育休と失業給付は「併用不可」が原則|雇用保険の条件を徹底解説

育休と失業給付は「併用不可」が原則|雇用保険の条件を徹底解説 育児休業制度

育児休業(育休)を取得している方の中には、「育休中に失業給付は受け取れるのか?」という疑問を持つ人が多いでしょう。結論から申し上げると、育休中の失業給付受給は原則として不可能です。ただし、特定の状況では例外的な対応が可能なケースもあります。

この記事では、育休と失業給付の関係を法的根拠に基づいて解説し、実務的な申請手続きや例外ケースについて詳しく説明します。企業の人事担当者も育休取得予定者も必ず押さえておくべき内容です。


育休中に失業給付は原則受給できない理由

給付制度 受給条件 育休中の受給可否 法的根拠
失業給付 失業状態(働く意思あり・求職活動中) ✕ 原則不可 雇用保険法
育休給付金 育児休業中(雇用関係継続) ✓ 受給可能 育児・介護休業法
教育訓練給付金 指定訓練講座受講中 ✓ 例外的に可能 雇用保険法
退職後失業給付 育休終了後に離職・求職活動 ✓ 時期による 雇用保険法施行規則

失業状態の法的定義と育休者の矛盾

失業給付(雇用保険の基本手当)を受給するには、失業状態の3つの要件をすべて満たす必要があります。

【失業状態の要件(雇用保険法第4条第1項)】

① 離職している(使用者との雇用契約が終了している)
② 働く能力がある(心身ともに健全である)
③ 働く意思がある(求職活動を行っている)

この3要件をすべて満たさなければ、失業状態とは認められません。

育休者はこの要件を満たしません。理由は以下の通りです:

要件 失業者の状態 育休者の状態 該当可否
①離職 使用者との雇用契約が終了 雇用契約が存続している ✗ 非該当
②能力 働く準備ができている 育児に専念している △ 微妙
③意思 求職活動を積極的に実施 復職予定があり求職活動していない ✗ 非該当

育休者は使用者との雇用関係が有効に存続しており、復職を予定しているため、失業状態とは認定されないのです。

雇用保険法と育児・介護休業法の法的根拠

この原則は、複数の法令で明確に規定されています。

雇用保険法施行規則第62条の4では、育休期間中は以下のように取り扱うことが定められています:

被保険者が育児休業を取得している期間中は、失業認定を行わないものとする。

また、厚生労働省通知(基発0106第1号、2022年)では、さらに詳しく説明されています。この通知では、育休取得者について以下の点が明記されています:

  • 育休期間中の雇用保険料は納付免除される
  • その代わり、失業給付の受給要件に「求職活動」が含まれないため、給付対象外とする
  • 代わりに「育児休業給付金」という別の制度で保障する

つまり、育休中は失業給付の代わりに、より手厚い「育児休業給付金」を受け取る仕組みになっているのです。

育休給付金と失業給付は完全に異なる制度

多くの人が混同してしまいますが、育児休業給付金と失業給付は別物です。

項目 育児休業給付金 失業給付(基本手当)
制度区分 雇用保険二事業 雇用保険事業
給付要件 ・雇用契約が存続
・育児・介護休業法に基づく育休
・取得前の雇用保険加入期間1年以上
・離職している
・求職活動中
・取得前の雇用保険加入期間1年以上
給付額 育休開始時点の賃金の50~67% 賃金日額の50~80%
支給期間 子が2歳になるまで(最大2年) 90~330日間(年齢・勤続年数で変動)
申請先 ハローワーク ハローワーク
併用可否 × 失業給付と併用不可 × 育休給付金と併用不可

育児休業給付金は、育休中の経済的サポートとして設計された制度であり、むしろ失業給付よりも手厚い保障が用意されています。そのため、わざわざ失業給付を受ける必要がないという政策判断があるわけです。


育休中に失業給付が受給できる例外ケース3パターン

原則は「不可」ですが、実務では複数の例外シナリオが存在します。これらを正確に理解することが重要です。

ケース1:育休終了後に復職せず退職する場合

育休終了のタイミングで退職するというケースです。この場合、以下の条件をすべて満たせば失業給付の対象となります。

具体的なシナリオ

【タイムライン例】
2024年4月1日 :育休開始(子が生まれる)
2025年4月1日 :育休終了予定日
2025年4月15日:復職せずに退職届を提出
2025年4月30日:退職日(失業状態へ)
2025年5月1日 :ハローワークで失業認定を受ける

この場合、2025年4月30日の退職日以降は、以下の条件さえ満たせば失業給付を受給できます:

  • 退職前の雇用保険加入期間が通算1年以上
  • 失業認定日にハローワークへの出頭と失業認定を受ける
  • 求職活動実績を月4回以上作る(在職中の育休期間中にはこれが不要)

給付までの手続きフロー

【育休終了後の失業給付手続きフロー】

①退職日から10日以内に離職票を受け取る
  ↓
②ハローワークに離職票を持参し、求職申込と失業認定を受ける
  ↓
③初回認定日を指定される(通常は退職日から2週間後程度)
  ↓
④初回認定日以降、月1回の失業認定日に出頭する
  ↓
⑤待機期間(7日)経過後、給付開始
  (自己都合退職の場合は2ヶ月の給付制限期間あり)
  ↓
⑥毎月の認定日に出頭し、求職実績を報告する
  ↓
⑦給付期間終了(90日~330日で変動)

育休終了後退職時の給付金額計算例

【給付金額の計算例】
・離職時の基本日額:8,000円
・賃金日額:6,400円(基本日額の80%上限)
・給付率:50%(標準)
・所定給付日数:120日(40歳以上で勤続10年の場合)

日々の基本手当 = 6,400円 × 50% = 3,200円/日
総給付額 = 3,200円 × 120日 = 384,000円

ケース2:育休中に離職事実が発生した場合

育休中であっても、以下の事由で雇用契約が喪失される場合があります。この場合は、その時点で失業給付対象となります。

該当する離職理由

会社都合退職(特定受給資格者)

  • 会社が倒産した
  • 会社から退職勧奨を受けた
  • 雇用契約の更新が拒否された(契約社員の場合)
  • 育休中に給与が支払われなくなった

自己都合退職

  • 育休中に本人が退職願を提出した
  • やむを得ない理由(健康問題など)での退職

実務上の注意点

重要:この場合も以下の条件が必須です

  1. 育休期間中の雇用関係喪失が明確であること
  2. 離職票に育休中の離職であることが記載される
  3. ハローワーク側で状況確認が必要

  4. 育休給付金との二重受給は不可

  5. 育休期間中に離職した場合、育休給付金は打ち切られる
  6. 失業給付に切り替わる

  7. 給付制限期間が異なる

  8. 会社都合:即座に給付開始(待機7日のみ)
  9. 自己都合:2ヶ月間の給付制限期間あり

育休中離職時の失業給付フロー

【育休中に離職が発生した場合】

離職(退職勧奨・解雇など)
  ↓
②使用者から離職票を受け取る
(育休中の離職である旨が記載される)
  ↓
③ハローワークへ離職票を提出
(育休給付金の喪失届も同時に提出)
  ↓
④失業認定を受ける
  ↓
⑤待機7日経過後、失業給付開始
(会社都合の場合は給付制限なし)

ケース3:育休中の教育訓練給付金は活用可能

厳密には「失業給付」ではありませんが、育休中でも受け取れる雇用保険給付があります。それが教育訓練給付金です。

教育訓練給付金とは

育休中に職業訓練を受講する場合、以下の2つの給付が受けられます:

給付制度 給付額 受給要件 育休中の活用
一般教育訓練給付金 訓練費用の20% (上限10万円) ・被保険者期間3年以上
・訓練開始日時点で失業状態でない
○ 育休中でも受給可能
専門実践教育訓練給付金 訓練費用の50% (上限80万円) ・被保険者期間3年以上
・訓練開始日時点で失業状態でない
○ 育休中でも受給可能
教育訓練支援給付金 基本手当と同額程度 (月30万円程度) ・上記2つの訓練を受講中
・失業状態にある
△ 育休中は対象外

活用事例

【育休中の教育訓練給付活用例】

育児休業中(生後6ヶ月~12ヶ月)に、
オンライン資格講座「WEBマーケティング講座」
(受講料:15万円)を受講

給付額 = 15万円 × 20% = 3万円
>本人負担額:12万円

育休終了後の復職時に、新しいスキルを活かして
復職できる効果も期待できる

育休中に失業給付が受給できない場合の経済的サポート制度

失業給付は受けられませんが、育休中の経済的サポートは充実しています。

育児休業給付金の仕組み

育休中は、育児休業給付金で経済的に保障されています。

【育児休業給付金の給付額】

支給開始から6ヶ月間:
  育休開始時点の賃金月額 × 67%

その後、子が2歳になるまで:
  育休開始時点の賃金月額 × 50%

【計算例】
育休開始時の月給30万円の場合
・6ヶ月間:30万円 × 67% = 20.1万円/月
・7ヶ月目以降:30万円 × 50% = 15万円/月

合計支給額(子が2歳になるまで):
20.1万円 × 6ヶ月 + 15万円 × 18ヶ月 = 390.6万円

給付を受けるための申請手続き

必要書類

【育児休業給付金の申請に必要な書類】

① 雇用保険被保険者証(原本)
② 育児休業給付金支給申請書(様式:HRSF00009)
③ 育児休業開始予定年月日を明記した書類
   (母子手帳の出生予定日ページのコピー等)
④ 本人確認書類(運転免許証など)
⑤ 預金通帳(振込先確認用)
⑥ 育児休業中の給与支払確認書
   (会社から支給がある場合)

提出先:管轄のハローワーク
提出時期:育休開始から4ヶ月以内

申請フロー

【育児休業給付金の申請フロー】

育休開始日の決定
  ↓
ハローワークへ仮申請
(出産予定日の6週間前から可能)
  ↓
出産確認書類の提出
(母子手帳コピー)
  ↓
本申請
(育休開始から4ヶ月以内)
  ↓
支給決定通知書を受け取る
  ↓
初回給付金が指定口座に振込
(申請から1~2週間)
  ↓
以降、2ヶ月ごとに支給継続
(育児休業の継続が条件)

よくある質問(FAQ)

Q1:育休給付金をもらいながら、失業給付も受けることはできませんか?

A:できません。原則として併用は不可です。

育児休業給付金と失業給付は互いに排他的な関係にあります。育休期間中は、失業給付の受給要件である「失業状態」に該当しないため、申請しても認められません。

ただし、育休終了後に退職する場合は、失業給付に切り替わります。

Q2:育休中に会社が倒産した場合、失業給付は受けられますか?

A:はい、受けられます。

会社の倒産は「会社都合退職」に分類され、その時点で雇用関係が喪失されます。この場合、育休期間中であっても失業給付の対象となり、給付制限期間なしで即座に給付が開始されます。

Q3:自営業者やフリーランスが育休を取得する場合は失業給付の対象になりますか?

A:いいえ、対象になりません。

失業給付の受給には、被保険者期間が必要です。自営業者やフリーランスは雇用保険に加入していないため、育児休業給付金と失業給付の両方が対象外です。

ただし、自営業者向けの「小規模企業共済」や「国民年金基金」などの別制度の活用を検討してください。

Q4:育休中に給与が支払われない場合、失業給付の対象になりますか?

A:いいえ、給与支払いの有無は問いません。

給与が支払われていなくても、雇用関係が存続していれば失業状態ではありません。ただし、給与が完全に支払われなくなった場合は、会社都合による離職として失業給付の対象になる可能性があります。

Q5:契約社員の育休は失業給付と関係がありますか?

A:育休中は同じく失業給付対象外ですが、育休終了時の契約更新拒否に注意が必要です。

契約社員の場合:
– 育休期間中は失業給付対象外
– 育休終了時に契約更新が拒否された場合は「会社都合退職」となり、失業給付対象に

契約更新拒否は違法の可能性もあるため、法的相談が必要な場合があります。

Q6:育休中に自己啓発で講座を受けた場合の給付はありますか?

A:はい、教育訓練給付金が受けられる場合があります。

厚生労働省が指定した講座であれば、教育訓練給付金(一般訓練)で訓練費用の20%(上限10万円)が給付されます。育休中の自己啓発に活用することで、復職後のキャリアアップが期待できます。

Q7:育休から復職後、数ヶ月で退職した場合の失業給付はどうなりますか?

A:通常の失業給付の扱いになります。

復職後の退職であれば、育休の影響は受けません。通常の失業給付手続きで対応されます。

ただし、復職の申し出がありながら従事させてくれない場合は、会社都合退職として扱われる可能性もあります。

Q8:育休中に家業(家族経営)を手伝う場合、失業給付要件に影響しますか?

A:就業と見なされる可能性があり、注意が必要です。

育休中に現金を受け取ったり、恒常的に業務に従事したりすると、失業状態ではないと判断される可能性があります。

育休終了後に失業給付を申請する際は、ハローワークに事前に相談してください。


企業の人事担当者が押さえるべき実務ポイント

育休者への説明責任

従業員が育休を申請する際、必ず以下の点を説明しましょう:

【育休者への説明チェックリスト】

□ 育休中は失業給付の対象外であること
□ その代わり、育児休業給付金で経済的保障があること
□ 育休終了後に復職せず退職する場合の手続き
□ 育休期間中の雇用関係継続が大前提であること
□ 教育訓練給付金の活用可能性
□ 育休給付金と失業給付は併用不可であること

離職票の正確な記載

育休中に離職が発生した場合は、離職票の「退職理由」欄に「育児休業中の離職」である旨を明確に記載してください。

これにより、ハローワーク側で適切な給付判断ができます。

育休給付金の手続き管理

会社側で育児休業給付金の管理が必要な場合:

  • 従業員からの給付申請書受取
  • 育休開始・終了日の確認と報告書作成
  • ハローワークとの連絡・報告(2ヶ月ごと)
  • 育休の延長・短縮時の変更手続き

まとめ:育休と失業給付の関係を正確に理解する

最重要ポイント3つ

  1. 育休中は失業給付の対象外
  2. 育休中は失業状態に該当しない
  3. 代わりに育児休業給付金で保障される

  4. 育休終了後は失業給付対象となる可能性

  5. 育休終了時に退職する場合は失業給付申請可能
  6. 育休中に離職事実が発生した場合も対象

  7. 育児休業給付金と失業給付は別制度

  8. 併用は不可
  9. 育児休業給付金の方が手厚い(賃金の50~67%)

育休取得を検討している方は、これらの違いを正確に理解した上で、自分の状況に応じた最適な制度選択をしてください。企業側も従業員への正確な説明を心がけ、トラブル防止に努めましょう。

不明な点はハローワークや社会保険労務士に相談することをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q. 育休中に失業給付は受け取れますか?
A. いいえ。育休中は原則として失業給付は受け取れません。雇用契約が存続しており、失業状態の要件を満たさないためです。代わりに育児休業給付金が支給されます。

Q. 育児休業給付金と失業給付の違いは何ですか?
A. 育児休業給付金は育休中の経済支援で賃金の50~67%が支給されます。失業給付は離職後に求職活動中の人向けで、併用不可です。育休給付金の方がより手厚い保障です。

Q. 育休後に退職する場合、失業給付は受け取れますか?
A. はい。育休終了後に復職せず退職した場合は、失業状態となるため失業給付の対象になります。ただし雇用保険加入期間が1年以上必要です。

Q. 育休中に失業給付が受給できる例外ケースはありますか?
A. あります。育休終了後の退職や、育休中止による退職など特定の状況では受給可能です。詳しくはハローワークに相談してください。

Q. 育休給付金を受け取っている間に失業給付と併用できますか?
A. いいえ。育児休業給付金と失業給付の併用は法令で禁止されています。どちらか一方のみの受給となります。

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