育休給付金(育児休業給付金)を受け取るとき、「賃金が低いと給付金も少なくなってしまうのでは?」と不安に感じる方も多いでしょう。実は、賃金日額が一定水準を下回った場合でも、最低保証額が適用される仕組みが法律で定められています。この仕組みにより、パートタイムや非正規労働者といった低賃金層でも、安心して育休を取得できる環境が整備されているのです。
この記事では、育休給付金の賃金日額・最低保証制度の仕組みから計算方法、2025年度の最新数値、申請手続きの流れまでを徹底解説します。パートタイムや非正規雇用で収入が少ない方も、ぜひ最後まで読んで受給可能な金額を確認してください。
育休給付金の賃金日額・最低保証制度とは何か
最低保証制度が設けられた背景
育休給付金は、育児休業中の収入減を補うための雇用保険給付です。本来の給付額は「休業前の賃金」をベースに計算されるため、賃金が低い労働者ほど受け取れる金額が少なくなります。
しかし、育児休業を取得したくても「給付金が少なすぎて生活できない」という状況では、特にパートタイム・アルバイト・非正規労働者が育休を取りにくくなってしまいます。
こうした課題を受け、厚生労働省は賃金日額に最低保証ラインを設定することで、低賃金層でも安心して育休を取得できる環境整備を進めてきました。具体的には、以下のような層が最低保証制度の恩恵を受けやすい対象です。
- 週3〜4日勤務のパートタイム労働者
- 時給制・日給制で働く非正規労働者
- 育休取得前に産前産後休業を取得し、賃金受取月が少ない労働者
- 育休直前に短時間勤務制度を利用していた労働者
最低保証制度は「育休を取得した全員に自動的に適用」されるため、特別な申請は不要です。賃金日額が下限額を下回っている場合、ハローワークが自動的に最低保証額を適用して支給額を決定します。
最低保証額の法的根拠と実施機関(ハローワーク)
育休給付金の賃金日額最低保証制度は、複数の法令が重なる三層構造で成り立っています。
| 法令・告示の種類 | 具体的な根拠 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 雇用保険法 | 第61条の4第4項 | 育児休業給付金の基本給付金に関する規定 |
| 雇用保険法施行規則 | 第99条の2 | 賃金日額の計算方法・最低・上限の枠組み |
| 厚生労働省告示 | 雇用保険(給付)関係告示 | 最低保証額・上限額の具体的な数値設定 |
| 育児・介護休業法 | 第2条・第3条 | 育児休業の定義と取得要件 |
実務窓口はハローワーク(公共職業安定所)です。雇用保険の全給付業務を担当しており、育休給付金の受給資格確認・支給申請・支給決定通知の発行まで一貫して対応します。
法律上の「賃金日額」は最低・上限ともに毎年8月1日前後に改定されます。改定のタイミングは最低賃金の見直しに連動しており、労働者の賃金実態を反映した数値が毎年告示されます。
賃金日額の計算方法と最低保証額の具体的な数字
賃金日額の基本的な計算式
育休給付金の計算の出発点となるのが「賃金日額」です。計算式は以下のとおりです。
賃金日額 = 育休開始前6ヶ月の賃金合計(交通費等を除く) ÷ 180
「180」という数字は、6ヶ月(約180日)を表す固定値です。実際の休日数や就労日数にかかわらず、一律で180で割ります。
雇用形態別の賃金日額の算出例
【例1:月給制の会社員の場合】
月給:250,000円(交通費別)× 6ヶ月 = 1,500,000円
賃金日額 = 1,500,000円 ÷ 180 = 8,333円
【例2:時給制のパートタイム労働者の場合】
時給:1,100円 × 月100時間 × 6ヶ月 = 660,000円
賃金日額 = 660,000円 ÷ 180 = 3,666円
【例3:日給制の労働者の場合】
日給:9,000円 × 月15日 × 6ヶ月 = 810,000円
賃金日額 = 810,000円 ÷ 180 = 4,500円
注意点: 「6ヶ月の賃金合計」に含めるのは、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(2025年10月以降は「10日以上」に変更予定)に限られます。産前産後休業中など賃金の支払いがない月は除いて6ヶ月分をカウントします。
賃金日額に含まれないもの
以下の項目は賃金日額の計算から除外されます。
- 通勤手当(交通費)
- 臨時で支払われた賃金(慶弔見舞金など)
- 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与・ボーナスなど)
- 育休・産休中の社会保険料免除に伴う調整額
支給上限額・下限額(最低保証額)の2025年度最新数値
賃金日額には、上限額と下限額が設定されています。2025年度(令和7年度)の数値は以下のとおりです。
| 区分 | 賃金日額 | 月額換算の目安 |
|---|---|---|
| 上限額 | 15,430円 | 約309,000円相当 |
| 下限額(最低保証) | 2,746円 | 約55,000円相当 |
※2025年8月以降に改定される可能性があります。最新情報は厚生労働省の公式ページまたはハローワークでご確認ください。
賃金日額の上限・下限が実際の支給額に与える影響
賃金日額が算出されたら、給付率を掛けて1支給単位期間(原則2ヶ月)の支給額が決まります。
支給額(1日あたり) = 賃金日額 × 給付率(67%または50%)
| 育休期間 | 給付率 |
|---|---|
| 育休開始から180日目まで | 67% |
| 育休開始181日目以降 | 50% |
※2025年4月以降、一定の条件(両親がともに育休を取得する場合など)で給付率が引き上げられる制度改正が実施・予定されています。最新の制度変更はハローワークにご確認ください。
最低保証発動ラインと支給額の計算例
賃金日額が下限額(2,746円)を下回るケース:
実際の賃金日額:2,200円(下限額未満)
→ 自動的に賃金日額 2,746円 に切り上げ
支給額(日額):2,746円 × 67% = 約1,840円
2ヶ月(60日)の支給額:1,840円 × 60日 = 約110,400円
賃金日額が上限額(15,430円)を上回るケース:
実際の賃金日額:18,000円(上限額超過)
→ 自動的に賃金日額 15,430円 に切り下げ
支給額(日額):15,430円 × 67% = 約10,338円
2ヶ月(60日)の支給額:10,338円 × 60日 = 約620,280円
最低保証制度の対象者と受給要件
育休給付金の基本受給要件
最低保証制度は、育休給付金の受給資格を持つすべての人に自動適用されます。まず、育休給付金自体の受給要件を確認しましょう。
| 要件項目 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険の加入 | 雇用保険被保険者であること |
| 被保険者期間 | 育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が12ヶ月以上(2025年10月以降は10日以上に変更予定) |
| 育休中の就労制限 | 育休中の就労時間が月10日以下(10日を超える場合は80時間以下) |
| 同一の子に係る給付 | 同一の子について、すでに育休給付金を受給していないこと |
ポイント: 雇用形態は問いません。正社員はもちろん、パートタイム・有期雇用・派遣社員も雇用保険に加入していれば対象です。
最低保証が特に重要になるケース
以下のようなケースでは、賃金日額が下限額付近になりやすいため、最低保証制度の確認が特に重要です。
① 短時間勤務・パートタイム労働者
週20〜30時間勤務で時給制の方は、月収が10〜15万円程度になることが多く、賃金日額が下限に近づく場合があります。
② 育休前に産前産後休業を取得した方
産前産後休業中は賃金が支払われないため、賃金日額の計算に含める月数が少なくなります。産休→育休と続けて取得する場合は特に注意が必要です。
③ 育休直前に勤務時間を短縮していた方
短時間勤務制度を利用して育休直前の給与が下がっていた場合でも、育休開始前6ヶ月の賃金がそのまま計算の基礎となります。
④ 育休中に賃金一部支払いがある方
育休中に事業主から賃金が支払われる場合、一定額を超えると給付金が減額・不支給になることがあります。最低保証額と賃金の関係性を事前に確認しましょう。
申請手続きの流れと必要書類
申請の全体的な流れ
育休給付金の申請は、事業主(会社)を通じて行うのが原則です。ただし、事業主が申請手続きをしない場合は、労働者本人が直接ハローワークに申請することもできます。
【STEP 1】育休開始1ヶ月前まで
└─ 事業主がハローワークに「育児休業給付受給資格確認票・
育児休業給付金支給申請書」を提出(初回確認用)
【STEP 2】育休開始日から起算して4ヶ月以内
└─ 第1回目の育児休業給付金支給申請書を提出
(1支給単位期間=原則2ヶ月分)
【STEP 3】ハローワークが審査・支給決定
└─ 支給決定通知書が事業主または本人に送付される
【STEP 4】指定口座に給付金が振込まれる
【STEP 5】以降2ヶ月ごとに継続申請
└─ 育休終了まで2ヶ月ごとに「育児休業給付金支給申請書」を提出
重要: 申請は育休開始後4ヶ月以内が原則です。期限を過ぎると給付金を受け取れなくなる場合があるため、育休開始と同時に会社の担当者に申請時期を確認しましょう。
初回申請に必要な書類
| 書類名 | 提出者 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書 | 事業主または本人 | ハローワーク所定様式。電子申請可能 |
| 雇用保険被保険者証(写し) | 事業主または本人 | 被保険者番号の確認に使用 |
| 出生を確認できる書類 | 本人 | 母子健康手帳・出生届受理証明書など |
| 賃金台帳(直近6ヶ月分) | 事業主 | 賃金日額の算出に使用 |
| 出勤簿またはタイムカード(直近6ヶ月分) | 事業主 | 賃金支払基礎日数の確認に使用 |
| 本人の振込先口座を確認できる書類 | 本人 | 通帳の写しまたはキャッシュカードの写し |
| 育児休業申出書(写し) | 事業主 | 育休取得を証明するもの |
2回目以降(継続申請)に必要な書類
2回目以降は原則として以下の書類のみで申請できます(書類が大幅に簡略化されます)。
| 書類名 | 提出者 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 事業主または本人 | 2ヶ月ごとに提出 |
| 賃金台帳(支給申請対象期間分) | 事業主 | 育休中に就労した場合のみ必要 |
| 出勤簿(支給申請対象期間分) | 事業主 | 育休中に就労した場合のみ必要 |
電子申請について
2023年以降、e-Gov電子申請や社会保険手続きの電子化が進んでいます。事業主はマイナポータルやe-Govを通じてオンラインで申請できるため、事前に利用可能かどうか会社の担当部署に確認しましょう。本人申請の場合も、一部の手続きは電子申請に対応しています。
実際の支給額シミュレーション
シミュレーション①:最低保証が発動しないパートタイム労働者
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月収(税込・交通費除く) | 95,000円 |
| 6ヶ月合計賃金 | 570,000円 |
| 計算上の賃金日額 | 570,000円 ÷ 180 = 3,166円 |
| 下限額(最低保証) | 2,746円 |
| 最低保証の発動 | なし(3,166円 > 2,746円) |
| 育休開始〜180日:支給日額 | 3,166円 × 67% = 約2,121円 |
| 2ヶ月(60日)の支給額 | 約127,260円 |
このケースでは、計算上の賃金日額が下限額を上回っているため、最低保証は発動しません。
シミュレーション②:最低保証が発動する超短時間労働者
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月収(税込・交通費除く) | 45,000円 |
| 6ヶ月合計賃金 | 270,000円 |
| 計算上の賃金日額 | 270,000円 ÷ 180 = 1,500円 |
| 下限額(最低保証) | 2,746円 |
| 最低保証の発動 | あり(1,500円 < 2,746円) |
| 適用される賃金日額 | 2,746円(自動切り上げ) |
| 育休開始〜180日:支給日額 | 2,746円 × 67% = 約1,840円 |
| 2ヶ月(60日)の支給額 | 約110,400円 |
月収45,000円のケースでも、最低保証により約110,000円/2ヶ月の給付金が受け取れます。
シミュレーション③:上限額が発動する高収入労働者
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月収(税込・交通費除く) | 450,000円 |
| 6ヶ月合計賃金 | 2,700,000円 |
| 計算上の賃金日額 | 2,700,000円 ÷ 180 = 15,000円 |
| 上限額 | 15,430円 |
| 上限の発動 | なし(15,000円 < 15,430円) |
| 育休開始〜180日:支給日額 | 15,000円 × 67% = 約10,050円 |
| 2ヶ月(60日)の支給額 | 約603,000円 |
給付金受給中の注意点と減額・不支給ルール
育休中に就労した場合の扱い
育休中でも、月に一定時間以内であれば就労(アルバイトなど)が認められています。ただし、就労収入の額によって給付金が減額または不支給になります。
| 就労日数・収入 | 給付金への影響 |
|---|---|
| 月10日以下(10日超の場合は就労時間80時間以下) | 給付金の受給資格を維持 |
| 就労収入+給付金が休業前賃金の80%以内 | 給付金は全額支給 |
| 就労収入+給付金が休業前賃金の80%超 | 超過分だけ給付金が減額 |
| 就労収入単独で休業前賃金の80%以上 | 給付金は不支給 |
社会保険料との関係
育休中は、申請により社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。この免除は育休給付金とは別の制度(育児・介護休業法に基づく免除)ですが、収入シミュレーションの際には合わせて計算に入れましょう。
免除された社会保険料分も実質的な「手取り増加」として機能するため、育休前の手取り収入と比較した実質的な給付率は、名目上の67%・50%よりも高くなるケースが多いです。
よくある疑問(FAQ)
Q1. 産前産後休業に続けて育休を取得した場合、賃金日額はどう計算されますか?
産前産後休業中は原則として賃金の支払いがないため、賃金日額の計算からは除かれます。産前産後休業開始前まで遡って賃金支払基礎日数が11日以上ある月を6ヶ月分集めて計算します。具体的な計算期間については、会社の担当者またはハローワークに確認することをおすすめします。
Q2. 賃金日額が最低保証額を下回ると自動的に適用されますか?それとも申請が必要ですか?
自動的に適用されます。特別な申請は不要です。ハローワークが賃金台帳等のデータから賃金日額を計算し、下限額を下回っていれば自動的に最低保証額を適用して支給決定します。
Q3. パパ育休(産後パパ育休)でも最低保証制度は適用されますか?
はい、適用されます。2022年10月に創設された産後パパ育休(出生時育児休業)も育児休業給付金(出生時育児休業給付金)の対象であり、賃金日額の最低保証・上限のルールは同様に適用されます。
Q4. 育休給付金の最低保証額は毎年変わりますか?
はい、原則として毎年8月1日前後に改定されます。最低賃金の全国加重平均額に連動する形で見直しが行われるため、毎年8月以降は厚生労働省の告示やハローワークの窓口で最新の数値を確認するようにしましょう。
Q5. 育休を分割取得した場合、賃金日額はそれぞれ別に計算されますか?
2022年10月の法改正により、育休を分割取得(2回まで)できるようになりました。分割取得の場合、原則として最初の育休開始前6ヶ月の賃金を基準に賃金日額が計算されます。2回目以降の取得でも同じ賃金日額が適用されるため、実質的に給付額は同じになります。
Q6. 育休給付金の申請が遅れてしまった場合はどうなりますか?
申請期限(育休開始後4ヶ月以内)を過ぎてしまった場合でも、2年以内であれば遡及申請が可能です。ただし、遅延理由によっては受理されないケースもあるため、できるだけ早めにハローワークに相談してください。
Q7. 有期雇用(契約社員・派遣社員)でも受給できますか?
受給できます。有期雇用であっても、雇用保険に加入しており基本要件を満たしていれば育休給付金の対象です。ただし、育休申出時点で「子が1歳6ヶ月になる日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」という条件が付く場合があります。契約更新の見通しが不明な場合は、早めにハローワークまたは会社の担当者に相談しましょう。
まとめ
育休給付金の賃金日額・最低保証制度について、重要なポイントをまとめます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の目的 | 低賃金労働者でも育休取得を可能にするセーフティネット |
| 法的根拠 | 雇用保険法第61条の4・施行規則・厚生労働省告示 |
| 賃金日額の計算式 | 育休前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 |
| 2025年度下限額 | 賃金日額 2,746円(自動適用) |
| 2025年度上限額 | 賃金日額 15,430円 |
| 給付率 | 育休開始〜180日:67% / 181日目以降:50% |
| 申請方法 | 事業主経由でハローワークに申請(電子申請も可) |
| 最低保証の申請 | 特別な申請不要・自動適用 |
賃金が低くても最低保証制度があるため、育休給付金は必ず受け取れます。まず自分の賃金日額を計算し、下限額を下回る場合は最低保証額がそのまま適用されることを覚えておきましょう。
申請手続きに不安がある場合は、最寄りのハローワークに相談するか、会社の人事担当者に早めに確認することをおすすめします。育休取得を検討している方は、育休開始の1〜2ヶ月前を目安に準備を始めましょう。
免責事項: 本記事の情報は2025年7月時点のものです。給付額・申請期限・必要書類は制度改正により変更される場合があります。最新情報は必ずハローワークまたは厚生労働省の公式ウェブサイトでご確認ください。

