出産・育児に備えてお金の準備を進めている方の中には、「出産育児一時金と育休給付金は同時にもらえるの?どちらかが減額されるの?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、出産育児一時金と育休給付金は調整されません。両方を満額で受け取ることができます。
この記事では、2024年最新情報をもとに、二つの給付金の仕組み・支給要件・申請手続きを徹底解説します。
出産育児一時金と育休給付金は調整される?【結論】
出産育児一時金と育休給付金は異なる保険制度
出産育児一時金と育休給付金が「調整なし・併給可能」である最大の理由は、まったく異なる保険制度に基づく給付だからです。
| 項目 | 出産育児一時金 | 育休給付金 |
|---|---|---|
| 制度の根拠法 | 健康保険法 | 雇用保険法 |
| 所管窓口 | 健康保険組合・協会けんぽ | ハローワーク(公共職業安定所) |
| 給付の性質 | 医療費補助(出産費用の負担軽減) | 生活保障(育休中の収入補填) |
| 支給タイミング | 出産時(後払い一括) | 育児休業中(2ヶ月ごと) |
| 財源 | 健康保険料 | 雇用保険料 |
二つの給付はそれぞれ独立した財源・制度設計のもとで運営されており、一方が支給されても他方の金額に影響を与えません。
法的根拠:調整がない理由を法令で証明
法令の観点から確認すると、調整がない理由は明確です。
出産育児一時金の根拠は健康保険法第101条~第104条です。同法には育休給付金との支給調整に関する規定は一切存在しません。
育休給付金の根拠は雇用保険法第61条の7(旧第60条の2)および雇用保険法施行規則です。こちらにも出産育児一時金を控除・減額する条文はありません。
つまり、法律上どちらにも「他方の給付が支給された場合に減額する」という条文が存在しないため、両者は独立して満額支給されます。
「調整される」という誤解が生じる背景
調整されるという誤解が広まる背景には、以下のようなケースとの混同があると考えられます。
- 傷病手当金と出産手当金の調整:同じ健康保険内の給付では調整規定が存在するケースがある
- 育休中の社会保険料免除:育休中は社会保険料が免除されるため「何かが調整されている」というイメージが先行しやすい
- 高額療養費との関係:医療費関連給付との混同
いずれも出産育児一時金・育休給付金の話ではなく、別制度の話です。混同しないよう注意しましょう。
出産育児一時金の制度概要・支給要件
出産育児一時金の支給額と2023年改正内容
出産育児一時金は、2023年4月1日以降の出産から1児につき50万円に引き上げられました(改正前は42万円)。
| 出産時期 | 支給額 |
|---|---|
| 2023年3月31日以前 | 42万円(産科医療補償制度加入医療機関での出産の場合) |
| 2023年4月1日以降 | 50万円 |
ポイント:多胎出産(双子・三つ子など)の場合は、胎児の数に応じて1人分ずつ支給されます。双子であれば50万円×2=100万円となります。
支給対象となる出産の条件(期間・流産・死産)
出産育児一時金が支給される「出産」の条件は以下のとおりです。
- 妊娠85日(4ヶ月)以上の出産であること
- 生産・死産・流産・人工妊娠中絶のいずれも対象
- 出産予定日の前98日以内または後57日以内の出産
注意:妊娠4ヶ月(85日)未満の流産・人工妊娠中絶は支給対象外です。
被保険者・被扶養配偶者の申請条件の違い
申請できる対象者は以下の2パターンです。
① 健康保険の被保険者本人が出産した場合
健康保険に加入している本人(正社員・一定条件を満たすパート・アルバイト等)が対象です。退職後6ヶ月以内の出産であれば、退職前の健康保険から支給される場合もあります。
② 被扶養配偶者が出産した場合(家族出産育児一時金)
被保険者の配偶者が被扶養者として健康保険に加入している場合、支給額は同じく50万円です。
自営業者・専業主婦の方へ:国民健康保険に加入している場合も、出産育児一時金は支給されます。ただし申請先は市区町村の国民健康保険窓口となります。
出産育児一時金の支給時期(後払い)と請求方法
支給タイミング:出産後に後払いで支給されます。
申請方法(直接支払制度の場合)
多くの医療機関では「直接支払制度」が利用できます。この制度を使うと、50万円が医療機関に直接支払われるため、窓口での支払いは差額分のみとなります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 入院前 | 医療機関と直接支払制度の利用に同意する書類を締結 |
| ② 出産後 | 医療機関が健康保険組合へ一時金を直接請求 |
| ③ 差額の申請 | 出産費用が50万円未満の場合、差額を被保険者が健康保険組合へ請求(出産日の翌日から2年以内) |
必要書類(差額請求の場合)
- 健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書
- 出産を証明する書類(母子健康手帳の写し、医師の証明書等)
- 直接支払制度に係る合意文書のコピー
- 医療機関からの明細書・領収書
育休給付金の制度概要・支給要件
育休給付金の支給額と給付率の計算方法
育休給付金の支給額は、以下の計算式で算出されます。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
給付率
| 育休開始からの期間 | 給付率 |
|---|---|
| 育休開始~180日目まで | 67% |
| 181日目以降 | 50% |
2025年度からの改正予定:2025年4月以降、育休開始から28日間については給付率が実質80%相当(社会保険料免除との合算ベース)に引き上げられる予定です。最新情報は厚生労働省・ハローワークにてご確認ください。
計算例
- 休業開始前6ヶ月の賃金合計:180万円
- 賃金日額:180万円 ÷ 180日 = 10,000円
- 支給日数(2ヶ月):60日
- 給付額(180日以内):10,000円 × 60日 × 67% = 402,000円
育休給付金の支給対象者・受給要件
育休給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
① 雇用保険の被保険者であること
週20時間以上の勤務かつ31日以上の雇用見込みがある方が対象です。
② 育児休業を取得していること
子が原則1歳(保育所に入れない等の場合は最長2歳)になるまでの育児休業が対象となります。
③ 被保険者期間の要件
育児休業開始日の前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること。
④ 就業日数の要件
支給対象期間(1ヶ月)中の就業日数が10日以下(10日を超える場合は就業した時間が80時間以下)であること。
非対象者
- 自営業者(雇用保険に任意加入している場合を除く)
- 専業主婦・主夫
- 雇用保険未加入のアルバイト・パート
育休給付金の支給期間・支給スケジュール
| 支給期間 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 子が1歳になるまで |
| 延長(1回目) | 保育所未入所等の事由で子が1歳6ヶ月まで延長可 |
| 延長(2回目) | さらに事由が続く場合は2歳まで延長可 |
支給は2ヶ月ごとにまとめて振り込まれます。育休開始から約2ヶ月後に初回の振り込みがあるのが一般的です。
育休給付金の申請手続きと必要書類
申請の流れ
育休給付金の申請は、事業主(会社)経由でハローワークに提出するのが原則です。
| ステップ | 誰が行うか | 内容 |
|---|---|---|
| ① 休業開始の連絡 | 労働者→会社 | 育児休業取得の申し出 |
| ② 初回申請 | 会社→ハローワーク | 育休開始から4ヶ月以内に提出 |
| ③ 2回目以降の申請 | 会社→ハローワーク | 2ヶ月ごとに申請 |
| ④ 振り込み | ハローワーク→労働者 | 口座への直接振り込み |
必要書類(初回申請)
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳・出勤簿(休業開始前6ヶ月分)
- 母子健康手帳(子の生年月日確認のため)
- 育児休業の対象となる子の証明書類(住民票など)
- 雇用保険被保険者証
申請期限の注意点:初回申請は育児休業を開始した日の翌日から4ヶ月以内です。この期限を過ぎると受給できなくなる可能性があります。会社の担当者に早めに相談しましょう。
出産育児一時金と育休給付金を併給する場合のポイントまとめ
時系列で整理する:いつ何を受け取れるか
出産・育休に伴うお金の流れを時系列で確認しましょう。
【妊娠中】
↓
【産前休業開始(出産予定日42日前~)】
↓
【出産】
→ 出産育児一時金:50万円(一括)← この時期に支給
↓
【産後休業(出産後8週間)】
↓
【育児休業開始】
→ 育休給付金:2ヶ月ごとに支給 ← この時期に支給
↓
【子が1歳(最長2歳)まで継続】
出産育児一時金は出産時に一括で支給され、育休給付金は育休中に分割で支給されるため、タイミングが異なる点も踏まえて家計管理を行いましょう。
育休中の社会保険料免除との関係
育休中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。これは給付金の調整ではなく、育休取得者の負担軽減を目的とした別の制度です。
免除申請は事業主が年金事務所に申請するため、労働者本人の手続きは基本的に不要です。免除された社会保険料は、将来の年金額の計算や健康保険の資格には影響しない(支払ったものとみなされる)ため安心してください。
育休給付金(67%)+社会保険料免除を合わせると、手取りベースで育休前の約80%相当を確保できるとされています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出産育児一時金と育休給付金は確定申告の対象になりますか?
A. どちらも非課税です。所得税・住民税の課税対象にはならないため、確定申告に記載する必要はありません。
Q2. 夫も育休を取得した場合、夫婦それぞれが育休給付金を受け取れますか?
A. はい、受け取れます。夫婦それぞれが雇用保険の被保険者であり要件を満たしていれば、各自の賃金をもとに計算された育休給付金を両方受給できます。
Q3. 出産後すぐに育休を開始した場合、産後休業中も育休給付金は支給されますか?
A. 産後8週間(産後休業期間)は育休給付金の支給対象外です。育休給付金は産後休業が終了し、育児休業が始まってから支給されます。なお、産前産後休業中は出産手当金(健康保険)の受給対象となりますので、こちらも確認しておきましょう。
Q4. 育休給付金の申請が遅れた場合はどうなりますか?
A. 申請期限(初回は育休開始翌日から4ヶ月以内、2回目以降は2ヶ月ごと)を過ぎると、受給できなくなるリスクがあります。期限を過ぎた場合でも、やむを得ない理由がある場合は事後申請が認められるケースがあります。まずはハローワークか会社の人事担当者に速やかに相談してください。
Q5. 自営業者は出産育児一時金と育休給付金の両方を受け取れますか?
A. 出産育児一時金については、国民健康保険に加入していれば受け取れます。一方、育休給付金は雇用保険の給付であるため、原則として自営業者は対象外です(雇用保険に任意加入している場合を除く)。
Q6. 育休給付金は途中で就労すると支給が止まりますか?
A. 支給対象期間中の就業日数が10日以下(10日超の場合は就業時間が80時間以下)であれば支給されます。それを超えた場合は当該月の支給対象外となります。短時間の就労(慣らし保育への対応など)については事前にハローワークに確認することをおすすめします。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 調整の有無 | 調整なし・両方満額受給可能 |
| 出産育児一時金 | 健康保険から50万円一括支給(2023年4月以降) |
| 育休給付金 | 雇用保険から67%(180日超後は50%)を2ヶ月ごとに支給 |
| 課税の有無 | どちらも非課税 |
| 申請窓口 | 一時金は健康保険組合・協会けんぽ/給付金はハローワーク(会社経由) |
出産・育児に関する給付金は、知らないと損をしてしまうものも少なくありません。申請期限を守り、必要書類を早めに準備することで、安心して育休を過ごせるよう備えましょう。不明な点は、会社の人事担当者またはお近くのハローワーク・社会保険労務士にご相談ください。
免責事項:本記事は2024年時点の情報をもとに執筆しています。制度の改正により内容が変わる場合がありますので、申請前には必ず厚生労働省・ハローワーク・加入している健康保険組合の最新情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 出産育児一時金と育休給付金は同時にもらえますか?
A. はい、両方満額で受け取れます。異なる保険制度(健康保険法と雇用保険法)に基づいているため、調整されません。
Q. 出産育児一時金はいくらもらえますか?
A. 2023年4月1日以降の出産から1児につき50万円です。改正前は42万円でした。多胎出産の場合は胎児数分支給されます。
Q. 妊娠4ヶ月未満の流産でも出産育児一時金がもらえますか?
A. いいえ。妊娠85日(4ヶ月)以上の出産が対象です。4ヶ月未満の流産・中絶は支給対象外となります。
Q. 退職後に出産する場合も出産育児一時金がもらえますか?
A. はい。退職後6ヶ月以内の出産であれば、退職前の健康保険から支給される場合があります。詳細は保険組合に確認してください。
Q. 自営業者や専業主婦でも出産育児一時金はもらえますか?
A. はい。国民健康保険に加入していれば支給されます。申請先は市区町村の国民健康保険窓口です。
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