複数企業から給与をもらった月の育休給付金計算方法【2026年最新版】

複数企業から給与をもらった月の育休給付金計算方法【2026年最新版】 育休給付金

育休中に「A社で育休を取りながら、B社からも給与が入っている」「月の途中でB社を退職したため、その月だけ2社分の給与がある」——こうしたケースで、育休給付金はどう計算されるのか、不安を感じている方は少なくありません。

結論から言えば、複数企業から給与を受け取った月は、その合計給与額が給付金の支給額に影響します。 計算ルールを知らずに申請すると、後から返還を求められるリスクもあります。本記事では、ダブルワーク・副業・月途中退職などの状況別に、給付金計算の仕組みと正しい申請手続きを2026年最新情報でわかりやすく解説します。


育休給付金の基本|複数企業から給与をもらうとどうなるのか

育休給付金(育児休業給付金)は、雇用保険法第61条の4に基づき、育児休業期間中に賃金が減少した労働者を支援するための給付制度です。支給元はハローワーク(公共職業安定所)であり、原則として雇用保険の被保険者となっている事業所に紐づいて支給されます。

複数企業から給与を受け取る状況が生じるのは、主に以下のケースです。

  • ダブルワーカーがA社で育休を取得し、B社は継続勤務している
  • 月の途中でB社(副業先)を退職したため、その月のみ2社分の給与が発生した
  • 月の途中からA社の育休が開始し、B社ではすでに勤務終了済みで最終給与が支払われた
  • 両社同時に育休を取得しているが、月の初旬にB社から前月分の残業代や賞与が支払われた

これらのケースでは「どの給与がカウントされるのか」「合計するのか」という疑問が生じます。まずはパターンを整理しましょう。

ダブルワーク中に育休に入った場合のパターン整理

状況ごとに、給付金への影響が異なります。以下の表で全体像を把握してください。

ケース A社(主たる事業所) B社 給付金への影響
ケース① 育休取得中 継続勤務・給与あり B社の給与が「賃金」としてカウントされ、給付額が調整される
ケース② 育休取得中 同時に育休取得・給与なし B社給与の影響なし。A社基準で通常計算
ケース③ 育休取得中 月途中で退職・最終給与あり 退職月のみB社給与が合算される
ケース④ 月途中から育休開始 すでに退職済みだが最終月給あり 支給単位期間内のB社給与も合算対象
ケース⑤ 育休取得中 給与なし・賞与のみ支払われた 賞与は原則「賃金」に含まれないが、支払時期により要確認

最も注意が必要なのはケース①と③です。B社の給与が発生している月は、必ずその金額をハローワークへ申告する義務があります。申告漏れは不正受給となり、給付金の返還(場合によっては最大3倍の返還命令)の対象となります。

育休給付金が支給される「主たる事業所」の考え方

雇用保険は、原則として1つの事業所でのみ被保険者となります(雇用保険法第38条)。複数の事業所に勤める場合、「主たる事業所」とは、以下の基準で判断された「生計を維持するうえで主要な収入源となっている勤務先」です。

  • 週の所定労働時間が最も長い事業所
  • 複数事業所の労働時間が同程度の場合は、本人の申出により決定

育休給付金は、この主たる事業所(雇用保険の適用事業所)を通じてのみ支給されます(雇用保険法第61条の4)。B社が雇用保険の対象外(たとえば週20時間未満の勤務)であれば、B社からの給与も賃金として申告対象になりますが、B社から別途育休給付金が支給されることはありません。

【法的根拠】
– 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付金の支給)
– 雇用保険法施行規則 第101条の19(支給額の計算)
– 雇用保険法 第38条(短時間労働者の取扱い)


給付金の計算方法の基本|給与がある月の減額ルールとは

育休給付金は「育休中だから全額もらえる」わけではありません。育休中に給与収入がある場合、その金額に応じて給付額が減額または支給停止になるルールがあります。複数企業から給与を受け取る場合も、この減額ルールが適用されます。

支給単位期間内の就労日数・時間による支給停止ライン

育休給付金には、「就労日数」と「就労時間」による支給停止条件があります。

【支給停止条件】

条件 内容
就労日数が10日超 支給単位期間(約1ヶ月)内に10日を超えて就労した場合、支給停止
就労時間が80時間超 就労日数が10日以下でも、就労時間の合計が80時間を超えた場合、支給停止

ここでいう「就労」には、A社・B社双方の勤務日数・時間が合算されます。たとえば、A社育休中にB社で週3日×3週間(合計9日)勤務した場合、就労日数9日と判定され、ギリギリ支給停止にはなりません。しかし、同じ月にB社で1日でも多く働けば10日を超え、支給停止となります。

ポイント: 「10日」のカウントは支給単位期間ごとです。育休給付金の支給単位期間は、育休開始日から1ヶ月ごとに区切られます(暦月ではなく、育休開始日起算)。

賃金月額80%ルール|給与が一定額以上になると給付金が減額・停止される仕組み

就労日数・時間の条件をクリアしていても、受け取った給与の金額によって給付金が調整されます。これが「賃金月額80%ルール」です。

計算のベースとなる「休業開始時賃金日額」と「賃金月額」

用語 説明
休業開始時賃金日額 育休開始前6ヶ月間の総賃金÷180日で算出した1日あたりの賃金
賃金月額 休業開始時賃金日額 × 30日(上限あり)

2026年現在の賃金月額の上限・下限は以下のとおりです。

区分 金額(2026年度)
賃金月額の上限 540,969円(変動あり・毎年8月改定)
賃金月額の下限 77,220円

給付率と給与収入の関係(減額ルール)

育休給付金の給付率は、育休開始から180日目まで67%、181日目以降は50%が基本です。しかし、育休中に給与を受け取った場合、以下のルールで調整されます。

【調整のしくみ】

① 支給単位期間中に受け取った賃金(複数社合計)を算出
② 賃金月額に対する割合(賃金割合)を計算

  賃金割合 = 支給単位期間中の賃金合計 ÷ 賃金月額 × 100

③ 賃金割合に応じて給付金が調整される

  ・賃金割合が13%以下 → 給付金に影響なし(全額支給)
  ・賃金割合が13%超80%未満 → 給付金が一部減額(下記計算式)
  ・賃金割合が80%以上 → 給付金は支給停止(0円)

減額後の支給額の計算式

賃金割合が13%超80%未満の場合:

支給額 = (賃金月額 × 80%)- 支給単位期間中の賃金合計

ただし、この計算で出た金額が「賃金月額 × 給付率(67%または50%)」を上回る場合は、本来の給付額が支給されます。


複数企業から給与をもらった月の具体的な計算例

理解を深めるために、実際の数字を使って計算を確認しましょう。

計算例①:B社継続勤務で月10万円の給与がある場合

前提条件

項目 金額
休業開始時賃金日額(A社基準) 12,000円
賃金月額(12,000円 × 30日) 360,000円
育休開始からの日数 180日以内(給付率67%)
B社から受け取った給与 100,000円

計算の手順

Step 1:本来の給付額(調整なし)を計算

360,000円 × 67% = 241,200円

Step 2:賃金割合を計算

100,000円 ÷ 360,000円 × 100 = 約27.8%
→ 13%超80%未満のため、一部減額

Step 3:減額後の支給額を計算

(360,000円 × 80%)- 100,000円
= 288,000円 - 100,000円
= 188,000円

Step 4:本来の給付額と比較して低い方を支給

241,200円(本来の給付額)vs 188,000円(減額後の額)
→ 188,000円 が支給される

結果: B社給与10万円を受け取ることで、給付金が241,200円から188,000円に減額されます。

計算例②:B社から月30万円の給与がある場合(80%ルール適用)

前提条件(同上、B社給与のみ変更)

項目 金額
賃金月額 360,000円
B社から受け取った給与 300,000円

Step 1:賃金割合を計算

300,000円 ÷ 360,000円 × 100 = 83.3%
→ 80%以上のため、支給停止

結果: B社給与が賃金月額の80%(288,000円)を超えているため、給付金は0円(支給停止)になります。

計算例③:月途中でB社を退職・最終給与5万円がある場合

前提条件

項目 金額
賃金月額 360,000円
B社の最終月給(退職月のみ発生) 50,000円
給付率 67%

Step 1:賃金割合を計算

50,000円 ÷ 360,000円 × 100 = 約13.9%
→ 13%超のため、一部減額

Step 2:減額後の支給額を計算

(360,000円 × 80%)- 50,000円
= 288,000円 - 50,000円
= 238,000円

Step 3:本来の給付額(241,200円)と比較

241,200円 vs 238,000円
→ 238,000円 が支給される

結果: B社退職月の最終給与5万円により、給付金が241,200円から238,000円に減額されます。翌月以降はB社給与がなくなるため、通常の241,200円に戻ります。


申請手続きのフローと必要書類|複数企業併用の場合

申請の全体フロー

STEP 1:育児休業の開始
    ↓ 各勤務先(A社・B社)に育児休業の申出を行う

STEP 2:A社(主たる事業所)経由でハローワークへ受給資格確認申請
    ↓ 「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を提出

STEP 3:支給単位期間ごとに支給申請
    ↓ 2ヶ月ごとにまとめて申請(育休開始から約2ヶ月後が初回)

STEP 4:B社からの給与を申告
    ↓ 申請書の「賃金」欄に複数社の給与合計を正確に記載

STEP 5:ハローワークが給付額を計算・振込

必要書類一覧

育休開始時(受給資格確認)に提出する書類

書類名 作成・取得元 備考
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 A社(事業主が作成・提出) 本人捺印が必要
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 A社(事業主が作成) B社の給与も記載が必要な場合あり
母子健康手帳(出生届出済みの確認) 市区町村 コピー可
育休申出書(申出た事実の確認書類) A社・B社双方 社内書類

複数企業から給与がある月の追加書類

書類名 取得元 提出タイミング
B社の給与明細書(当該月分) B社 支給申請時に毎回提出
B社との雇用契約書または労働条件通知書 B社 初回申請時
B社の就労日数・時間の証明書類 B社 必要に応じて

重要: B社の給与明細書は、支給単位期間ごとの申請時に毎回提出が求められます。給与明細書の紛失には注意し、必ずコピーを保管してください。

申請書類の記載ポイント

申請書(育児休業給付金支給申請書)の中で特に注意すべき記載欄は以下の2点です。

①「支給単位期間中に支払われた賃金額」欄
ここには、A社・B社双方の給与合計額を記入します。B社が時給制の場合、月の途中退職による日割り計算分も含めます。

②「就労日数・就労時間」欄
A社・B社両方の勤務日数・時間を合計した数字を記入します。育休中にB社でのみ就労している場合も、その日数・時間が支給停止ラインに影響します。


よくある疑問とトラブル防止のポイント

B社の給与を申告しなかった場合のリスク

育休給付金の支給中に複数企業から給与を受け取ったにもかかわらず申告しなかった場合、不正受給と判定されます。この場合のペナルティは非常に重く、以下の措置が取られます。

  • 不正受給額の全額返還(雇用保険法第10条の4)
  • 返還額の最大2倍に相当する額の納付命令(合計で最大3倍の返還)
  • 以後の給付金支給が一時停止または取消し

「少額だから申告しなくていい」という判断は絶対に避けてください。金額の大小に関わらず、申告義務があります。

賞与・一時金が支払われた場合の扱い

育休中に賞与(ボーナス)が支払われた場合、原則として「賃金」には含まれません。賞与は賃金月額の計算基礎から除外されており、給付金の調整対象外です。ただし、以下のケースでは取扱いが異なる場合があります。

  • 毎月支払われる皆勤手当・精勤手当などの固定的手当
  • 賞与であっても「賃金」として支払日・支払条件が定められているもの

不明な場合は、必ずハローワークに確認してから申請してください。

2025年改正のポイント|出生後休業支援給付金との関係

2025年4月施行の育児・介護休業法改正により、出生後休業支援給付金(通称:パパ・ママ育休プラス給付) が新設されました。これにより、子の出生後一定期間に両親ともに育休を取得した場合、給付率が最大80%に引き上げられる制度が始まっています。

複数企業に勤める場合でも、この給付率アップの対象になり得ます。ただし、B社からの給与がある場合の計算ルール(80%調整ライン)との兼ね合いについては、ハローワークへの個別確認が必要です。


よくある質問

Q1. B社が雇用保険に未加入(週20時間未満)の場合、B社の給与は申告が必要ですか?

はい、申告が必要です。雇用保険の被保険者かどうかに関わらず、育休中に実際に受け取った賃金はすべて申告する義務があります。 B社が雇用保険未加入であっても、その給与は給付金の調整計算に使用されます。申告漏れは不正受給となりますので、金額の大小を問わず正確に申告してください。

Q2. 両社同時に育休を取得していて、B社から前月分の残業代が当月に支払われました。この残業代は申告が必要ですか?

はい、申告が必要です。給付金の調整に使う「賃金」は、支給単位期間内に実際に支払われた金額が基準となります。前月の労働に対する残業代であっても、当月(支給単位期間内)に支払われていれば、その期間の賃金としてカウントされます。支払日をもとに、該当する支給単位期間の申請書に記載してください。

Q3. 月の途中でB社を退職しました。退職月の翌月にB社から支払われた最終給与はどの支給単位期間に申告しますか?

賃金は実際に支払われた日が属する支給単位期間に申告します。たとえば、退職が7月15日で最終給与の支払日が8月25日であれば、8月25日が属する支給単位期間の申請書に記載します。支払日を正確に確認したうえで申告してください。

Q4. B社の給与がある月とない月が混在しています。毎回の申請で書類が変わりますか?

はい、変わります。B社から給与が支払われた月(支給単位期間)の申請には、B社の給与明細書の添付が必要です。給与がなかった月は、A社の書類のみで申請できます。申請のたびに「その期間にB社から給与の支払いがあったか」を確認し、書類を準備してください。

Q5. ハローワークの窓口と会社の担当者、どちらに相談すればよいですか?

申請内容の確認・給付金の計算方法についてはハローワークに相談してください。一方、書類の作成・提出は原則としてA社の事業主(人事・総務担当者)が行います。複数企業に勤める特殊なケースでは、ハローワークへの直接相談が確実です。管轄ハローワークは、雇用保険被保険者証に記載された「管轄安定所」を確認してください。


まとめ|複数企業から給与をもらった月の育休給付金、ポイントを整理

複数企業から給与を受け取った月の育休給付金計算は、一見複雑に見えますが、以下の4つのポイントを押さえることで正確に対処できます。

ポイント 内容
①給与は必ず合算して申告 A社・B社どちらの給与も申告義務あり。金額の大小は関係なし
②就労日数・時間も合算 両社の勤務日数・時間を合計して10日・80時間の基準を判断
③賃金割合80%で支給停止 受け取った給与が賃金月額の80%以上になると給付金はゼロ
④申告漏れは不正受給 後から発覚した場合、最大3倍の返還義務が生じる

育休中の給付金計算は、状況によって個別の判断が必要なケースもあります。「自分の場合はどうなるのか」と不安な方は、管轄のハローワークの育児休業給付担当窓口に直接相談することを強くお勧めします。正しい申告と手続きで、安心して育休を過ごせる環境を整えてください。


【参考法令・公式情報】
– 雇用保険法 第61条の4、第10条の4
– 雇用保険法施行規則 第101条の19~第101条の33
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」(2026年版)
– ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)

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