育休を夫婦で同時に取得したとき、給付金はどれくらい受け取れるのか——。2022年4月の育児・介護休業法改正により「パパ育休(産後パパ育休)」が創設され、妻の産後休業中に夫も育児休業給付金を受け取れる仕組みが整いました。本記事では、並行取得時の給付金計算方法・家計シミュレーション・申請手続きを、法的根拠とともにわかりやすく解説します。
パパ育休と妻の育休を並行取得する場合の給付金制度とは
| 取得者 | 給付金計算基準 | 給付率 | 受給期間 |
|---|---|---|---|
| 妻(母親) | 休業開始前6ヶ月の賃金日額平均 | 最初67%→後半50% | 産前6週間+産後8週間 |
| 夫(パパ育休) | 休業開始前6ヶ月の賃金日額平均 | 67%→50% | 最大4週間(産後8週間以内) |
| 妻の通常育休 | 休業開始前6ヶ月の賃金日額平均 | 最初67%→後半50% | 子が1歳になるまで |
| 夫の通常育休 | 休業開始前6ヶ月の賃金日額平均 | 最初67%→後半50% | 子が1歳になるまで |
「並行取得」とは、妻が産前産後休業(産休)または育児休業(育休)を取得している期間中に、夫も同時に育児休業を取得することです。従来は「どちらか一方だけが育休を取る」ケースが多かったのですが、現在は夫妻がそれぞれ雇用保険の給付金を受け取りながら同時に育休を取得できます。
給付金の根拠となる法律は以下のとおりです。
| 根拠法 | 条文 |
|---|---|
| 育児・介護休業法 | 第5条、第23条(育児休業取得の権利) |
| 雇用保険法 | 第61条の4、第61条の4の2(育児休業給付金) |
| 雇用保険法施行規則 | 第101条の11~第101条の19(支給要件・計算方法) |
2022年4月改正による重要な変更点(パパ育休の創設背景)
2022年4月1日施行の改正育児・介護休業法で、出生後8週間以内を対象とした「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設されました。主な変更点は次の3点です。
- 妻の産休中に夫が育休を取得できる(従来は取得が困難だった)
- 分割取得が可能(2回まで分割して取得できる)
- 就業の一部解禁(労使協定締結の場合、育休中でも一定の就業が可能)
給付率は通常の育児休業給付金と同じく、休業開始から180日目まで67%、181日目以降は50%が適用されます。
妻の産前産後休業とパパ育休の期間重複の重要性
並行取得で最もメリットが大きいのが、妻の産後休業(産後8週間)とパパ育休の期間を重ねるケースです。この期間中は夫妻ともに給付金を受け取れるため、家計への影響を最小限に抑えられます。
【並行取得のイメージ図】
──────────────────────────────
妻: [産前休業]─[産後休業(8週間)]─[育休]
夫: [パパ育休(最大4週間)]─[育休]
↑ここが「並行取得」期間
──────────────────────────────
パパ育休と妻の育休の並行取得対象者の条件を徹底解説
妻側(母親)の受給要件と雇用保険加入条件
| 確認項目 | 要件 |
|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・契約社員・派遣社員(継続雇用が見込まれる方) |
| 雇用保険加入 | 産前産後休業開始予定日から遡って2年間に被保険者期間が12ヶ月以上 |
| 賃金の支払い | 産休・育休中に賃金が支払われていないこと(一定要件あり) |
| 申請期限 | 産後57日目以降に育休を開始し、原則として育休開始後2ヶ月ごとにハローワークへ申請 |
ポイント:産前産後休業中は「健康保険の出産手当金」が別途支給されます。育児休業給付金との重複受給はできません。育児休業給付金の受給は、産後休業終了後・育休開始後から始まります。
夫側(パパ育休)の受給要件と子の要件
| 確認項目 | 要件 |
|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・契約社員・派遣社員(雇用保険加入者) |
| 被保険者期間 | パパ育休開始予定日から遡って2年間に被保険者期間が12ヶ月以上 |
| 子の要件 | 出産予定日(または出産日)から57日以内に育児休業を開始すること |
| 配偶者の状況 | 配偶者が産前産後休業中であることが第1回目の申請要件 |
| 取得可能回数 | 最大2回に分割取得可能(通算4週間/28日まで) |
並行取得時に満たすべき条件チェックリスト
以下のすべてに✓が入れば、並行取得で双方が給付金を受給できます。
- [ ] 妻・夫ともに雇用保険に加入している
- [ ] 妻・夫ともに直近2年間で被保険者期間が12ヶ月以上ある
- [ ] 夫の育休開始日が出産予定日(または出産日)から57日以内である
- [ ] 妻の産後休業期間(産後8週間)と夫の育休期間が重なっている
- [ ] 両親が同一の子のために育休を取得している
- [ ] 育休中に会社から賃金が支払われていない(または一定水準以下)
給付金の計算方法を具体的に解説【計算式と事例】
基本計算式
育児休業給付金の計算式は以下のとおりです。
月額給付金 = 賃金日額 × 支給日数 × 給付率
賃金日額 = 育休開始前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180
給付率:
休業開始から180日目まで → 67%
181日目以降 → 50%
「賃金日額」の計算に含める賃金:基本給・通勤手当・残業代など、毎月支払われる賃金が対象です。賞与は原則として含まれません。
給付率67%→50%の変更タイミング
| 期間 | 給付率 | 備考 |
|---|---|---|
| 育休開始〜通算180日目 | 67% | 夫婦それぞれにカウント |
| 通算181日目以降 | 50% | 延長した場合も同様 |
重要:「180日」は妻・夫それぞれ個別にカウントされます。並行取得期間が重なっていても、夫の180日カウントは夫の育休開始日から始まります。
家計シミュレーション①:夫月収30万円・妻月収25万円のケース
前提条件
| 夫 | 妻 | |
|---|---|---|
| 月収(額面) | 300,000円 | 250,000円 |
| 手取り(概算) | 約240,000円 | 約200,000円 |
| 育休取得期間 | パパ育休28日間 | 産後8週間+育休12ヶ月 |
夫の給付金計算(パパ育休28日間)
賃金日額 = 300,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円
月額給付金 = 10,000円 × 28日 × 67%
= 187,600円(28日間の合計)
妻の給付金計算(育休12ヶ月間・産後2ヶ月目から)
賃金日額 = 250,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 約8,333円
【開始〜6ヶ月】
月額給付金 = 8,333円 × 30日 × 67% = 約167,500円/月
【7ヶ月目以降】
月額給付金 = 8,333円 × 30日 × 50% = 約125,000円/月
並行取得期間(産後2〜4週間)の家計収入試算
| 収入源 | 金額(月換算) |
|---|---|
| 夫のパパ育休給付金 | 約187,600円(28日分) |
| 妻の出産手当金(産後8週間) | 約166,667円/月※ |
| 合計 | 約354,267円/月 |
※出産手当金は健康保険から支給。計算式:標準報酬日額×2/3×支給日数。妻の月収25万円の場合、標準報酬月額は約26万円が目安です。
育休12ヶ月間の総給付金試算(妻分)
| 期間 | 月額給付金 | 期間数 |
|---|---|---|
| 産後2ヶ月〜育休6ヶ月 | 約167,500円 | 約4ヶ月分 |
| 育休7〜12ヶ月目 | 約125,000円 | 約6ヶ月分 |
| 合計(概算) | 約1,420,000円 | — |
家計シミュレーション②:夫月収40万円・妻月収20万円のケース
| 夫(パパ育休4週間) | 妻(育休12ヶ月) | |
|---|---|---|
| 月収(額面) | 400,000円 | 200,000円 |
| 賃金日額 | 約13,333円 | 約6,667円 |
| 育休開始〜180日の月額給付金 | 約267,999円(28日分) | 約133,340円/月 |
| 181日目以降の月額給付金 | — | 約100,005円/月 |
67%の「実質手取り率」について:給付金は非課税かつ社会保険料免除が適用されるため、額面の67%でも手取りベースでは給付前の約80〜85%相当の生活水準を維持できるケースがあります。これが「実質手取り80%」とよく言われる根拠です。
申請手続きの流れと必要書類
手続きのタイムライン
【出産予定日の1〜2ヶ月前】
↓
① 夫・妻ともに勤務先へ育休取得の申し出(書面または口頭)
↓
【出産予定日の約1ヶ月前】
↓
② 勤務先が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を準備
↓
【出産日】
↓
③ 出産日確定→夫:出産日から57日以内に育休開始
↓
④ 夫の初回申請:育休開始日から約2ヶ月後にハローワークへ
妻の初回申請(育休分):産後8週間経過後の育休開始から約2ヶ月後に申請
↓
⑤ 以降2ヶ月ごとに勤務先経由でハローワークへ申請(継続給付)
必要書類一覧
夫(パパ育休)の初回申請時
| 書類名 | 取得先 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク所定様式 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 勤務先が作成 |
| 賃金台帳・出勤簿(直近6ヶ月分) | 勤務先から提出 |
| 母子健康手帳(出生の事実が確認できるページ) | 自身で準備 |
| 育児休業申出書の写し | 勤務先に提出した書類のコピー |
妻(育休)の初回申請時
| 書類名 | 取得先 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク所定様式 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 勤務先が作成 |
| 賃金台帳・出勤簿(直近6ヶ月分) | 勤務先から提出 |
| 母子健康手帳(出生の事実が確認できるページ) | 自身で準備 |
申請の代行:多くの場合、申請手続きは勤務先(会社の人事・総務部門)がハローワークに対して代行します。勤務先へ早めに育休の申し出をすることが、スムーズな給付金受取につながります。
申請期限の注意点
- パパ育休(夫):育休終了日の翌日から2ヶ月以内に初回申請
- 育休(妻):育休開始から2ヶ月ごとの支給単位期間終了後、5日以内に申請(勤務先経由)
- 申請が遅れた場合:時効は2年。ただし遅延すると受給が遅くなるため早めの申請を推奨
社会保険料免除の活用で手取りはさらに増える
育児休業中は、本人・会社負担分ともに健康保険料・厚生年金保険料が免除されます(育児・介護休業法第16条の2、健康保険法第159条)。
| 条件 | 免除内容 |
|---|---|
| 月末時点で育休取得中 | その月の社会保険料が全額免除 |
| 同月内に14日以上育休取得(2022年10月以降) | 賞与からの社会保険料も免除対象 |
シミュレーションへの影響:月収30万円の場合、社会保険料の自己負担は月約43,000円程度。育休中はこれが免除されるため、給付金67%+社会保険料免除で、実質的な手取り減少率は10〜15%程度に抑えられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 夫婦ともに同じ期間に育休を取ると、給付金は減額されますか?
A. いいえ、減額されません。夫妻それぞれが独立して給付金を受け取るため、並行取得しても個々の給付額は変わりません。
Q2. パパ育休の28日間を2回に分割した場合、給付金の計算はどうなりますか?
A. 分割しても合計日数が28日以内であれば、給付率・計算方法は同じです。1回目と2回目それぞれの育休日数に応じて給付金が算出されます。
Q3. 契約社員や派遣社員でも並行取得の給付金を受け取れますか?
A. 雇用保険に加入しており、育休終了後に雇用が継続される見込みがあれば受給できます。被保険者期間12ヶ月以上の条件を満たしているか、ハローワークまたは勤務先に確認しましょう。
Q4. 妻が専業主婦(扶養内パート)の場合、夫のパパ育休給付金に影響はありますか?
A. 夫の給付金は夫自身の雇用保険から支給されるため、妻の就業状況は夫の給付額に影響しません。ただし、妻が雇用保険未加入の場合、妻側の育児休業給付金は受け取れません。
Q5. 育休中に副業・在宅ワークで収入を得ると給付金はどうなりますか?
A. 育休中に就業した場合、就業日数・収入によって給付金が減額または支給停止となる場合があります。パパ育休(産後パパ育休)の場合、労使協定があれば一定範囲内の就業は認められますが、上限を超えると給付金が調整されます。事前にハローワークへ確認することを強く推奨します。
Q6. 給付金の振込はいつ頃になりますか?
A. 申請から約2週間でハローワークが支給決定を行い、指定口座へ振り込まれます。初回申請が遅れると生活費に影響するため、育休開始と同時に勤務先へ申請手続きの開始を依頼しましょう。
まとめ:並行取得で家計の安心を最大化するポイント
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| ✅ 受給要件の確認 | 夫妻ともに被保険者期間12ヶ月以上を確認 |
| ✅ 期間の設計 | 妻の産後8週間とパパ育休を重ねて給付金を最大化 |
| ✅ 早めの申し出 | 出産予定日1〜2ヶ月前に勤務先へ書面で申し出 |
| ✅ 社会保険料免除の活用 | 月末をまたぐ育休設計で免除メリットを最大化 |
| ✅ 給付率67%の期間を意識 | 180日以内の高給付率期間を夫妻ともに有効活用 |
パパ育休と妻の育休を並行取得することで、家計への影響を最小限に抑えながら育児に集中できる環境を整えられます。制度の詳細や個別の受給要件については、最寄りのハローワーク(公共職業安定所)または会社の人事担当者へご相談ください。
本記事の情報は2024年時点の法令・制度に基づいています。制度改正により内容が変更となる場合がありますので、最新情報は厚生労働省公式サイトまたはハローワークにてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. パパ育休と妻の育休を同時に取得できるのはいつからですか?
A. 2022年4月1日の育児・介護休業法改正により、「産後パパ育休」が創設されました。妻の産後8週間以内に夫が育休を取得できるようになりました。
Q. パパ育休と妻の育休を並行取得した場合、給付金はいくらもらえますか?
A. 夫妻がそれぞれ雇用保険から給付金を受け取れます。給付率は180日目まで67%、181日目以降は50%です。具体額は賃金額により異なります。
Q. パパ育休の取得期間は最大どのくらいですか?
A. パパ育休は最大4週間(28日)です。2回まで分割取得が可能なため、柔軟に育休期間を設定できます。
Q. パパ育休の受給要件は何ですか?
A. 雇用保険加入者で、育休開始予定日から遡って2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あること。子の出生から57日以内に育休を開始する必要があります。
Q. 妻の産後休業中に夫が給付金を受け取ると、妻の給付金は減りますか?
A. いいえ。夫妻が並行取得した場合、それぞれが独立して給付金を受け取れます。互いに減額されることはありません。

