育児休業申出書のコピー(社内書類)
  5. 母子健康手帳等、育児の事実を確認できる書類(初回のみ)
  6. 雇用保険被保険者証(初回のみ)

人事担当者へのアドバイス: 出勤簿の欠勤日と賃金台帳の欠勤控除が一致しているかを事前確認することで、ハローワークへの再提出や差し戻しを防げます。


賃金日額の上限・下限

計算によって算出された賃金日額には、上限額と下限額が設けられています(毎年8月1日に改定)。

区分 令和6年8月1日改定後(目安)
賃金日額の上限 15,190円(60歳未満)
賃金日額の下限 2,869円

※ 上限・下限額は毎年改定されます。最新の金額はハローワークインターネットサービスまたは管轄のハローワークでご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 有給休暇を使って欠勤日を補った場合、計算はどうなりますか?

A. 有給休暇を取得した日は「賃金が支払われた日」として賃金支払基礎日数に含まれます。そのため、欠勤の代わりに有給休暇を使用した場合は、その日は除外されません。賃金日額の計算において有利に働く場合があります。


Q2. 産前産後休業中も給与が支払われていた場合、その期間は対象になりますか?

A. 産前産後休業期間(産前6週・産後8週)は、育休給付金の算定対象期間には含まれません。ただし、産休前の通常勤務期間に欠勤がある場合は、そこに欠勤除外ルールが適用されます。


Q3. 欠勤が多すぎて3ヶ月分の算定ができない場合はどうなりますか?

A. 賃金支払基礎日数が11日以上ある月が直前3ヶ月に満たない場合、最大で育休開始前2年間まで遡って算定基礎期間を探します。それでも要件を満たす月が足りない場合は、支給要件自体を満たさないこともあります。詳細は管轄のハローワークに事前確認することをおすすめします。


Q4. 月給制で土日は出勤していないのに基礎日数に土日が含まれるのはなぜですか?

A. 月給制の場合、賃金は「1ヶ月単位」で支払われるため、所定休日(土日・祝日)も含めた暦日数が基礎日数の計算ベースとなります。ただし、無給扱いとなった欠勤日のみ差し引く仕組みです。日給制・時給制の場合は実際の出勤日数が基礎日数になるため、考え方が異なります。


Q5. 賃金日額の計算は自分で行いますか?それとも会社・ハローワークが行いますか?

A. 実務上は、会社(事業主)がハローワークへ申請書を提出する際に計算します。 ただし、給付金額の見通しを立てるためにも、ご自身でも計算方法を理解しておくことをお勧めします。不明点はハローワークの窓口または社会保険労務士に相談しましょう。



まとめ

育休給付金の賃金日額計算における欠勤日除外のポイントを整理します。

チェック項目 内容
計算式 賃金総額 ÷ 賃金支払基礎日数
除外される日 無給欠勤日・無給休業日・労災休業日など
含まれる日 有給休暇・所定休日(月給制)・休業手当支払日など
算定期間 育休開始前の完全な3ヶ月(基礎日数11日未満の月は除外)
申請方法 事業主経由でハローワークへ申請
上限・下限 毎年8月改定・最新額はハローワークで確認

欠勤日の除外ルールは、一見複雑に見えますが「実際の1日当たり賃金を正確に反映させる」というシンプルな原則に基づいています。育休取得予定の方は、育休前3ヶ月の給与明細と出勤簿を手元に準備し、上記の計算式に当てはめてみてください。

給付金額に疑問がある場合は、遠慮なくお近くのハローワークや社会保険労務士に相談することをおすすめします。正確な情報をもとに、育休期間を安心して過ごすための準備を整えましょう。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。制度の詳細・最新情報は、厚生労働省・ハローワーク公式サイトまたは社会保険労務士にご確認ください。

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