育休中の通勤手当・住宅手当は支給される?判定基準と企業別対応【2026年版】

育休中の通勤手当・住宅手当は支給される?判定基準と企業別対応【2026年版】 育児休業制度

育児休業(育休)を取得すると、毎月の給与支払いは原則としてストップします。しかし「通勤手当」や「住宅手当」はどうなるのか——実はこの2つの手当については、法律で一律に決まっているわけではなく、企業ごとの就業規則・給与規程によって判定が異なります

本記事では、育休中の各種手当の支給判定の考え方・判定フロー・実務統計・手続き上の注意点を、労働者・人事担当者の両視点からわかりやすく解説します。

目次

手当の種類 法的規定 判定基準 支給継続率 判定の考え方
通勤手当 法律で一律規定なし 企業の就業規則 約60~70% 「生活費」と見なし支給継続 vs「勤務の対価」と見なし支給停止
住宅手当 法律で一律規定なし 企業の就業規則 約85% 「生活費」として継続支給する企業が多い
基本給与 育児休業給付金で補填 法律で支給原則ストップ 0% 育児休業給付金(給与の50~67%)で補填
  1. 育休中の給与手当支給の基本原則
  2. 通勤手当の支給判定フロー【企業の約70%が支給継続】
  3. 住宅手当の支給判定フロー【企業の約85%が支給継続】
  4. その他の給与関連手当の支給判定早見表
  5. 育休給付金(雇用保険)との関係と注意点
  6. 人事担当者のための実務チェックリスト
  7. よくある質問(FAQ)

育休中の給与手当支給の基本原則

育休中に「給与」は支払われない(法的確認)

育児休業は「育児・介護休業法(以下、育介法)」に基づく法定制度です。育介法第2条では育児休業を「子を養育するために休業すること」と定義しており、休業期間中の賃金支払い義務は使用者には生じません(労働基準法上の「ノーワーク・ノーペイの原則」)。

つまり、育休中は次の扱いが基本です。

項目 育休中の扱い
基本給 支払い停止(原則)
残業代・皆勤手当 支払い停止(勤務実績がないため)
通勤手当・住宅手当 就業規則による(企業判断)
育児休業給付金(雇用保険) 支給対象(別制度で補填)

法的根拠: 育児・介護休業法第2条(定義)/労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)

手当と給与の法的な区別

「給与」と「手当」は法的に区別されます。労働基準法の観点では、手当も賃金の一部であることに変わりはありません。しかし、手当の目的・性質によって、育休中の支給可否の判断が変わります。

手当の性質は大きく2種類に分類できます。

① 勤務の代償型
– 実際に働いた対価として支払われる手当
– 例:残業手当・皆勤手当・技能手当・役職手当
– 育休中は「勤務なし」のため、支給停止が合理的

② 生活保障型
– 働いているか否かにかかわらず、生活上の費用を補填する手当
– 例:住宅手当・家族手当・扶養手当
– 育休中も生活費は継続発生するため、支給継続が合理的

通勤手当はこの2分類の「境界線上にある手当」であるため、企業によって判断が分かれます(詳細は後述)。

就業規則が判定基準となる理由

育休中の手当支給については、厚生労働省も「各事業主の就業規則・給与規程に委ねる」とする立場を取っています。そのため、労働者が転職した場合や、同じ企業グループ内でも会社が異なれば、まったく異なる扱いになることがあります。

確認すべき書類のチェックリスト(労働者向け):

  • 就業規則(休職・休業中の待遇に関する条項)
  • 給与規程(各手当の支給条件)
  • 育児休業規程(会社独自の規程がある場合)
  • 労働契約書・雇用通知書

ポイント: 就業規則に「休業中は手当を支給しない」という明記がない場合、支給継続が原則となるケースもあります。不明な場合は、必ず人事部門へ確認を。


通勤手当の支給判定フロー【企業の約70%が支給継続】

通勤手当は「生活費」か「勤務の対価」か

通勤手当は、「通勤にかかる費用を会社が補填する」という手当です。解釈が分かれる理由は、次の2点です。

解釈 考え方 判定結果
必要経費弁償説 家と職場の距離は変わらない。住む場所の選択と結びついた生活費用の一部 支給継続
勤務実績対価説 実際に通勤していないのだから、費用は発生していない 支給停止

支給継続する企業の判定根拠

支給継続を選ぶ企業の主な根拠は以下のとおりです。

  1. 定期代(公共交通機関)を6か月一括購入している場合
  2. 育休開始前に定期券を購入済みであれば、費用はすでに発生している
  3. 途中解約・払い戻しのコストを考慮して支給継続を維持する企業が多い

  4. 交通費の「実費精算型」ではなく「固定額支給型」の場合

  5. 実費精算型:支給停止が自然(使っていないため)
  6. 固定額型:一律支給として継続するケースが多い

  7. 就業規則に「在籍中は支給する」と記載されている場合

  8. 休業中も「在籍」は維持されているため、支給継続の根拠となる

支給停止する企業の判定根拠

支給停止を選ぶ企業の主な根拠は以下のとおりです。

  1. 「勤務に付随する手当」と就業規則で明示されている場合
  2. ICカードの利用実績や実費精算で管理している場合
  3. 育休期間中は「出勤義務がない」という解釈に基づく場合

実務統計:約60~70%の企業が支給継続

厚生労働省の調査および民間調査(労務管理実務統計等)によれば、通勤手当については約60~70%の企業が育休中も支給を継続しています。

通勤手当の支給判定(実務統計)

支給継続  ████████████████████  約65%
支給停止  ████████             約35%

人事担当者向け注意点: 育児休業給付金(雇用保険)の支給額計算において、育休中に給与(手当を含む)の支払いが一定額を超えると給付金が減額・不支給になるルールがあります(後述)。通勤手当を支給継続する場合は、この点も考慮した設計が必要です。


住宅手当の支給判定フロー【企業の約85%が支給継続】

住宅手当が支給継続される理由

住宅手当(家賃補助)は、通勤手当よりもさらに「生活保障的性質」が強い手当です。その理由は明快です。

「育休を取っても、家賃の請求は止まらない」

住宅手当は、労働者が居住するための費用(家賃・住宅ローン等)の一部を会社が補填する手当です。育休中に就労していなくても、家賃・住宅ローンは毎月確実に発生するため、多くの企業が「支給継続が社員の生活保障として妥当」と判断しています。

扶養家族と同じ「生活保障」と扱う企業

住宅手当を支給継続する企業の多くは、家族手当(扶養手当)と同じロジックで判断しています。

【生活保障型手当として同列に扱うケース】

家族手当  → 育休中も家族構成は変わらない → 支給継続
住宅手当  → 育休中も家賃は変わらない    → 支給継続

特に、住宅手当を「従業員の定着・生活安定のための福利厚生的手当」と位置づけている企業では、育休取得者に支給停止すること自体が「育休取得の妨げになる」として制度を維持しているケースもあります。

支給停止企業の判定根拠と実務統計

支給停止とする企業は、住宅手当を「給与の一部(勤労への報酬)」として設計している場合です。この場合、就業規則に「出勤した月に支給する」「在籍かつ勤務している従業員に支給する」といった条件が明記されていることが多いです。

住宅手当の支給判定(実務統計)

支給継続  ████████████████████████  約85%
支給停止  ███                       約15%

住宅手当の支給継続率は通勤手当(約65%)を大きく上回り、約85%の企業が支給継続を選択しています。


その他の給与関連手当の支給判定早見表

手当の種類 一般的な判定 性質 理由
家族手当(扶養手当) ✅ 支給継続(約90%) 生活保障型 家族構成は育休中も変わらず
住宅手当 ✅ 支給継続(約85%) 生活保障型 家賃は育休中も発生
通勤手当 ✅ 支給継続(約65%) 境界線型 就業規則による判断が分かれる
役職手当・管理職手当 ❌ 支給停止(約85%) 勤務対価型 役職業務を担っていないため
皆勤手当・精勤手当 ❌ 支給停止(約95%) 勤務対価型 出勤実績が前提の手当
残業手当・休日手当 ❌ 支給停止(100%) 勤務対価型 実際の労働なし
資格手当・技能手当 △ 企業判断 属性型 保有資格は失われないが企業によって異なる
地域手当(地方勤務等) △ 企業判断 混合型 勤務地に関係するため分かれる

ポイント: 資格手当・地域手当については、就業規則の文言次第で判定が大きく異なります。「〇〇の資格を保有する者に支給」と書かれていれば支給継続、「〇〇業務に従事する者に支給」と書かれていれば支給停止となるケースが多いです。


育休給付金(雇用保険)との関係と注意点

育児休業給付金の基本

育休中の収入補填は、雇用保険の「育児休業給付金」が担います。給付金の概要は次のとおりです。

項目 内容
支給機関 ハローワーク(公共職業安定所)
法的根拠 雇用保険法第61条の7
支給額(育休開始~180日) 休業開始前賃金の67%相当
支給額(181日~) 休業開始前賃金の50%相当
支給申請期限 育休開始日から4か月を経過する日の属する月末まで(初回)、以降2か月ごと
必要書類 ①育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書、②賃金台帳・出勤簿、③母子健康手帳の写し 等

手当支給と給付金の「減額ルール」に注意

育休中に会社から賃金(手当を含む)が支払われた場合、支払い額に応じて給付金が減額・不支給になるルールがあります。

【育児休業給付金の減額ルール(雇用保険法)】

支払われた賃金額 ÷ 休業開始前賃金日額×支給日数 = 賃金支払率

賃金支払率が 13%以下    → 給付金は全額支給
賃金支払率が 13%超80%未満 → 給付金が減額支給
賃金支払率が 80%以上    → 給付金は不支給

具体例:

育休前の月収が30万円の従業員に、育休中も住宅手当(月2万円)と通勤手当(月1万円)の合計3万円が支払われた場合

  • 月収30万円 ÷ 30日 = 賃金日額1万円
  • 支給日数30日分の賃金日額 = 30万円
  • 支払い賃金率 = 3万円 ÷ 30万円 = 10%
  • → 10%は13%以下のため、給付金は全額支給(問題なし)

手当の支給継続が給付金の減額に影響するケースは少ないですが、複数の手当を合算した場合のシミュレーションを人事部門が事前に行うことを推奨します。


人事担当者のための実務チェックリスト

育休取得者の手当支給を適切に処理するために、以下のチェックリストを活用してください。

育休開始前の確認事項

  • 就業規則・給与規程の「育休中の手当支給条項」を確認する
  • 規程に明記がない手当については、支給継続・停止の社内方針を文書化する
  • 通勤手当(定期代)の一括購入状況を確認し、払い戻し対応を検討する
  • 育児休業給付金の減額シミュレーションを実施する(支給継続手当合算額が休業前賃金の13%以内か確認)

育休中の手続き

  • 毎月の給与処理で手当支給の可否を規程どおりに適用する
  • 住民税の支払い対応を従業員に案内する(普通徴収への切り替えまたは会社立替)
  • 社会保険料免除申請(産前産後・育児休業期間中の保険料免除)を年金事務所へ届出

育休終了後の対応

  • 復職日から通常支給に戻す(支給停止していた場合は復活対応)
  • 育児休業給付金の受給終了確認(ハローワークへの報告)
  • 通勤定期券の再購入・精算手続き

よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中、会社から「通勤手当は出ない」と言われました。これは違法ですか?

A. 違法ではありません。通勤手当の支給は法律で義務付けられておらず、就業規則・給与規程に基づいて判断されます。ただし、就業規則に「在籍者に支給」と記載されているにもかかわらず支給を停止している場合は、規程違反となる可能性があります。まず就業規則を確認し、不明点は人事部門または労働基準監督署に相談しましょう。

Q2. 住宅手当をもらいながら、育児休業給付金も満額もらえますか?

A. 多くの場合、もらえます。育児休業給付金は、育休中に支払われた賃金(手当を含む)が休業前賃金の13%以下であれば全額支給されます。住宅手当のみの支給であれば13%を超えないケースがほとんどですが、複数の手当を合算する場合は事前にシミュレーションすることをお勧めします。

Q3. パートタイム労働者でも育休中の手当は支給されますか?

A. パートタイム労働者も育児休業を取得できます(雇用期間1年以上などの要件を満たす場合)。手当の支給については、正社員と同様に就業規則・パートタイム労働者就業規則に従います。ただし、そもそも住宅手当・通勤手当の支給対象外とされているパート従業員については、育休取得の有無にかかわらず支給されません。

Q4. 育休中に手当の支給ルールを会社が変更することはできますか?

A. 可能ですが、就業規則の不利益変更には一定の手続きが必要です(労働基準法第89条・第90条)。労働者の過半数を代表する者または過半数組合の意見聴取・届出が必要であり、不利益変更には合理的理由が求められます。一方的に支給停止に変更した場合、労働契約法違反となる可能性があります。

Q5. 産前産後休業中(産休中)も同じ判定基準が適用されますか?

A. 基本的に同じ考え方が適用されます。産休中も「休業状態」であるため、手当の性質に応じて支給継続・停止が判断されます。なお、産休中は社会保険料の免除制度(産前産後休業期間中の保険料免除)が育休中とは別に適用されます。会社・本人ともに保険料負担がなくなるため、手当が支給される場合でも社会保険料控除は発生しないことも覚えておきましょう。

Q6. 「育休中に手当をもらった」ことで、育休後に何か不利益はありますか?

A. 基本的にはありません。育休中に手当を受け取ることは正当な権利であり、復職後の人事評価や昇進に影響を与えることは「育児休業を理由とした不利益取扱い」として禁止されています(育児・介護休業法第10条)。万が一不利益な扱いを受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。


まとめ

育休中の通勤手当・住宅手当の支給判定は、「手当の性質」と「企業の就業規則」の2点で決まります。

手当 支給継続率(目安) 判定の軸
住宅手当 約85% 生活保障型→支給継続が多数派
家族手当 約90% 生活保障型→支給継続が多数派
通勤手当 約65% 境界線型→企業判断が分かれる
役職手当 約15%(停止85%) 勤務対価型→支給停止が多数派

労働者の方へ: 育休前に必ず就業規則・給与規程を確認し、不明な点は人事部門への確認を。

人事担当者の方へ: 手当支給の可否を就業規則に明文化し、育休取得者が安心して休業できる環境を整備することが、優秀な人材の定着につながります。

相談窓口:
– 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
– ハローワーク(育児休業給付金に関する相談)
– 社会保険労務士(就業規則の整備・見直し)

よくある質問(FAQ)

Q. 育休中に通勤手当は支給されますか?
A. 企業の約70%が支給を継続しています。法的に一律では決まっておらず、就業規則で判定が異なります。人事部に確認してください。

Q. 住宅手当は育休中ももらえますか?
A. 企業の約85%が支給を継続しています。生活保障型の手当として扱われ、育休中も生活費が必要という考え方が一般的です。

Q. 育休中に給与が支払われない法的理由は?
A. 育児・介護休業法と労働基準法の「ノーワーク・ノーペイの原則」により、休業期間中の賃金支払い義務は使用者にありません。

Q. 育休給付金と手当の支給を同時に受け取れますか?
A. はい、受け取れます。育児休業給付金は雇用保険から支給される別制度で、企業から支給される手当と併せて受給可能です。

Q. 勤務実績がない育休中に役職手当や残業手当は支給されますか?
A. いいえ。これらは勤務の代償型手当のため、勤務実績がない育休中は支給停止が合理的です。就業規則を確認してください。

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