育休中の年末調整|給付金は非課税・扶養控除の手続き【2025年改正対応】

育休中の年末調整|給付金は非課税・扶養控除の手続き【2025年改正対応】 企業の育休対応

育休中の従業員を抱える企業の人事担当者にとって、年末調整の取り扱いは毎年頭を悩ませる問題です。「育児休業給付金は課税されるの?」「給与が0円でも年末調整は必要?」「扶養控除の判定はどうすれば?」――こうした疑問に、法的根拠を交えながら実務レベルで徹底解説します。


育休中の年末調整とは|給与所得と育児給付金の違い

育休中の従業員の年末調整は、一般の従業員と同じ所得税法の枠組みで対応します。育児・介護休業法は休業の取得権利を定めた法律であり、税務手続きは別の法律体系が適用されます。まずは基本的な仕組みから整理しましょう。

年末調整が必要とされる法的根拠

年末調整は所得税法第190条・第191条に基づく企業の義務です。企業は給与を支払っている(または支払っていた)従業員に対して、毎年12月末時点で正確な税額を計算し、源泉徴収税額との差額を精算しなければなりません。

条文 内容
所得税法第190条 年末調整の実施義務(給与支払者)
所得税法第191条 年の中途退職者等への対応
所得税法施行令第318〜327条 扶養控除の具体的な判定基準

育休中の従業員は雇用契約が継続しているため、給与支払対象者に該当します。その年に1円でも給与の支払いがある、あるいは12月31日時点で在籍しているならば、年末調整の対象となります。

育児休業給付金は「非課税」|給与所得との区別

育児休業給付金は雇用保険法第61条の7に基づく給付であり、所得税法第9条第1項第15号により非課税と定められています。

【育休中の収入と課税関係まとめ】

区分 課税関係 年末調整・扶養判定
育休前後の給与 課税(給与所得) 対象
育児休業給付金 非課税 対象外(計上しない)
出産手当金 非課税 対象外(計上しない)
出産育児一時金 非課税 対象外(計上しない)

ポイント: 育児休業給付金は月額賃金の最大80%が支給されますが、これはあくまで雇用保険からの給付金です。所得税・住民税の課税対象にならず、扶養控除の判定時にも収入として計上しません。

育休中も「従業員」として扱われる理由

育休中であっても、雇用契約は継続しています。12月31日時点で在籍している場合、企業は年末調整を実施する義務があります。「給与が0円だから何もしなくていい」と放置するのは誤りであり、源泉徴収票の交付漏れとなる可能性があります。

企業が注意すべき主な漏れパターン:
– 育休中の従業員を年末調整リストから外してしまう
– 育児休業給付金を給与所得として誤計上する
– 給与が0円の場合に源泉徴収票を発行しない


育休中の従業員が年末調整対象となる条件

年末調整の対象者を正確に判定することは、人事担当者の基本業務です。育休特有のケースごとに確認しましょう。

「12月31日時点で在籍」の意味と確認方法

年末調整の対象判定で最も重要なのが、12月31日時点の在籍確認です。

状況 年末調整 備考
育休中(12月31日時点で在籍) 必要 給与0円でも対象
育休から復職済み(12月中) 必要 通常通り
育休中に退職(12月31日以前) 不要(本人が確定申告) 源泉徴収票は交付
産休→育休移行中(12月31日在籍) 必要 産休・育休一体で判定

企業が確認すべき書類:
育児休業申出書(写し):休業期間と復職予定日
雇用契約書・労働条件通知書:在籍の継続確認
給与台帳・勤怠記録:その年の給与支払実績

給与が0円の場合の年末調整の進め方

育休期間が1月から12月まで続いた場合、その年の年間給与額が0円になるケースがあります。この場合でも手続きは必要です。

給与0円の場合の年末調整フロー:

  1. 給与所得 → 0円
  2. 所得控除(基礎控除・社会保険料控除等)→ 各種控除を記載
  3. 課税所得 → 0円(還付税額も0円)
  4. 源泉徴収票 → 発行・交付(必須)
  5. 給与支払報告書 → 市区町村へ提出

注意: 給与0円でも給与支払報告書の提出義務(地方税法第317条の6)はあります。住民税の非課税確認のためにも、自治体へ必ず提出してください。


扶養控除の判定方法|育休中従業員の具体的な計算例

育休中の従業員本人の所得判定

育休中の従業員が配偶者控除・扶養控除を受けられるかを判定するには、その年の「合計所得金額」を計算します。

【合計所得金額の計算(育休中の場合)】

年間給与収入(育休前後の実際支給額)
   ↓
給与所得控除(所得税法第28条)を差し引く
   ↓
給与所得=合計所得金額(給付金は含めない)

具体例:

従業員Aさん(育休:4月〜12月)
– 1月〜3月の給与支給:月給30万円 × 3ヶ月 = 90万円
– 育児休業給付金:非課税のため合計所得に含めない
– 給与所得控除:90万円 − 55万円(最低控除額)= 給与所得35万円
– 配偶者控除の適用:合計所得金額48万円以下 → 適用可能

配偶者が育休中の場合の「配偶者控除」適用

育休中の配偶者を扶養に入れる場合(例:育休中の妻を夫が配偶者控除の対象にする)にも、同様に合計所得金額で判定します。

配偶者の合計所得金額 適用できる控除
48万円以下 配偶者控除(最大38万円)
48万円超〜133万円以下 配偶者特別控除(段階的に逓減)
133万円超 配偶者控除・特別控除ともに適用不可

育児休業給付金は合計所得金額に含まれないため、育休期間中の給与が低い年は配偶者控除が適用されやすくなります。

2025年施行「育休控除制度」への対応

租税特別措置法第41条の3の2に基づく育休控除制度が2025年より施行されました。この制度では、育休を取得した期間に対応する所得金額調整控除の適用拡大が盛り込まれており、企業担当者は最新の国税庁通達を確認したうえで対応することが必要です。

2025年改正の主なポイント(確認事項):
– 所得金額調整控除の対象要件の変更
– 育休取得年の年末調整における添付書類の追加有無
– 国税庁「年末調整のしかた(令和7年版)」の参照

実務アドバイス: 毎年秋に国税庁から発行される「年末調整のしかた」および「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載例を必ず確認し、最新様式を使用してください。


必要書類と申告期限|育休中の従業員向け手続きチェックリスト

企業が用意・回収すべき書類一覧

書類名 提出者 入手方法 期限目安
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 従業員→企業 国税庁HP・税務署 毎年最初の給与支払日前
給与所得者の保険料控除申告書 従業員→企業 国税庁HP・税務署 年末調整時
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 従業員→企業 国税庁HP・税務署 年末調整時
生命保険料控除証明書 各保険会社から従業員へ 保険会社 10月〜11月頃送付
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 日本年金機構から従業員へ 日本年金機構 10月〜11月頃送付
住宅借入金等特別控除申告書 従業員→企業 税務署(2年目以降は本人保管分) 年末調整時
源泉徴収票(交付) 企業→従業員 企業が作成 翌年1月31日まで
給与支払報告書 企業→市区町村 企業が作成 翌年1月31日まで

育休中の従業員への書類送付の注意点

育休中の従業員は会社に出社していないため、郵送・電子申告システム・電子メールでの書類のやり取りが中心になります。

実務上のポイント:

  1. 書類送付は10月末〜11月初旬を目安に 育休中の従業員に申告書類を郵送し、返送期限を明示する
  2. 電子申告(e-Tax)活用の検討 従業員がオンラインで記入・提出できる環境を整備すると、育休中でもスムーズ
  3. 保険料控除証明書の紛失に注意 育休中は自宅への郵便物の管理が手薄になりがち。再発行手続きの案内も添える
  4. マイナンバーの確認 扶養家族を追加する場合はマイナンバーの記載が必要。事前確認を忘れずに

年末調整後の源泉徴収票交付と法定調書の提出

年末調整完了後は以下の期限を守って手続きを完了させます。

手続き 提出先 期限
源泉徴収票の従業員への交付 従業員本人 翌年1月31日まで
給与支払報告書の提出 各市区町村 翌年1月31日まで
法定調書合計表の提出 所轄税務署 翌年1月31日まで
源泉所得税の納付(12月分) 税務署 翌年1月10日まで(納期特例は1月20日)

よくあるミスと対策|人事担当者のための実務注意点

育児休業給付金を給与として誤計上してしまうケース

最も多いミスが「育児休業給付金を給与所得に含めてしまう」ことです。給付金の支給通知書が届いた際、金額が大きいため誤って給与台帳に記載するケースがあります。

対策: 給与台帳・源泉徴収票の作成前に、「給与として支払った金額のみ」を対象にしているか必ず確認する。給付金は雇用保険から直接支給されるため、企業の給与支払には含まれません。

育休中の従業員を年末調整リストから外すミス

「給与0円だから対象外」と誤認し、年末調整のリストから除外してしまうケースです。

対策: 在籍者名簿と給与台帳を突き合わせ、給与支払実績がない場合も在籍確認を行うフローを整備する。給与0円の場合も源泉徴収票(支払金額0円)を発行・交付します。

扶養親族の申告漏れ

育休中に子どもが生まれた場合、その子どもを扶養親族として申告するのを忘れるケースがあります。出生後すみやかに「扶養控除等(異動)申告書」の変更を促しましょう。

対策: 出産報告を受けたタイミングで、人事担当者から「扶養控除等(異動)申告書の変更が必要です」と案内する仕組みを作る。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育児休業給付金は確定申告が必要ですか?

A. 育児休業給付金は非課税のため、確定申告は不要です。ただし、育休中に副業収入がある場合や、医療費控除・住宅ローン控除(初年度)を受ける場合は確定申告が必要になります。


Q2. 育休中に退職した従業員の年末調整はどうなりますか?

A. 12月31日以前に退職した場合は年末調整の対象外となり、企業は源泉徴収票を交付するのみです。退職した従業員本人が翌年2月16日〜3月15日に確定申告を行う必要があります。


Q3. 配偶者が育休中の場合、配偶者控除は受けられますか?

A. 配偶者の合計所得金額(育児休業給付金を除く)が48万円以下であれば、配偶者控除(最大38万円)を受けることができます。育休期間が長いほど給与所得が少なくなるため、控除が適用されやすくなります。


Q4. 育休中の従業員への年末調整書類はいつ送ればよいですか?

A. 通常の年末調整と同じスケジュールで進めます。10月末〜11月初旬に書類を郵送し、11月下旬〜12月上旬を返送期限として設定するのが一般的です。育休中は自宅管理が手薄になるため、送付方法(郵送・電子申告)と期限を明示した案内状を同封しましょう。


Q5. 給与0円の育休中従業員でも市区町村への給与支払報告書の提出は必要ですか?

A. 必要です。地方税法第317条の6に基づき、在籍する従業員の給与支払報告書は支払金額が0円であっても提出義務があります。これにより住民税の非課税確認が適切に行われます。


Q6. 2025年施行の育休控除制度とは具体的にどのような内容ですか?

A. 租税特別措置法第41条の3の2に基づく制度で、所得金額調整控除の対象拡大などが含まれます。詳細な適用要件・添付書類については、国税庁が毎年秋に発行する「年末調整のしかた(最新版)」および最新の税制改正通達を確認してください。


まとめ:育休中の年末調整「5つの重要ポイント」

  1. 育児休業給付金は非課税 → 年末調整・扶養判定の合計所得に含めない
  2. 12月31日時点の在籍者は全員対象 → 給与0円でも年末調整・源泉徴収票交付が必要
  3. 扶養控除は合計所得金額で判定 → 育休年は給与所得が低くなるため控除が適用されやすい
  4. 書類は郵送・電子で早めに送付 → 10月末〜11月初旬を目安に案内する
  5. 2025年改正に対応した様式・通達を確認 → 国税庁の最新情報を毎年チェック

育休中の従業員への年末調整は、正しい知識と早めの準備が何より重要です。本ガイドを参考に、漏れのない手続きを実現してください。


参考法令・資料
– 所得税法第9条・第28条・第190条・第191条
– 所得税法施行令第318条〜第327条
– 雇用保険法第61条の7
– 地方税法第317条の6
– 租税特別措置法第41条の3の2
– 国税庁「年末調整のしかた(令和7年版)」
– 国税庁「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」記載例

よくある質問(FAQ)

Q. 育児休業給付金は所得税の課税対象になりますか?
A. いいえ。育児休業給付金は所得税法第9条第1項第15号により非課税と定められています。年末調整や扶養控除の判定時にも収入として計上しません。

Q. 育休中で給与が0円の場合、年末調整は必要ですか?
A. はい。12月31日時点で在籍していれば年末調整は必須です。給与0円でも源泉徴収票の発行と給与支払報告書の市区町村提出義務があります。

Q. 育休中の従業員を扶養家族に入れることはできますか?
A. 育児休業給付金のみの場合は可能です。ただし給与がある月は年額103万円を超えないか確認が必要。配偶者控除の判定では別途条件があるため注意してください。

Q. 育休中に給与が一部支払われた場合、年末調整の対象になりますか?
A. はい。その年に1円でも給与支払いがあれば年末調整対象です。育休前後の給与や育児短時間勤務による給与を含めて計算します。

Q. 産休から育休に移行した場合、年末調整はどう対応しますか?
A. 産休・育休を一体で判定し、12月31日時点で在籍していれば年末調整が必要です。産休手当金も非課税のため、収入計上からは除外します。

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