育休給付金の計算に前職の賃金は含まれるか?転職後の注意点

育休給付金の計算に前職の賃金は含まれるか?転職後の注意点 育休給付金

転職後に妊娠・出産を迎え、「育休給付金の計算に前職の賃金も含まれるの?」と疑問を持つ方は少なくありません。結論から言えば、前職の賃金は育休給付金の計算に一切含まれません。しかし、それだけでは「自分の場合どうなるのか」がわかりにくいですよね。

この記事では、転職後に育休を取得する方が知っておくべき給付額の計算方法・受給資格・申請手続きを、転職パターン別の具体例とともにわかりやすく解説します。


目次

  1. 育休給付金の計算に前職の賃金は含まれるか?【結論】
  2. 転職パターン別|前職賃金の扱いと給付額への影響
  3. 育休給付金の受給資格|転職後に注意すべき条件
  4. 育休給付金の計算方法と給付額シミュレーション
  5. 転職後の育休給付金申請手続きと必要書類
  6. 転職後でも給付額を最大化するための注意点
  7. よくある質問(FAQ)

育休給付金の計算に前職の賃金は含まれるか?【結論】

結論:含まれません。

育休給付金の計算に使われる賃金は、現在の勤務先(育休取得先)での休業開始前6ヶ月間の賃金のみです。前職での給与水準や勤続年数は、給付額の計算に一切影響しません。

「以前の会社では月収40万円だったのに、転職後の月収が25万円になった」という場合でも、前職の40万円は計算に持ち込めず、現職の25万円を基に給付額が算定されます。

育休給付金の計算対象となる賃金の範囲

育休給付金の計算の基礎となるのは「賃金月額」と呼ばれる金額です。これは以下のルールで算定されます。

賃金月額の計算方法:

賃金月額 = 育休開始前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180日 × 30日
(基本日額の30日分)

法的根拠:雇用保険法施行規則第107条により、賃金月額は「育児休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就労時間が80時間以上)ある完全な月」を直近から6ヶ月分さかのぼって算定します。

ポイント:「育休開始前6ヶ月」とは現在の勤務先での期間を指します。前職在籍期間はこの6ヶ月にカウントされません。

計算に含まれるもの 計算に含まれないもの
現職での育休開始前6ヶ月の基本給 前職での給与
現職での通勤手当・住宅手当など(毎月支払われる賃金) 前職での賞与・手当
現職での残業代(固定残業代含む) 転職前の勤続年数に基づく加算
育休開始前6ヶ月以内に支払われた賞与(上限あり) 3ヶ月超の周期で支払われる賃金(賞与等)

注意: 3ヶ月を超える周期で支払われる賃金(年2回の賞与など)は「賃金月額」の計算には含まれません。ただし計算基礎となる月ごとの賃金に含める扱いになる場合もあるため、詳細はハローワークに確認してください。


なぜ前職の賃金は含まれないのか?制度の仕組みを解説

育休給付金は、雇用保険制度の「育児休業給付」として位置づけられています(雇用保険法第61条の4〜第61条の7)。

この制度の目的は、「現在の雇用先における育児休業取得中の賃金低下を補填すること」です。つまり、あくまで「今の職場での収入減少」を支援するために設計されており、過去の職場での収入実績を引き継ぐ仕組みにはなっていません。

以下の3点が、前職賃金が除外される理由です。

  1. 雇用保険は「現在の雇用関係」を基礎とする制度
    雇用保険の各種給付は、現在の被保険者関係に基づいて算定されます。失業給付(基本手当)も同様に、前職の賃金ではなく離職前の賃金を基準とします。

  2. 賃金月額は「実際に支払われた賃金」が前提
    制度上、計算基礎となるのは「育休開始前に実際に支払われた賃金」のみです(雇用保険法施行規則第107条)。転職後に一度も支払われていない前職の賃金は、この定義に含まれません。

  3. 給付の目的が「現在の生活水準の維持」
    育休給付は、育休取得直前の生活水準をある程度維持することが目的であり、転職前の生活水準の維持は対象外とされています。


転職パターン別|前職賃金の扱いと給付額への影響

転職のタイミングによって、育休給付金の給付額は大きく変わります。以下の4パターンで整理します。

パターン 状況 前職賃金の扱い 給付計算の対象
①同一企業で育休 転職なし 該当なし 育休開始前6ヶ月間の実績
②転職後6ヶ月未満で育休 新企業勤務が短期間 含まれない 新企業での実際の勤務月数分
③転職後6ヶ月以上経過して育休 新企業で半年以上勤務 含まれない 新企業での6ヶ月分の実績
④転職により給与が低下 前職より低賃金の企業へ 含まれない 新企業の低い給与で計算

パターン①:転職後6ヶ月未満で育休を取得する場合

転職直後に育休を取得した場合、育休開始前6ヶ月分の賃金実績が現職では揃いません。この場合、実際に現職で勤務した月数分の賃金のみが計算対象となります。

具体例:転職後3ヶ月で育休開始(月収30万円の場合)

計算対象:3ヶ月分の賃金 = 30万円 × 3ヶ月 = 90万円
賃金月額 = 90万円 ÷ 90日 × 30日 = 30万円
育休給付金(月額)= 30万円 × 67% = 約201,000円(育休開始〜6ヶ月)

この場合、計算結果は「6ヶ月フルで揃っている場合」と同じになることもありますが、勤務月に賃金支払基礎日数が11日未満の月がある場合はその月が除外されるため、給付額が下がるリスクがあります。

重要: 転職直後の場合は「育休給付金の受給資格そのものを満たせない」可能性もあります(詳しくは次章で解説)。


パターン②:転職後6ヶ月以上経過してから育休を取得する場合

新企業に6ヶ月以上勤務した後に育休を取得した場合は、現職での6ヶ月分の賃金実績がすべて揃うため、最もオーソドックスな計算が行われます。

具体例:転職後8ヶ月で育休開始(月収35万円の場合)

計算対象:直近6ヶ月の賃金 = 35万円 × 6ヶ月 = 210万円
賃金月額 = 210万円 ÷ 180日 × 30日 = 35万円
育休給付金(月額)= 35万円 × 67% = 約234,500円(育休開始〜6ヶ月)

前職の賃金は計算に含まれませんが、現職で6ヶ月以上きちんと勤務していれば、給付額は現職の給与水準を基準とした適切な金額が支給されます。


パターン③:転職により給与が前職より低下した場合

転職によって月収が下がった場合、前職の高い給与を給付計算に使うことはできません。現職の低い給与のみが計算対象となり、給付額は前職在籍時と比べて低くなります。

具体例:前職月収40万円 → 現職月収25万円に転職後、育休取得

【前職基準では(計算されない)】
育休給付金(月額)= 40万円 × 67% = 268,000円

【実際の計算(現職基準)】
育休給付金(月額)= 25万円 × 67% = 167,500円

この差額(月約10万円)は制度上補填されません。転職によって給与水準が低下している場合は、この点を事前に把握しておくことが重要です。


パターン④:育休延長・再延長のケース

育休延長(1歳6ヶ月・2歳まで延長)の場合も、給付額の計算基礎は変わらず最初の育休開始前6ヶ月の賃金月額が継続して使われます。延長後に前職賃金が加算されることはありません。


育休給付金の受給資格|転職後に注意すべき条件

転職後に育休給付金を受け取るには、給付額の計算だけでなく受給資格そのものを満たしているかの確認が必要です。

受給資格の基本要件

条件 内容
①雇用保険の被保険者 育休開始時点で雇用保険に加入していること
②育休開始前2年間の雇用保険加入実績 育休開始日前2年間に「賃金支払基礎日数が11日以上(または就労時間80時間以上)の月」が通算12ヶ月以上あること
③育児・介護休業法に基づく育休取得 1歳未満の子(延長の場合は最大2歳)の育休であること
④育休中の就労制限 育休期間中に就業している日数が月10日以下(または就労時間が月80時間以下)であること

2025年改正のポイント: 従来は「育休開始前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間」が必要でしたが、産前産後休業や育休期間はこの2年間から除外する特例が適用されます(雇用保険法第61条の4第1項)。


転職後に特に注意すべき条件:「通算12ヶ月」の考え方

転職後に育休取得を検討している方が最も注意すべきなのが「育休開始前2年間に12ヶ月以上の雇用保険加入実績」の要件です。

ここで重要なのは、この12ヶ月は「前職の期間も通算できる」という点です。

例:前職で9ヶ月 + 現職で5ヶ月(合計14ヶ月)→ 受給資格あり ✅
例:前職で3ヶ月 + 現職で4ヶ月(合計7ヶ月)→ 受給資格なし ❌

ただし、前後の職場の雇用保険加入期間の間に1年以上の空白(未加入期間)がある場合は通算できません。転職の際に離職期間が長くなった場合は、この点に注意が必要です。

受給資格の判定と給付額の計算は別物です。受給資格の判定には前職期間を通算できますが、給付額の計算には前職の賃金は一切使えません。この違いを混同しないようにしましょう。


育休給付金の計算方法と給付額シミュレーション

計算の基本フロー

STEP1:賃金月額の算出
 育休開始前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180日 × 30日

STEP2:給付率の適用
 育休開始〜6ヶ月:賃金月額 × 67%
 育休7ヶ月目以降:賃金月額 × 50%

STEP3:上限・下限の確認
 賃金月額の上限:481,800円(2024年度)
 賃金月額の下限:73,230円(2024年度)

上限額の目安(2024年度):
– 育休開始〜6ヶ月:月額最大 305,721円(481,800円 × 67%)
– 育休7ヶ月目以降:月額最大 228,150円(456,300円 × 50%)※別途上限設定


給付額シミュレーション(転職後のケース)

現職の月収 賃金月額 育休開始〜6ヶ月(67%) 育休7ヶ月目以降(50%)
20万円 20万円 134,000円 100,000円
25万円 25万円 167,500円 125,000円
30万円 30万円 201,000円 150,000円
35万円 35万円 234,500円 175,000円
40万円 40万円 268,000円 200,000円
50万円以上 上限481,800円 305,721円(上限) 228,150円(上限)

※上記は概算です。残業代・手当の有無、賃金支払基礎日数によって実際の金額は異なります。


転職後の育休給付金申請手続きと必要書類

申請の流れ

STEP1 育休開始(事業主に育休申請)
  ↓
STEP2 育休開始から約2ヶ月後に「第1回目の申請期間」到来
  ↓
STEP3 事業主経由でハローワークへ申請
 (原則として2ヶ月ごとに申請)
  ↓
STEP4 ハローワークが審査・支給決定
  ↓
STEP5 指定口座へ給付金振込

申請期限: 育休終了日の翌日から2ヶ月以内(時効)。申請が遅れると受給できなくなる場合があります。原則として事業主が申請手続きを行います。


申請に必要な書類

書類 取得先 備考
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 ハローワーク(事業主経由) 第1回目申請時に必要
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 事業主が作成 育休開始前の賃金実績を記入
賃金台帳(直近6ヶ月分) 事業主が準備 現職のもののみ
母子健康手帳(出生届出済証明欄) 本人が持参 子の出生確認用
育児休業取扱通知書 事業主が交付 育休の開始・終了予定日が明記されたもの
本人確認書類 本人が持参 マイナンバーカードまたは通知カード+身分証
振込先口座の確認書類 本人が準備 通帳またはキャッシュカードのコピー

転職直後の場合の追加確認事項:
転職してから間もない場合、ハローワークから「前職の離職票」や「雇用保険被保険者証」の提示を求められることがあります。受給資格確認のために前職の雇用保険加入期間を通算する必要があるためです。


申請のタイミングと注意点

  • 初回申請: 育休開始日から4ヶ月が経過した日の属する月の末日までに行う(通常は育休開始後2〜4ヶ月以内)
  • 2回目以降: 2ヶ月ごとに事業主がハローワークへ申請
  • パパ育休(産後パパ育休)の場合: 28日ごとに申請が発生する場合があり、通常の育休と手続きが異なります

転職後でも給付額を最大化するための注意点

前職の賃金を給付計算に含めることはできませんが、以下の点を意識することで現職の条件のなかで給付額を最大化できます。

注意点①:育休開始前6ヶ月間の賃金を高く維持する

給付額の計算基礎となるのは育休開始前6ヶ月の賃金です。この期間に残業・手当が多い月が含まれると給付額が上がります。転職直後で残業が少ない時期に育休開始となる場合は、給付額が想定より低くなる可能性があります。

注意点②:賃金支払基礎日数に注意する

育休開始前6ヶ月のうち、賃金支払基礎日数が11日未満の月は計算から除外されます。転職直後に有給が少なく欠勤があった場合など、計算対象月が減るリスクがあります。

注意点③:転職時の空白期間は1年以内に抑える

受給資格の「通算12ヶ月」を確保するために、前職と現職の間の離職期間は1年(12ヶ月)以内に収めることが重要です。空白が1年を超えると前職の雇用保険加入期間が通算されなくなります。

注意点④:育休開始のタイミングを計画的に検討する

  • 転職後6ヶ月以上経過してから育休を開始すると、計算対象の賃金月が6ヶ月フルで揃い、より安定した給付額になります
  • 産前休業(産前42日)は育休給付金の対象外ですが、産後休業後の育休開始日が育休給付金の起算点になります

注意点⑤:社会保険料免除の効果も活用する

育休期間中は、事業主が申請することで健康保険料・厚生年金保険料が免除されます(健康保険法第159条、厚生年金保険法第81条の2)。これにより手取りベースでは給付率以上の収入維持効果があります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 前職と現職の雇用保険を合算すれば、給付額も増えますか?

A. いいえ、増えません。雇用保険加入期間の通算は「受給資格の確認(12ヶ月要件)」にのみ使われます。給付額の計算には現職(育休取得先)の休業開始前6ヶ月の賃金のみが使われるため、前職の高い賃金を給付計算に持ち込むことはできません。


Q2. 転職後すぐに妊娠・育休となった場合、給付金は受け取れますか?

A. 条件次第で受給できる場合があります。受給資格の「育休開始前2年間に12ヶ月以上の雇用保険加入実績」を前職と現職を通算して満たしていれば、受給資格自体は得られます。ただし、現職での勤務期間が極めて短い場合は、計算対象の賃金が少なくなり給付額が低くなる場合があります。また、勤務日数の要件(各月11日以上)を満たしているかどうかも確認が必要です。


Q3. 転職先が育休を認めてくれない場合はどうすればよいですか?

A. 育児・介護休業法上、入社1年以上の労働者には育休取得の権利があります(労使協定により入社1年未満は除外できる場合があります)。事業主が育休を認めない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談することができます。また、2022年の法改正により、育休取得の意向確認が事業主の義務となっています。


Q4. 育休給付金の計算に賞与(ボーナス)は含まれますか?

A. 原則として、3ヶ月を超える間隔で支払われる賞与は「賃金月額」の計算から除外されます。ただし、賃金月額の算定基礎となる「賃金」の中に毎月支払われる固定的な手当は含まれます。年2回のボーナスは基本的に計算対象外ですが、詳細は事業所の賃金体系によって異なるため、ハローワークまたは社会保険労務士に確認することをお勧めします。


Q5. 育休給付金の申請はいつまでにすればよいですか?

A. 育休給付金の時効は育休終了日の翌日から2ヶ月です。ただし通常は、2ヶ月ごとに事業主がハローワークに申請する形で手続きが進められます。申請を忘れると時効で受給できなくなるリスクがあるため、事業主と連携して手続きを進めることが重要です。初回申請は育休開始後4ヶ月が経過した日の属する月の末日までに行ってください。


Q6. パートタイム・有期契約労働者でも転職後に育休給付金は受け取れますか?

A. はい、受け取れます。パートタイムや有期契約社員でも、雇用保険に加入しており、育休開始前2年間に12ヶ月以上の雇用保険加入実績(前職通算可)があれば受給できます。ただし、有期雇用労働者の場合は「育休開始時に、子が1歳6ヶ月になるまでの間に労働契約が更新されないことが明らかでないこと」という条件もあります(育児・介護休業法第5条第3項)。


まとめ

育休給付金の計算に前職の賃金は含まれません。これは雇用保険法施行規則第107条に基づく制度設計であり、給付額の計算は現在の勤務先での育休開始前6ヶ月の賃金のみを対象とします。

転職後に育休を取得する場合の重要ポイントを整理すると次のとおりです。

確認事項 内容
受給資格 前職+現職の雇用保険加入期間を通算して12ヶ月以上(ただし空白1年以内)
給付額の計算 現職の育休開始前6ヶ月の賃金のみ(前職賃金は含まれない)
給付率 育休開始〜6ヶ月:67%、7ヶ月目以降:50%
申請手続き 原則として事業主経由でハローワークへ2ヶ月ごとに申請
時効 育休終了日の翌日から2ヶ月

転職後の育休給付金に不安を感じた場合は、最寄りのハローワークまたは社会保険労務士に早めに相談することをお勧めします。特に転職直後の妊娠・出産の場合は、受給資格の確認を早期に行い、申請漏れがないよう事業主と連携して準備を進めてください。

育休給付金の手続きについてご不明な点がございましたら、厚生労働省公式サイトまたはお近くのハローワークにお問い合わせください。育児と仕事の両立を支援するための制度を、正しく理解し活用することで、安心して育休期間を過ごせるようになります。


本記事の情報は2024年度時点の法令・通達に基づいています。育休給付金の制度は改正される場合があります。最新情報は厚生労働省またはハローワークの公式案内をご確認ください。

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