育休中の転職で給付金は返納?停止条件と対処法【2025年最新】

育休中の転職で給付金は返納?停止条件と対処法【2025年最新】 育児休業制度

育休中に転職を考えている、あるいは転職が決まってしまった——そんな状況で多くの方が真っ先に気になるのが「育児休業給付金はどうなるの?」という疑問です。

結論を先にお伝えすると、転職のタイミングや雇用関係の成立時期によって「支給停止」「返納義務あり」「継続受給OK」と対応が三分岐します。状況を正確に把握せずに行動すると、不正受給と判定されて給付金を全額返還しなければならない事態にもなりかねません。

本記事では雇用保険法の法的根拠をベースに、ケース別の判定基準・返納額の計算方法・ハローワークへの手続き方法を2025年最新情報でわかりやすく解説します。


目次

  1. 育休中に転職したら給付金はどうなる?結論を先に解説
  2. ケース別チェック表|あなたの状況は「停止」「継続」どっち?
  3. 返納額の計算方法と具体例
  4. ハローワークへの届出手続きと必要書類
  5. 育休中の「アルバイト・副業・フリーランス」はどう扱われる?
  6. 不正受給と判定されるとどうなる?ペナルティを確認
  7. 転職と育休を両立するための正しい段取り
  8. よくある質問(FAQ)

育休中に転職したら給付金はどうなる?結論を先に解説

「支給停止」と「返納(返還)」の違いをわかりやすく整理

「支給停止」と「返納(返還)」は混同されがちですが、意味がまったく異なります。

用語 意味 発生タイミング
支給停止 今後の給付金の振り込みが打ち切られる 転職による雇用関係成立の時点以降
返納(返還) すでに受け取った給付金を国に返す 不正受給期間分・過払い期間分が対象

わかりやすく図で整理すると次のようになります。

育休開始 ────────── 転職・雇用関係成立 ──────── 育休終了
     ↑                      ↑                        
     │                      │                        
[この期間の給付金]      [この時点以降は]              
 ←要件を満たせば継続→   ←支給停止が原則→            

 ▶ 届出なしに受け取った分 → 返納義務が発生            

ポイント:「停止」と「返納」は同時に起きることもある

転職後もハローワークに届け出ないまま給付金を受け取り続けた場合、「支給停止」処分と同時に「過払い分の返納」が命じられます。悪質と判定された場合は返納額の2倍(最大3倍)が請求される「不正受給加算」が適用されます。


根拠法令:雇用保険法第61条の4が定める「他の使用者に雇用された」の意味

育児休業給付金の支給条件と停止条件は、雇用保険法第61条の4に規定されています。

雇用保険法第61条の4(抜粋)
育児休業給付金は、被保険者が育児休業期間中に他の使用者に雇用されたときは、その雇用された日の属する支給単位期間以降は支給しない。

ここで最も重要なのが「他の使用者に雇用された」という文言の解釈です。

解釈の論点 行政の判断基準
「雇用」とはいつ成立するか 雇用契約書の締結日または実際の就業開始日のいずれか早い時点
内定(口頭のオファー)は含まれるか 原則として含まれない(正式な雇用契約の成立が必要)
業務委託・フリーランス契約は含まれるか 「使用者に雇用」ではないため対象外(ただし就業実態次第)

つまり、「雇用関係の成立」とは単なる内定通知ではなく、雇用契約書を取り交わした時点または実際に出勤した時点を指します。この判断基準が、後述するケース別の結論に直結します。


ケース別チェック表|あなたの状況は「停止」「継続」どっち?

まず下の一覧表でご自身の状況を確認してください。

ケース 給付金の扱い 詳細
育休中に転職先へ実際に出勤を開始した 支給停止+返納の可能性あり ケース①
育休中に内定が出たが就業開始は育休終了後 支給継続 ケース②
育休中に雇用契約書を締結(就業開始は育休後) ⚠️ 要確認(契約内容次第) ケース③
育休中にアルバイト・パートを開始(月10日以下) 支給継続 ケース④
育休中にアルバイト・パートを開始(月10日超) 支給停止 ケース⑤
育休中に自営業・フリーランスを開始 原則継続(就業実態次第) ケース⑥

【ケース①】育休中に転職先へ実際に出勤を開始した場合

結論:支給停止+返納対象になる可能性が高い

出勤を開始した日が「他の使用者に雇用された日」とみなされ、その月の支給単位期間以降は給付金が支給停止となります。さらに、届け出ずに給付金を受け取り続けていた場合は過払い分の返納も命じられます。

注意点:元の会社の育休はどうなる?

転職先への出勤開始は、元の会社に対する「育休中の就業」にも該当します。元の会社が「育児・介護休業法に基づく育休」を認定するためには月10日以下の就業が条件のため、それを超えると元の会社の育休自体も無効と判断されるリスクがあります。


【ケース②】育休中に転職内定が出たが、就業開始は育休終了後の場合

結論:給付金の支給は継続される

内定(採用通知)を受けただけでは「他の使用者に雇用された」状態にはなりません。雇用関係は雇用契約書の締結または実際の就業開始のいずれか早い時点で成立するためです。

育休終了後に転職先へ入社するスケジュールであれば、育休期間中は現在の会社の雇用保険被保険者の地位を維持しており、給付金の受給資格も失いません。

ただし注意が必要な落とし穴

育休中に転職活動を行い、転職先と雇用契約書に署名した時点が育休期間内に入った場合、その時点で「雇用関係成立」とみなされる可能性があります。契約書の「就業開始日」だけでなく「契約締結日」にも注意が必要です。


【ケース③】育休中に雇用契約書を締結したが就業開始は育休終了後の場合

結論:契約内容と手続きによって判断が分かれる(要ハローワーク確認)

雇用契約書を締結した時点で「雇用関係が成立した」と解釈されるケースがあります。ただし、就業開始日が育休期間外であれば、実務上は支給継続と判断されるケースが多いとされています。

判断の目安:

  • 契約書の「就業開始日」が育休終了日より後 → 継続の可能性が高い
  • 契約書の「就業開始日」が育休期間内 → 支給停止・返納の対象になる可能性が高い

このケースは解釈に曖昧さが残るため、必ずハローワークに相談して判断を仰いでください。


返納額の計算方法と具体例

育児休業給付金の基本計算式

育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率」で計算されます。

育休経過期間 給付率 手取り換算の目安
育休開始〜180日目(約6か月) 67% 手取りの約80%相当
181日目以降 50% 手取りの約60%相当

2025年度の改正ポイント

2025年4月の育児・介護休業法改正により、両親ともに育休を取得した場合に給付率を最大80%(手取り約10割相当)に引き上げる「育児休業給付金の特例措置」が拡充されています。詳細は所轄のハローワークにご確認ください。


返納額の計算例

設定:
– 休業開始時賃金日額:1万円
– 育休開始から150日目(給付率67%)に転職先に出勤開始
– 届出をしなかったため、出勤開始後も30日分の給付金を受け取ってしまった

受け取ってしまった金額(返納対象額)の計算:

賃金日額 × 支給日数 × 給付率
= 10,000円 × 30日 × 67%
= 201,000円(返納対象額)

不正受給加算が適用された場合(最大2倍加算):

返納対象額 × 2倍 = 402,000円
(返納対象額 + 加算額 = 合計最大603,000円)

故意・悪質と認定された場合は返納対象額の最大3倍(返納額+加算2倍分)が請求されます。


ハローワークへの届出手続きと必要書類

届出のタイミングと期限

原則:転職・就業開始の事実が生じた時点で速やかに届け出る

育児休業給付金は2か月ごとに支給申請を行いますが、転職や就業状況の変化は次回申請前に必ずハローワークへ届け出る必要があります。

状況 届け出る内容 期限の目安
転職先への出勤を開始した 就業開始日・就業先の情報 速やかに(遅くとも次回申請前)
育休中に就業日数が月10日を超えた 就業状況報告書の修正 当該支給単位期間の申請時
雇用契約書を締結した 契約締結日・就業開始予定日 速やかに

必要書類一覧

ハローワークへの届出・相談時に準備すべき書類は次のとおりです。

基本書類(全ケース共通):

書類名 入手先 備考
育児休業給付金支給申請書 ハローワーク・厚労省ウェブサイト 事業主が代理申請することが多い
雇用保険被保険者証 現在の会社から交付 被保険者番号の確認に必要
本人確認書類 自身で準備 マイナンバーカード・運転免許証等

転職・就業変化が生じた場合の追加書類:

書類名 入手先 備考
就業事実を証明する書類 転職先から取得 雇用契約書・辞令・給与明細等
就業状況申告書(修正版) ハローワーク 就業日数の変更がある場合
返納に関する通知(受け取った場合) ハローワークから送付 返納期限・振込先が記載

届出の手順(ステップガイド)

STEP 1:まず電話でハローワークに状況を相談する

窓口に行く前に、管轄のハローワーク(育児休業給付担当)に電話して「育休中に転職の話が進んでいる」「就業を開始してしまった」などの状況を伝えましょう。担当者が必要書類と手順を案内してくれます。

STEP 2:必要書類を準備して窓口へ

電話での案内を受けたうえで、上記の必要書類を揃えてハローワーク窓口を訪問します。

STEP 3:事業主(現在の勤務先)にも状況を報告する

育児休業給付金の申請は通常事業主が代理申請を行っています。転職の事実は現在の会社の人事担当者にも早期に相談し、必要な手続きの調整を依頼しましょう。

STEP 4:支給停止・返納の通知を受けた場合は期限内に対応

ハローワークから支給停止通知や返納命令が届いた場合、指定期限内(通常30日以内)に返納する必要があります。一括返納が困難な場合は分割払いの相談が可能なケースもあるため、無視せず早めに窓口へ連絡してください。


育休中の「アルバイト・副業・フリーランス」はどう扱われる?

アルバイト・パートの場合:就業日数が判定基準

育休中のアルバイト・パートタイム就労は、月の就業日数が10日以下(または就業時間が80時間以下)であれば給付金は支給継続されます(雇用保険法施行規則第107条)。

就業日数(月) 給付金の扱い
10日以下(または80時間以下) ✅ 支給継続(ただし一部減額の場合あり)
11日以上(または80時間超) ❌ 支給停止

減額計算のしくみ:

就業日数が10日以下でも、アルバイト等で得た賃金が一定額を超えると給付金が減額されます。

【減額が発生する条件】
アルバイト賃金 + 育児休業給付金 > 休業前賃金の80%

【減額の計算式】
減額後給付金 = 休業前賃金の80% − アルバイト賃金

フリーランス・自営業の場合:「使用者に雇用」されていないため原則継続

フリーランス(業務委託)や個人事業主としての活動は、「他の使用者に雇用された」には該当しないため、原則として給付金の支給停止にはなりません。

ただし、次のケースでは実態として「雇用関係あり」と判断されるリスクがあります。

状況 リスク
特定の1社から継続的に業務委託を受け、指揮命令下で働いている 雇用関係と認定される可能性あり
業務委託名目だが、実態は雇用契約と同等(偽装フリーランス) 不正受給認定のリスクあり
開業届を提出し自営業として活動(取引先は複数) 原則として継続OKだが就業実態を記録しておくこと

フリーランスとして活動する場合でも、就業日数や収入に関して支給申請書に正確に記載する義務があります。虚偽記載は不正受給となります。


不正受給と判定されるとどうなる?ペナルティを確認

不正受給の定義と主なケース

以下のケースは不正受給と判定されます。

  • 転職先への出勤を開始したにもかかわらず届け出なかった
  • 就業日数を実際より少なく虚偽申告した
  • 雇用契約締結の事実を隠したまま給付金を受け取り続けた

ペナルティの内容

ペナルティ 内容
給付金の返納 不正受給期間の全額返還
加算金(最大2倍) 返納額の最大2倍が上乗せ請求される
支給停止 以降の全ての雇用保険給付が一定期間支給停止
公表 悪質な場合は氏名・事業所名が公表される
刑事罰 詐欺罪として告訴されるケースもある(雇用保険法第83条)

「知らなかった」は原則として免責事由になりません。少しでも疑問がある状況では、必ずハローワークに事前確認することが最大の自己防衛策です。


転職と育休を両立するための正しい段取り

育休中に転職活動をする場合の安全な進め方

① 転職活動は問題なし——「活動」だけなら給付金に影響なし

求人検索・エージェントへの登録・書類選考・面接などの転職活動自体は「就業」ではないため、給付金への影響はありません。

② 内定・オファーを受けた段階でスケジュールを慎重に設計する

内定を受けた後は、就業開始日を育休終了後に設定することが給付金維持の基本戦略です。

【推奨スケジュール例】
育休期間:子が1歳になるまで(例:2025年3月31日まで)
         ↓
転職先との雇用契約締結:2025年2月頃(育休期間内だが就業開始日は育休後)
         ↓  ←ここのタイミングが要確認
転職先への入社:2025年4月1日(育休終了翌日)

このスケジュールの場合、雇用契約締結日が育休期間内でも就業開始日が育休後であれば、多くのケースで継続受給が可能とされています。ただし個別状況によって判断が異なるため、必ずハローワークに事前確認を行ってください。

③ 現在の会社への報告義務と退職手続き

育休中に別会社への転職が確定した場合、現在の会社へ退職の意思を適切なタイミングで伝える義務があります(民法第627条・会社就業規則の規定による)。退職日と育休終了日の調整は人事担当者と慎重に協議してください。


元の会社の育休を終了して転職する場合の手続きフロー

【手続きフロー】
STEP 1:現在の会社に退職・育休切り上げの意向を報告
         ↓
STEP 2:育休終了届の提出(育児・介護休業法の手続き)
         ↓
STEP 3:退職日の確定と離職票の発行依頼
         ↓
STEP 4:ハローワークで育児休業給付金の最終支給申請
         ↓
STEP 5:雇用保険被保険者資格喪失の手続き
         ↓
STEP 6:転職先で新たな雇用保険被保険者資格を取得

トラブルを避けるための要点

退職日と育休終了日のズレが生じると、ハローワークの判定で「雇用関係が継続していない」と判断され、給付金が減額される可能性があります。現在の会社の人事担当者とハローワーク双方に事前に相談し、書面で日程を確認することが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に転職活動で使ったエージェント費用は給付金に影響しますか?

A:影響しません。

転職エージェントを利用した費用(多くの場合、求職者側は無料)や交通費などは「就業」ではないため、給付金に影響はありません。面接のための外出も同様です。


Q2. 育休中に転職先の内定を受けましたが、ハローワークに報告しなければなりませんか?

A:内定(採用通知)の段階では法的な報告義務はありません。

ただし、雇用契約書を締結した時点や就業開始日が育休期間内に入る場合は報告が必要になります。「グレーゾーン」を避けるため、内定後に就業スケジュールが確定した段階でハローワークへ相談することを強くお勧めします。


Q3. 給付金の返納命令が来てしまいました。一括では払えない場合どうすればいいですか?

A:ハローワークへ早急に相談し、分割払いの交渉を行ってください。

返納命令に対して何も対応しないと、最終的に給与や財産への差押えに発展する可能性があります。一括払いが困難な場合、ハローワーク・都道府県労働局に相談することで分割返済の合意が得られるケースがあります。放置だけは絶対に避けてください。


Q4. 育休中にフリーランスで数万円稼いだ場合、申告が必要ですか?

A:必要です。支給申請書の「就業日数・収入」欄に正確に記載してください。

フリーランス収入は「他の使用者への雇用」には該当しませんが、就業実態として申告書への記載が義務付けられています。記載を怠ると虚偽申告(不正受給)と判定されるリスクがあります。


Q5. 転職先が「育休を引き継いでくれる」と言っています。可能ですか?

A:原則として不可能です。

育児休業は現在の使用者との雇用関係を維持したまま取得するものであり、転職先(新しい使用者)との雇用関係が成立した時点で、元の育休は終了したとみなされます。転職先で改めて育休を取得するためには、転職先での勤続期間や雇用保険の被保険者期間の要件を満たす必要があります(転職先での入社直後は育休取得できない場合がほとんどです)。


Q6. 育休中の転職は法律で禁止されていますか?

A:法律で禁止はされていません。ただし、給付金の要件との兼ね合いに注意が必要です。

転職そのものは労働者の権利であり、法律上の禁止規定はありません。問題となるのは「育休期間中に新しい雇用関係が成立すること」と「給付金の受給要件との矛盾」です。タイミングを適切に設計することで、合法的に育休・給付金・転職を両立させることは可能です。


まとめ:育休中の転職で給付金を守るための3つのポイント

育休中の転職は「状況次第でOKにも、NG(返納対象)にもなる」複雑なテーマです。本記事の情報はあくまでも一般的な解説であり、個別のケースによって判断が異なります。

最後に、給付金を守るための3つの重要ポイントを整理します。

# ポイント 行動
1 転職活動はOK、雇用契約締結・出勤開始は慎重に 就業開始日を育休終了後に設定する
2 グレーゾーンは必ずハローワークに事前確認 「たぶん大丈夫」で進めない
3 不正受給は厳しいペナルティ、早期の自主申告が最善 問題が発覚したら速やかにハローワークへ相談

必ずご自身の管轄ハローワークまたは社会保険労務士に相談のうえ、適切な対応を取るようにしてください。


参考法令・参考情報

  • 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付金)
  • 雇用保険法施行規則 第106条〜第108条(支給停止・返還)
  • 育児・介護休業法 第2条・第9条(育児休業の定義と要件)
  • 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続きについて」
  • ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)

免責事項: 本記事は2025年時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。制度は改正される場合があります。個別の判断については、所轄のハローワーク・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました